『教育研究所紀要第8号』文教大学付属教育研究所1999年発行

公民館における学習情報提供・学習相談に関する一考察

宮地 孝宜

(文教大学付属教育研究所客員研究員・東京都台東区教育委員会)

要  旨

今日まで公民館は地域社会の社会教育施設として、わが国の教育に多大な貢献をしてきた。近年、地域住民の学習ニーズは多様化・高度化し、それらに対応すべく、公民館においても、これまで以上に学習情報提供や学習相談の充実が求められるようになった。本考察は、公民館にける学習情報提供・学習相談の実態分析から、公民館の抱える学習情報提供・学習相談に関する課題を探るものである。

T.問題の設定

各種調査結果を見るまでもなく、多くの人々が学び、また、学ぶ機会を求めている。
戦後,寺中構想にはじまった公民館も50年余の歴史を刻み、その間、公民館は、わが国の教育へ多大な貢献をしてきた。
周知のように、現在、公民館は、全国に約1万7千館設置され(この数は中学校数を大きく上回る)、地域住民の社会教育施設として、学習の機会や場所の提供、グループ・団体活動の支援など、活発な教育活動が行われている。
一方、地域住民の学習ニーズは多様化・高度化する傾向にある。学習のスタイル自体も、従来の講座を中心としたいわゆる「承り学習」から、学習者の主体的、相互的な参加型学習への転換がいわれている。
当然、この多様化・高度化した学習ニーズすべてに公民館が応えることはできない。民間(営利事業者も含め)の教育活動も活発化している今日、もはや公民館がすべてのニーズに応える(応えようとする)時代ではないと言えるだろう。
これからの公民館には、これまでにもまして、他の教育機関との連携による学習機会の提供や学習プログラムの開発、また、個々の学習者の自主的学習に対応すべく学習情報の提供や学習相談事業の展開が求められていくのではないだろうか。
以上のことから、本考察は、今後、公民館においてますます重要性が高まると思われる学習情報提供・学習相談に関して、その実態分析を中心にしながら、公民館における学習情報提供・学習相談の課題を探っていくこととする。

U.公民館における学習情報提供・学習相談の実態─全国の公民館への実態調査から

本章では、公民館における学習情報提供・学習相談の実態について、筆者がかかわった(社)全国公民館連合会『公民館における生涯学習情報提供および学習相談の実態に関する調査』の結果から考察することとする。なお、本調査は、公民館における学習情報提供・学習相談の実態を明らかにするものであるが、特に、学習情報提供の実態については、地域住民にとって、身近な情報源であると思われる公民館が独自に作成する広報紙(誌)いわゆる公民館報の内容に関する設問を中心に構成した。

1.調査の概要

@調査の目的
公民館活動のうち、生涯学習情報提供・学習相談の実態を把握する。
A調査対象
本調査の対象は、常勤もしくはそれに準ずる職員が配属されている全国の公民館(原則として1都道府県につき13館)とした。調査の対象となる公民館の選定・抽出は、各都道府県の公民館連合会(連絡協議会)に依頼した。(ただし、選定・抽出に当たって、地域規模など偏りのないよう配慮するよう求めた。)
B調査日
調査の基準日は、1997年11月1日とした。
C調査票の配布と回収
調査表は、各都道府県の公民館連合会(連絡協議会)を経由して、抽出された市町村の調査対象公民館へ返信用封筒を同封の上送付し、調査対象公民館から(社)全国公民館連合会へ直接郵送する方法を用いた。
全国の公民館612に調査票を配布したところ、512の回答が得られた。回収率は83.7%である。

2.調査結果と考察

(1)生涯学習情報提供について
@公民館が独自に作成、配布する広報紙(誌)について
生涯学習情報提供にあたり、独自に広報紙(誌)を作成している公民館は286館(56.0%)、作成していない公民館は225館(44.0%)となった。(表1)なお、独自には広報紙(誌)を作成しないが、当該市町村広報を利用して、学習情報提供を行っている公民館は多く、独自広報紙(誌)を作成していない公民館のうち、149館は市町村広報を利用していた。(したがって、本調査ではこれら市町村広報を利用した学習情報提供の内容などについては把握することができなかった。)

表1 公民館報の作成

作成している
作成していない
合計
286 (56.0)
225 (44.0)
511(100.0)

単位:館(%)

以下、独自に広報紙(誌)を作成している公民館について発行回数(刊期)、配布方法、編集方法、掲載している情報についてみていきたい。
まず、広報紙(誌)の発行回数についてみると、年12回(月1回)が106紙(誌)(37.7%)と最も多い結果となったが、年1回のみ発行する広報紙(誌)も40紙(誌)(14.2%)と多くみられた。(表2)
また、これら発行回数は、予算等の問題も関係してくると思われるが、広報紙(誌)の作成意図とも関連があるようである。後述する掲載内容と発行回数(年11回以下と年12回以上発行の2群に分類)とをクロス集計したところ、年12回以上発行される広報紙(誌)の方が、年11回以下発行される広報紙(誌)より、学習機会の情報や図書情報、地域情報など可変的な情報の掲載率が高く、逆に、年11回以下発行される広報紙(誌)の方は、施設案内など、固定的・不変的な情報の掲載率が高いという結果となった。

表2 発行回数

年1回
年2回
年3回
年4回
年5回
年6回
年8回
年12回
年13回以上
不定期・その他
その他
合計
40 (14.2)
23 ( 8.2)
16 ( 5.7)
51 (18.2)
2 ( 0.7)
15 ( 5.3)
6 ( 2.1)
106 (37.7)
3 ( 1.1)
17 ( 6.0)
2 ( 0.7)
281(100.0)

単位:館(%)

広報紙(誌)の配布方法については、『自治会などを通し、サービス地域内の全戸に配布する』が220紙(誌)(78.3%)、『新聞折り込み』11紙(誌)(3.9%)となった。(表3) 約8割の広報紙(誌)は、各世帯へ何らかの方法で配布されていることがわかる。広報紙(誌)が手元に届けられるということでいえば、地域住民にとって、身近な情報源の一つといえるであろう。

表3 配布方法 (M.A.)

新聞折り込み
自治会等から全戸配布
公民館に置いておく
公的機関に置いてもらう
自治会等の掲示板に掲示
児童・生徒経由で家庭へ
その他
合計
11 ( 3.9)
220 (78.3)
152 (54.1)
87 (31.0)
6 ( 2.1)
12 ( 4.3)
44 (15.7)
532(189.3)

N=281 単位:館(%)

広報紙(誌)に掲載している内容(情報)についてみると、学習機会情報に関することが271紙(誌)(96.4%)と、ほとんどの広報紙(誌)に掲載されていることがわかる。多くの広報紙(誌)は、学習機会情報を中心とした案内的情報を掲載した「地域の学習情報紙(誌)」としての役割を担っているといえるだろう。
また、グループやサークルの紹介や活動報告も207紙(誌)(73.7%)が掲載している。グループ活動の支援は社会教育の重要施策の一つであり、73.7%という結果は、公民館の取り組みを裏付けるものである。
しかし、大学(大学院)・専門学校などの入学案内や資格・資格試験などの案内の掲載は、それぞれ、1紙(誌)(0.4%)、8紙(誌)(2.8%)と低い値を示した。進路やキャリアに関しては、公民館は積極的に情報を提供していないといえるだろう。
(表4)

表4 掲載内容 (M.A.)

 学習機会情報
施設情報
入学案内情報等
図書館情報
資格関連情報
各種報告
人物紹介情報
グループ・サークル情報
地域に関する情報
人権・同和教育関連の情報
作品紹介
その他
合計
271 (96.4)
76 (27.0)
1 ( 0.4)
76 (27.0)
8 ( 2.8)
164 (58.4)
65 (23.1)
207 (73.7)
101 (35.9)
75 (26.7)
68 (24.2)
33 (11.7)
1145(407.5)

N=281 単位:館(%)

他機関の情報を掲載しているとしたのは、145紙(誌)(51.8%)であった。(表5)

表5 他機関の情報の掲載

掲載している
掲載していない
合計
145 (51.8)
135 (48.2)
280(100.0)

単位:館(%)

また、他機関の情報を掲載している広報紙(誌)が情報を掲載している他機関の内訳をみると、同市町村の他公民館75紙(誌)(51.7%)、教育委員会管轄事業・施設102紙(誌)(70.3%)、教育委員会以外の管轄事業・施設59紙(誌)(40.7%)と、同じ市町村の情報については多くの広報紙(誌)で取り上げているが、他市町村については、12紙(誌)(8.3%)と掲載している広報紙(誌)は少ない。その他、都道府県・国の情報は26紙(誌)(17.9%)。民間の情報の掲載は、15紙(誌)(10.3%)となっている。(表6)
民間の情報については,学習機会の情報など住民にとって有益な情報であれば、積極的に情報提供していくべきである。しかし、公の機関として、情報の信頼性の確保や、情報の収集にあたっては、一定の基準を設け広く民間に公募するなど、公平に行わなければならないだろう。

表6 掲載している他機関 (M.A.)

同市町村の公民館の事業・施設
同市町村の教育委員会管轄事業・施設
同市町村の教育委員会以外が管轄する事業・施設
他市町村の事業・施設
都道府県・国の事業・施設
民間の事業・施設
その他
合計
75 (51.7)
102 (70.3)
59 (40.7)
12 ( 8.3)
26 (17.9)
15 (10.3)
12 ( 8.3)
301(207.6)

N=145 単位:館(%)

広報紙(誌)の編集にあたって、編集委員会を設置している広報紙(誌)は、64紙(誌)(22.9%)となっている。(表7)

表7 編集委員会の設置

設置している
設置していない
合計
64 (22.9)
216 (77.1)
280(100.0)

単位:館(%)

編集委員会の構成については、公民館職員(全体209人、平均3.3人)、地域住民(全体275人,平均4.3人),学識経験者(全体26人、平均0.4人)、公民館運営審議会(全体27人、平均0.4人)となった。編集委員会自体は設置しているものの、公民館の職員だけで構成している広報紙(誌)は64紙(誌)中15紙(誌)あった。
編集委員会を設置していない場合の広報紙(誌)の編集は、ほとんどが公民館の職員(含む館長)が担当しており、利用者(ボランティア)が編集にかかわっている広報誌は8紙(誌)(3.7%)と少ない。(表8)

表8 編集(編集委員会以外) (M.A.)

公民館の職員
公民館の館長
利用者(ボランティア)
その他
合計
191 (89.3)
64 (29.9)
8 ( 3.7)
7 ( 3.3)
270(126.2)

N=214 単位:館(%)

また、編集委員会の設置と広報紙(誌)の掲載情報との間には以下のような関連性が認められた。
編集委員会を設置している広報紙(誌)の方が、設置していない広報紙(誌)より、人物紹介、グループ・サークル情報、地域の時事問題や話題・情報、作品紹介についての情報をより多く掲載していた。言い換えれば、編集委員会の設置は、結果的に地域の情報をより多く取り上げることにつながったということである。
編集委員会は、地域情報の汲み上げにもつながるばかりか、それ自体が地域住民(参加者)の学習の場となり得るものである。今後、いっそうの事業展開が期待される。

A独自広報紙(誌)以外の情報提供
上述してきた独自広報紙(誌)以外に、公民館が情報提供のために利用しているメディアについてみてみると、市町村内の公民館の総合情報紙(誌)の利用76館(16.2%)、市町村の生涯学習情報紙(誌)181館(38.5%)、CATVやパソコン通信など新しいメディアの利用64館(13.6%)、その他347館(73.8%)となった。(表9)

表9 独自広報紙(誌)以外の情報提供 (M.A.)

市町村内の公民館の総合情報紙(誌)
市町村の生涯学習情報紙(誌)
新しいメディアの利用
その他
合計
76 (16.2)
181 (38.5)
64 (13.6)
347 (73.8)
668(142.1)

N=470 単位:館(%)

その他の内容についてみると、市町村の広報の利用が271館、チラシ62館、新聞50館、有線放送26館、無線放送(防災無線含む)22館、ポスター・看板16館、ラジオ(地元局)12館などという結果となった。
また、上記とは別に、特に、新しいメディアの利用について、それぞれ、現在利用している、利用する予定がある、利用する予定はないの3者択一の設問を設定した。(表10〜13)

表10 CATV

現在利用している
利用する予定がある
利用する
予定はない
合計
64 (15.3)
28 ( 6.7)
325 (77.9)
417(100.0)

単位:館(%)

表11 パソコン通信

現在利用している
利用する予定がある
利用する予定はない
合計
32 ( 7.7)
59 (14.3)
323 (78.0)
414(100.0)

単位:館(%)

表12 インターネットのホームページ

現在利用している
利用する予定がある
利用する予定はない
合計
18 ( 4.3)
83 (20.0)
313 (75.6)
414(100.0)

単位:館(%)

表13 有線ラジオ放送

現在利用している
利用する予定がある
利用する予定はない
合計
59 (14.4)
15 ( 3.7)
336 (82.0)
410(100.0)

単位:館(%)

本調査では、新しいメディアとして、CATV、パソコン通信、インターネットのホームページ、有線ラジオ放送の4項目を設定した。
現在利用している率は、CATVが64館(15.3%)と最も高く、次いで有線ラジオ放送59館(14.4%)、パソコン通信32館(7.7%)、インターネットのホームページ18館(4.3%)となった。現状では、CATVや有線ラジオ放送を利用した情報提供が多いようである。
しかし、利用する予定があるという回答は、インターネットのホームページが83館(20.0%)と多くなり、次いで、パソコン通信59館(14.3%)、CATV28館(6.7%)、有線ラジオ放送15館(3.7%)となった。
現在は高度情報化社会といわれ、平成11年度の通信白書によれば、インターネットに接続することができる世帯が10パーセントを超え、今後、一般家庭への普及はさらに進むといわれている。この時代の流れに合わせるかのように、4分の1の公民館が、学習情報提供にインターネットを利用もしくは利用予定があると回答した。これからますます、インターネットのみならず、多用なメディアを利用した学習情報提供が展開されるに違いない。しかし一方では、情報獲得のための手段を持つ者と持たない者との間に、情報格差がおきないよう、あらゆる手段、方法を検討し、地域住民に情報がいきわたるよう考慮されなければならないだろう。
上記以外の新しいメディアの利用に関しては、43件の記述があった。主な回答としては、ラジオFM放送、市立図書館と公民館をオンラインで結ぶ、生涯学習情報提供システム、電子メール、防災無線、町内無線放送、マルチメディア案内板、テレホンガイド、オフトーク放送、ページング放送などがあった。

B生涯学習情報提供に関する調査などについて
情報提供の方法や時期などに関して、事業への参加者や地域住民から意見を聞くことを目的として、アンケート調査やその他の方法による調査を実施したことがあるかという設問に対して、あると回答した公民館は232館(47.1%)、ない202館(41.0%)、今でないが、する予定である39館(7.9%)、その他20館(4.1%)となった。(表14)

表14 調査等の実施

ある・あった
ない・なかった
今までないがする予定である
その他
合計
232 (47.1)
202 (41.0)
39 ( 7.9)
20 ( 4.1)
493(100.0)

単位:館(%)

また、あると回答した場合の具体的な方法については、アンケート用紙(質問紙)を使用した調査がほとんどをしめていたが、その他、公運審での意見聴取、利用団体からの聴取拝聴、学識経験者の意見、日誌の記入、有志による会議、来館者による自由記述、講座での聞き取り、懇談会などがあった。
ないと回答した場合の理由については、公運審での意見の取り入れ、団体サークル長会議での意見の取り入れ、生涯学習推進協力員等から意見を聞くなどがあった。
今までないが、する予定であると回答した場合の具体的な方法については、アンケート(質問紙)、意見を広報誌で募集する、自由記述の用紙を置く、意見箱の設置、聞き取り、生涯学習課が実施の予定などがあった。
その他については、必要性を感じない、口コミ情報がある、余裕が無い、時間が無い、専門の機関がある、広報紙がある、生涯学習課が調査する、館報がある、現状で満足している、生涯学習推進室が調査する、職員の異動が多い、議会で調査する、小学校での聴取、経費的に無理、人員的に無理、参加者に直接聞く、地理的に配布が無理、公民館運営協力委員会会議より意見を求める、機会が無い、住民からの問い合わせが無いから必要が無い、他に考えられない、考えたことが無い、教育委員会がアンケートを実施している、随時聞いている、生涯学習に対する取り組みが無い、学習者と内容を検討して いるなどがあった。
どのような方法であろうと、学習情報提供に対する(このことは,講座などすべての事業についていえることだが)地域住民の希望や評価を調べ、公民館活動に取り入れるという姿勢は必要なのではないだろうか。

(2)学習相談について
@学習相談の件数
問い合わせの1ヶ月あたりの件数は、表15に示す結果となった。公民館のサービス地域の規模や人口が違うため一概にはいえないが、5件以下の公民館が6割弱と、本調査においては、公民館への問い合わせ件数は、あまり多くない結果となった。
しかし、筆者が勤務している台東区教育委員会へは毎日数件の学習相談が寄せられる現状などから考えると、学習相談のニーズが少ないとは一般には考えにくい。公民館の学習相談に関する取り組みの不足が、相談件数が少ないという結果に反映されていると考えるべきではないだろうか。

表15 問い合わせの頻度(1ヶ月あたり)

5件以下
6〜10件
11〜20件
21〜50件
51件以上
合計
269 (56.2)
69 (14.4)
67 (14.0)
30 ( 6.3)
44 ( 9.2)
479(100.0)

単位:館(%)

A問い合わせの対応
問い合わせの対応に関して、学習相談に応じる専門の職員を配置している公民館は、96館(19.6%)と少ない。ほとんどの公民館では、相談専門ではない職員が対応している(433館 88.4%)。また、相談専門のボランティアに依頼(3館 0.6%)、専門ではないが館のボランティアに依頼(2館 0.4%)と、ボランティアの活用は現状では少ないようである。(表16)
ボランティアの活用に関しては、後述するボランティアの養成講座を開講するなどして、公民館で養成し、学習者の継続学習の場、学習の成果を発揮する実践の場とすれば、公民館での学習活動の一環となり得るものである。
人材不足を補うというのではなく、公民館の教育活動として、ボランティアを活用するという視点が重要であろう。

表16 問い合わせの対応 (M.A.)

専門の職員が対応
他の職員が対応
専門のボランティアが対応
館のボランティアが対応
その他
合計
96 (19.6)
433 (88.4)
3 ( 0.6)
2 ( 0.4)
10 ( 2.0)
544(111.0)

N=490 単位:館(%)
B問い合わせの内容
問い合わせの内容として、もっとも回答が多いのが、いわゆる案内情報に関するもので410館(84.0%)であった。ついで、どんな学習に取り組んだら良いかという相談205館(42.0%)、学習の方法や進め方に関する相談184館(37.7%)となった。
(表17)

表17 問い合わせの内容 (M.A.)

どんな学習に取り組むかという
相談学習内容に関する相談
学習方法に関する相談
発生した課題に関する相談学習
成果に関する相談
案内的情報を求める相談
百科事典的知識を求める相談
その他
合計
205 (42.0)
43 ( 8.8)
184 (37.7)
41 ( 8.4)
39 ( 8.0)
410 (84.0)
29 ( 5.9)
15 ( 3.1)
966(198.0)

N=488 単位:館(%)

また、上述の問い合わせの内容のから、特に案内的情報についてみると、学習機会に関する問い合わせ(442館 94.2%)、グループ・サークルに関する問い合わせ(354館75.5%)、講師・指導者に関する問い合わせ(209館44.6%)、学習施設に関する問い合わせ(140館29.9%)が、案内的情報に関する問い合わせの形態として、多いという結果となった。(表18)
これらの結果は、言い換えれば、住民の学習情報のニーズであり、これらのニーズに対応すべく情報の収集など積極的な対応が求められるだろう。

表18 案内的情報について (M.A.)

学習機会に関するもの
学習施設に関するもの
学習グループ・サークルに関するもの
講師・指導者に関するもの
教材・資料に関するもの
各種資格取得に関するもの
その他
合計
442 (94.2)
140 (29.9)
354 (75.5)
209 (44.6)
41 ( 8.7)
2 ( 0.4)
0 ( 0.0)
1188(253.3)

N=469 単位:館(%)

C問い合わせに答えるときの情報源
問い合わせに答えるときの情報源としてもっとも回答が多いのは、独自に作成したファイル(307館 66.0%)で、ついで、他機関が作成したデータブックや資料(222館47.7%)、新聞・雑誌など(114館 24.5%)となった。(表19)

表19 情報源 (M.A.)

コンピューターに収録された情報
辞典・年間等各種文献
新聞・情報誌等
他の機関が作成したデータ
独自に作成したファイル
その他
合計
56 (12.0)
29 ( 6.2)
114 (24.5)
222 (47.7)
307 (66.0)
37 ( 8.0)
765(164.5)

N=465 単位:館(%)

D学習相談室・学習相談コーナーの設置
学習相談室・学習相談コーナーを設置している公民館が49館(9.7%)、設置の予定がある公民館が32館(6.4%)となっ
た。(表20)

表20 学習相談室・学習相談コーナーの設置

設置している
設置の予定がある
設置の予定はない
合計
49 ( 9.7)
32 ( 6.4)
422 (83.9)
503(100.0)

単位:館(%)

E学習相談員(ボランティアなど)養成講座の設置
学習相談員(ボランティアなど)養成講座の設置については、設置している公民館が30館(6.1%)、設置の予定がある公民館が30館(6.1%)となった。(表21)

表21 学習相談員(ボランティアなど)養成講座の設置

開設している
開設の予定がある
開設の予定はない
合計
30 ( 6.1)
30 ( 6.1)
435 (87.9)
495(100.0)

単位:館(%)

(3)生涯学習情報提供と学習相談についての公民館の考え方について(表22)
公民館における生涯学習情報提供や学習相談について、「生涯学習支援の主要な柱であり、公民館でもいっそう積極的な取り組みをしたい」という最も肯定的な公民館(表22のa)は269館(54.0%)、「重要な仕事だと思うが、現状では公民館が取り組むのは難しい」という公民館(表22のb)が129館(25.9%)となった。
現状では難しい理由としては、人員・職員の不足(54館)、専門職員が配置されていない(19館)、情報不足・情報機器不足・生涯学習情報提供システムなどが未整備(16館)、予算が不足または無い(14館)、施設整備が不十分(13館)、常勤・専任職員がいない(10館)、生涯学習課など、他の機関が行っているため(10館)、他の機関との連携が不十分(10館)、事務量の増大(7館)、住民の学習意欲がない・啓発不足(7館)、中央公民館制度がないため(2館)などがあげられていた。
また、「公民館の事業の中核は教育事業であり、学習情報提供や学習相談は重要ではあるが、中核ではない」と回答した公民館(表22のc)は95館(19.1%)、「公民館の仕事としてはなじまない、別な機関が行う仕事である」という公民館(表22のd)は5館(1.0%)であった。その場合どの機関が行うべきかという問に対しては、教育委員会、生涯学習センターなどがあげられていた。

表22 公民館における生涯学習情報提供・学習相談についての考え方

a生涯学習支援の主要な柱であり、公民館でもいっそう積極的な取り組みをしたい
b重要な仕事だと思うが、現状では公民館が取り組むのは難しい
c公民館の事業の中核は教育事業であり、学習情報提供や学習相談は重要ではあるが中核ではない
d公民館の仕事としてはなじまない、別な機関が行う仕事である
合計
269 (54.0)
129 (25.9)
95 (19.1)
 5 ( 1.0)
498(100.0)

単位:館(%)

V.まとめと課題

以上の結果を概観すると、広報紙(誌)や市町村広報など、いわゆるペーパーメディアを利用した学習情報提供は、多くの公民館で実施され、それぞれの公民館から地域住民に向けて学習情報が発信されているようである。
今後、編集委員会の設置、ボランティアの活用などの編集方法の工夫や公・民間を問わず、地域住民の学習の支えとなる多種多様な情報の収集・提供など、一層の充実が期待される。とくに、学習情報提供の方法については、前述したインターネットの利用が注目される。
学習相談に関しては、実態調査をみる限り、独自にファイルを作成するなどの取り組みは多くみられたが、現状では、公民館において、十分な取り組みが行われているとはいえない。
確かに、予算、人材、施設・設備の問題など、公民館が抱えている問題は少なくない。相談専門の職員を配置するなどといったことは多くの場合困難であろう。
しかし、学習情報提供と学習相談は表裏一体であるといわれているように、学習情報提供の充実と同様、学習相談に関する職員の研修や学習相談のボランティアを養成するなどの措置が講じられなければならないだろう。
以上、公民館における学習情報提供・学習相談に関していくつかの課題を提示したが、筆者が一番の課題であると感じる点は、公民館の学習情報提供・学習相談に関する認識の問題である。
表22の示すとおり,学習情報提供や学習相談を中核と位置づけていないという回答が2割弱もあったという事実は、特筆せざるを得ない結果である。
それぞれの自治体によって、学習情報提供や学習相談に関する施策上の公民館の位置づけは異なるであろう。しかし、教育委員会等で一括して学習情報提供や学習相談を実施しているから、公民館では特に取り組まないなどと考えるのではなく、個々の公民館が、地域社会の状況やニーズに応じて、それぞれの方針を持って、積極的に取り組まなければならないのではないだろうか。
そういった意味でいえば、学習情報提供や学習相談を中核事業と認識していないこと自体が公民館のかかえる大きな課題といえるだろう。
冒頭に述べたように、これまで公民館は、我が国の教育に大きく貢献してきた。公民館は、地域社会の中で、人が学べ、人と人とが交流できる場である。いわゆる貸し館とは違い、公民館主事などの職員が地域住民の学びを支援する社会教育施設である。21世紀に向けて、学習情報提供・学習相談のみならず、地域住民の学びをさまざまな面から支援し、公民館が地域社会の社会教育施設として、いっそう発展するよう期待している。

参考文献等

(社)全国公民館連合会『公民館における生涯学習情報提供および学習相談の実態に関する調査報告書』1998
山本恒夫・清原慶子・平沢茂・市川昌・西村美東士「学習情報の提供と活用」『生涯学習テキストH』実務教育出版,1987
清原慶子「生涯学習情報提供」『生涯学習事典増補版』日本生涯教育学会編,東京書籍,1992

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