《警備業務》
警備業は「人の生命、身体、財産を守る」を基本原則とする、生活安全産業である。各都道府県に警備協会があり、各協会は様々な行事に参加している。例えば、東京都警備協会は地域安全運動等に協会を挙げて参加しており、地域住民の安寧のために積極的な活動を行っている。
近年はひったくりなどの該当犯罪に加え、コンビに強盗や侵入強盗などの犯罪が急激に増加しており、犯罪の多発に歯止めがかからないという厳しい状況にある。警備業に対する社会的需要が全国的に高まっていることから、警察庁もついに警備業界に犯罪抑止の協力を呼びかけるに至った。
警備業法において「警備業務」とは、以下のいずれかに該当する業務であって、他人の需要に応じて行うものをいう。 |
1.警備業務対象施設(事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地等)における盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務。 |
2.人もしくは車両の雑踏する場所、又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務。 |
3.運搬中の現金、貴金属、美術品等に係る盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務。 |
4.人の身体に対する危害の発生を、その身辺において警戒し、防止する業務。 |
警備業法において「警備業」とは、警備業務を行なう営業をいう。 警備業法において「警備員」とは、警備業者の使用人その他の従業者で警備業務に従事するものをいう。 さて、以上の定義を踏まえた上で、警備業の全体像見ていく。 |
図1 警備業務の分類 |
図1では、警備業務を第1号警備から第4号警備までの4種類に分類した。一口に「警備業」と言っても、内容は様々である。 1.第1号警備 (1)機械警備 機械警備システム(警報装置、センサー、監視カメラなど)を用いた警備のこと。ホームセキュリティーが有名。警備員は現場に常駐しないことが多く、通報によって駆けつける。施設警備の一分野であるが、施設に常駐しないことから厳密な施設警備とは区別されることもある。 (2)駐車場警備 駐車場の安全管理または駐車場内での車両誘導を行う。 (3)空港警備 空港における手荷物検査や不審物の警戒などを行う。専門の技術や経験が必要とされる。 (4)常駐警備 娯楽施設や商業施設、またはオフィスビルなどに常駐し、不審者の侵入や犯罪を防ぐもの。 (5)保安警備 何らかの危険を伴う施設(工事現場など)に常駐し、第三者を危険にさらさないよう努める。 また、デパートやスーパーマーケットなどにおける万引き防止と現行犯逮捕も保安警備である。 2.第2号警備 (1)道路規制 工事やイベントなどによる公道の交通規制。工事の場合は道路使用許可証の内容を遵守した上で、警備員が行うことがほとんど。イベントの場合は警察官が出動することも多い。 (2)催事警備 イベントの警備。来訪者(客)の集中による事故の防止に努める。来訪者を整列させたりして、混乱や将棋倒しを回避する。 (3)交通誘導 車両誘導と歩行者誘導に分けられる。車両および歩行者の安全かつ円滑な交通をサポートする。道路交通法の遵守が大前提であり、誘導はあくまで誘導される側の任意によって進められる。警察官の交通整理には公務執行の権限があるが、警備員の交通誘導にはまったく権限はない。 3.第3号警備 (1)危険物取り扱い警備 原子力発電所等で危険物を扱う際に行う警備のこと。きわめて専門的な分野である。 (2)貴重品輸送警備 現金輸送、美術品輸送など貴重品の輸送を行う。輸送車も警備員の装備も、特殊なものを使用している。 4.第4号警備 (1)要人警備 社会的に地位や身分が高い人のボディーガードのこと。要人の身の安全を確保することが目的。 (2)特殊警備 労働争議や紛争などの当事者を警備するもの。株主総会、学園紛争、成田空港闘争などに始まり、花嫁警備や精神病者等の自殺・暴力防止警備も含まれている。 5.その他 以上が警備業の大枠であるが、その他として列車見張がある。線路上の工事等で、列車が近づいたときに作業員に警告するもの。列車見張資格を取得することが必要で、列車見張員の腕章をつけたうえ、特別な制服を着用する。 |
※「ケイビホショウ」の違い
「ケイビホショウ」という言葉には3種類の漢字が当てはめられますが、それぞれ意味が異なります。
1.「警備保障」:警備対象が犯罪・火災・災害その他によって侵されそうになった場合に、人力および機械によって被害を防ぐこと。
または、被害が生じても、被害を最小限に食い止めること。
2.「警備保証」:警備対象の安全を言動・文章によって契約先に伝えること。
または、警備対象の問題点・注意点を指摘すること。
3.「警備補償」:警備業者が警備遂行中に、警備対象に何らかの損害が生じた
場合、警備業者が損害額に見合うものを支払うこと。
※現行犯逮捕権と施設管理権
警備会社はあくまで民間企業であり、当然ながら警備員にも特別な権限は一切認められていません。しかし、現行犯逮捕と迷惑客の排除を行うことができます。
「現行犯逮捕権」:現行犯逮捕は刑事訴訟法によるもので、目の前で犯罪が発生した場合、何人でも犯人を逮捕することができるというものです。
「施設管理権」:迷惑客の排除は、施設管理権を委託されたことで可能になります。施設を警備するとき、管理人は警備員に対して施設を管理する権利を委託します。これにより、警備員は管理人同様に、不審者の侵入を防いだり、迷惑な客を排除することができるのです。