社会科教育法で何を教えるべきか。この問いに対して、「如何にして児童・生徒を授業に惹きつけるかのテクニック、そして学習指導案の書き方の教授である」という答えが返ってきたら、どうコメントを返すべきか。そうした知識・技能はどうでもよいことだ――そこまでは言わないが、大学の講義でメインに取り上げるべきことではない、と答えざるを得ない。ではどういうことをメインにするのか。本著は、その問いに対する筆者なりの真摯な答えである。大学においてメインに教えるべきことは、社会科論とそれをめぐる諸知識である。
ここでは様々な社会科論をとりあげ、それらが(1)どのような主張(社会科という教科ではどのような力を子どもに付けるべきか)を持っているか、(2)その主張を具現化するためにどのような単元構成になっているか、(3)単元構成の核にはどのような主発問があるのか。
こうしたことを比較しながら解説している。また、それぞれの社会科論が登場した背景にはどのような社会背景や教育論があったのかについても詳細に述べている。
こうした論述の根底には、哲学を持った教師になってほしいという著者の願いがある。
文教大学教育学部教授、教育学研究科専攻長、学校教育学博士
まえがき
第I部 さまざまな社会科論
第I章 社会科の授業改善動向について
第1節 総論
第2節 「楽しい志向」の社会科授業改善動向
第3節 「教科論志向」の社会科授業改善動向
(1)「社会諸科学科論」について
(2)「共感的理解科論」について
(3)社会諸科学科から共感的理解科へ
(4)共感的理解科の問題点
(5)意思決定力育成科
(6)合意形成科
第II章 社会参画学習
第II部 授業プラン例
(1)小学校3年生「私たちの町、越谷市」(地理)
(2)小学校4年生「どこに作ろう 新しい清掃工場」(環境)
(3)小学校5年生「損な注文も受けるって本当!?」(日本の工業)
(4)小学校6年生「未来を拓け! 様々な視点で考え、意思決定」(歴史)
(5)中学校3年生「カンボジアの人々とわたしたち」(国際理解)
あとがき