卒業論文



リフト増強計画


経営情報学科  97p21166  八木沢 伸也






 1章 はじめに

  毎年、スノーボードをやりにスキー場に行くのだが、行くたびに とても、不愉快に思うことがある。それは、滑っている時間と比べリフトに乗 るために待っている時間がとても多く感じることである。そこで、このリフト待ちの 時間をどのようにすれば減るのであろうかと疑問に思い、今回の研究に取り 組んでみようと思ったのである。

  しかし、実際にはどのようにすればこのリフト待ちが減っていく のだろうか。単純に考えていけば、リフトをあらゆる場所に増やしていけばい いのだろうが、実際にはコストもかかるし、リフトを増やすだけ増やしたとこ ろで滑走するところが減ってしまう。

  そこで今回の研究としては、現在あるリフトの中で、スキー場を 最小カットや、リフトのタイプ分けをして一番効率の悪いリフトをさがし、そ の手法の結果から効率の悪いリフトを予測するということである。そして、そ の得られた結果からその効率の悪いリフトを強化することでリフト待ちが解消 され、スキー場の流れがよくなるのではないかと考えたのである。

  そのために必要なデータを収集し、そのデータから一番効率が悪 いリフトを推測していくということである。その推測をする際に必要なデータ が、何であるかということも重要となってくる。

  2章ではリフト問題について、3章では現在のリフト状況につい て、4章ではリフトの特徴について、5章、6章ではアプローチについて述べ ていく。



 2章 リフト問題とは

  スキーをするにおいてリフトは欠かせない存在である。そして、 現在のスキー場においてはリフト待ちと呼ばれる待ち行列ができている。しか も、長野県にあるHAKUBA47のスキー場を例にとって見ると、ピーク時には60,846 人ものがスキー場に訪れている。そして、このスキー客が訪れるのは、土曜日 だと10時〜15時の間に集中し、日曜日だと、12時までが混雑する。こんなにも 大人数が1日に訪れ、同じ時間帯に集中すれば、リフトに待ちができないはずが ない。そして、このリフト待ちがスキー場で楽しむ時間を奪っている状態にな ってしまっている。  このリフト待ちがスキーヤーにとってストレスにさえなってしまってい る。このストレスの原因のリフト待ちを極力減らそうという問題をリフト待ち 問題としよう。



 3章 問題点

  このリフト待ちができている原因として様々な問題を挙げること ができる。その問題として、

@ 「リフトの数はスキー場にあっているのか。」

A 「リフトの長さが適切なものなのか。」

B 「そのリフトの能力が十分に使われているのか。」

このような問題を挙げることができる。

  Bの問題に着目をしてみよう。リフトの能力を十分に使う 事を、そのリフトの最大輸送能力とする。そうするとリフトの最大輸送能力と いうものは、1時間あたりにどれだけの人を運ぶことができるかというもので ある。しかし、実際のリフトではその能力を使い切れていないのが現状である。

  1時間当たりのリフトの輸送力を表すものとして利用率というもの を使ってみようと思う。これは、1日の平均利用人数を1時間当たりのリフトの 輸送能力で割ったものであり、そのリフトがどのくらいの輸送ができているか わかるものである。

  長野県にあるHAKUBA47のスキー場を例にとって説明すると、
コース 単位時間あたりの輸送能力(人/h) 1日の平均利用人数(人/h) 利用率
1.ゴンドラ Line8 2400 812 33.8%
2.クワッドリフト LineC 2400 907 37.8%
3.ペアリフト Line;A,B 2400 687 28.6%
4.ペアリフト LineD 1200 301 25.1%
5.高速ペアリフト LineE 1200 866 72.2%

  上の表でわかるように実際のリフトは最大輸送能力が十分に使わ れていないことがわかる。それどころか、最大輸送能力の半分も使われていな いリフトが4つもあることがわかる。



 4章 解決方法の提案


 4-1 リフトを知る

  解決をする上でまず、リフトの事を知る必要がある。まず、リフ トとはいまやスキー場には欠かせない存在になっているのには間違いない。ス キー場にこのリフトの役割について説明をする。

@ スキー場というサービス産業において、顧客の満足(CS)を向上させ て競争力(対他のスキー場、および、対他のサービス産業の両方を考えての競 争力)を維持、向上するための最も重要なインフラとしてリフトが存在してい ること。

A スキー産業の収入の柱がリフト以外になることは、将来とも考えにく いこと。すなわち、常にスキー場収入の中心をリフトが担っていること。

B リフトの基数や時間あたりの輸送力は、そのスキー場スケールの大き さをあらわす目安であり、リフトがスキー場の魅力を向上させるシンボルにな りうること。

C 用具が常に進化しているスノースポーツの世界において、どのような 機種のリフトが採用されているかによって、利用客側は、そのスキー場の時代 への対応度合いを推し量ることが可能である。よってニーズに応じたリフトの 導入は、スキー場自体の評価にもつながること。

 すなわち、リフトを動かしていればよいという観念は過去のものであり、 これからはいかにリフトの役割を正しく認識していくことが、スキー場経営に 必要不可欠であると考えられる。

 4-2 リフトの特徴

  これらのリフトの特徴は、まず、第1には単線自動循環式ゴンド ラといわれるリフトがある。このゴンドラは多くのスキー場に設置されていて、 他のリフトよりも上部へ行くことが可能になり、標高2,000mまで8人(12人、6 人、4人乗り)乗りゴンドラで登って、高低差600mの滑走が可能となった。こ のゴンドラの導入の目的は標高の高い自然のよさを生かした長い林間コースを 確保することによるスキー場のイメージアップとグリーンシーズンの集客対策 のためである。そして、特徴としては高速最大輸送、長距離輸送が可能であり、 視覚的インパクトが大きく、シンボルにできるということが言える。

  次に、単線自動循環式チェアリフト(6人、4人、3人、2人乗 り)と呼ばれるリフトである。これは、乗降が容易にでき、高速大量輸送が可 能である。そして、フードを着用することにより、厳しい気象条件のもとで快 適な乗り心地が得られるといった特徴がある。

  第3には、単線固定循環式チェアリフト(4人、3人、2人、1 人乗り)がある。これは、機構がシンプルであり、建設コスト、メンテナンス コストの低コスト化がはかれる。また、ローディングカーペットを建設すれば、 4人乗りでも乗りやすく、高い輸送力が得られる。

  最後に滑走式リフト(2人、1人乗り)がある。これは、天候の 影響を受けにくく、建設コストが安い。そして、練習用ゲレンデなどに適して いるといった特徴をもっている。



 5章 アプローチの提案


     ネットワーク表現とその最小カット

  このリフト問題を解いていくには、 まず、あるスキー場を選び、そのスキー場をネットワークとして表現し、それ の最小カットを見出すという手法である。

  スキー場をネットワークで表現するということは、リフトの乗り場を 始点Sとし、降り場を終点Tとして、その始点Sから終点Tまでを結ぶ枝をつける ことである。始点・終点を点集合という。この場合の点集合は乗降場が点集合 となる。そして、その点集合を結んでいる枝というものがある。その枝の集合 を枝集合と呼ぶ。この場合の枝集合は、実際の滑走する場所、また、リフトが 枝集合となる。

  それぞれのスキー場のリフトの弱点を見つける手法として、最小 カットや最大フロー問題というものがある。まず、最小カットというものは,点集合を 2分する線を引き、その2分された枝の容量の和がカットの容量となる。そのカ ットを全通り行い、そのカットの中でもっとも小さいカットを最小カットという。

  そして、次に最大フロー問題と言うものがある。これを簡単に説明 すると、、容量付きネットワークを始点から終点まで流せる容量だけ流したもの である。その解が最大フローであり、最小カットである。

  今回の研究の手法は、前者の最小カットの手法を行っている。



 6章 アプローチの内容


 6-1 最小カットの導出

  5章で述べたように、まず、長野県にあるHakuba47のスキー場を 使って説明してみる。Hakuba47というスキー場の特徴として、4章の2での説明 では、ゴンドラは標高の高い場所への移動をするといったものなのだが、この スキー場の場合は、図1で言うと@の位置がゴンドラとなっている。そこが他の スキー場とは違っているのである。


図1  HAKUBA47スキー場

  これをネットワーク化し、最小カットを求めると、


図2  HAKUBA47スキー場の最小カット

  図2に示したようになる。

  これは、矢印の意味するものはネットワークの枝である。そ して、円が点となっている。上向きにでている枝はリフトをあらわしていて、 下向きにでている枝は、滑走場である。この場合下向きにでている枝は、滑走 場であるので∞である。このネットワークの最小カットはというと、C、Dの 枝をきっているものが最小カットの位置となる。

  この最小カットネットワークからわかることは、輸送能力がもっとも小さ いC,Dのリフトの容量がもっとも小さく、このリフトで輸送する際に最も能力 が小さいC,Dがネックとなり、輸送するするのに弱点となっている。よって、 このC,Dのリフトを強化すればこのスキー場の最大輸送能力が増えるというこ とになる。

 6-2 リフトのタイプ分け

  次のアプローチとして、リフトをタイプ分けをして、そのリフトの特徴を知る。

リフトの種類 実際に乗る人数
ゴンドラ 4〜6人
クワッドリフト 1〜4人
トリプルリフト 1〜3人
ペアリフト 1〜2人
シングルリフト 1人

  この表から気づくことがある。それは、この5つのリフトのうちゴンドラ だけが1人から乗るのではなく、4人から乗ることである。これは、ゴンドラの 特徴でもある。ゴンドラの場合、他のリフトより長距離の輸送ができるため、上 級者が多く、その他にも中級者など多くの人がゴンドラを利用する。そのために かなり混雑するためので、1人から乗ることがまずないためである。ゴンドラに 乗る場合はたいてい知らない人同士で乗ることがほとんどである。

  ゴンドラ以外のリフトの場合、スキー場が混雑していない時には1人で乗 ることができるリフトもある。

 6-3 最小カットの導出(その2)

  次に、今までのアプローチを違うスキー場で行ってみる。 栃木県にあるハンターマウンテン塩原について説明をすると、


図3  ハンターマウンテンスキー場

  まず、この図3が実際にあるスキー場の概略図である。そして、 このスキー場の特徴としては、真中にゴンドラがあり、他のスキー場と比べ、 ペアリフトの数が多いことである。8本のリフト中4本のリフトがペアリフトである。

  次に、このスキー場をネットワーク化し、最小カットを求めると


図4  ハンターマウンテンスキー場の最小カット1

  図4に示したようになる。

  このネットワークがあらわしているものも図2と同じ意味をもつ。上 向きにでている枝はリフトをあらわしていて、下向きにでている枝は、滑走場で ある。この場合も下向きにでている枝は∞である。このネットワークの最小カッ トはというと、B、D、E、Fをカットしている曲線の位置が最小カットを表している。

  しかし、この最小カットは意味のないカットである。それは、一番 下からB、D、E、Fのリフトを乗ることができない。これらのリフトを乗るた めには、A、Gのリフトを乗ってからでないと乗ることができないのである。そ のため、これらのリフトを省略して最小カットを考えることにする。


図4  ハンターマウンテンスキー場の最小カット2

このような最小カットになる。この場合だと一番下からこのGのリフトに乗るこ とができるので、Gのリフト、つまり、ゴンドラがこのスキー場においての弱点と言える。このゴ ンドラを強化することによってリフト待ち減少問題が解決されてくだろうと思う。



 7章 結果

  3章のリフトの利用率、6章の2のリフトのタイプ分けと6章の1・3の 最小カットからわかることが最小カットから予測される効率が悪いリフトとリフ トの種類とは全く関連性がないことがわかった。つまり、輸送能力が低いからと いってそのリフトを強化すればいいといったことではない。そして、6章の1・3か らスキー場をネットワーク化し、最小カットを出すことによってそのスキー場の 効率が悪いリフトを予測することができる。しかし、ただ最小カットを出すだけ ではなく、最小カットを求め、実際のスキー場との検証をすることによって本当 の最小カットを求める。



 8章 考察

  今回の研究としては白馬スキー場とハンターマウンテンの2つのスキー 場の研究しかできず、この研究結果の信頼性というものが確かではない。今後の研究 課題として、他のスキー場の研究をして、この研究の信頼性を高めていきたい。しか し、そのためには、その研究を行うスキー場のデータが必要となってくる。その必要 なデータをいかに収集するかが問題となってくる。

 謝辞

  今回の卒業研究、卒業論文を作成にあたり、多くの方々の協力をいた だき誠にありがとうございます。まず、今回のデータ収集に多大な協力をしてくだ さった白馬47、日本ケーブルの方々の協力により、卒業研究がよりスムーズに進 行することができました。そして、研究が行き詰まった際に、とても貴重な意見を くださった4年生、3年生にとても感謝しています。最後に、最も協力していただ いた根本先生、誠にありがとうございました。



 参考文献

 「スノウハウ」  提供  日本ケーブル社
 「スキー場およびリフト建設の概要」  提供  日本ケーブル社
 「スキーリゾートの計画」  鈴木健夫・青木宏一郎  著 地球社
 「SKI&DRIVE  信州」  1998年  JAF出版社 田中達夫
 白馬47ホームページおよび白馬47スキー場
                   http://www.hakuba47.co.jp
 「「SKI&DRIVE  東北・関越」  1998年  JAF出版社 田中達夫
 ハンターマウンテンスキー場ホームページおよびスキー場
                   http://www.hunter.co.jp



topへ