『教育研究所紀要第8号』文教大学付属教育研究所1999年発行

スウェーデンの学習サークルと受講生の意識調査

野崎 俊一

(文教大学付属教育研究所客員研究員)

要  旨

生涯教育の先進国といえばスウェーデン。その成人教育の中核的組織が「学習サークル」。全国に11団体ある。その講座内容に類似しているのがわが国のカルチャーセンター。しかし、日本の場合は「教養・趣味型」重視に対し、スウェーデンはキャリアアップを目的とする「実務型」と言われる。現地で試みたインタビューとアンケートによる意識調査で検証してみた。

まえがき

バブル崩壊もあって、人々の物質への飽くなき欲望から心の充実を目指すボルテージが高まっている。その具体的な道標が「生涯学習」である。先例国のスウェーデンでは国民約880万人のうち、義務教育から高等学校への進学率は約92%。大学への進学率も35%と試算され、わが国とほぼ似通っている。しかし、「好きな時にいつでも自由に学ぶことができる」というリカレント教育が普及し、成人人口の半数を超える国民が何らかの形で成人教育機関に通学している。もっともその中身は多種多様だ。その中核を占めるのが、国やコミューン(地方自治体)からの補助金で運営され、国民生活に重層的に浸透し、国民教育とか民衆教育とも呼ばれている「学習サークル」である。
私は80年代後半から隔年ペースで現地に出向き、学習サークルの実態を眼の当たりにしてきた。1998年春は受講生を対象にしたインタビューやアンケートによる意識調査を試みた。私が民間カルチャー産業に籍を置く一員であること。また、学習サークルと日本のカルチャーセンターの講座内容が類似しており、両国を比較、研究することが実務面でも役立つのではないかと判断したためである。
調査では、動機や成果を中心にした分析とともに、生涯学習事業の将来像を探れないものかという狙いである。本稿ではまず学習サークルの概観に触れ、学習サークルとは何かを明らかにするとともに意識調査の分析を述べた。この結果、資格やキャリアアップを図る「実務型」の傾向が強く、巷間伝えられる"勉強好き"な国民性の一部が浮き彫りにされた。

概  観

スウェーデンの学習社会は国民教化運動として起こった。その運動を年代的な流れに沿ってみる。1800年代半ばは厳しい道徳倫理観に基づく禁酒運動や宗教改革を目標にした自由教会運動がある。1870〜1930年代は、社会変革の手段として労働運動やイギリスから導入された協同組合運動、経営者連盟運動があった。
1930〜50年代になると、労働運動が自ら高める教育運動となり、50年以降は、これまでの階級を中心にしていた運動は、アイデンティー運動を基礎にしたものになった。そして、80年代から今日まではこのアイデンティー運動をやや変形化した段階に移行しつつある。
いずれにせよ、これら学習社会を築いていく目的や理由については、学歴社会の弊害の是正というよりも、社会運動に伴う学習需要への対応、これに心の豊かさや生き甲斐という心の部分が強調されている。このことは後述する意識調査の結果でも浮き彫りにされていた。

背  景

さて、このように、民衆運動の中で生まれた成人教育はリカレント教育の担い手として躍進した。その一つが前述した民間団体が運営する学習サークル(注1)である。
まず歴史的経過について触れる。19世紀後半に期せずして起こった三大民衆運動(注2)が基盤になって発足した各団体は11団体に達している。その形態や基本理念などは図1の通りであるが、民主社会への変革への要求や社会改革への動きという点で一致している。各団体の活動は単なる学習の場でなく、民主社会における活動的な存在となり、お互いが成長しえる公開討論の場を提供するものとして位置づけた。また、創造力や知的な生活の楽しさといったものを開発し、育んでくれる最良の学習形態と環境を整えていった。
このため、講座や運営については、他の人々との対話を通して新たな見識に到達し、自分たちの知識を評価するという、会員相互の助け合いの過程に左右される。また、各団体にとってみれば、民衆運動を母体にしているものの、時代遅れの講座や市民のニーズに対応できないと受講登録者は減少することに繋がる。そこで、講座編成や運営にあたるスタッフは、時代の流れや市民の要求を的確に読み取り、柔軟に対応する能力が要求されるのである。
この方針で作成された科目は宗教、語学、心理学、外国語、文学、芸術、工芸、演劇、音楽、歴史、地理、法律、政治、産業、通信、経済、商業、自然科学、医学、各種のスポーツなど、300〜400科目にわたる。日本のカルチャーセンターと内容が似ているといわれる所以である。
例えば、最大組織で、受講生の約三分の一を占めるABFは組合活動のための実務講座を取り入れ、これが伝統的なものと位置づけているコースもあるが、語学や芸術などの一般的コースに関してはどこも似たりよったり。重複したプログラムもかなりみられるなど、多くの分野で競争的共存を続けているといえよう。
しかも全コースの一割は大学レベルの講座である。宗教、哲学、心理学のような非職業的教科コースは講座に出席し、大学教授の行う試験にパスすれば大学の単位として認定される。
受講生募集のPR方法は多彩である。年に一回、秋学期が始まる直前の八月下旬、各団体は新聞紙上に講座内容の一覧表の広告をはじめ、パンフレットを全世帯に宅配したり、公共関係の病院や図書館、駅などの案内所にも配布する。プログラムをみると、最も多いジャンルは芸術科目で約4割を占め、社会科学が2割、次いで語学(14%)、行動科学(10%)の順。また、参加者が多い科目の上位10位は、コーラス(154,201)、即興音楽(ロック、ポップなど)(121,559)、英語(110,702)、歌・集団音楽(106,721)、団体知識(各運動母体関連)(92,784)、宗教(73,164)、演劇(70,436)、裁縫・衣料(65,578)、絵画(59,375)、フォーク・ダンス(56,184)のラインナップとなっている(出所・Utbildningsstatistisk arsbok 1993/94)。
次に学習者の参加推移を年代的に追ってみる。1965年には10万を超えるサークル講座に100万人以上が学んだ。10年後の76−77年度は、28万9千講座と3倍増。受講生も270万人が参加するなど目覚ましい上昇カーブをみせた。79年には300万人を記録した。しかし、79年以降は、「300万人」が厚い壁になり、ここ10年間は280万人と横ばい状態が続いている。しかし、成人の半数がこれらの団体で学んでいることは驚異的な数字である(図1)。このことは、「国民が学びたい」という要求が純粋に表れた「学習好きな国民」であるとともに、「学習サークル」は国民の中に重層的に浸透しているといえよう。
その理由は何か。ここにもスウェーデン独自の援助システムが機能している。44年から指導者および学習内容いかんにかかわらず、国庫や地方自治体から運営費や補助金が交付されている。当初は75%という高率だったが、その後、経済動向に左右されて率が低下し、今回の調査ではフォルクの場合、受講生負担が15%に増大するケースも聞かれるほどであった。それはともかく、学習サークルの隆盛は、公的機関の補助金や各種の奨学資金制度の充実に加え、教育休暇制度の確立、学習期間中の身分保障も大きな要因になっている。
交付の対象は4人以上20人以内で、最低4週間にわたって15時間以上開設されることが条件。また、障害者や入院患者の場合には最低4人の参加があればよい。
国庫補助金を分配する機関は、フォルクビルドニングスローデットと言われる国民教育審議会(Folkbildningsradet)。この審議会は教育内容には口を挟まない。各団体にしても支給されても別に運営方針を気にすることもないなど、国から資金援助を得ていても、経営方針が国の意思に左右されるという"紐付き"感覚はない。

意識調査について

以下に述べるのは、需要者である受講生の学習活動への意識、および取り組みの実態を調査研究である。調査そのものは成人教育団体を対象とし、学習サークル(ABF、フォルク、SKS)と公的教育機関コンブックス(マルメ校)、イェーテボリ大学の計五団体。
本稿では学習サークル(SKSは回収できず)のABFとフォルクの二団体130人に調査表を配布し、54人から回収した(回収率41.5%)。調査項目は学習活動、学習成果の活用、学習機関に対する要望、受講の問題点、日常の学習活動など。属性は性別、年齢別、職業別の分類を試みた計28項目。
もっともこの種の学習ニーズに関する調査は、行政や民間企業など多様な機関でその必要性に応じて行われている。私の場合は資金的なこともあって対象団体が限られ、回収した数字も三桁に達していない。このため、これをベースに諸相を分析することはやや偏りがあるなど数値に対する信頼感は物足りないことは否めない。そこで、受講生の動機や目的に絞り、その結果や成果をどのように受け止めているかを明らかにした。
〔学習者の性別・年齢・最終学歴〕
性別では女性36人、男性17人。不明1。年齢別では「20−30歳」(17人)、「30−39歳」(5人)、「40−49歳」(14人)、「50−59歳」(7人)、「60−69歳」(6人)、「70−79歳」(3人)、「80歳以上」(1人)、不明1。
最終学歴は大卒が16人(男性7人、女性9人)が最も多く、次いで、小卒13人(男性6人、女性7人)と高卒13人(男性2人、女性11人)と同数。あと各種校卒9人(男性2人、女性7人)、大学院卒3人(全員が女性)。これから判断できることは大卒の高学歴があっても、新しい時代に適応するため、「勉強しなければ…」という意欲の表れが強いとみた。この傾向は若手に限らず、中高年世代にも同じ傾向が見かけられた。
職業別では会社員が最も多い20人(男性7人、女性13人)。次いで学生12人(全員が女性)。無職と年金生活者も同数の12人(男性7人、女性5人)。看護婦4人含まれていたが、主婦は1人(現地には主婦という語彙はあるが女性の有職率は8割で、中年層は実質100%に近い)。配偶者の「あり」「なし」では前者が24人、後者が23人の内訳でまた、離婚が8人、未亡人3人が含まれている。
〔受講の開始時期〕
今回調査した時点(1998年3月)から逆上る4年間で「受講した」人は30人と過半数を占める。無回答が7人いたのは、その時期を正確に思い出せなかったためと思われる。また、受講開始年はこの10年間でみると61%。有効回答では72%の高率。また10年以上のベテラン受講生は28%を占め、学習歴25年以上の超ベテラン組も12%(有効回答中)を占めていた。
開始時期をみると、この4年間で約9割を占める。この数字は受講生の大半が集中していることは科目の習得期間が1〜2年のため、この期間に集中しているとみられる。
〔学習機関以外の学習活動〕
学習者は、初めて学習サークルにくるまで一定期間継続して学習したことがあるかどうか8項目から選択してもらった(複数回答可)。
これによると、コミューンが主催、運営する「公共機関の講座」が79人中、28人(35.4%)とトップ。このことは学習サークルを受講する前に学習の下地を作っていることが分かる。また、単位交換性や資格取得などキャリアアップを図るための講座として、「大学や高校などなどの公開講座」が12人(15.1%)も占めるなど、「二人に一人」が生涯学習の機関を身近に感じ、また、それを利用していることがそのまま学習機会の高率に結びついている。
もっとも「特にしていない」が11人(13.9%)と選択8項目中、3番目を占めた。このほか、「動向のサークル、友人、知人の学習グループ」ととともに「一人で(参考書籍、放送講座など)」8人(10.1%)、「個人教授や民間の小さい教室」5人(6%)の順。
性別、年齢別でみると、「公共機関の講座」の男女比率が男10人、女18人。年齢別では、男性が60代以上が6人、女性は40、50代で11人を占めている。また、20代の女性が大学や高校などの公開講座や「同好のサークル、友人の学習グループ」の活用が目立つ。
もっとも、同年代では「とくにしていない」も同じ割合を示していた。年齢層間で比較してみた場合、いわゆる40−50歳代の中年層は、公共機関の学級、講座の利用率が高い。
次に受講講座の設問コーナー。設問が英語であったため、フォルクについては「語学講座」受講生だけに配布する変則になった。このため、外国語講座の受講構成だけに限定され、調査としてはやや変則的なものになっている。そこで、ABFの有効回答44人に絞ってみた数字から分析を試みた。
これによると、最も多かったのは「外国語」(20人)、次いで「その他」(12人)、「エアロビクス」(7人)、「タイプ」(4人)、「心理学」(5人)。「その他」と答えた講座は、家庭経済、数学、宗教、栄養学、科学など日本のカルチャーではあまりなじまないジャンルであった。また、7講座を同時に受講が2人。4講座以上の複数受講は44人中8人と2割近い。ちなみに7講座受講と答えたのは男女各1人。
属性別でみると、男性は60代で妻と二人暮らし。学歴は小卒で、職業は専門職の会社員。1991年に学習サークルに入会し、現在は外国語のほか、テニス、ゴルフ、水泳、ダンスなど健康志向を受講している。また、女性の場合は学歴、年代蘭に記入がない未婚者で、サービス関係の会社員。受講科目は外国語、簿記、料理、乗馬、フィットネス、心理学となっている。
また、国や自治体から補助があったとしても教材、交通費を含めた経費負担では男女とも一ヵ月間につき、500Skr(1Skrは16円)かかっていると答えている。
〔受講のきっかけ〕
▽ 講座情報の入手方法(複数回答72人)をみると、情報源で最も多かったのは「パンフレット・ポスターなどで知った」(20人)。続いて、「直接、学習サークルに問い合わせた」(18人)。「新聞、テレビなどマスコミの媒体で知った」(14人)、「家族、友人、知人らから教えてもらった」(同)、「病院、協会、コミューニティで知った」(3人)、その他も(同)の順。この順位から言えることは、周囲には「学びたい」という意欲があれば、社会環境が整っていることが分かる。また、マスコミ媒体率が高いのは同国の新聞講読率(千人に対し465部)やテレビの全世帯の普及率が9割という外的要因も大いに影響している。
▽ 調査目的のメインである受講理由(複数回答)では、100人中、トップは「日常生活に必要だから」(15人)。続いて「キャリアアップしたいから」(14人)。また、「自分の関心にあった講座だったから」、「趣味や楽しみのために」、「過去に学び、もっと勉強したかったから」が同数の11人。あと、「大学など別の教育機関に学ぶための準備をしたいから」、「健康のため」、「友人など交際を広げようと思ったから」(各6人)。
このほか、「自分に都合のいい時間だったため」、「その他」が各4人。「生活にゆとりができたから」(3人)、「何か生き甲斐が欲しかったから」(2人)。ちなみにその他を含めて14項目列記の中で、ゼロ回答は「家人、友人、知人らにすすめられたから」。
ゼロ回答をみる限り、他人に干渉せず、わが道を行く個人主義の証明ともみえる。しかし、上位2つにランクされた理由をみると、この背後には<自由・平等・公平>といった民主主義の基本的価値観や「自分のペースでする学習」、「自由意思に基づく学習」などの義務教育の基本が成人にも影響しており、真面目な人間像が浮き彫りにされていると言えよう。ちなみに同一質問を試みた日本の調査(財団法人産業研究会、委託先・全国民間カルチャー協議会、「受講者の学習意識に関する調査研究、平成5年)では、「趣味や楽しみのために」は共通するものの、通学の利便や時間帯など、そこに「学習機関があるから」と、やや他人任せ的な気持ちが伺えられる。以上、主な点を整理してみると、
@自ら進んで学び、キャリアアップしたいという気持ちが性別、年齢をとわず表れている
A「学習することは生き甲斐」は、男女とも中高年齢層に顕著
B女性には「健康のため」「趣味や楽しみのため」など貪欲なまでの意欲が伺えられる
そして、学習する時の心得について質問したところ、圧倒的に多かったのは「学習は自分から進んでやりたい」が78人中、ほぼ過半数の34人。次が「学習は他の人と一緒にやる型が楽しい」(14人)、「学習は自分のペースでしたい」(12人)、「学習は自分の関心のあることを学びたい」(7人)の順。この数字からみる限り、動機と同様、学習は自己実現する手段として他人の力に頼ることよりも自らを奮い立たせる気持ちが強い。
このように学習サークルは単なる学習の場でなく、人々の内なる創造力や知的な親交、生活の楽しさといったものを開発し、育ててくれるような環境にあるといえる。
〔受講の成果〕
次に学んだことによる成果はどうだったのろうか。自分と周囲の人々に大別して聞いてみた。まず、自分の項の、上位3をみると、当然のことながら、「知識や技能が身についた」が58人中35人と過半数を占めるとともに、「関心や興味が広がった」(14人)「健康になった」(7人)と、受講で未知の学問が人生に大きな影響を与えていることが分かる。この上位2項目に絞ったものを年齢別でみると、「知識や技能が身についた」という回答をよせ、職業別、年代の世代間差はみられなかった。また、受講講座別でも、語学講座、教養講座、健康講座、趣味、実務講座とも差はあまりみられない。
これとは別に、注目したいのは、「家族との対話が増えた」、「家族や友人の尊敬を得られた」、「家族が励ましてくれるようになった」の家族3項目のいずれかに回答した人が79人中、32人中と4割を占めたことだ。つまり5人に2人は学習サークルが生活の中に組み込まれ、家族とのスキンシップや話題になっている。年齢、性別では「友人ができた」が男女とも20代の若手層が20人中8人を占める。「家族が励ましてくれた」も15人中10人が示すように、若い世代にとって、家族や学習の場での交流が学習するうえで大きな変化をもたらしていることが分かる。この傾向は職業別でも同じくみられ、年金生活者の無職層が20人中、6人いた。
一方、学んだ成果をどのような形で生かすは興味あるところ。これによると、受講動機、目的と連動していることが分かる。全体123人中、3割強を占めるのが「自己の成長と人生の充実に」(43人)。年齢別では20代が20人、中高年の40、50代が各6人。続いて「転職に」(27人)、「職場での資格取得」(16人)が上位3を占める。
このことは学習が労働市場政策と密接に結びつき、巷間いわれる、スウェーデンの学習サークルは日本が趣味・教養講座を重視する「教養型」であるのに対し、「実務型」といわれることをいみじくも表しているといえよう。男女別でみると、20代の男女が過半数の10人を占めている。
以下、「その他」を除くと「家庭生活の充実に」(7人)、「同好グループへの参加」(6人)、「ボランティアなど地域、社会的活動に」(5人)、「展示会、発表会などの出品に」(4人)。特に絶対数が少ない中でも、これらの項目については高齢者比率がいずれも1割を超しているのは、余暇時間にゆとりがあり、それがそのまま地域活動を含め余暇を楽しむことに結びついているといえよう。
そして、現在受講している講座を修了後はどうするかと、質問したところ、「継続をする」と答えたのが78人中、ほぼ過半数の34人。また、「このサークルにある別の講座を受講」(14人)と、学習意欲が旺盛だ。しかし、「他のサークルに行く」が12人と意外に高い。これは講座の内容に不満なのか、それとも学習サービスや受け入れ側の施設設備に何が問題点があるのか。この点を調査すれば何かが見えてくるかもしれない。これらは次の機会に調査する予定である。
(注1)「学習サークル」の名は、1845年にストックホルムで小さな集会があった時に産声をあげた。洋服職人で救貧医師だったエルミン(Ellminn.J) の呼びかけに応じた仲間や軍人、教師、学生、承認ら12人からこの称号を与えられたという。「悪趣味と下卑た娯楽と闘う」ことを期し、また、当時のギルド性の旧弊を打破する意図があった。
(注2)自由協会運動、禁酒運動、イギリスからもたらされた消費者と生産者の協力に関わる思想運動。

 参考文献

「スウェーデンの学習サークルの源」(スウェーデン社会研究月報Vo1.16,No4,1984)
「スウェーデンの社会政策と成人教育」 (月刊社会教育4月号,1998)
「スウェーデンの教育」(Marit Jorsater,翻訳・遠山真学塾編集部,1997)

<公認学習サークル団体>(図1)

団  体  名 創立期や理念、特徴など
ABF(Arbetanas bildning-forbud)労働者教育連盟
1912年設立。労働運動や消費者運動、障害者連盟など約50団体を傘下にする最大組織
FU(Folkuniversitetet)国民大学 1942年設立。ストックホルム、ウプサラ、イェーテボリ、ルンドなど各大学付属の成人学習活動が合併して発足
FS(Frikyrkliga-Studieforbundet)自由教会学習連盟 1947年設立。スウェーデン国教会以外の非国教派が母体
Sfr(Studieframjandet)学習促進協会 1959年設立。余暇活動、環境保護運動が中心
KFUK-KFUMYMCA-YWCA学習連盟 1929年設立。YMCA、YWCAと福音同盟組織からなる
SV(Studieforbundet Vuxenskolan)成人学校協会 スウェーデン農民学習連盟(1930年設立)と自由主義学習連盟(1948年設立)が67年に合併。農民、中道政党組織が会員
NBV(Nykterhetsrorelsernas Bildningsverksamhet)禁酒運動教育協会 1894年、1904年、1909年にそれぞれ設立された禁酒運動系の団体が1971年に連合した
Mbsk(Studieforbundet-Medborgarskola)市民教育連盟 1940年設立。穏健、統一党系関係の組織が主体
SISU(Svenskaidieforbund)スポーツ学習連盟 1985年設立。スポーツ普及運動の成人教育組織
SKS(Sveriges kyrkliga studiefobund)スウェーデン国協会教育連盟 1930年設立。キリスト教組織の会員が主体
TBV(Tjanstemannens Bildningsverksa)俸給職員教育協会 1935年設立。ホライトカラーの中央組織TCO系列が母体

図2 略


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