『教育研究所紀要第8号』文教大学付属教育研究所1999年発行

学生と教員が共に学びあう視点から授業改善へ

― 短大の参加型授業評価をとおして ―

野口 和枝

(文教大学付属教育研究所客員研究員・秋草学園短期大学)

要  旨

世界の情報化、日本の教育の大衆化に伴い高等教育における教員と学生の関係も見直しを迫られている。教授のイニシアティブの一部を学習者に預けるという意味で学習者主体へ近付こうとする新しい学びの視点にたって、授業改善を試みようとするものである。主体性と目標との関連を明らかにし、学習者の自立を支援するために有効な学びの方法は何か、学生と相互の学び合いの要因は何かを実証的に探究したものである。

はじめに

近年、18歳人口の激減と高学歴化社会に伴って教育の大衆化が進み、進学する学生の入学目的も多様性があり、卒業後の進路についても明確さに欠ける。
大学側にも教育システムにおける自己点検、自己評価を行い、社会の変化に対応する教育環境の整備やカリキュラムの改正が毎年変化を編み出すべく議論されている。
教授する教員個人の側にも従来の教育方法に踏襲することなく、教育現場の理念に基づいた積極的姿勢が必要になってこよう。教授方法をいくつか組み合わせたり、改善を加えるなど、学生に主体性を要求すると同時に教員自身の主体性の啓発が課題となっている。実務教育における主体性とは単に学習への動機づけで考えるのではなく、ある状況の中でどのような意志決定をするかという行為の連続と捉えることとする。
本論は考えられる学びの視点9種のうち、新しい視点にたつ「教員と学生が相互に学びあう」ことは何か、学生の主体性を育成する参加型授業評価について2つの調査をとおして「教員と学生が学びあう」要素を明確にすることを目的とする。

1.教員と学生相互の学びに求められる考え方

教育学において、学習あるいは学ぶということは、一方的に授けられるものではなく、主体的に自ら問いを発する、自分で行動を起こす(質問を投げかける、情報を選択する)、不明のときは教え、教えられる共通の仲間との情報交換により開拓していくことと定義される。
学習にあたっては準備段階としてガイダンス教育、学習の仕方、スタディスキル、情報源をどこに求めれば取得できるかなどのシステム化されたステップに基づいた小人数で親密なコミュニケーションは欠かせない。しかし、従来の教授や学習研究では「学習者の自立を促す」視点がしばしば見落とされてきた。
教員が一方的に知識を伝達する講義形式の欠点は、学習過程に学生を関与させる手段をもたない点にある。学生は学習結果のみにこころを奪われ、学習過程を楽しむ目を持たずにきてしまったといえる。結果として学習に対する動機づけは低下し、主体的に学ぶという状況から、かけ離れた現実がでている。

2.主体的参加型授業への関わり方と到達目標に関する調査

学習に参加する主体性の差に着眼して、短大における「秘書概論」の主体性を重視した授業形態と今まで教室で管理され、指示待ち中心の一斉授業であった中学高等学校の授業との比較してどちらがよりよいのか調査を行った。また
授業形態の関わり方と到達目標との関係を分析した。

1)調査方法

「秘書概論」の自主的に調査し、発表し、作品化する主体的参加型授業についての関わり方と当面の到達目標と計画性との関係を調査した。
主体的参加について「授業形態の関わり方」に対する回答は次の3タイプから選択させ、その理由を記述させた。
タイプ1:非常に苦しかったがよかった
タイプ2:どちらともいえない
タイプ3:高校のやり方のほうがよい
さらに、当面の到達目標として、以下の項目から選択させた。
@前期修了の時点で短大を中退する
A1年生の単位とりあえず前期試験だけは落とさないつもりで頑張る
B秘書技能検定の合格を目指す 
C秘書士、情報処理士認定をクリア
D進路は正社員、編入に固めている
E進路はフリーター、アルバイターでよい
F卒業後の進路に迷いあり未決
調査月日:1998年7月14日
対  象:秋草学園短大経営科1年生女子140名

2)調査結果および考察

調査結果をまとめたものを表−1に示す。

表−1 主体的参加型授業に関する調査結果(全数133名)

就職に迷いあり 就職意志決定
到達目標なし 到達目標あり
非常に苦しかったがよかった 1 10 46
どちらともいえない 2 12 28
高校までのやり方のほうがよい 2 3 10
無記入・不明 3 5 11

高校時代と比べて主体的に取り組む形態「苦しかったがよかった」を選んだ理由として、記述されたものを以下に示す。
@はじめ秘書概論は難しいイメージがあったが
・やってみて勉強になった
・脳の刺激になってよい。今の時代の動きに合っている
・自分の人生に役にたつ
・女性としての価値があがるし、無駄が無い
・自分でやって満足感があった
・一般常識が身についた、つらかったが着実に身についた
・自分の知らないことまでよくわかってよかった
・自分ではよいと思っていたことが間違いだったことがわかった
・苦手なこと(人前で話す、発表する)が普通にできることがわかった
・ついていけないときもあったが調べたりして自分のためになった
・バイト先で応用ができるようになった
・自らやる気がでてきて意欲的にできた
・進んでやらねば意味が無い、やればやるだけのものが身につく
・自分でやらなければならないという思いが強くなった「何とかなるさ」が消えていつも「やばいぞ」と焦っていることが多く
なっ た
・自分を追い込んでやっていく切羽つまって全部自分でやることが良かった
・自分で気づいたほうが覚えるし、自分のためになる
・空き時間に進んで学習する習慣が身についた
・自分で考える力がついた
・一回は自分で考え、問題を解くという準備をして授業に臨むと、わからなかった部分がはっきりわかるのでよかった
・自分で探し、考え、作成するという手順が好き
・自分でやりたいようにやれる、ワープロの速度も速くなったようで嬉しい
・作品を完成させたこと、そのための自主的行動ができた
・課題をきちんと出すことで自分のためになった
・苦労した分忘れないだろう
・学生同志相互で確認しあうのはわかりやすい
・自分たちの手で調べたものを自主的に解答を発表したこと
A初めての教科で心配、不安だったが
・自分にもどうにかなりそうな予感がするので前向きに頑張ろうと思う
・秘書のやるべき事柄がわかった。自然に敬語が使えるようになりたい
B自分の人生にプラスになることを学べたが
・厳しいことを言うのは分かるが必要以上に脅されたりするとかえって萎えてしまう不安がある
C秘書の授業はイメージできなかったが
・とても難しく感じる
・就職できるのか、してからもどうなるのか不安

これらの結果から、主体的に取り組んだと自己評価したものは当面の到達目標をもち、卒業後の進路に迷いをもたないといえる。34.5%、ほぼ全体の1/3が該当している。
一方、就職に迷いがある人は当面の到達目標をも持つことができないでいる。卒業後の自分のイメージが描けないひとは、現実を受け止めていないモラトリアム群といえる。
高校迄の一斉授業、指示待ち型の勉強の仕方とどちらがよいかわからない人たちは、当面の目標をひとつと消極的な生き方である。主体的に取り組む学習がよいとはいえないといいつつも就職はするつもりで、単位や資格など当面の目標を持っている人は全体の21%である。
自ら学ぶ姿勢を身につけることは、物事への対処が変わり、変化に対応できる能力が養われる。先のことを予期して準備をする、目標を持つなど学生主導による学習が主体性を養う可能性が高いことが示唆された。主体的に行動することとそれによって導かれる結果との関連性をどう認識するかがその後の適応や行動に影響を与えることが示された。結果のみに注目し指導効果を評価してきたきらいがあるが、行為と結果の随伴性の認知に目をむけると学びとは学びのプロセス全体に向けることになる。

3.学習のプロセスの工夫

上の調査から大学の授業を活性化させる教育の方法論として主体性をもたせることを目的としたが、「苦しかったがよかった」と肯定的に捉えている人達ですら情緒の問題が見え隠れしているところに注意を注ぎたい。つまり個人の努力のみでは解決しにくい教員の反応によって生じる結果を同時に含んでいることがあり得ることを念頭において研究を進めていかねばならない。
達成目標を掲げる前の段階で、高校のときと比較して授業の開始時から不安を持っている、イメージが描けない、消極的で自信がもてない人々が非常に多いといえる。
そこで主体性をもたせる授業を導入するに際して、教員のなすべき役割、関わり方を検討する。
(1) わからないときは人に聞けばよいという安易に依存的消極的態度を改善する必要がある。そこで共通の「わからない箇所がどうすればわかるようになるのか」「なぜわからなかったのか」について共に考えるような学習場面を設定し学習者と再考するような機会をもつこと
(2) 少なくとも〜は達成という最低限の目標も設定する。個人に応じた行動変容であってよい。目標のないところに活発な行動は起こせない。行動変容をおこすことを重大視すること
(3) 学習のプロセスにある一人の学生がその場、その場でどのような判断をしたか、その判断の連続が人生を作っていく連続性に気が付かせること
学習プロセスにおけるイニシアティブの一部を学生に移転することで学生を主体的に参加させることになる。

4.企業訪問シミュレーション

1)目的および方法

日常の行動範囲の極めて狭い学生に対して、就職活動を円滑に主体性をもって行動する実踏の機会を提供することを目的に、企業訪問シミュレーションを実施した。
平成9年度経営学演習秘書ゼミ監授業の一環として扱い、就職を希望していなくとも適用するので全員参加とする。今年度の早まる就職活動に向けて、企業研究の準備段階として、興味のある企業について調査し、実際に自立行動を達成するためのシミュレーションである。早速始まる資料請求や会社説明会、会社訪問、入社試験など指定された場所に指定どおり時間厳守で到着する体験を獲得するため本番を想定して行なう。6社は過去5年間に秋草学園短大を指定推薦求人のあった会社である。訪問シミュレーションが本番になる可能性を含んでいる。
条件として、自立の第一歩として、友人に依存せず、ひとりで考え、1社を選び、単独で行動することを原則とする。就職試験を受けるのも、自分の人生の生き方を選びとるのも自分自身の問題として捉える機会でもある。
@方法:教員が訪問する企業の建物の前で現地待ち合わせをする。目的地に指定された時間どおりに到着するまでの一連の行動が達成目標である。
企業訪問シミュレーションレポート、企業研究報告書を提出させる。
A対象:秘書ゼミ 19名全員
B実施日時:平成9年3月6日(木)、3月7日(金)
C事前準備:課題を学生19名の自宅に郵送する。
・資料の企業の中から訪問したい会社を一つ選ぶ。
・就職室で求人の案内、内定報告書、会社四季報などでどんな会社かを研究する。
・住所から地図で所在地を確認する。
・自宅からの最寄りの線、駅、所要時間を調べる。
・逆算して約束の時間にいくためのスケジュールをたてる。
D実施方法:1997年3月6日と7日あらかじめ設定した6社のうち、学生が希望する会社の建物の表玄関1階(訪問者が受け付けへ到る出入り口であり、社員通用門や裏口ではない入り口、共同ビルならば1階一般客出入口のエレベーターの前)で教員と待ちあわせることとした。
当日の注意事項として、次の点を指示した。
・学生らしい服装(スーツでなくともよい)。ヒールのある靴を履いて試してみるのもよい。お辞儀したとき下がらない髪型とする。金茶色はとりあえず黒に近い色にすることが望ましい。
・来る途中、交通費、時間などメモしながらくること。事後報告書に記入するために必要。
・指定時刻の5分前には到着しているようにする。
E行動結果からみえる問題点
ゼミ2年生19名の行動結果を表−2に示す。時間どおり参加できた者6名、遅刻参加した者3名、待ち合わせに失敗した者4名、参加しなかった者6名である。また、行動の成否理由を表−3に示す。

表−2 企業訪問シミュレーションの行動結果と進路

ネーム参加有無
1996
3月  
実行の可否     進路決定の手段 決定
1997
1月
主体性 成功/失敗
の 理 由
参 加

14
@I
AO
BN
CF
DS
ET
FT
厳    守     7 第一志望
学内推薦
内 定 済 14 事前計画調査 7 ・下見
・余裕をもった行動
・当日、地図・示を確認
・電車の乗り継ぎがうまくいった
GN
HI
遅    刻     2
事前計画不足 7
IT
JT
KK
LK
MH
失    敗     5 就職希望
自由応募   4
縁  故    1
・所在地の未確認
・途中経過を他人に依存
・ビジネスにおける電話の使い方
不適切
不参加 5 NK
OH
PW
QM
RT
旅行中
車免許合宿研修
海外旅行中
旅行中
体調悪い
非就職
非就職
進路未決定
進路未決定
進路未決定
未決定 5

表−3 行動の成否理由

予定どおり現地に到着できた理由 予定どおりいかなかった理由
・30分前には着くように計画
・普段よりも歩くスピードが遅くなること
を考えて早めに家を出た
・駅においてあるマップをみる
・電信柱の表示を辿りながら行く
・電車の乗り継ぎがうまくいった
・余裕(1時間20分)をもった
・最寄り駅の出口を間違えた
・住所より社名を探した・交番で聞いたため
・1ヵ月まえに社屋が移転
・路を聞いた人々に振り回された
・直接電話をして聞いたら不審に思われた

5.本調査と就職活動の追跡調査との関連

企業訪問シミュレーションと1年後の就職活動結果を併せて考察する。
第一に地図を手がかりに行ったことのない場所に確実に到着した者の成功理由は計画的に時間配分をし、ゆとりある行動を心がけていることである。その姿勢が就職試験にも反映され、第一志望の企業に早々内定を決めたことにつながった。ビジネスのルールは時間厳守であり、原価意識が必要であると秘書概論で学習した抽象的、一般的な知識を「本物」の活動のなかで状況認知させる試みが有効であったと思われる。
第二にシミュレーションで当日遅刻してきた学生は本番の入社試験に、その有用性が実感されたという。また遅刻してきた人物は、友人関係や進路選択に対しても固定観念があり、自分の思いこみから抜け出すことが困難な一面をもっていた。不可能を可能にするという自信ではなく、自らをよく知ったうえで、努力によって必ず切り開かれるものがあることを自覚させたい。「やればできる」「考え方を変えれば楽にできることがあるはず」という自信をもたせることができよう。それらの課題は実体験することで「社会人としての基本的ルールはこういうことなのだ。できないと思い込んでいたことができるようになった」と行動やその結果を他人と比べて評価するよりも、自分自身のなかでどれだけ変化できるか、どのくらい変化したことを認められるか、を教えることである。自己向上を実感しうる課題を常に試み続ける必要がある。
第三に参加しなかった学生は、自分の周囲の人びとの行動を観察し、その体験談などからコントロール可能な対応を学習することが可能となる。生き生きとした行動をする友人はモデル学習者であり、それを見習い、影響を享受することになる。
第四に参加しなかった学生の理由は、友人と旅行中で不参加という報告であったが、就職を希望しているにもかかわらず卒業間際でも内定のとれない状況にある。自主性が不足しており、平常授業においても提出物の作成に遅れが目立ち、一つひとつの決断がひとりでこなせない強い依存性が見受けられる。期限厳守ができない言い訳が多く、外的統制で内的統制ができていないことが明らかである。
学生の今現在の有り様を謙虚に受け止め、学生の弱点、疑問点、質問に耳を傾け、応えて行かなくてはならない。したがって教員は教え込もうとする枠組を取り払い、学びの質を問い続けることである。
シミュレーションによる教育の利点は(1)問題解決的である(2)現実的である(3)総合的である(4)動機づけになる(5)能動的、参加型である(6)教室の外である場合、他の方法には決してないであろう予期せぬリスクを伴うことがある。この体験で時間通り到達できなかったひとは、倒産寸前のY証券会社を選択した人達であり、当日になってはじめて社屋が無人になっていた事実に直面した。電話をかけて不審に思われたり、交番でビルを尋ねたところ仮営業所を教えられ、方向違いへ向かったというミスが続出した。
この訪問シミュレーションを通して、日常生活のなかで直面する課題を人がどのように解決していくかが、体験学習できたと思われる。講義法では疑問をもたない傾向があったが自主的に学ぶことで、「時間通り行動するには、前もってどのような準備が必要なのか、スケヂュールに余裕をもたせることが成功し自信をもてたなど、自分自身の意志決定が印象づけられ次の経験を重ねることにより結果として学習意欲を増すことになった。
従来の学校教育では、テキストを前に抽象的、形式的概念を学習することで、それを学校以外の様々な状況に当てはめて考えることができるようになる、と仮定されているが、その仮定は有用であろうか。結局、現実の課題にあてはめて考えるという「本物」の活動を経験させ、様々な状況に当てはめて考えることができるように抽象的、形式的な概念を自発的に教室以外で活用させる訓練が必要である。

6.まとめ

教員は学生がよりよく学ぶように「学び方」と「学んだことを生かす力を育成する」支援をしていかなければならない。
学生に主体的参加を促す一方で、主体的参加することを期待される殆どの学生が多くの助力を必要としている事実があ
る。
教員は学生の必要としている助力を再認識し、支援体制を次のように整備することを提案する。

1)学習プロセス促進の重視 

唯一の正解またはテスト結果より、自分がなぜ失敗したか説明できれば合格である。 
最初に実現可能な範囲で自己到達目標をもたせる。その結果を自己評価に内在させ、振り返りの時間をもつ。過去の自分自身の反応や過去の経験を総動員して確実なものをつくっていく。以前と違う進歩した自分をその都度確認させ、その確認を継続することで自信をつける訓練になろう。
主体的行動がとれるようになるには、シミュレーションという学習形態をとったからではない。このような成果をあげるにはいくつかの要因が関連していて、その要因に対する対策を考慮した事前教育を行った後に実施したためである。本調査にあたり、予備調査として学生の行動範囲が極めて狭いという実態を把握してあった。その対策として、ケーススタディを演習した結果が有効であったと思われる。従来より主体的な学びへと変化させることができたと思われる。学び方を学ぶ方法として有用であったといえる。

2)バランス学習

ときに基礎へおりていくバランスのよい学びをこころがける。基礎から積み上げる系統学習と課題研究/総合学習の中間に弱点補強を併用していく。
つまり実務教育科目の標準を維持していく必要がある。

3)実生活にマッチした課題 

職業につくために許可が得られるレベルに達すること、同時に日常生活行動を改善することにより、生きる力につなげること。
タイミングよくリアリティのある情報を随時学生に提供する。卒業生や先輩など身近に感じられる人達の協力を得て、広く社会に向けた知的活動を展開する。またインターネットなどによる学生に提供してもらう情報の互換性を大切にする。

4)教員は学生により少なく教えればよいように工夫する

教員間の意志統一、体系づけられる科目間では講義におけるミニマムエッセンシァルスについて共通理解をはかる。学科内で共通理解をもったレベルの指導を目指すことで合意しておく。学生がどの先生に質問しても相談しやすい雰囲気を提供する。

5) 学びの関係における相互信頼を取り戻すこと

学生を試すために問うことは学生を信頼していないという前提となる。学びたいものが知りたいことを問いかける雰囲気をつくることが望ましい。自分の学習に関心を持ち理解させようとしてくれる他者の存在によって学習に対する動機づけを高める効果がしばしばある。教員が投げかける質問の質、学生が応答するまでの待ち時間、適度の賞賛、批判より訂正、学生に対する熱意と温かさが、学ぶものと、教員との相互作用する要因である。
・ フィードバックは学習者に早く与えるほど効果的
・ 行動そのものに関するフィードバックほど学習効果が高まる
・ 肯定的フィードバックは処罰的フィードバックより効果があがる。望ましい行動に対するフィードバックは行動を強化し、
さ らに学習意欲を育てる

おわりに

どの集団においても、わずかではあっても主体的学習を望まない学生もいる。
担当する学生のレディネスによって導入の仕方をかえていかねばならない。
主体性を育てるには一定の積み重ねと、学びの継続性を考慮していく必要がある。レディネスをどのように評価して行くべきか、継続調査による評価も必要であり、カリキュラム全体のなかでの位置付けも考えていかねばならない。
学生は授業に参加しなくても効果的に学習できる。しかしその学習は参加する学生の反応に対し教員が積極的に反応するとき、一層学習は促進されるという。教員が要求していることを学生に伝えることになるという意味で教員の反応の効果によって動機づけられている。教員と学生の相互作用を継続的に研究していくことが今後の課題である。  


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