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第3章 調査結果

3.1 マンガ読者のタイプ分類
(1)タイプ分類の検討

 仮説にある分類軸の中心となる「マンガ描写の経験の有無(読みの能動性)」と「マンガ本の保存・廃棄/売却(消費行動)」の設問以外に………などの分類軸の候補となる設問を用意した。しかひ、分類の検証の結果、当初案ではうまくいかず、「一ヶ月に読む単行本の数(6冊以上/5冊以下)」と「マンガ評論の本やマンガの批評をしたコラムを読むか(読む/読まない)」の2つが、分類の軸として有効であることがわかった。以下の2つのグラフは単純集計の結果である。


  この2つをクロス集計いて読者のタイプ分類の作成を行った。その結果が以下のグラフである。

 
 

[type1]一ヶ月に読む単行本が6冊以上・マンガに関する評論を読む    8.2%(n=9)
[type2]一ヶ月に読む単行本が6冊以上・マンガに関する評論を読まない   13.6%(n=15)
[type3]一ヶ月に読む単行本が5冊以下・マンガに関する評論を読まない  68.2%(n=75)
[type4]一ヶ月に読む単行本が5冊以下・マンガに関する評論を読む    10.0%(n=11)
 「一ヶ月に平均何冊のマンガ単行本を読んでいるか」と「マンガ評論の本やマンガの批評をした雑誌コラムを読むことはあるか」をクロス集計し、読者を4つのタイプに分けた。図3-1-3は、その構成比率を表したものである。Type3が一番多く、次いでtype2、type4、type1と続く。
 なお奥付のサンプルは男女比率は男性56.2%、女性43.8%、学年比率は1年生27.5%、2年生39.1%、3年生28.3%、4年生5.1%であり、4年生は少ないものの、それなりに平均的な学生像を反映しているものと考えられる。
(2)タイプ分類と読者の類型
 
 図3-1-4は「一ヶ月に平均何冊のマンガ雑誌を読むか」の回答を読者のタイプ別に表したものである。
type1、type2ともに「3冊以上読む」と回答した人が80%以上であったのに対し、type3、type4も約50%が「2冊以下」と回答している。このことから、単行本を多く読む人の方がマンガ雑誌もたくさん読むことが分かる。
また、type1とtype2、type3とtype4を比較すると、評論を読むグループ(type1、type4)の方が多くマンガ雑誌を読んでいることも分かる。
 なお、各タイプの回答の平均値は、type1:1.56、type2:1.80、type3:3.07、type4:2.36であった。

 
図 3-1-5は「いつからマンガを読む量が減ったか」の回答を、「大学生、高校生、中学生、小学生高学年から減った」と回答した人を『減った』とし、「変わらない・増えた」と回答した人を『減らない』として、読者のタイプ別に表したものである。
 「減らない」と回答した人はtype1が約78%と一番多い。次いで、type2、type4、typr3となっている。当然かもしれないが、やはり現在マンガを読んでいる量が多いtype1、type2の方が「減らない」と回答している。
 また、type1とtype2、type3とtype4を比較すると、「希少なマンガの収集に興味があるか」という項目と同様にマンガ(マンガ関連のものなど)に触れる機会の多い人の方がマンガの読書量は減っていないようだ。
 なお、各タイプの回答の平均値は、type1:1.11、type2:1.40、type3:3.97、type4:3.82であった。

 
 図3-1-6は「マンガを保存状況について」の回答を読者のタイプ別に表したものである。これは問2「あなたは購入・入手したマンガは保存しますか」に対して「すべて保存する」と回答した人を『保存する』、「選んで保存する・すべて廃棄する・すべて売却する」と回答した人を『廃棄・売却する』とした。
 グラフからも単行本を多く読んでいるtype1、type2の方が保存している人が多いことは一目瞭然である。そして、単行本を多く読んでいる両タイプの間でも評論を読んでいるか否かで大きな差が出ている。しかし、type3とtype4の単行本を読む量が少ないグループではほとんど差がない。マンガの保存状況は、評論を読むかどうかよりも、単行本を読む量(マンガ雑誌の読書量から、マンガを読む量と言ってもいいだろう)に関係していると言えるだろう。


 

 図3-1-7は「希少なマンガを収集することに興味があるか」の回答を読者のタイプ別に表したものである。
 全般的に「興味がある(はい)」と回答している人が少ないことから、学生はあまり希少なマンガに興味がないことが分かる。しかし、少ない中でもtype1とtype3とでは8倍近くの差がついていることから、やはり単行本を多く読み評論を読むなどの、マンガ(あるいはマンガ関連のもの)に触れる機会の多い人の方、希少なマンガに興味を持っていることが分かる。

 
図3-1-8は「周囲で話題になっているマンガを読むか」の回答を読者のタイプ別に表したものである。
ここで注目したいのは、type2とtype4である。Type4はtype2よりもマンガを読む量が少ない。しかし、この「話題になっているマンガに目を通すか」という問に対して、「読む」と解答している人がtype2に比べて約10%ほど多い。このことから、type4はマンガを読む量が少なくても、評論読むことで話題になっているマンガに敏感になっていると考えられる。また、自ら読みたいマンガを店頭で探すのではなく、評論され話題になっているマンガ読むことが多いとも考えることができる。逆にいえば、type2は評論を読むことはないので、話題になっているマンガに対してはあまり敏感ではなく、自ら店頭で悩み選んで読む場合が多いのではないだろうか。しかし、type2の73%という数字を無視することはできない。もしかしたら、評論などとは違った情報源からマンガに関する情報を得ているのかもしれない。type1は自ら店頭で選ぶことはもちろん、評論を読み話題になっているマンガも読むと考えられる。そしてtype3に至っては、マンガに対してあまり関心がないと言えるだろう。
図3-1-9は「マンガの発売日のチェックをしているか」の回答を読者のタイプ別に表したものである。
type1とtype2、type3とtype4を比較すると、どちらも評論を読んでいるか否かで大きな差が出ている。このことから、発売日のチェックをしているかどうかは、マンガを読む量ではなく、評論を読んでいるかどうかに関係していることが分かる。
先の図3-1-8の解説の際に触れたが、type2は店頭で(その場で)自分の読みたいマンガを選んで読む場合が高いと考えられる。そのことが、評論を読み事前にマンガについての情報をえているtype1やtype4のように、マンガの発売日をチェックするという行動に結びつかないのではないかと考えられる。
 図3-1-10は「発売日毎に必ず読むマンガはあるか」の回答を読者のタイプ別に表したものである。
 これもまた、発売日のチェックと同じように、マンガの読書量ではなく、評論を読むかどうかによって差が出ている。しかし、発売日のチェックを行っている人が、そのまま発売日に読むと考えれば当然の結果と言ってもいいだろう。

 
図3-1-11は「欲しいマンガを入手するために何軒の店をまわることがあるか」の回答を読者のタイプ別に表したものである。
 type1、type2で「3軒以上」と回答している人がtype3やtype4の倍以上に多いことから、やはりマンガを多く読む人ほど欲しいマンガのために多くの店をまわるといえる。また、マンガに対して執着が強いと考えられる。
 なお、各タイプの回答の平均値は、type1:3.89、type2:2.67、type3:1.99、type4:1.73であった。
 図3-1-12は「マンガを描いた(描き写した)ことがあるか」の回答を読者のタイプ別に表したものである。
 「描いたことがある」と回答した人は、意外にも、マンガを読む量が少ないが、評論を読んでいるというtype4が約55%と一番多かった。次いで、type2、type1、type3という順である。マンガを描くという行為(能動性)は、マンガの読む量、評論を読むかといったこととはあまり関係がないようだ。


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