この事例集は、広島大学図書館リポジトリアドバイザーである黒澤節男 『機関リポジトリと著作権 Q & A』 (http://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/00023065)および各大学機関リポジトリを参考にしています。

 

SUCRA と著作権について (= 著作権編)

  1. SUCRA に登録するための著作権処理とはどういうことですか?
  2. 他の論文に掲載されている図表や写真を自分の論文で使いたいのですが、著作者の許諾が必要でしょうか?
  3. 自分が著作者である論文は、他の著作物でも自由に利用できますか?
  4. 出版社や学会に著作権を譲渡している論文を博士論文の1章として転載する場合、著作権者である学会の許諾が必要でしょうか?
  5. リポジトリに論文を登録すると、著作権は文教大学に譲渡されるのでしょうか?
  6. 論文を投稿するときに出版社や学会に著作権を譲渡していますが、その論文をリポジトリで公開できますか?
  7. SUCRA で論文を公開する場合は、共著者すべての許諾が必要でしょうか?
  8. 出版社や学会の許諾が得られずリポジトリ公開ができない論文について、学内サーバに保存してもよいのでしょうか?あくまでも保存用で公開はいたしません。 また、そのファイルをILLで複写受付があったときに利用してもよいでしょうか?
  9. 販売している単行書の章部分だけの公開はできるでしょうか?
  10. リポジトリで公開する科学研究費報告書や博士論文の内容は、公表済みとみなされますか?また、その内容を雑誌論文に投稿する場合は二重投稿になりますか?
  11. 校正前の原稿ファイルではなく、校正後の出版されたレイアウトでの論文を公開したいのですが、出版された雑誌から該当論文をスキャンして登録・公開することはできますか?
  12. コンテンツのメタデータに抄録を付けていますが、抄録に著作権はありますか?また、Web of Science などの二次情報データベースに示されたキーワードを メタデータを作る際に使用してもよいでしょうか?
  13. 自機関の刊行物を SUCRA に登録する場合、刊行物を印刷した業者 (印刷会社等) の許諾は必要でしょうか?
  14. 学位論文の著作権は基本的に著者にありますが、指導教員の指示や指導で書きあがったものの場合、著者だけの許諾で公開してもよいものでしょうか?
  15. リポジトリで公開している論文の内容について、著作権の侵害であるとクレームがついた場合、図書館ないしは大学が何らかの責任をとってくれるのでしょうか?
Q1: SUCRA に登録するための著作権処理とはどういうことですか?
機関リポジトリで論文等を公開する場合、すべての著作権者から以下について許諾を得る必要があります。
  • 「リポジトリのサーバに保管する」 (複製)
  • 「ネットワークを通じて公開する」 (公衆送信)
その際の留意点は次のとおりです。
  • 著作権は元のまま (著作権を譲渡するのではない)
  • 著作物の改変は許諾しない (利用・保存のためのフォーマット変換、例えば WORD 形式から PDF 形式へ変換することはありますが、内容は改変しません)
  • 利用者は著作権法の範囲内で利用可能 (私的利用のための複製等)
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Q2: 他の論文に掲載されている図表や写真を自分の論文で使いたいのですが、著作者の許諾が必要でしょうか?
図表や写真は、著作物の例示として著作権法に記載されているので保護の対象となります。ただし、著作権のあるものは、権利者の許諾を得て使用するのが原則ですが、 著作権の消滅したもの (著作者の死後 50 年経過したもの)は、自由に使えます。また、写真については 1996 年以前に公表されたものは、 著作権の保護期間が他の著作物より短くなっています。使用にあたっては事前に調査する必要があります。
著作権が存続している図表や写真でも、「引用」 という使い方であれば、許諾なしで使用することができます。「公正な慣行に合致するものであり、かつ、正当な範囲」 (著作権法第32条) であれば、 他人の著作物の一部 (本文、図表、写真) を自分の著作物に利用することは、自由に行ってよいことになっています。その場合の条件として、
  1. 自分の著作物が「主」で他人の著作物が 「従」 であること
  2. 自分の著作物と他人の著作物とを明確に区分すること (引用部分をかぎ括弧 「」 とする、など)
  3. 出所を明示すること
1、2、3 が必須です。
引用の範囲を超える利用については、出版社など著作権保有者に書面により許諾を求める必要があります。
図表や写真でも、白書など国や公共団体が作成した広報目的の資料から使う場合であれば、大幅な転載が認められています。
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Q3: 自分が著作者である論文は、他の著作物でも自由に利用できますか?
日本の場合、著作者は、論文を書けば何らの手続きをすることなく、自動的に著作権を持ちます。他人が利用したいときには、複製などの許諾をするかしないかという権利 (財産権)、 要約して使わせるかどうかの権利 (著作者人格権) の両方を持ちます。著作者人格権は譲渡不可能ですが、財産権の方は譲渡可能です。多くの学会は、学会誌に掲載した論文については、 学会に著作権が譲渡されるように定めています。その場合は、自分の他の論文で使うにあたっても当該学会の許諾が必要です。
現実には、「著者自身が自分の論文の全部または一部を複製・翻訳、翻案などの形で利用する場合は、その著作物の出典を明記する限り、 これに対して本会は原則的に異議申し立てをしたり妨げることはしない」 と規定している学会と、学会の許諾が必要としている学会、 自分自身が利用することについては何らの規定もしていない学会と分かれています。具体的には、論文が掲載された雑誌の投稿規程または論文投稿時に提出した License Agreement 等をまずは確認してください。
電子情報通信学会の場合、 1.発行後の利用であること、2.非営利目的による利用であること、3.本会の利益を不当に侵害しない範囲における利用であることを前提として、 権利表示と出所の明示をすれば利用申請は不要としています。
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Q4: 出版社や学会に著作権を譲渡している論文を博士論文の1章として転載する場合、著作権者である学会の許諾が必要でしょうか?
上記に準じます。現実には、出版社や学会の取り決め次第ということになりますので、まずは確認する必要があります。 特段、出版社や学会で決めていなければ、本来、著作権は著者本人が持っているので、それを博士論文の1章として転載することは差し支えありません。
  • Elsevierの場合 → 論文の著者は、学位論文にその論文の一部またはすべてを含めることができる。
  • Taylor & Francisの場合 → 出典が明示されており、商用ベースでない学位論文であれば、著者には論文を学位論文に含めることができる。
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Q5: リポジトリに論文を登録すると、著作権は文教大学に譲渡されるのでしょうか?
リポジトリに論文を登録することは、著作権保有者が図書館に対して、リポジトリに登録していいですよと、許諾を与えただけ (リポジトリのサーバに保管する 「複製権」 とインターネット上で無償公開する 「公衆送信権」 の行使) で、それによって、権利が大学に移転されるようなことはありません。
著作権は、著作者 (研究者) または出版社・学会に残っているわけですから、SUCRA 以外の別のリポジトリに登録することも可能です。
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Q6: 論文を投稿するときに出版社や学会に著作権を譲渡していますが、その論文をリポジトリで公開できますか?
出版社・学会の許諾が必要です。ただし、著作者に自分の論文をリポジトリで公開する権利を留保すうような契約になっている場合には、著者が OK するだけで登録することが可能です。 最終的には出版社・学会がどういう方針を取っているかによります。
  • 日本機械学会の場合 → 著作者自身の所属機関で、自分の論文や発表資料等を電子書庫での保存やインターネットでの公開を行う場合に限り、許諾申請は不要。
  • 日本生態学会の場合 → 大学図書館等が日本生態学会に申請書等を提出し、学会からの許諾を得れば、著者は自分の論文の最終原稿を機関リポジトリに登録することができる。
  • Elsevier の場合 → 著者は、事前の許諾なしに、エルゼビアのジャーナルに掲載済または掲載予定の論文の著者版最終原稿を著者個人または所属機関のウェブサイトやサーバに掲載できる。
  • Cambridge University Press の場合 → 著者は、出版 1 年経過後に Cambridge Journals Online で公開している確定版の論文 (PDF 形式または HTML 形式=出版社版) を自分の所属する機関リポジトリに掲載することができる。
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Q7: SUCRAで論文を公開する場合は、共著者すべての許諾が必要でしょうか?
共有著作物の権利を行使するには、権利者全員が合意する必要があります。ただし、各共有者は、正当な理由がない限り同意を拒んではいけないことになっています。 著作権を個々の著作者がもっていれば各共有者の同意が、出版社や学会に譲渡されていれば、そちらの同意が必要です。ここでいう 「共有著作物」 というのは、 当該論文を複数の人が書いている場合で個別に分けられない場合をいいます。逆に、当該論文の章ごとに著作者が明確に分かれている場合は、共著といっても分離して利用が可能なので、 章の執筆者がその部分だけをリポジトリに登録する際には、他の著者の許諾は必要ありません。
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Q8: 出版社や学会の許諾が得られずリポジトリ公開ができない論文について、学内サーバに保存してもよいのでしょうか?あくまでも保存用で公開はいたしません。 また、そのファイルを ILL で複写受付があったときに利用してもよいでしょうか?
著作権が全面的に譲渡されていれば学内のサーバに保存すること、すなわち複製も違反となります (複製権による制限)。 公開しないのならば複製してよいという留保があれば可能です (公衆送信権は制限、複製権はOK)。ILL については、公表された著作物であれば、著作権法第 31 条の範囲内で可能です。
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Q9: 販売している単行書の章部分だけの公開はできるでしょうか?
単行本の場合、出版権設定契約をしていることがあり、出版する場合には問題になりますが、章だけの公開は出版ではないので、著作権保有者の許諾が得られれば可能です。
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Q10: リポジトリで公開する科学研究費報告書や博士論文の内容は、公表済みとみなされますか?また、その内容を雑誌論文に投稿する場合は二重投稿になりますか?
著作権法では 「公表」 とは、相当程度の部数の複製物が配布 (発行) されるか、公衆送信つまりインターネットによって公衆に提示された場合を 「公表」 と定義付けています。 数冊だけを印刷して、図書館や関係者だけに提出して、一般利用者が見ることができない状態であれば 「公表」 とはいえませんが、それらをリポジトリに登録して一般に見られる状態になっていると 「公表」 になるので他の雑誌論文に投稿することは二重投稿になる場合があります。日本社会学会の 『社会学評論』 は、 科学研究費補助金の調査報告書に執筆した論文や大学院に提出した博士論文は 「既発表論文にあたる」 としています。 一方、日本原子力学会の投稿規程は、学協会または審査機関による査読を経た論文で、かつ、通常の手段で論文の入手が可能 (インターネットを含む) である公表された論文は、 二重投稿できないとしているので、例えば、査読を経ない紀要に掲載した後、リポジトリに登録したからといって、それを学会誌に投稿できないわけではありません。
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Q11: 校正前の原稿ファイルではなく、校正後の出版されたレイアウトでの論文を公開したいのですが、出版された雑誌から該当論文をスキャンして登録・公開することはできますか?
著作権者の了解があれば、雑誌からスキャンして公開することは可能です。ただし、著者と出版社側との契約で出版社版からの複製が認められていない、ということであれば、 原稿ファイルを基にした公開とせざるを得ません。英国の調査によれば、欧米の学会誌の場合、90 %以上が論文の機関リポジトリへの登録を許諾手続きなしで認めていますが、 出版社がレイアウト・編集した出版社版からのスキャンはほとんどの場合認められていません。著者版最終原稿ファイルを登録することになっています。 SUCRA では、著者版最終原稿を登録する際に、出版社版がすでにネットで公開されているようであれば、当該論文の DOI (Web上の電子文献コード) や電子ジャーナル URL をメタデータとして付与することによって、出版社版へのリンクが形成されるようになっています。
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Q12: コンテンツのメタデータに抄録を付けていますが、抄録に著作権はありますか?また、Web of Science などの二次情報データベースに示されたキーワードを メタデータを作る際に使用してもよいでしょうか?
抄録が二次的著作物に該当するかどうかについては、原著作物とそれを基として作成された二次的作品との内容的関わりの度合い、創作性の有無などで判断されます。 文献の存在についての指示を与えるだけであって、内容の把握については本文を必要とする程度の 「指示的抄録」 は二次的著作物に該当しませんが、 内容をある程度概括している「報知的抄録」については二次的著作物に該当します。二次情報データベースで付与されているキーワードについては、 誰が考えても同じものができる可能性が高いということで著作物とはいえませんので、メタデータに使用しても問題ありません。
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Q13: 自機関の刊行物を SUCRA に登録する場合、刊行物を印刷した業者 (印刷会社等) の許諾は必要でしょうか?
版面権は認められていないので、ページのレイアウトなどには権利は発生しません。ただし、刊行物やパンフレットの表紙などをデザインしたのが業者であれば、許諾が必要になってきます。
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Q14: 学位論文の著作権は基本的に著者にありますが、指導教員の指示や指導で書きあがったものの場合、著者だけの許諾で公開してもよいものでしょうか?
著作者とは、その思想・感情を表現した人のことです。当該学位論文の中に指導教員が実際に書いた部分があれば共著となり、許諾が必要になりますが、 教員の助言やアイデアを受けて執筆者自身が論文を書き上げたのであれば共著にはなりません。権利としては著者の許諾だけで公開することができます。
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Q15: リポジトリで公開している論文の内容について、著作権の侵害であるとクレームがついた場合、図書館ないしは大学が何らかの責任をとってくれるのでしょうか?
論文の内容についての責任は、すべて著者が持つことになります。内容に著作権侵害があった場合、窓口としての対応は図書館が行うことはありますが、 責任はあくまでも著者にありますので、図書館としては、クレームをつけてきた人と著者との話し合いの仲介をすることはあり得ます。
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