「茅ヶ崎市における災害時避難施設配置問題」

 

98p21155 松浦智子

 

1.はじめに

1.1 動機

近年、阪神大震災など各地で震災が起きてニュースになった。そこで、自分の避難すべき場所はどこなのか、どうなっていのかを考え始めた。よく考えてみると、避難施設に付いてほとんど知らないことに気が付いた。それがこの研究を始めるきっかけとなった。

 

1.2 意義

この研究で避難所を検証していき、より良い提案ができれば、災害時の混乱を少しでも減らすことができると思う。そして、より快適な避難生活を送ることができるようになると考える。

 

1.3 論文の構成

2章では現状の説明をし、3章で研究の概要を紹介する。4章で避難所についての分析をし、5章ではその考察をする。6章では本研究をやっていくうちに出てきた問題点を提示していく。

 

2.現状

2.1 言葉の定義

まず初めに言葉の定義をする。

災害時避難施設のことを、正式には「地震災害対策地区防災拠点(震災時避難所)」という。ここでは「避難所」と呼ぶことにする。

避難所は、災害対策上次のことを行う拠点となる。

1)食糧、水、救援物資などの配布場所

2)生活情報の提供場所

3)家族の安否確認の場所

4)震災時避難所(一時的な生活場所)

次にあげる者たちが避難所入所の対象者となる。

1)住宅が被害を受け、居住の場を失った者

2)火災等の発生により速やかに避難しなければならない者

3)災害によって現に被害を受けるおそれのある者

4)地域外からきて帰宅することが困難である者

5)その他災害により生活の自立が困難な者

 

住民の多くは避難場所と避難所の区別がハッキリと認識出来ていないと思われる。

簡単に言うと、避難場所とは、町にこのままいると危険であると判断した場合、一時的に避難する場所である。避難所とは、家屋が相当の被害を受け、居住出来ないと判断した時、一時的に生活する場所である。家が無事なら家にいるのが一番だ。何が何でも避難所で生活する必要は無い。ただ、震災直後には、ライフライン(電気・ガス・水道・電話など)の切断や余震が続く事がある。避難所にはいろいろな情報が集まる。正確な情報もあればウワサやデマもある。人々は様々な情報を聞くことに安堵する。各町にも正確な情報を流すことにより避難所生活を必要としない人は自宅に戻ることが出来る。

このことから、避難所とは災害が起きたときにはとても重要な役割を果たす場所だといえる。

 

2.2 茅ヶ崎市の避難所

平成138月現在、茅ヶ崎市指定の避難所は、市内公立小中学校全29ヶ所となっている。高校や私立学校は避難場所に指定されてはいるが、避難所としてはまだ指定されていない。

避難所には誰がどこに行くといった指定を行政はしていない。自治会単位での推奨はあるようなのだが、それもあくまで推奨であって、強制ではない。

 

 

3.概要

3.1 研究の概要

まず公立小中学校(29校)が避難所として指定されている現状の分析・評価をする。次に避難所を増やして分析・評価をする。増やす避難所は将来的に避難所として指定されるかもしれない高校・私立学校(6校)とする。そして最後に、さらにより良くしていくための提案をしようと思う。

分析方法としては茅ヶ崎市の地図を使い、避難所を母点としたボロノイ図を作成する。評価は茅ヶ崎市の地区別人口(平成138月現在)を利用し、領域内の人数を出していく。

 

3.2 ボロノイ図

ここで簡単にボロノイ図の説明をしておく。

ボロノイ図とは,平面上に与えられた点(母点)の集合に対し、平面を母点の勢力圏に分割して得られる図形であり、平面上の各点はその点から最も近い母点の勢力圏に含まれるようになっている。近くにある各点(母点)どうしの垂直二等分線を引くことによってボロノイ図は作成できる。

 

 

4.分析

4.1 現状

まず、単純に避難所一ヶ所あたりの平均人数を出してみる。

茅ヶ崎市の人口が222,309人、避難所の数が29ヶ所なので、一ヶ所あたり平均7,666人避難所に入るという計算になる。一校に7,000人以上入るというのには無理を感じる。

次に、避難所を母点としたボロノイ図を作成した(図1参照)。そして、領域内の人数を茅ヶ崎市地区別人口を基にして出した(表1参照)。

その結果、20,000人以上の人が入ることになる避難所が1つ、10000人以上入ることになる避難所が5つできてしまっていることが分かる。図の色の付いている領域と、表の網掛部分がそれに相当する。これでは避難所としての機能が十分に果たせないことになる。

現状に問題があるということで、改善していかなくてはならない。そこで、公立小中学校だけではなく、高校や私立学校も避難所としてはどうかと思い、その検証をしてみる。

 

 

1.現状のボロノイ図

 

1.図1の領域内人数

 

 

 

4.2 避難所を増やす

茅ヶ崎市内には高校が4校、私立学校が3校ある。よって避難所をその7校分増やして考えてみる。

避難所の総数が29ヶ所から7校増えて36校になった。そこで、また単純に一校あたりの平均人数を出してみると、一校あたり6,175人となる。

次に、現状の分析のときと同じように避難所を母点としたボロノイ図を作成した(図2参照)。そしてまた同じく、領域内の人数を茅ヶ崎市の地区別人口を基にして出した(表2参照)。上から5段目までの29校分が現在指定されている避難所で、下の2段の6校分が、新たに追加した避難所となっている。

すると、20,000人以上の人が入ることになる避難所が1つと変わらず、10,000人以上の人が入ることになる避難所は3つに減った。先ほどと同じく、図の色の付いている領域と、表の網掛部分がそれに相当する。

 

2.避難所を増やしたボロノイ図

 

2.図2の領域内人数

 

5.考察

5.1 分析から

災害が起きたときに、住民が全員避難所に避難するとは考えられない。よって住民の20%が避難所に避難してくるとして考察してみる。そうすると、一番多いところで、約4,100人程度の人が避難所に来るということになる。

これでも快適な避難生活ができる少し人が多すぎると思われるという避難所がいくつか出てくる。そこで新たに提案をしてみる。

 

5.2 提案

避難所を学校だけではなく、体育館や幼稚園・保育園も加えてみたらどうだろうか。茅ヶ崎市以外の地区では、体育館や幼稚園・保育園も避難所として指定しているところもあるようである。

避難所には避難所生活をする上で必要となるもの、救出救助に用いる道具、救急セットなどを用意する必要があるので費用もかかるが、災害に対する意識が高まってきている今、十分な対策をしておくのは必要なことであると考えられるので、避難所を増やしておく価値は十分にあると思う。

 

 

6.問題点

ここまで研究を進めてきてボロノイ図を作る上で問題点が2つ出てきた。

 

6.1 市を超える?

1つは隣接する市や町の近くに住んでいる住民は茅ヶ崎市の避難所に行くよりも他市町の避難所に行くほうが近いことがあるという問題である。これに関して今回の研究では、タイトルに「茅ヶ崎市における…」とある通り茅ヶ崎市内のみで考えていくことにした。

他のやり方として、周りの市町までのボロノイ図を作成して、茅ヶ崎市内の住民でも別の市町に行くほうがいい人を出してみる方法が考えられる。

 

6.2 線路や河は?

もう一つの問題点として挙げられるのが、線路や河を今回の研究では考えなかったことである。線路や河は迂回して行かなければならないところがある。単純にボロノイ図を作成しただけでは近くにある避難所でも、実際には別の避難所に行くほうが移動距離的に近いというところも出てくると思う。

今回は、簡単に地図上で見た範囲でそれほど遠回りはしないのではないかと勝手に判断して考えなかったが、他の都市で同じような研究をするときにはこの問題も考えていかなくてはならないと思う。線路や河を制限とした制限付ボロノイ図を作成することができれば、より詳細な研究になるだろう。

 

 

7.おわりに

今回の卒業研究では、提案の検証をすることができなかった。今後はできればその検証をして、あとはもう少し他の地区の避難所のことを調べて、より確かな研究にしていきたいと思う。また、問題点の部分を改善する研究もできればさらにより確かな研究にすることができるのでそちらも考えていきたい。

 

 

謝辞

今回の研究を作成するにあたって、根本先生には大変お世話になりました。ありがとうございました。また、茅ヶ崎市役所の防災対策課には何度も足を運ばせていただき、忙しい中資料を提供していただいたり、質問に答えていただいたりして感謝しております。茅ヶ崎市の地図を作るに当たっては、Photo Shopの使い方を教えてくれた友人に感謝します。そしてゼミ生の皆、貴重な意見をありがとうございます。

 

 

参考文献

 * 茅ヶ崎市役所 「茅ヶ崎市の人口と世帯」「避難所マニュアル」(平成138月号)

 * 茅ヶ崎市役所ホームページ http://www.city.chigasaki.kanagawa.jp/