文教大学大学院 人間科学研究科

ステップをふんだ研究プロセスと実力のつく臨床研修

教育課程の特色および履修の方法

博士後期課程においては、臨床心理学における学術研究のいっそうの進展を担う研究者を養成するとともに、臨床心理士の指導者を育成するという目標に沿って、修士課程の教育研究を深化させ、専門性を特化させるために、必修科目6科目12単位および選択科目8科目、16単位を開設しています。
課程修了には、必修科目6科目12単位、選択科目2科目4単位、計8科目16単位の修得が条件となります。

必修科目

学会標準の研究方法論を身につけるための「臨床心理学研究法Ⅰ・Ⅱ」、事例を通した臨床的研究能力を涵養する「臨床心理査定・面接研究Ⅰ・Ⅱ」、研究成果を雑誌、論文等に公表する能力を養う「臨床心理学研究Ⅰ・Ⅱ」からなります。

選択科目

基礎研究領域・実地研究領域あわせて8科目16単位を開設しています。これらのうちから両領域にまたがって2科目を選択することになります。

<基礎研究領域>

人格心理学研究 教育心理学研究 異常心理学研究

<実地研究領域>

心理療法研究ⅠからⅤの5科目が以下の副題のもと開設されています。
遊戯療法 箱庭療法 認知行動療法 統合的心理療法 スーパーヴィジョン技法

研究指導

入学当初に学生は、研究指導担当教授の中から、研究指導教員を選択します。1年次には、研究指導教員の助言をもとに上記の必修科目および選択科目を履修します。学位論文作成のために、必要に応じて調査研究や実験研究を行います。
2年次後半に中間審査が行われます。同時に、臨床心理学領域の論文を査読により掲載する学術雑誌に投稿し、受理されることが求められます。中間審査において認められると論文草稿の提出となります。
3年次には、心理臨床的な活動を続けつつ、中間審査並びに草稿審査において指摘された事項に対して慎重に取り組み、博士論文を完成することになります。指定された期日に提出された論文について、口述試験が行われます。

学位

課程の修了は専攻が定める授業科目16単位を修得し、かつ、必要な研究指導を受け、博士論文の審査に合格した
者には、博士(心理学)の学位が授与されます。

授業一覧


臨床心理学研究法Ⅰ
<各研究指導教員>

臨床心理学における多様な研究法を、「調査研究」「実験研究」「実践研究」に分けることができるが、この授業ではそのいずれかを取り上げ、方法論的吟味を行う。例えば、調査研究は「質的調査」と「量的調査」に分けることができる。質的調査のデータ収集法として「観察」「面接」「フィールドワーク」があり、データ整理法として「グラウンデットセオリー」「KJ法」「IPA」などある。量的調査には「尺度作成」がある。実験研究には従来型の「実験」に加え、現実生活の場により近い状況で行われる「準実験」、一人の個人を対象とする「単一事例実験」などがある。


臨床心理学研究法Ⅱ
<各研究指導教員>

臨床心理学研究法Ⅱでは、臨床心理学研究法Ⅰにおける方法論的吟味をふまえ、特に学会発表を念頭に研究成果の公表を行いうる能力を身につけることをめざす。さらに、研究遂行上ならびに研究公表上の倫理についても省察する。


臨床心理査定・面接研究Ⅰ
<各研究指導教員>

臨床心理査定・面接研究Ⅰ・Ⅱを通して、臨床心理学の主要課題である臨床心理査定および面接について、理論的かつ実践的な課題を考察する。Ⅰにおける査定研究では、心理テスト・面接・観察による査定および精神障害の分類枠としてのDSMについて考究する。また、心理テストの信頼性・妥当性・データの処理について吟味する。面接研究では、心理療法の主要なアプローチについて、その人間観・人格理論・病理論・援助目標・援助関係・援助技法・適用疾患ならびにその課題について比較・検討する。さらに、援助過程・援助成果に関する研究結果を考察する。


臨床心理査定・面接研究Ⅱ
<各研究指導教員>

臨床心理査定・面接研究Ⅱにおいては、査定・面接の実務面に熟達し、その課題を吟味する。具体的には、自分が実際に担当したインテーク面接事例・臨床アセスメント事例・援助介入事例・終結事例などについて、事例の見立て、援助方針(目標・方法・治療構造)の設定、展開のし方(ケース・マネジメント、転移・抵抗の扱い)、終結のあり方などに関して、スーパーヴィジョンやケース・カンファレンスを通して検討する。そして、その成果を事例研究論文として作成し、学会発表・専門誌への投稿を目指す。


臨床心理学研究Ⅰ
<各研究指導教員>

臨床心理学研究は、基礎と実践をつなぐ総合的な研究領域である。その対象は、個人とその個人を取り巻く関係性における様々な現象である。臨床心理学研究Ⅰでは、そうした現象のメカニズムを解明するとともに、その現象に対する臨床心理学的介入や支援について研究する。ここでは、研究仮説の妥当性や研究対象として選択した現象の妥当性、その解明に必要な方法論について十分な検討を行う。次に実際に調査研究、実験研究、実践研究などを行い、必要なデータを収集する。


臨床心理学研究Ⅱ
<各研究指導教員>

臨床心理学研究Ⅱでは、臨床心理学研究Ⅰで行った調査研究や実験研究、実践研究などで得られたデータの分析を通して研究結果を考察する。結果は、目的と仮説を適切に反映するように論理的に展開する。考察では、従来の知見との整合性や新たな知見などに基づいて仮説の妥当性について検討する。さらに、従来の研究とは異なる知見や新たに発見された知見に基づいて、新たな理論的枠組みの創造や介入方法の可能性について検討する。


人格心理学研究
<田中 志帆>

本講義では、臨床現場における人格理解、アセスメント技量の向上を目的とする。特に、複数のテストバッテリーから得られた心理検査の結果を総合して、その人となりを拾い上げていく力を高めることに重点を置く。講義では、①精神分析理論をベースにした人格理解、アセスメントを行うことができるような知識の習得を目指す。②分離体験をする幼児観察のVTRから、対象関係論的視点で、人格の成り立ちや子どもの心の変容を理解する。③心理検査からその人となりを理解する。検査は投影法、インベントリー式人格検査(特にMMPI)、知能検査・記憶力検査も含める。④著名人のパトグラフィー(病跡学)を試みる。


教育心理学研究
<谷島 弘仁>

教育心理学の研究対象は焦点の当て方により認知的側面、情緒的側面、社会的側面の3側面に大きく分類することができる。この授業では情緒的側面に焦点を絞ってく講義と演習を行う。具体的には児童や生徒の学習への動機づけについて詳細に検討していく。とくに、児童や生徒が動機づけを失う原因について内外の研究を参照しつつ検討し、動機づけを取り戻すために効果的な働きかけについて考察する。児童・生徒の動機づけだけではなく、保護者や教師がどのように対応すれば効果的なのかについても考察し、学校臨床への方向づけも併せて目標とする。


異常心理学研究
<高尾 浩幸>

心理臨床現場において重要な異常心理について、実践的検討を検討を加える。具体的な事例を取り上げ、発達論的、家族論的、生理論的、疾病論的、人格論的、力動論的、社会論的、文化論的な観点から、多角的に考察を加えることで、臨床的な見立てる能力の向上を目指す。


心理療法研究Ⅰ(遊戯療法)

2023年度非開講


心理療法研究Ⅱ(箱庭療法)
<高尾 浩幸>

箱庭療法は、相談所や医療機関などで、おもに子どもの心理療法として効果的であるため、広く用いられている。体験学習を通して、論理・技法を習得し、臨床場面で活用できるようにする。さらに実践的事例にあたり、批判的討論によって高度の読み取りと解釈法を考察してゆきたい。


心理療法研究Ⅲ(認知行動療法)
<岡田 斉>

この授業は認知行動療法の基礎的メカニズムの理解と実践力を高めることをねらいとする。受講者の興味関心に応じて最新の論文を選び、輪読するスタイルで進める予定である。最新の論文は英語であることが多いので、英語で論文をある程度読解できることを前提とする。


心理療法研究Ⅳ(統合的心理療法)

2023年度非開講


心理療法研究Ⅴ(スーパーヴィジョン技法)
<布柴 靖枝>

公認心理師・臨床心理士の訓練に欠かせないスーパーヴィジョンについて、理論的かつ実践的に習得する。①スーパーヴィジョンに関する理論・モデル、スーパーヴァイザーとスーパーヴァイジーの関係、スーパーヴァイザーの適格性、スーパーヴァイジーの発達段階、スーパーヴィジョンの課題・方法・倫理等について学習する:②上記の知見を活かして、スーパーヴィジョンロールプレーを行い、実践的に学ぶ。


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