演習7-10

文教石油はある油田で原油を産出し,精製工場Aまたは精製工場Bのどちらか一方で簡単な精製を行い,精製後に港にある貯蔵タンクに保存している.安全対策上,産出した原油の貯蔵タンク以外での保管は禁止されている.工場,精製工場A,精製工場B,貯蔵タンクの位置関係とパイプラインの敷設状況は図2に示した通りである.油田の埋蔵量は潤沢で設備も整っており大量の原油を産出することが可能である.また,港にある貯蔵タンクは十分な量が貯蔵できる能力を持っている.

パイプラインにはポンプの関係で1方向にしか原油を流すことはできない.また,パイプラインは「精製前原油専用」と「精製後原油専用」の2種類が存在し,精製前原油が精製後原油専用のパイプラインを通過することは許されていない.図2の各施設間の矢線は敷設してある2種類のパイプラインと原油を流せる方向を示している.

精製工場Aから精製工場Bへのパイプラインは2本あり,1本は精製前原油専用のパイプラインでもう1本は精製後原油専用のパイプラインである.精製は1回のみ行えばよいので,精製工場Aで精製済みの原油は精製工場Bで再度精製する必要はない.

図2:文教石油の設備とパイプラインの敷設状況

各パイプラインには1時間当りに流すことができる通過可能量(容量)と1キロリットル当り流すのに必要な送量費用が定まっている.それらをまとめたのが以下の表1である.また,精製工場にも単位時間に精製可能な処理能力と1キロリットル当り精製するのに必要なコストが求まっており,表2のようにまとめられている.

表1:パイプライン関連データ

パイプライン 通過原油 通過可能量
(キロリットル/時間)
送量費用
(万ドル/キロリットル)
油田⇒精製工場A 精製前原油 30 3
油田⇒精製工場B 精製前原油 40 6
精製工場A⇒精製工場B 精製前原油 20 1
精製工場A⇒精製工場B 精製後原油 10 2
精製工場A⇒貯蔵タンク 精製後原油 40 7
精製工場B⇒貯蔵タンク 精製後原油 30 4

表2:精製工場の処理能力と処理費用

精製工場 精製処理可能量
(キロリットル/時間)
精製費用
(万ドル/キロリットル)
精製工場A 40 4
精製工場B 30 2

精製前と生成後の原油の量に変化は無いと仮定する.以下の問いに答えよ.

(1) 産出規制があり現在の油田からの産出量は1時間当り50キロリットルに定められている.50キロリットルの原油を油田から貯蔵タンクに精製し送るのに最もコストがかからないプランを提案せよ.
(2) 産出規制が近々解除される見込みである.産出規制が無かったとしたら,現在の設備で油田から産出し精製し貯蔵タンクに送ることができる1時間あたりの原油の産出量は最大何キロリットルか.
(3) 産出規制解除をにらみ,増産計画を練ることになった.予算の関係上,6本あるパイプラインと2つの精製工場の合計8つの設備のなかで1つのみ強化が可能である.どの設備を強化すべきか適切な理由を沿えて提案せよ.

作成: 根本 俊男(文教大学情報学部経営情報学科)
e-mail: nemoto@shonan.bunkyo.ac.jp
2001年度 OR期末試験 問題2より