演習1-7 同時に稼動する4つの生産ライン

文教食品では,4つの生産ラインで,4種類の 製品(パン)

を加工する.4つの生産ラインのいずれでもすべてのパンの加工が可能である.

ただし,焼き装置の関係で4つの生産ラインはすべて同時に稼動しなくてはならない.つまり,ひとつのラインを止めた場合はすべてのラインが同時に停止する.ただし,まったく製品を加工しない状態でラインだけを動かすのはかまわない.

各製品1個の加工に必要な時間は以下の通りである.

製品名 A M C D
所要時間(分) 5 3 2 2

あるラインであるパンを生産するには準備作業として,清掃作業が40分,原料などの仕込み作業が20分必要である.(このような準備作業に要する時間を「セットアップタイム」や「段取り時間」とよぶ.)生産ラインを管理する部門は人数が少なく,同時に2つ以上のラインの準備は困難である.

作業開始時は清掃済みの状態なので清掃作業は必要ない.一方,各ラインの作業終了後は清掃作業を必ずしなくてはならない.すべてのラインの清掃作業が終了した時点のその日の加工作業は終了となる.

同じラインで同じ製品を焼き続ける時も清掃作業は必要ない.つまり,あるラインで異なる製品を加工する時は清掃作業と仕込み作業が必要になる.

(1)

各製品とも300個加工しなくてはならない.

この4本の生産ラインで各製品300個を焼き上げる作業をなるべく早く終わらせるにはどのようなプランで 生産すれば良いか.4つの生産ラインでも加工順のプランを提案しなさい.

(2)

急に注文が入り,各部品とも300個加工する上にMを120個,Cを70個さらに生産しなくてはならない.(つまり,Aが300個,Mが420個,Cが370個,Dが300個 の生産しなくてはならない.)

この4本の生産ラインで各製品を焼き上げる作業をなるべく早く終わらせるにはどのようなプランで 生産すれば良いか.4つの生産ラインでも加工順のプランを提案しなさい.

(3) 生産ラインを管理する人員が補強され,同時に3つのラインの準備作業が可能になった.この時,小問(2)で提案したプランは変更すべきか?新たなプランが必要なら提案せよ.

 

注意:

  1. 生産ラインは4本あり,どのラインでもすべてのパンを加工できるので,Aだけを4個ずつ加工することもできるし,Aを1個+Mを3個ずつ加工するということもできる.また,必ずしもすべての 生産ラインで加工作業をする必要はない.3つの生産ラインのみで加工を行い,ひとつの生産ラインは遊んでいてもかまわない.
    ただし,4つの生産ラインは同時に動くので,ある生産ラインのセットアップをする時は,すべての生産ラインの生産作業は中断する.
  2. 段取り時間=セットアップ時間:一つの作業を終えて,次の作業を行うための準備時間.同じ 生産ラインで,同じ製品を加工する場合は仕込み作業の必要はない.(あらかじめ加工材料をセットアップしておけばよい.)
  3. この問題に対しては,多分,ジョンソン法のようなすっきりとした解法は利用できないと思われる.しかし,現実にはこのような問題が多いので演習に取り上げてみた.実際の問題というものは,すっきりとした解法が存在するほうが 稀で,むしろ泥臭い計算や考察が要求されることが多い.ただ,そのような場合でも,シンプルな問題設定に対してのすっきりとした解法に関する知識が役に立つことが多いのも事実である.その意味で,シンプルな問題設定に対するアプローチの仕方を定番として数多く理解しておくのは重要である.