第4章
「はたしてロゴTシャツのロゴには意味があるのか」の考察
なぜ英語が多いのか
まず、調査をした中でも注目したいのは英語で書かれたロゴが多かったということだ。そのほかの語は英語に比べて本当に数は少なかったがフランス語、日本語などがあった。英語がなぜ多いのかというとロゴTシャツが広まったのはアメリカの影響である流れと、英語を多くの場合日本人は学ぶので、やはり意味がわかりやすいからではないか。
しかし、私たちはロゴTシャツを着ている人、見ている人は、その単語の意味を意識しておらず、デザインの一部としてとっているのではないかと考えた。ロゴには筆記体を崩したものや、文字の一部が書けているものなど、読みにくい文字で書かれているものも多かったし、雑誌の写真ではロゴを読み取れないようなポーズをモデルがとっていることも多く、まだ英語を習っていないような幼児向け小学生向けの物ですらアルファベットで書かれているからである。
つまりアルファベットで書かれている事に意義があり、単語の意味を気にしてはいないのではないかということだ。例えば日本語Tシャツが台湾やベトナムでよく売り出されている感覚と似ているのではないか。ロゴがアルファベットで記されているのが多いのはそのほうがデザイン的にかっこいいと思って着ているのだろうと考えたのだ。
ロゴTシャツの単語の意味
だが、調査を進めていくうちに、ロゴが、中学生程度の英語力があればすぐに判るようなわかりやすい単語、つまりパッと見てわかる英単語(ex>love)と辞書を調べても載っていないような難しい英単語(ex>CARROLGARDENS)に分かれていることに気がついた。ただし、難しい英単語といっても、その単語だけのものよりも、パッと見て読める単語と、読む気がうせるような難語・マニアックな固有名詞・長文とを混ぜているものが多いようだ(ex>P.O.PT THE GREENWICH VILLAGE KNUSKOOL)。
その中のパッと見て単語の意味を見ていくと、Tシャツの歴史の流れから音楽(ex>ROCK)・社会批判や平和運動(ex>love and peace)・スポーツ(ex>Angels76(アメリカの野球チーム))と結びついた単語も多い他にはやはり、Tシャツは夏のものなので、ロゴには夏に関する単語、連想させる単語が多かった(ex>surf/tropical correction island)。
しかし、単に歴史の流れで今まである単語を使うだけでなく、パンクロック系ブランドのTシャツのロゴは(ex>BAD TASTE/Buddhist punk)など、ロゴの種類もブランドの対象となる世代、性別の興味のあるものにコンセプトが絞られ書かれているようだ。例えばポップティーン2003年8月号でのファッション以外の掲載記事は、恋愛のこと、南の島のことなどであったが、この世代のロゴで多いのは、Hawaii /aloha/loveなどである。
また、例えば、マルコムXの映画が公開された1993年にはマルコムXTシャツが日本で流行し店頭で多く見られた事からもわかるように、社会背景(戦争= ex>no war /love and peace ) 流行(今年の流行=日本で注目されているセレブの着ているようなファッション=例→HARD CORE Dior(Dior)/Romeo VALENTINO(VALENTINOではない))というのも関係がある。
このようにパッと見て意味が分かりやすく、人の興味がそそられるような単語が混ぜられているのは、作る側は買う側の興味がそそられるようなロゴを意識してプリントしているからだと考えられる。
そして、そのロゴは着ている人間の修飾をすることが多い、「I」からはじまるロゴの数は本当に多かった(例I love ice cream)。固有名詞(ブランドのロゴを含めて)が多いのも自分があえてそれを選択した、という自己の主張であるし、メッセージも自分のことを発していることが多い。つまり本来、ロゴの働きは着ている人を修飾しそれを見ている人に伝えることだといえる。
このような工夫にも関わらず、着る側・見る側のロゴの意味に対しての興味が低いのは、自分で考えたものでなく、作る側によって考えられて作られたロゴなので、多種多様になってきた人々の興味・主張に対応しようとし多様なロゴは意味を考えていくのだが、多種・多様すぎてナンセンスで意味の分からないものとしかとられないようになり、「着ている人を修飾しそれを見ている人に伝える」ロゴTシャツの本来の働きを果たさなくなってきているからではないか。そしてそれを補うためにロゴの意味よりはデザイン性が重視されるようになり、ロゴがデザインの一部としか見られないようになったのだろう。
考察のまとめ
以上のことより、「ロゴTシャツのロゴにはその単語の意味というよりは、自己主張という働きに重点が置かれている」ということができる。
着ている人自身の好み、興味を持っているものを不特定多数の人(ファッションを見る人)に伝える働きを持っているためにパッと見て意味がわかる単語が混ぜられていると考えられる。
しかしロゴTシャツが既製品である以上は既に興味を持っているだろうと作る側によって考えられて作られたロゴなので自己主張にもパターンにも限界がある。多種多様になってきた人々の興味・主張に対応し切れなくなり「着ている人を修飾しそれを見ている人に伝える」というロゴTシャツのロゴ本来の働きが薄れ、そしてそれを補い自己主張を行うためにロゴの意味よりはデザイン性が重視されるようになりロゴの意味を着ている人が深く考えないようになったのだろう。
Tシャツのロゴを意識していますか?
いま、自分でロゴをデザインし、それをプリントしてもらいオリジナルのロゴTシャツを作る人が増えてきている。これは、既製のロゴでは自分の伝えたいことが伝えられず、自分で自分の伝えたいことを伝えるという新しいロゴTシャツの流れだろう。
一方でデザインとしてだけで見れば、デザイン性が高ければ何がロゴTシャツらしくアルファベットで書いてあれば良いということになる。
「ロゴ」の意味というのは、ファッションのデザインとして見るか、自己主張として見るか、着る側・作る側・見る人の個人の意識や理解力、興味によって、同じ意味を持つ単語でも変わっていくのではないか。
参考文献
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「ラブベリー」2003年5月号 徳間書店
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「ELLE」2003年JULY no.225 株式会社アシェット婦人画報社
「nicola」2003年9月号 新潮社
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「T-shit Hand Book」Play Made Factory 2000
「ジーンズとTシャツはじめはだれが着たの?」能澤慧子監修 野中祐文 PHP研究所 2000
「Tシャツを作ろう」上口睦人 ダヴィット社