相模原市新交通システムの提案


情報学部 経営情報学科 4年生 工藤 真由子




1, はじめに

 ある日,新聞を見ていたら相模原市が新交通システムを検討しているとのこと.市がほんとうに新ルートを作るとしたら, 土地の問題や工事費の問題,作ってからの利益の問題など多くの難題があるのだろうと思う.しかし私はあえてそのことを考えずに,市民の立場になって新ルートの提案をしてみたらどのようなルートになるのか調べてみたくなった。また、市のルートと市民のルートを比較してみても面白いと思い,この研究をすることにした.

 この論文の流れは以下の通りである.

 2章 現在の路線と市民の交通に対する世論調査.市が行った世論調査により市民の不満を見つけ出す.
 3章 世論調査から理想のルートの提案.理想のルートを提案し,どのようなアプローチで進めていくかを考える.
 4章 3章でのアプローチから実験を行う.自分の考えたルートを実際引いていき,値の一番少ないルートを探していく.

2, 相模原市の交通事情

 現在,相模原市に通っている線路は小田急線とJR横浜線,JR相模線である.これらの線路は相模原の端を<通っている.新宿駅や橋本駅,横浜駅など都心へ行く人にとっては大変に便利である.
しかし,相模原市が市民を対象とした世論調査[1]を行った結果,市民の交通に対する不満が浮き彫りになった.今年の世論調査では通勤・通学に便利と答えた人が50%いたのに対して公共施設への交通が不便とこたえた人が30%と,便利と感じている35%を逆転していた.さらに,去年の世論調査[2]でも自宅からバス,電車で行く場合不便を感じる場所は市役所方面と答えた人は28.6%と2位を大きく離しいた.
 この結果から言えることは,都内などへ行くには便利だが市役所などの市内の移動は不便であると感じている人が多いということが分かる.そこで私は市内を移動する時の不満を,新ルート提案することで少しでも解消したいと思う.


   

3, 新ルートの提案

3-1 理想

 相模原市が行った世論調査で,公共施設への交通や市役所方面の移動が不便であるといった不満が多かったので,病院と市役所を通るルートがあればよいと考えた.そして,各住民が移動する距離が少なくなれば,より不満は減るのではないかと考えた.
 また,目的地へ行くのに遠回りしないため,小田急やJR横浜線,JR相模線が結ばれているルートがよいと考えた.始発は利用者が多い駅の方が使用される確率が高いと思い,始発は小田急相模大野駅かJR横浜線の橋本駅がよいと考えた.これが私の理想の新ルートである.

3-2 ルートの定義

 ある交通システムが通るところである.ある交通システムとは鉄道や路面電車,地下鉄など様々あるが,何が通るルートであるかは決めていない.そして,問題を軽くするため,ルートは直線とする.

3-3 導入の概要

 では,どうすれば理想に近づくことができるか.まず始めに市民がどの地域にどのくらい住んでいるのか把握することが必要である.そうすることで市民がどのくらい駅までの移動に費やしているか予測できる.そのデータをもとに,先に述べた理想により近づけるように適切な新ルートを提案していきたい.

3-3 メッシュ図の作成

 どの地域にどのくらいの人か住んでいるのかを把握するためのデータを作成する.そこで2つのやり方を考えてみた.

  1.円:地区が全て入る円を作り,その中に人がいると仮定する.この方法の利点は地区ごとに住民の数を表せることである.しかし,地区の面積がバラバラな為,正確なデータがとりにくい.
  2.等分:言葉のとおり、ある決まった大きさで面積を等分するやり方である。

 2の方が1の円よりも正確なデータをとることができる.そしてある程度住民が利用している駅を見つけ出すことが出来る.このことから,メッシュ図にして考えてみることにした.メッシュ図とは,網目(メッシュ)に分けてその中にデータを入れていくものである.

3-4 人口

 500m四方で区切り,住宅に区切りが重なった場合は住宅地の面積を比を使って分けることにした.約300ほどに区切ることができた.区切った1マスの中心点にその人口が存在すると仮定する.
*下記の図の中にある数字は線の数字であり,データには関係ない.

500m正方メッシュ図
    

3-5 移動距離

 人口数が出ている中心点から一番近い駅を探し,直線で結ぶ.10m以下は四捨五入した

人口  ×  移動距離 

 この人口数と中心点からの駅までの距離を掛け合わせ,人口移動距離を出していく.
 人口移動距離が減るということは市民の移動距離が減少することであるので不満がなくなるということである.なので私は始めに現在の人口移動距離を出し,現在の数値を出して現在の状況を表し,それから新ルートを引いていき新たに変わる人口移動距離を出していく.新ルートを何本も通して,人口移動距離の最も少ないルートを探し出していく実験を行った.
 

4, 実験

4-1 現在の人口移動距離

 現在の人口移動距離を3章のデータを用いて,出した結果,621946040mであった.この数字を今回の研究で少なくしていきたい.

4-2 新ルート

 2章で述べた世論調査で,市内の,特に公共施設への移動が不便であるという意見を考慮して,市役所と北里大学病院を通る 路線を考えることにした.
この二つの場所のどちらを先に考えていくかということだが,私は駅からの距離に注目した.なぜかというと,駅からより遠い場所であれば利用者の移動距離も自然と多くなるからである.この移動距離が多いことに不満があると考えられるので,駅からの距離が遠い場所から考えていくことにした.
 市役所と北里大学病院のある場所を見てみると,両方とも駅から離れている.ただ,北里大学病院の方が市役所よりも 駅より遠くまた,相模原市内を通っている3つの鉄道路線(小田急線,JR横浜線,JR相模線)のほぼ中心に北里大学病院がある.そこで,より利用が不便な場所だと思われる北里大学病院を先に考えることにした.
 まず,北里大学病院を中心として全ての駅を結ぶルートを出す.新たなルートの駅は,3つの鉄道路線の駅間隔の平均1458mを10の位を四捨五入して約1500mおきにあると仮定する.その新しく出したルートから人口移動距離を出していく.人口移動距離の最小値を出したルートをもとにして,よりよいルートを導き出していく.

5,実験結果

5-1 北里大学病院

 北里大学病院から引いたルートで最小な値をだしたルートはJR上溝駅を通るルートであった.

5-1 相模原市役所

   相模原市役所から引いたルートでもBのルート,すなわちJR上溝駅を通るルートであった.

6, まとめ

 よって,相模原市に新たなルートを作るとしたら,北里大学病院とJR上溝をを結び,JR上溝駅と相模原市役所を結ぶルートを引けば,世論調査による市民の公共施設への移動の不満が減るといえる.

7, 考察

 現在,相模原市が考えているルートは以下の通りになっている.

 相模原市では相模大野駅から北里大学病院のルートまでは出ているようであるが,それからどのようにルートをのばせばよいのか検討しているようである.検討している場所は図の通り相模原市役所,上溝駅,原当麻駅である.今回の実験で北里大学病院から考えたルートがあったのでそれと比較してみることにした.そうすると,相模原市が検討しているルートは比較的人口移動距離が少ないルートであったことがこのグラフからみてとれる.  よって相模原市が検討しているルートは相模原市民にとって利にかなっているといえる.  

 謝辞

 何をどうすればよいのかわからなかった私に色々なアドバイスをくださった4年生,3年生のみなさん,そしていつも 私の疑問に快く答えてくださった根本先生ほんとうにありがとうございました.

 参考文献

       [1] 相模原市 : 市政に関する世論調査,平成11年
       [2] 朝日新聞 : 平成11年12月9日