文教大学国際学部


208年11月21日(金曜日)2時限 1101教室
Indonesia Today and its Relations with Japan - Charting a New Path after 50 years of Excellent Relations
DR. JUSUF ANWAR, Ambassador of the Republic of Indonesia to Japan
特別講演
今日のインドネシアそして日本との関係−50年間のきわめて良好な関係に続く新しい道筋を展望する
駐日インドネシア共和国大使 ユースフ・アンワール博士



学生たちに語りかけるアンワール博士
[Editor's note]
Dr. Jusuf Anwar, Ambassador of the Republic of Indonesia to Japan, made a historic lecture to the young students of Bunkyo University on November 21, 2008. He says everything on a frankly-speaking basis without any kind of bias, which helps us to understand the real meaning of history and the truth about 1997 financial crisis, then think about the future of Indonesia-Japan relation.
Dr. Anwar is very proud that Indonesia is both a natural resource rich country and the third largest democracy in the world. Lastly he focuses on people to people contact especially among young generation.
Dr. Anwar shows "Mind Without Fear," which is the very point of today's lecture.

【編集者より:今年2008年は日本とインドネシアが国交を樹立して50周年にあたります。アンワール大使がインドネシアを代表して、同国の歴史・社会・文化・経済・政治そして日本との関係について、過去・現在・未来にわたって語ってくれました。
アンワール博士の率直な語りかけは、ほんとうの歴史を理解し、金融危機の本質を知り、次いで日本とインドネシアの将来関係について考えることを助けてくれます。
アンワール博士はインドネシアが資源大国であるばかりでなく世界第3位の人口規模の民主主義国であることをたいへん誇りとしています。最後に博士は特に若い人同士の人としての接触の重要性を強調しました。
アンワール博士はこの日まさしく「恐れのない心」(タゴールの詩)を示してくれた。これこそ博士の講義の最重要点であった。
この日の特別講演は、文教大学国際学部・中村緋紗子教授ならびに同教授の夫君である千葉大学・中村光男名誉教授のご尽力により実現した。当日の司会進行は文教大学大学院国際協力学研究科長・中村恭一教授がつとめた。 】

【大使の横顔】

アンワール大使は1941年、西部ジャワ州タシクマラ市の生まれ、スンダ人。
米国ヴァンダービルト大学経済学修士、パジャジャラン大学法学博士。
インドネシア政府財務省資本市場管理庁長官、財務省総務局長、ダナレクサ・ウタマ理事長、財務省財務教育研修所長など財務省の要職、アジア開発銀行専務理事を歴任、前財務大臣、2006年10月より現職。

【講演概要】
演題:今日のインドネシアそして日本との関係−50年間のきわめて良好な関係に続く新しい道筋を展望する

●インドネシアは世界第4位の人口(二億三千万人)を擁し、17,000もの島嶼からなる最大の群島国家である。総面積は日本の五倍を超える。

インドネシアはマラッカ海峡という地政学的な要衝を持ち、天然資源に恵まれた東南アジア最大の経済大国である。
地熱資源は世界最大、パーム油(やし油)生産は世界一、ココアは世界3位、錫は世界2位、銅は世界4位、ニッケルは世界5位、金は世界7位、石炭は世界8位。
東南アジア最大の経済大国、4,330億ドル(日本は4兆4,000億ドル、2007年現在)

●インドネシアの建国理念は宗教・人種・言語・文化・民族の多様性の統一である。

1945年独立のときの憲法前文より
「独立は誰にも奪うことのできないあらゆる民族のかけがえのない権利であるがゆえに、すべての植民地主義は、人道と正義とは相容れないものとして、この地上に決してあってはならないものである・・・」
インドネシアの国是パンチャシラ(PANCASILA)は次の5原則。
1 神への信仰
2 人道主義
3 統一
4 民主主義
5 社会正義

●メディアは暗いイメージを誇張し明るいイメージを封印することが多い

前向きに行動するインドネシア:自立途上の民主主義は国際社会からの応援を必要としている【民主主義は育てて獲得すべきもの】
安全問題は世界全体で取り組むべき課題である。平和と安全に対する脅威はどこででも発生する可能性をもっている。(ニューヨーク、バリ、マドリッド、ロンドン、等)【インドネシアを特別視すべきではない】
自然災害、貧困、環境悪化などは集団で取り組むべき地球規模の課題である【インドネシア国内に限定された課題ではない】

●歴史の要約

300年:オランダの植民地支配が続いた年数
3年:日本が占領していた年数(1942-1945)
1945年8月17日:インドネシアの独立記念日
1949年12月になってオランダはついにインドネシアの独立を承認した。
(オランダはこの間インドネシアの奪回を目指していた)

スカルノ大統領の時代(1945-1967)
−インドネシアの国と政治の建設時代
−1995年のバンドン会議でインドネシアは非同盟運動の創設者の役割

スハルト大統領の時代(1967-1998)
−経済発展の時代であり、それは安定・成長・公正に基礎をおいた
−1990年代にはインドネシアはアジアの経済の奇跡のひとつと言われた

●金融危機というツナミ(大災害)

通貨危機はタイのバーツ下落に始まり、ドミノ効果は東南アジアに波及(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイそして韓国)。
インドネシア通貨は暴落し経済は苦難の時代へ。
インドネシアは国際通貨基金(IMF)に支援を要請。しかし IMF は危機の本質とその深さを読み違えた。

●金融危機の代償

子どもたちが学校に来なくなり、失業者は増え、貧困は拡大した。
1998年の暴動と学生たちの抗議行動。
1997年金融危機→経済危機
→政治危機に発展→1998年、スハルト大統領辞任し、32年間の政権が終わる。
新秩序の時代の幕が下りて民主主義への移行が始まる。

●金融危機後のインドネシアの指導者たち

ハビビ大統領:1998年5月〜1999年10月(説明責任の演説を拒否される)
アブドゥルラフマン・ワヒド大統領:1999年10月〜2001年7月(人民の諮問議会の告発を受ける)
メガワティ大統領:2001年7月〜2004年10月
スシロ・バンバン・ユドヨノ大統領:2004年10月就任(初の直接選挙による大統領)

●新しい顔のインドネシア

民主主義国中世界第3位の人口を持つ
穏健なモスレム(=イスラム教徒)の声を代表する最大人口のモスレム国、しかもイスラム国家ではない
人権を尊重する国である
法の支配を固く守り、善意を基礎とする統治をすすめる(公私ともに)

●インドネシア−日本関係

50年に及ぶきわめて良好な関係は平和と繁栄の未来への「黄金の架け橋」となっている
1958年、インドネシア−日本外交関係樹立
1967年、インドネシアの外資法成立し、日本からの投資の流れがインドネシアに向かう、以来日本はインドネシアの経済発展において重要な役割を果たしてきた
1977年、福田ドクトリン:相互信頼と信託に基づく日本−東南アジアの親密関係構築
2006年、平和と繁栄の未来をめざしてインドネシア大統領と日本首相とが戦略的パートナーシップ構築に調印
2008年7月1日、インドネシア−日本経済連携協定発効。

●相互に益するインドネシア−日本の関係

インドネシアにとっての日本:主たる貿易相手、主要な外資源(1967-2007:409億米ドル、最大の ODA供与国)
日本にとってのインドネシア:日本のエネルギー安全保障のための主要なエネルギー供給元−日本への最大の液化天然ガス(LNG)供給元、石炭は第2位の供給元、日本の製造業への天然資源の重要な供給元(銅・ニッケルなど)、日本へのエネルギー供給安全を確保するためのマラッカ海峡の重要性

●社会−文化関係

517,000人の日本人観光客がインドネシアを訪問(2007年)
35,000人のインドネシアの青年たちが日本におけるインターンシッププログラムに参加(1992-2007年)
1,946人のインドネシア人が日本への留学生として登録(2008年7月現在)
姉妹都市ないし県が6組:ジャカルタ−東京・ジョグジャカルタ−京都・スラバヤ−高知・メダン−市川・東ジャワ−大阪府・パプア−山形県
インドネシア−日本友好協会が日本各地で活動中、広島・九州・沖縄・市川

●国土交通省の最新調査より(2008年7月)

回答者は過去3年間に海外旅行をした3,000人
インドネシアは観光客満足度で第1位(フランスやハワイなど14目的地より上位)
理由:飛行時間が短い、低価格、広範囲のエステティックサービスがある

●ソフト外交の事例

スマトラタイガー、オランウータン、コモドオオトカゲ(上野・札幌円山・群馬等の動物園へ)

●共通の価値に基づく関係

インドネシアと日本が共有する価値:自由・民主主義・人権・法の支配・繁栄
日本はアジア最古の民主主義国、インドネシアは民主主義国として世界第3位の人口を持つ
麻生太郎首相のもとでの日本の外交政策:麻生首相は2008年9月25日ニューヨークの国連総会で演説
「わたしは共通の価値を持つ国々と団結して働く決意です・・・」
麻生太郎首相の2008年9月29日の国会演説でも、日本の外交原則に言及した
「われわれが信じる本質的価値が確実に若い民主主義国に根付くよう努力を惜しまない」

●現在と未来の関係:前に続く道

同時に進行すべき路線の確認
地球規模の挑戦に立ち向かう:気候変化・エネルギー確保・食料確保
地域協力の陣形を作る:ASEAN、ASEAN プラス3、東アジアサミット、APEC、ASEM
2国間関係を育て強化していく
インドネシア−日本関係は堅固な基礎をもっている: 過去50年の極めて良好な関係
価値の共有(自由・民主主義)
相互補完的で互いを益する対等なパートナーシップ
経済関係を育てていく基礎としてのインドネシア−日本経済連携協定(EPA)
さらに統合された東アジアに向けての環境づくり

●さらに前へ続く道

2国間関係はきわめて良好だがここで満足する理由はない、さらなる進展の可能性を追求すべきである
人と人との接触、特に若い人びとの間において
教育分野での協力
環境問題への取り組み、インドネシアの自然資源と森林を日本の先端技術と結合する課題
日本の少子高齢化の影響への対応、インドネシアは看護士と介護士を日本へ派遣した最初の国である

(インドネシア語で)Terima kasih【トゥリマカスィ】
ドウモアリガトウゴザイマシタ

インドネシア共和国大使館
〒141-0022 東京都品川区東五反田 5-2-9
電話 03-3441-4201 ファックス 03-3447-1697


講演終了後、廊下で学生(左)の質問に耳を傾けるアンワール博士
【学生からの質問】
会場の学生たちからは質問が引きも切らず続いた。

リーマンショックについて

日本社会のいいところはどこか

インドネシアの安全をPRすべきでは

日本のODAの減少への働きかけは

これらの質問にアンワール博士はひとつひとつ丁寧に答えた。時間は既に予定を超過していたが、さらに教室の外の廊下での学生の問いにも真剣に耳を傾けていた。