文教大学付属教育研究所 紀要第10号(2001年発行)

インターネットを利用して看護職研修を実施する
可能性に関する研究

武田 美津代
(文教大学付属教育研究所客員研究員/埼玉県立大学短期大学部)


要 旨

本研究の目的は、看護職の専門知識を高めるための新しい研修体制として、インターネットを利用する意義と可能性を追求することである。掲示板とメーリングリストの活用では、特定の参加者が意見を述べている状況だった。看護関係者の調査では、看護におけるインターネットの利用に期待や関心が高かった。研修体制や内容などの課題はあるが、看護研修としてインターネットの利用は不可能とはいえず、意味のあることである。

1 はじめに
看護職が専門職である以上、専門的知見を更新するための就職後の研修は不可欠である。しかし、就職後の研修参加を考えると、すべての研修希望者が研修に参加することは保証されていないという問題がある。
施設に勤務する看護職の多くは交替制の勤務体制の中で就業しているため、研修開催日が勤務日と重なると研修参加を断念しなくてはならないこともある。勤務調整が可能であっても、継続した研修では毎回の調整が可能という保証はない。また、研修参加を施設が保証する場合もあるが、研修参加対象者が選別されるなどして、希望しても研修に参加できないこともある。さらに、一時的に現職から離れている場合には、研修に関連した情報が入手しにくいという問題もある。
このような問題を解決するためには、従来の「集合型研修」に代わる新しい研修の在り方が工夫されなければならない。それには、時間・空間の制約を排除したインターネットの利用を想起することは妥当なことである。すでに大学教育のインターネット利用は現実のものとなり始めている。そこで、本研究では看護職の研修にインターネットを利用する意義と可能性を追求することとした。

2 研究方法

1) インターネットの双方向性を検討する
世界規模の検索サイトであるYahoo!JAPANから、双方向に利用できると思われる「掲示板」と「メーリングリスト」の利用状況を調査した。
(1)看護に関連した掲示板の活用状況を把握する
「健康と医学」の中の「看護」の掲示板を用い、投稿されるトピックの分類やトピックに対する反応、話題の継続性、掲示板の利用者などについて分析した。
調査期間は1999年5月1日から1999年8月31日である。
(2) 看護職を対象としたメーリングリストの活用状況を把握する
「健康と医学」−「健康全般」から、看護職対象のメーリングリストを検索し、実際にメンバー登録しながら活用状況を把握した。掲示板と同様に、投稿される内容の分類や話題に対する反応、反応が示されるまでに要する時間、利用される時間帯、話題の継続性などから分析した。
調査期間は1999年8月9日から1999年12月28日と、2000年3月30日から2000年6月28日の2回に分けた。
2) 看護に携わる者のインターネット利用に関する調査から、インターネットを利用する看護の研修の可能性を検討する
調査用紙配布時には研究目的や倫理的配慮、任意の調査に関して説明を行い、理解・協力が得られたものを回収、集計した。
(1) S県立大学短期大学部看護学科の看護学生449名を対象に、パソコン利用状況およびインターネットを利用することに関する意識を調査し、研修としての方向性を検討する。   調査項目を電子メールで送信および回収した。調査期間は調査内容送信から結果回収までの期間であり、1999年11月17日から1999年11月30日と、2000年4月17日から2000年5月2日とした。(調査内容は結果参照)
(2) 看護学生対象の調査で、メーリングリスト設立時に協力する意思を示した学生と、現在すでに看護に関係する資格を持っている者を中心にしたメーリングリストを設立し、双方向的な活用を実践しながら検討する。メーリングリストの運営は2000年4月15日から2000年10月15日である。
(3) 看護に関わる有資格者を対象に、パソコンの利用状況およびインターネットを利用することに関する意識を調査し、研修としての方向性を検討する。対象者はS県看護教員養成講習会受講者44名と、東京都内で開催された研修会の研修生73名の計117名である。調査期間は、S県看護教員養成講習会受講者は2000年7月10日から2000年7月24日、東京都内で開催された研修会の研修生は2000年7月26日の研修日とした。調査用紙の回収は回収箱を用いた。(調査内容は結果参照)
(4) 都道府県看護協会の研修担当者を対象に、インターネットを利用した研修会開催に関する認識を把握し、研修としての方向性を検討する。(調査内容は結果参照)

3. 結 果
1) インターネットの双方向性
(1) 「掲示板」の活用状況
@ トピックの内容と特徴
調査期間中には330件のトピックがあげられ、その中で看護職に関係のあるトピックは198件であった。対象外の132件は、明らかに看護職以外の医療関係者に対する呼びかけ、他職種の資格取得に関するものであった。特に多かったのは介護に関する内容である。
看護に関連した内容は次のように分類した。
a. 情報を求めたり、質問したりしている内容は「情報収集・質問」とした。常識内でわかるような内容や、話題提供者の意図が伝わりにくいくい内容には反応はみられなかった。
b. 看護活動に関連した内容は「看護に関するもの」とした。分類では2番目に多く利用されていた。投稿に反応がなかったものは、排泄や看護記録、感染症対策や移植看護で、反応が多かった話題はガン告知や海外の看護、事故防止対策であった。
c. いわゆる雑談を「井戸端会議」とし、最も利用されていることが明らかとなった。個人的相談から愚痴などが含まれ、活発に利用されている。しかし、単に看護職の悩みや不満を聞く内容、話題提供者の意図することが不明確な話題には反応がみられなかった。
d. 看護学生や勤務場所を限定して特定の対象者に呼びかける話題は「仲間作り」とした。職場に特徴的な悩みや情報交換に利用したり、学習などに関して励ましあったりする中から、目的を持った意見交換の場と変化することもあった。
e. 看護職の資格取得に関連した内容を「資格・学習に関するもの」とした。看護学校受験に対して看護職から具体的なアドバイスが提示されることが多く、質問のやり取りがみられていた。看護職からキャリアアップのための進学に関する質問もあり、焦点が明らかな内容であれば具体的にやり取りされる傾向があった。
f. 職探しから仕事に対する自信などの内容を「仕事」とした。求人募集する施設の紹介はされないが、提示された条件に対する意見や情報は書き込まれた。自信喪失に関する話題では仕事継続の励ましが多く、看護に対する思いの強さが表現されていた。
g. ホスピス、医療事故、在宅医療に関する内容は「医療に関するもの」に分類した。これらは最近になって特に注目される内容でもあり、看護においても対応すべきもののため、活発に活用される傾向にあった。
A トピックに対する反応と話題の継続性
分類したトピックは5月、7月、8月は「井戸端会議」の内容が他の分類よりも投稿数が多く、4ヶ月間の平均利用件数は11.8件である。6月の投稿数と平均利用件数は「看護に関するもの」が9.3件、「資格・学習に関するもの」が8.8件である。
話題の持続性では、8月は実質31日間における持続日数のために他の月よりも日数が減少するのはやむを得ないが、5〜7月では14〜18日と持続日数平均値に差はなかった。実際にトピックに反応が示されていた日数をみると平均5〜10日で、話題の持続日数平均値と実際の利用日数平均値から2〜3日毎に活用されていた。
B 掲示板の利用者
プロフィールを記入できるようになっていても、実際に記入する利用者はほとんどなく、実際の看護職の参加ははっきりとしなかった。しかし、内容の中で看護職であることを判断できる場合も多かった。患者や家族など、無資格の人が看護職との意見交換を行いやすいのは「医療に関するもの」であった。
(2) 「Nメーリングリスト」の活用状況
@ 投稿される内容の特徴
全調査期間内に新規投稿されたものは345件あり、これには以前の話題に対する反応であっても題名が変更されたものもあった。業務上の疑問からプライベートな事柄まで、投稿された内容は多岐にわたっていた。
「自己紹介」、「情報提供」、「情報収集」、「看護に関するもの」、「井戸端会議」、「仕事」、「その他」、「重なり合うもの」の8つに分類できた。メーリングリストではメンバー登録をする必要から、「自己紹介」の中で自らの所属を明らかにしており、看護に携わっていることがうかがえた。メンバーが看護職であるために、それぞれの内容はプライバシーを守りながらも具体的なことが多い。また、自分の経験をふまえての内容がやり取りされる傾向にあった。「情報提供」は一方的な話題提供であるが、知見を広げ、実用的な看護情報として看護実践に役立つ内容が多かった。
文字上のやり取りの中では、読み手の気持ちや意見の違いから険悪な雰囲気になる状況もみられたが、メンバーの中から調整役となって話題の修正を行い、問題解決する場面もあった。1つの話題に実際に参加した人数は10人前後で、どの話題にも意見を述べる人は限定される傾向があった。
A メーリングリストの利用される時間帯および反応が示されるまでに要する時間
話題提供や反応が返されるには、24時間にわたって利用されていた。1日の中で利用が多くなるのは19時台〜0時台、10時〜12時台にピークがみられ、W型を呈していた。話題提供があってから最初に反応が返されるまでに要した時間は、最も早いものが10分後、最も遅いものが約46時間もかかった。
B 話題の継続性
話題提供された日だけに活用されているものが最も多く176件で、日数が経過するにつれ、持続する話題は減少した。最高30日間持続した話題もあった。話題への参加人数と持続日数をみると、1日で終わるものは1人しか参加していない話題が多いが、2〜8名で意見交換している内容もあった。持続日数が長くなる話題では参加人数が2〜5名あるいは10名以上と、参加者も増加していた。

2) 看護に携わる者のパソコン利用状況よびインターネット利用に関する意識
(1) 看護学生に対する調査内容および結果

1. E-mailに対して、興味がありますか、ありませんか。;あり−65名(97.0%)
2. 学内のメールを使っていますか、使っていませんか。;いる−54名(80.6%)、いない−10名(14.9%)
3. 自宅にコンピュータがありますか。;はい−34名(50.7%)、いいえ−30名(44.8%)
4. 自宅ではインターネットやメールを使っていますか。「いいえ」の方は8番の質問からお答え下さい。;はい−23名(34.3%)、いいえ−29名(43.3%)
5. 4番で「はい」と答えた方にお聞きします。インターネットを利用して、看護や学習に関する情報を得たことがありますか。;はい−18名(26.9%)、いいえ−4名(6.0%)
6. 5番で「いいえ」と答えた方にお聞きします。今後インターネットを利用して、看護や学習に関する情報を得たいと思いますか、思いませんか。;はい−4名(100%)、
7. 6番で「いいえ」と答えた方にお聞きします。インターネットからは看護や学習に関する情報を得たくないと思う理由を教えてください。;解答なし
8. あなたはホームページについて知っていますか、知りませんか。;いる−61名(91.0%)、いない−4名(6.0%)
9. あなたはメーリングリスト(ML)について知っていますか、知りませんか。;いる−18名(26.9%)、いない−47名(70.1%)
10. あなたはチャットについて知っていますか、知りませんか。;いる−49名(73.1%)、  いない−15名(22.4%)
11. 今後、看護においてインターネットの利用は広がっていくと思いますか、思いませんか。;はい−63名(94.0%)、いいえ−2名(3.0%)
12. 看護においてインターネットの利用が広がるとしたら、それは意味があると思いますか、思いませんか。;はい−59名(88.1%)、いいえ−4名(6.0%)
13. 12番で「はい」と答えた方にお聞きします。どのような利用価値があるか、または利用方法が考えられると思いますか。
* リアルタイムで最新の情報を得られる
* 場所を選ばず情報交換ができる
* 他の施設との連携がしやすくなる
* 看護職同士、職種間の交流や連携
* 自分の体験を話すことで、その後の看護の参考になっていくような利用ならば価値がある
* 勤務中の時間帯の中で研修に参加することが容易になる
* 研修会やフォーラムなども、出張することなくインターネット上でできる
* 症例にあったケアのアプローチに困ったときに検索して情報が得られるとうれしい。
* 最後に、看護に関するメーリングリストを立ち上げた場合、メンバーになることに対してご協力頂ける方あるいは興味・関心があるという方は、お名前をお書きください。
「協力の意思あり」−21名(31.3%)

(2)看護学生を中心に開設したメーリングリストの活用状況
開設したメーリングリストのメンバーは、看護学生6名と看護に関する有資格者9名、合計15名である。運営期間内の投稿数は18件であり、管理者からの利用の呼びかけが3件、話題提供が7件、話題に対する反応が8件であった。話題では自己紹介を含め、看護内容に対して意見を求めるものであったが、看護学生からは話題提供も反応もされなかった。また、2000年7月28日以降は全く投稿されなかった。

(3)看護に関わる有資格者に対する調査内容および結果

年齢;(27〜62)歳、平均年齢40.79±7.08歳
性別;男性−4名(3.4%)、女性−113名(96.6%)
取得資格(複数回答可);看護婦−109名(93.2%)、保健婦−3名(2.6%、助産婦−10名(8.5%)、その他(鍼灸師、介護福祉士、介護支援専門員、臨床工学士)−6名(5.1%)
臨床経験;平均17.05±7.15年
1. 自宅にコンピューターがありますか。;はい−96名(82.1%)、いいえ−20名(17.1%)
2. 自宅でコンピューターを利用していますか。;はい−84名(73.7%)、いいえ−12名(10.5%)
3. どのようなことにコンピューターを利用していますか。(複数回答可);文章作成−81名(96.4%)、統計処理−25名(29.8%)、電子メール−44名(52.4%)、インターネット−49名(58.3%)、その他(ゲーム、ハガキ作成、家計簿)−7名(8.3%)
4. 職場にコンピューターがありますか。;はい−106名(90.6%)、いいえ−11名(9.4%)
5. 職場でコンピューターを利用していますか。;はい−83名(73.5%)いいえ−22名(19.5%)
6. どのようなことにコンピューターを利用していますか。(複数回答可);文章作成−63名(75.6%)、統計処理−41名(49.4%)、電子メール−17名(20.5%)、インターネット−21名(25.3%)、その他(勤務表作成、スライド作成、看護計画)−24名(28.9%)
7. あなたがはじめてコンピューターを利用したのはいつ頃ですか。;20年前〜2ヶ月前(平均3.77±3.65年前)
8. メールに興味がありますか、ありませんか。;あり−104名(88.9%)、なし−13名(11.1%)
9. メールを利用したことがありますか、ありませんか。;あり−62名(53.0%)、なし−55名(47.0%)
10. 自宅ではインターネットやメールを使っていますか、いませんか。「使っていない」方は12番の質問へお進みください。;使っている−59名(53.6%)、使っていない−51名(46.4%)
11. 10番で「使っている」と答えた方にお聞きします。
1) いつ頃から使っていますか。;7年前〜1ヶ月前(平均1.49±1.56年前)
2) インターネットを利用して、看護や学習に関する情報を得たことがありますか、ありませんか。;あり−46名(78.0%)、なし−13名(22.0%)
12. 10番で「使っていない」と答えた方にお聞きします。今後インターネットを利用して、自宅で看護や学習に関する情報を得たいと思いますか、思いませんか。;思う−48名(94.1%)、思わない−3名(5.9%)
13. 12番で「思わない」と答えた方にお聞きします。インターネットからは看護や学習に関する情報を得たくないと思う理由をお答え下さい。
* 職場で情報を得るだけで十分
* インターネットを使わなくても情報は手に入る
* インターネットを利用して看護に役立てたいと思うが、現時点では時間がないので考えない
* 家庭に仕事を持ち込みたくない。仕事と家庭を両立させるためにも切り替えが必要
14.職場ではインターネットやメールを使っていますか、いませんか。「使っていない」方は16番の質問へお進みください。;使っている−40名(35.1%)、使っていない−74名(63.2%)
15. 14番で「使っている」と答えた方にお聞きします。
1) いつ頃から使っていますか。;5年前〜2ヶ月前(平均1.59±1.36年前)
2) インターネットを利用して、看護や学習に関する情報を得たことがありますか、ありませんか。;はい−32名(80.0%)、いいえ−8名(20.0%)
16. 14番で「使っていない」と答えた方にお聞きします。今後インターネットを利用して、職場で看護や学習に関する情報を得たいと思いますか、思いませんか。;思う−72名(98.6%)、思わない−1名(1.4%)
17. 16番で「思わない」と答えた方にお聞きします。インターネットからは看護や学習に関する情報を得たくないと思う理由をお答え下さい。
* 他に方法がある
18. あなたはホームページについて知っていますか、知りませんか。「知らない」方は20番の質問へお進みください。;知っている−104名(88.9%)、知らない−11名(9.4%)
19. あなたは看護に関するホームページを検索したことがありますか、ありませんか。;あり−50名(42.7%)、なし−55名(47.0%)
20. あなたはメーリングリスト(ML)について知っていますか、知りませんか。;知っている−18名(15.4%)、知らない−99名(84.6%)
21. あなたは看護に関するメーリングリスト(ML)に加入したことがありますか、ありませんか。「なし」の方は24番の質問へお進みください。;あり−4名(3.4%)、なし−109名(93.2%)
22. 21番で「あり」と答えた方にお聞きします。そのメーリングリストに発信したことがありますか、ありませんか。;あり−2名(50.0%)、なし−2名(50.0%)
23. 22番で「あり」と答えた方にお聞きします。何回くらい発信しましたか。;ほとんど発信しない−1名(25.0%)、関心のあるメールには必ず−1名(25.0%)、メールがくるたび(頻回に)、その他―0名
24. あなたはチャットについて知っていますか、知りませんか。「知らない」方は27番の質問へお進みください。;知っている−41名(35.0%)、知らない−75名(64.1%)
25. 24番で「知っている」と答えた方にお聞きします。チャットを利用したことがありますか、ありませんか。;あり−8名(6.8%)、なし−33名(28.2%)
26. 25番で「あり」と答えた方にお聞きします。チャットの利用状況はどのくらいですか。;ほとんど毎日−なし、週に2〜3回程度−1名(12.5%)、週に1回程度−2名(25.0%)、月に1回程度−2名(25.0%)、その他(以前は利用したことがある、インターネットをつないだ時の確認)−3名(37.5%)
27. 今後、看護においてインターネットの利用は広がっていくと思いますか、思いませんか。;思う−114名(97.4%)、思わない−2名(1.7%)
28. 看護においてインターネットの利用が広がるとしたら、それは意味があると思いますか、思いませんか。「思わない」方は30番の質問へお進みください。;思う−111名(94.9%)、思わない−1名(0.9%)
29. 28番で「思う」と答えた方にお聞きします。どのような利用価値があるか、またはどのような利用方法が考えられるかお答え下さい。
* 広く情報収集をするのに役立つ
* 研修会や学会、公開講座などの情報を得る
* 文献学習・論文について直接的にメールで意見交換できる
* 他県施設の情報交換をして、より良いものを取り入れていける
* 看護者の視野を広げることに役立つ
* 広く看護の知識が皆に伝わる
* 自分の好きな時間に学習ができる(時間の制約がない)
* 学会等の発表に出かけなくてすむ
* コンピュータ時代なので必然的
30. 28番で「思わない」と答えた方にお聞きします。看護においてインターネットの利用の広がりに意味がないと思う理由をお答え下さい。;解答なし

(4) 都道府県看護協会のインターネットを利用した研修会開催に関する認識

協会名; (   )都 道 府 県  
看護協会=32施設の看護協会が解答
記入者(氏  名);   (担当業務);
(年  令);(   )歳
今後、インターネット、電子メールを用いた看護研修の予定がありますか。1〜4のいずれか当てはまるものに○をつけ、状況をお書きください。

* 現在、活用している=5施設(15.6%)
《活用内容および効果、課題についてお書きください。》
<活用内容・効果>
* 「情報管理」の研修
* 看護管理者対象の研修においてインタンネットの活用方法
* 文献検索や文書作成などの初歩技術の演習など
* 実際にパソコンを使って体験することで理解しやすく、参加者には好評
<課題>
* 器材が十分ではないため施設見学を実施している
* テレビ会議システムでつないで情報管理研修会をしたが、会場によってペースが違うことや理解度が対面式より低下する
* 活用する予定がある=4施設(12.5%)
《予定の内容をお書きください。》
* インターネットの活用や電子カルテに関する研修
* 文献検索を始めとして活用範囲を広げたい
* 設備が整っているので、講師の要望があればインターネットを活用した研修も可能
* 活用の予定なし、関心なし=5施設(15.6%)
《関心のない理由をお書きください。》
* 各人の技術面や設備面の問題をあげ、現段階では難しい
* インターネットや電子メールは思っているほど普及していない
* 一般化するには時間が必要
* 講師の人間性に触れた研修を考えている
* 参加者同士のグループダイナミックスによる成果を期待している
* 活用の予定はないが、関心あり=18施設(56.3%)
《どのような内容、効果を期待しているかお書きください。》
<活用内容>
* 他では得られない著名人の講演や特別講義
* 同じテーマの研究成果の発表と意見交換
* トピック研修、看護研修を基礎編から段階別に行うなどの継続教育など
* 検討中、他施設で実施している内容を参考に検討したい
<期待する効果>
* インターネットを活用することにより学習の場や機会が拡大するなどの効果が期待できる
* 期間や交通の利便性に関係なく研修できるので参加率が増加することを期待し
ている

4. 考察
(1) インターネットの双方向的な利用の方 向性
掲示板は利用者が限定されないため、看護職の専門性を高めようとする話題に活用することは難しいと考えられる。メーリングリストは目的を同じくする者の集まりであるため、利用者を限定することも可能であり、話題も選定して展開することが可能であると思われる。看護職研修として利用する場合には、参加者の身分を看護職に限定することが必要であり、メーリングリストのような目的をもった集団がふさわしいと考える。
意見を述べやすい話題や興味・関心が高い話題には反応が返されている。中には1対1で数回の意見交換をして終わったり、話題に複数の参加者がいても1回ずつ意見を述べて終わったりしては、双方向的な利用とはいえない。これらから、提供される内容を検討すれば意見交換の場として活用できる可能性があると考えられる。話題の参加者が繰り返して意見交換ができれば、その中から興味を引き出すことや自分の看護に反映できるものが得られるようになるのではないか。
(2) 看護職のインターネット利用の可能性
看護学生の調査結果から、インターネットや電子メールに関心が高いことが明らかとなり、看護職となってからの実際の利用も期待できる。インターネットを自宅で利用できる環境の整備は必要であるが、パソコンの普及状況をふまえると対応可能であると思われる。現在のインターネットへの興味や関心を損なわない配慮をしながら、活用できる能力をつけるような指導をすることが重要であると考える。
職場や自宅でのインターネット利用環境は整いつつあるが、比較的最近のことである。看護職の中にはインターネットを看護に利用することに反対の意見があるのは、パーソナルコンピュータの操作に対する不安も影響していると思われる。また、家庭での役割などから看護だけを優先できないことや、気分転換のために仕事とプライベートを区別したいと思うのも当然である。インターネットの利用を強制するわけではなく、積極的で関心の高い人にインターネットを活用した研修を提供することが重要ではないかと考える。
(3) インターネットを利用して看護職研修を実施する可能性
看護職研修としてインターネットを活用するためには、研修主催者の役割は大きい。主催者には専門性を保証するため、現在も多くの研修を実施している看護協会が適切だと考える。円滑で効果的に看護研修とするために、どのような役割を果たすべきか、具体的対応が検討される必要がある。研修である以上、受講者の主体的な研修参加が望まれ、情報収集に着目しやすい看護職の認識にも働きかけなければならないと考える。
現在、看護職のインターネット活用能力を高める必要もある状況の中で、看護職としてのステップアップにつながるような研修内容が重要といえる。また、研修参加者が看護職であることを認証できるようなシステム作りやインターネットで研修を終えた場合の認定など、インターネットのメリット・デメリットに対応しながら看護職研修としての方向性を検討しなければならない。現にインターネットを活用した看護協会もあることから、課題を解決しながら、看護職研修につなげられると考える。

5 おわりに
看護におけるインターネット利用の可能性を意識しながら研究を進めてきた。3つの調査結果からは、看護にインターネットを利用することに対して前向きな考えも多く示され、認識からはインターネットを利用した看護研修を行うことも不可能とはいえない。
看護職の調査は、全体からみると一部分の看護職の意見であり、更なる追求も必要である。また、実際に研修にインターネットを取り入れた看護協会の状況からは、双方向に利用するには満足した結果が得られておらず、参加者が同じように目的を達するまでには課題があることも示唆されている。また、研修主催者および参加者、研修方法などの課題も残されている。
以上のように検討課題は多い状況ではあるが、多くの看護職に研修機会が与えられる可能性に結びつくインターネットを看護に取り入れることは意味があるといえ、今後も追及していきたい。

参考文献
* 会津泉、『進化するネットワーク』、NTT出版、
* 落合洋文、『情報化社会の虚像・実像 新しい社会をどう生きるか』、1997年、ナカニシヤ出版
* 竹内美恵子他、「神奈川県看護協会における情報システムの構築化にむけて」、1993年、日本医療情報学会看護情報システム研究会幹事会
* 谷口初美他、「インターネットからアクセスできる目で見る看護学習―これからの看護教育の試み―」、1999年、日本医療情報学会看護情報システム研究会幹事会
* 宮田加久子、『電子メディア社会 新しいコミュニケーション環境の社会心理』、1993年、誠信書房