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3.ウェブ効用タイプ別のインターネット利用の傾向

3.1 インターネット利用目的と利用時間

 まず利用目的で見ると,グループ別には図3が得られた.ウェブコミュニティG(グループを略称)では約15%である仕事・勉強目的の利用は,情報利便Gでは約25%に,次いで低効用Gの37%に増加する.それと反対にプライベート・趣味の利用が減少している.したがってウェブコミュニティGは大部分の人がプライベート・趣味利用であるが,低効用Gとなるとプライベート・趣味利用は半数近くに減少することが注目される.

 それではこれらの利用目的のために,どの程度の時間インターネットを利用しているのだろうか.インターネットの利用時間はほぼウェブとメールの利用時間の合計で計測される.そこでグループ毎の利用時間を見てみた.図4に毎週のウェブ利用時間を示す.


図3 タイプ別のインターネット利用目的

 3つのグループ間ではかなり大きい差があることが分かる.例えば週3時間以上の占める割合は,ウェブコミュニティGでは54%,情報利便Gでは34%,低効用Gでは15%である.急速に利用時間が減少している.そこで定量的な目安を得るために,各選択肢の中間値を用いて図4からそれぞれのグループの平均値を求めると,表6となる.ウェブコミュニティGは1時間強/日であり,情報利便Gは半分以下の30分弱/日,低効用Gは15分強/日である.


図4 タイプ別のウェブ利用時間/週(日野)(χ2乗:***)

 なお同様な計算をメールについても行った結果も表6に示してある.メールでは読み書きする時間も入れている.メールの方はウェブほどには差はない.ウェブコミュニティGは27分/日,情報利便Gは22分/日,低効用Gは21分/日である.この2つの合計は,ウェブコミュニティGが88分/日,情報利便Gが51分/日,低効用Gは39分/日である.利用時間は2倍以上異なり,ウェブコミュニティGのインターネット利用時間が大きいことが分かる.またメール利用時間には大した差はないので,主な差はウェブの利用で生まれていることが分かる.

 次に図3を利用して,平均的な仕事利用時間の比率を推定する.仕事利用の比率に選択肢の中間値を用い,「仕事が多い」は9割,「やや仕事が多い」は7割,「同程度」は5割,「ややプライベート・趣味が多い」は3割,「プライベート・趣味が多い」は1割とした.その結果も表6に示す.明確となった傾向は次の点である.
 

表6  タイプ別のインターネット利用時間
  ウェブ時間/週 メール時間/週 合計時間/週 合計分/日 仕事分/日 趣味分/日
ウェブコミュニティG
7.1
3.2
10.3
88
28
60
情報利便G
3.3
2.6
5.9
51
20
31
低効用G
2.0
2.5
4.5
39
18
21
  1. 仕事・勉強関係でインターネットを利用する時間は,ウェブコミュニティGが最も長いが,大きい差があるわけではない.ウェブコミュニティGが28分/日であるのに対して,他のグループは同程度で2/3の水準にある.
  2. プライベート・趣味関係では,ウェブコミュニティGは断然長く60分/日である.それに対して,情報利便Gは約半分の31分/日,低効用Gは約1/3の21分/日である.非常に大きい差が現れている.
  3. この様な傾向から,インターネット利用における利用感の主な差は,プライベート・趣味関連の利用で,かつウェブの利用が規定している.
3.2 タイプ別のウェブ利用内容    目次へ戻る

 それではウェブ効用タイプ毎のウェブの利用はどの様に異なるのであろうか.まず毎週定期的に訪れるHP数(ウェブサイト数)が幾つぐらいあるかを調べている.その結果は,ウェブコミュニティGは4.5箇所,情報利便Gは2.2箇所,低効用Gは1.3箇所であった.グループ間の差は歴然としており,ウェブコミュニティGでは特に定期的に訪れるサイトが多く,低効用Gでは少ない.

 次にウェブのコミュニケーション的な利用として,掲示板とチャットの利用を取り上げてみる.ここでは掲示板閲読の時間について集計した結果を図5に示す.同図では,タイプ別の閲読時間の相違は明らかである.ウェブコミュニティGは閲読時間が長く,次いで情報利便Gで,低効用Gは最も短い.この図から選択肢の中間値を用いて平均閲読時間を推定すると,ウェブコミュニティGは170分/週,情報利便Gは45分/週,低効用Gは39分/週である.


図5 ウェブ効用タイプ別の掲示板閲読時間/週(χ2乗:***)

 この様な推計を掲示板書込時間,チャット利用時間についても行い,表6の結果も利用して作成したのが表7のウェブ利用時間である.表7では最初にウェブ全体としての週あたりの利用時間を示している.次に掲示板利用の時間を,閲読と記入(書き込み)として記入し,次いでチャット利用時間を記載している.掲示板利用とチャット利用の合計を小計として示しているが,これはコミュニティ的なコミュニケーション時間と考えることが出来る.この時間はウェブコミュニティGが格段に長く,他のグループの4倍から5倍となっている.それに対して,ウェブ全体から小計を引いた残りの部分では,グループ間の差はそれほど大きくはない.大体1.5〜2.5倍である.
 

表7 タイプ別のウェブ利用時間 (分/週)
  ウェブ全体 掲示板閲読 掲示板記入 チャット利用 小 計 その他
ウェブコミュニティG
438分
170分
38分
52分
260分
178分
情報利便G
186
45
17
5
68
118
低効用G
120
39
5
4
49
71

 この様に見てくると,ウェブコミュニティGでは長いウェブ利用時間の相当部分(約6割)がコミュニティ的なコミュニケーションで消費されているのが顕著な特徴であることが分かる.それに対して他のグループでは,コミュニティ的なコミュニケーション時間はかなり小さくなっている.

3.3 ウェブの閲読傾向    目次へ戻る

 ウェブの利用時間が大幅に異なると言うことは,当然ウェブの見方にも様々な差があると思われる.本調査では,例えば「当初の用事が済むと閲読を止める」,「幾つかのページを習慣的に見る」,「テレビのながら視聴のようにウェブを見る」などの8個の項目に対し,「1.よくある」,「2.ややある」,「3.あまりない」,「4.まったくない」の出現頻度を聞く設問で,ウェブの見方について調査した.その結果,ウェブ効用タイプのグループ間でどの項目でも有意な差があることが分かった.そこで8つの設問に対して因子分析を適用して,構造的な傾向を調べることにした.因子分析では8つの変数は2つの因子に集約され(分散の62.8%が再現),それらを環境閲読度(テレビのながら視聴的にウェブをつけておく見方)と用件閲読度(用件があるときにウェブをつけて,済むと消す見方)と呼び,この2つの軸上にウェブ効用グループを位置づけると,図6が得られる.


図6 ウェブ閲読傾向の因子スコア平均値
分布は縦方向も横方向もp≦0.0001で有意

 図6によると,ウェブコミュニティGは用件閲読の因子スコアが0の付近にある(因子スコアは標準化データなので,0は標本の平均である)ので,用件閲読の度合は全サンプルの平均である.しかし環境閲読度は非常に強いものがある(元々の選択肢は「1.よくある」,「4.まったくない」なので,因子スコアは負で絶対値が大きいほどに傾向は強く,正では逆になる).すなわちウェブコミュニティGはウェブをあたかも環境のように見る,テレビのながら視聴のように見る傾向が顕著であることを示している.ウェブを見る時間の長さはこの様にして実現されている.

 これに対して情報利便Gは,環境閲読度は0に近いが,用件閲読度は高い値である.用件があるとホームページを見て,用事が済むと見るのを止める見方をする.この様な見方をする限りでは,ホームページを見る時間は特に長くなるということは無い.

3.4 インターネットの利用満足度    目次へ戻る

 それではインターネットの利用満足度はどの様になっているのだろうか.図7に調査結果を示す.グループ別の相違は歴然としている.ウェブコミュニティGは実に9割弱が「満足」,「やや満足」であるが,情報利便Gでは7割弱となり,低効用Gでは3割弱となる.特に低効用Gでは,「どちらとも言えぬ」が6割弱と大きく,過半の利用者がインターネットの満足を感じていない様子がうかがえる.


図7 ウェブ効用タイプ別のインターネット利用満足度(χ2乗:****)

3.5 グループのインターネット利用特性と利用者像    目次へ戻る

 ここではこれまでに述べてきたインターネットの利用特性の結果をまとめるが,同時にフェースシートの属性に基づく集計からグループ別の利用者像を説明する.

A.ウェブコミュニティグループ

 インターネットの利用目的では,8割前後の人がプライベート・趣味利用が多く,利用時間は平均でおよそ10時間/週に達する.定期的に訪れるウェブサイトの数は4.6個/週あり,コミュニティ的にウェブ上で通信するコミュニケーション時間は4時間40分/週に達する.ウェブの見方としては,テレビの「ながら視聴」のようにウェブを見ようとする環境閲読指向で,インターネットの利用満足度は最も高い.これらの傾向を見ると,インターネットにはまり込んで,メリットを享受している人たちと見ることが出来る.

 なおこのグループは,性別では女性が若干多く,年齢では10代〜30代の若年層に多く,職業では販売・サービス,専門技術職,学生の比率が高い.学歴では,短大・高専卒,高校在学中,大学・大学院在学中もある.居住年数は3年未満と短い方が強く,世帯収入は 500万〜1000万円程度の層の比率が非常に高い.若年層で高学歴ではなく,職業では事務・管理的な職業以外の職業であることが多い.

B.情報利便グループ

 インターネットの利用目的では,プライベート・趣味利用が多いのは7割前後とAの場合より若干減少し,利用時間は平均でおよそ6時間/週に減少する.定期的に訪れるウェブサイトの数は2.2個/週で,コミュニティ的にウェブ上で通信するコミュニケーション時間は70分/週程度である.ウェブの見方は用件があると見る用件閲読指向で,インターネットの利用満足度もAよりも低下する.これらの傾向を見ると,インターネットにおける情報利用の利便性を評価し,機能的に便利な手段としてインターネットを使いこなしている人たちと見ることが出来る.

 性別では男性の比率が高く,年齢では20代〜40代の比率が高く,職業では事務職,管理職の比率が高く,学歴では大卒・大学院卒,大学・大学院在学中の比率が高い.居住年数では15年未満が多く,世帯収入では500〜1000万円未満,1000万円以上の2つの層で高い.若年〜壮年層の高学歴ビジネスマンである.

C.低効用グループ

 インターネットの利用目的では,プライベート・趣味利用が多いのは55%前後とBの場合よりさらに減少し,利用時間,定期的に訪れるウェブサイトの数,コミュニティ的なウェブ利用もBの場合よりもさらに減少する.ウェブを見る見方は用件閲読指向も環境閲読指向も弱い.調査では「親しみやすい←→とっつきにくい」,「情報が正確←→情報が不正確」などの10項目をあげて,インターネットの印象を聞いているが,この印象はBの場合よりも好意的度合がさらに低下し,非インターネット利用者とほぼ同じ水準にある.またインターネットの利用満足度は最も低い.

 性別では男性の比率が高く,年齢は40代〜50代で,職業は専門技術職,管理職に多い.学歴では大卒・大学院卒が多く,世帯収入では500〜1000万円未満,1000万円以上が多い.高学歴の男性熟年層ビジネスマンであるが,本来はあまり好きではないインターネットを,勤務での立場上から利用することを義務づけられている人々が多いと見られる.


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