≪ホームセキュリティと都市・家族の概要≫

 ホームセキュリティとは、第三者が依頼主の個人宅を警備することによってその個人宅の財産等を不審者から守ることである。

 ホームセキュリティは1981年に警備会社「セコム」が始めたもので、2002年3月末に契約者は約216,000戸に上っている。しかし、契約者数は約20年の間で徐々に増えたわけではない。1998年から2002年までの4年間に倍増したのだ。利用者も高齢者から30代あたりまでと、幅が拡がっている。近年、急激に防犯意識が高まっていると言えよう。その需要に比例して、画像伝送システム等を利用した新たなセキュリティシステムが普及しつつあるほか、GPS(衛星観測システム)等を利用し、交通事故等が発生した際に関係機関への迅速な連絡を行うことを目的とした自動車からの緊急通報サービスが進展を遂げている。

 日本防犯設備協会によると、侵入者探知機や監視装置などの防犯機器の国内出荷額は2001年で約5,800臆円であった。これは1991年の出荷額の約3倍である。同協会が一般向けに販売しているホームセキュリティのガイドブックも好調な売れ行きだそうだ。「防犯」をテーマとした最近の番組として、フジテレビが2003年11月2日に放送した『発掘!あるある大辞典』がある。その内容を紹介した新聞記事(産経新聞2003年11月30日)は、[「水と安全はタダ」というのがかつては日本では常識だった。しかし、それは現在では通用しなくなっている]という書き出しであった。

 不動産業界も防犯対策に注目している。ミサワホームが2002年7月に販売を開始した「マホーの家」は、指紋照合の扉を玄関に採用、室内には赤外線センサーで点滅する照明を設置して、侵入された場合も想定した防犯対策を施している。同社の見解は、「住宅に求めるものが『収納』から『防犯機能』に変わってきている。販売以来、問い合わせも多く、受注も順調」ということだ。

 以上、「セコム」「日本防犯設備協会」「ミサワホーム」を例に挙げたが、やはり注目すべきはセコムのホームセキュリティである。防犯機器や住宅の防犯設備は、あくまで居住者自身の手に委ねられている。つまり、「警備」ではなく「自衛」または「守衛」と呼ばれるものである。一方、セコムのホームセキュリティは「警備」である。警備の基本概念として、「依頼に基づいて第三者が、人の生命、身体、財産を守る」がある。ホームセキュリティはまさに、警備員としての第三者が依頼に基づいて行われる。

 しかし、警備員と言えども、あくまで部外者である。依頼者はなぜ、自分の家を部外者に守ってもらわなければならないのだろうか。





『安全神話』の崩壊〜警備員の社会学〜