年々、銭湯が減少している一方で「スーパー銭湯」と呼ばれる入浴施設が、郊外に数多く建設され、人気を博している。自分が住んでいる近くにも一軒、さらに大学の近くにも今年新しくスーパー銭湯が作られていた。街から銭湯が1つ、また1つと消えていく中で、なぜスーパー銭湯が流行しているのかを考えてみたい。

 まず、スーパー銭湯とは何なのだろうか。銭湯とスーパー銭湯の違いから考えてみたい。一般の銭湯の入浴料金は、「物価統制令により法律で各都道府県ごとに決められている」(1)が、一方スーパー銭湯はそれぞれのスーパー銭湯が自由に入浴料金を決めることができる。実際には銭湯よりも少しだけ高い料金に設定されていることが多いようだ。風呂はというと、銭湯に比べスーパー銭湯にはバラエティに富んだ様々な種類の風呂がある。また、銭湯が街中にあることが多いのに対して、スーパー銭湯のほとんどは郊外に建設されている。そしてその郊外という立地条件を生かしてスーパー銭湯には、銭湯にはない巨大な駐車場を完備している。

 またスーパー銭湯と似た入浴施設に、健康ランドがあるが、スーパー銭湯は健康ランドに比べて入浴料金が安く、健康ランドによく見られるレストランや宴会場などがない風呂に特化した入浴施設だと言える。

 これらのことをまとめてみると、スーパー銭湯は、銭湯並の低料金で多彩な風呂が楽しめる風呂に特化した郊外型の入浴施設、ということになる。

 さて本題のスーパー銭湯がなぜ流行しているのか、ということだが、現在の日本の「車社会」が大きく関係しているのではないだろうか。

 先ほどスーパー銭湯と銭湯の違いについて述べたが、料金と風呂の総合的な価値という視点でみれば、スーパー銭湯に多少のアドバンテージはあるものの、これがあるから銭湯ではなくスーパー銭湯だけが流行るというほどの、大きなアドバンテージはないように思う。では何が大きなアドバンテージになっているのか。それは駐車場ではないだろうか。駐車場というのは、風呂の種類や料金と比べると、さして重要ではないように思えるが、この駐車場こそがスーパー銭湯が流行っている一番の大きな理由だと思うのである。今の日本は車社会で、特に都市部から離れたところでは、車なしで生活していくことは困難だ。銭湯に入ろうとしても駐車場がないため車で行くことができないというのは大きな差になる。アメリカは日本が車社会になる以前から車社会だったわけだが、アメリカには郊外型の巨大なスーパーやホームセンターが多い。もちろん巨大な駐車場が設けられている。つまり、スーパー銭湯とは車社会がもたらした新しい形の銭湯だといえるのではないだろうか。

 

参考・引用文献

(1)町田 忍『銭湯の謎』、扶桑社、2001

 

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