学部長からのメッセージ
見えない世界を越えて

新入生のみなさん。ご入学おめでとうございます。私たちは、日本国内はもとより、遠い世界の各地からこの国際学部で学ぶために集まっていただいたみなさんを心から歓迎いたします。

自分を知り、自分の可能性を見つける旅が今始まりました。いいえ、この旅は既に始まっているわけですが、これからの4年間、あるいは編入生のみなさんにとっては2年間が決定的であると言いたいのです。「自分自身を知れ(Know Thyself)」という古くからの言葉がありますが、自分を知ることほど意味のある仕事は他になく、またこれほど困難な仕事も他にないと言っていいでしょう。人は自分をよく知ることによって幸せになることができます。

自分を知るために、他人という鏡を必要としています。自分の可能性をみつけてくれる人との出会いを大切にしたいものです。さらにもうひとつ。国際学部で学ぶみなさんには世界という大切な鏡があります。世界を通して自分を知り、そして成長すること。これは国際学部に集う私たちに共通の目標、夢に他なりません。

2002年9月11日の「同時テロ事件」を契機にアフガニスタンでは戦争が始まっています。米国と英国の七千人もの海兵隊員がいまアフガニスタンにいますが、その動向はほとんどわれわれのところに伝わってきません。超大国がアメリカ一国となることによって、戦争についての情報も完全にアメリカ一国の都合で制御される時代に入ってしまいました。戦争の実体はもちろん、その背景も含めて非常に見えにくくなっています。

しかし、ひとつだけ確実に言えることがあります。世界各地で起きている紛争の結果、多くの人々が生活の場から追い立てられて、きわめて不自由な生活を強いられているということです。アフガニスタンだけでも三七〇万人の難民が発生しています(2001年9月10日現在、UNHCR、国連難民高等弁務官事務所による)。紛争そのもの、そして紛争の被害にあっている人たちへの関心を持ち続けたいものです。

見えない世界で生きていくためには、自分の目と耳、そして足に頼るしかありません。「情報は足で稼(かせ)げ」とはよく言ったものです。まず動いてみることです。就職活動でも良い結果を出した先輩たちは靴底の減り方がちがいます。ここにUNHCRからの感謝状があります。みなさんの先輩たちの『チーム・ワン』というグループが昨年行ったアフガン難民の支援カンパに対して贈られたものです。この活動に参加した先輩たちは自分で動いてみることによって他では得られない多くのことを学んだに違いありません。私たちは彼らを誇りにおもいます。

ここで、外国から学びに来られた留学生のみなさんを紹介しなければなりません。言葉の問題や経済・生活の問題など、多くの困難を克服して留学生のみなさんはこの国際学部にやってきました。日本人の学生のみなさんは是非気軽に声をかけて友達になり、必要な応援もしていただくようお願いいたします。この日本には悪い点もありますが、留学生のみなさんは、この国の良いところを是非学んでください。

最後に、私たちを利用するときのやり方について一言しておかなければなりません。大学の先生は高校までの先生と違って先生からみなさんに声をかけるのは苦手なのです。逆に大学の先生はいつでもみなさんから声がかかるのを待っているのです。一目見たときは堅苦しそうな先生でも、必ず笑顔で大歓迎してくれることでしょう。

良い出会いがたくさん待っていることをお祈りしています。大学生活を大いに楽しんでください。

2002年4月

国際学部長 若林一平
ippei@shonan.bunkyo.ac.jp

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2002
文教大学国際学部