在庫管理
例題1 文教製作所部品係の質問
文教製作所で使用している部品Aは毎日5個ずつ使われている.部品係の調査では,部品Aを1年間保管しておく費用は金利も含めて1個当たり1000円,また発注費用は発注数量に関係なく1回当たり5000円で,発注後10日で納入される.
どのような発注をすれば年間費用(1年=200日)を最も安くできるか?教えてください.
在庫問題とは
適正在庫量を維持するため発注時期と発注量を決める問題.
基本的な二つの在庫管理法
- 発注点法(不定期発注点法)
- 「在庫が何個になったら発注する」というタイプの在庫管理法
- 保管費に比べ発注費が高い又は長期保存のできる品物の在庫管理に多く用いられる.
- 定期発注法
- 定期的に発注する管理法
- 大きな維持費がかかる又は陳腐化の早い品物の在庫管理に多く用いられる.
PPT Slide
他にも多種多様な在庫管理法が提案・運用されている.
複数の取り扱い品目はどのタイプの在庫管理法が適しているか?
経済的発注量, 発注点, 予想需要量,発注サイクル期間などの数値の適切な提案が在庫管理の鍵
グラフを使って経済的発注量を求めてみよう!
- 最も経済的な在庫量の変動の様子を,縦軸が在庫量,横軸が時間を示すグラフで表現してみよう.(なぜそれが最も経済的なのか?)
数式モデルの導入
手順1 年間管理費用を求める
- 年間発注回数をmとxで表現すると?(整数になるとは限らない)
手順2 年間管理費用をグラフで描こう
(3)上記二つのグラフを足し合わせたグラフを描こう
手順3 経済的発注量を求める
- 経済的発注量(EOQ):年間管理費用が最小になる発注量. グラフより,年間発注費=年間保管費 が成り立つ発注量
Wilson’s economic lot size
演習1
演習2 理解度チェック!
文教販売(株)のある製品の年間販売量は10000個で商品の仕入れ単価は400円である.一回当たりの発注費は発注量に関係なく5000円,在庫の年間維持費は,在庫価値額の25%である. (保管比率:在庫品に対する年間の保有費用の率)
演習3 最適な発注点を求めよう(発注点法)
- 例題1において最適な発注点となる量を求めよ.発注から納入までの期間(リードタイム)に気を付けよう.
- 例題1の最も経済的な在庫管理計画をグラフで表現せよ.
- リードタイムが30日であった場合,どのような発注点を設定すればよいか?
定期発注法に必要な数値
- 最適な発注サイクル(単位:日)=経済的発注量/1日の平均需要量
- 発注量=([発注サイクル期間+リードタイム]の需要量)−(現在の在庫量・発注残)
さらに現実的な問題へ…
- 毎日の需要量が一定であることは希.→実際の消費量はバラツイている.
- そんな状況で「在庫何個で発注するか」(発注点),「何日たったら発注するか」(最適発注サイクル期間),「いくつ発注するか?」(次の発注までの予想需要量)を求めてみよう!
例題2 適切な発注点を探せ!
- 1日の需要量のバラツキ(標準偏差σ)は3個である.
復習 正規分布
「需要が平均μ,標準偏差σの正規分布に従う」とは?
1日間(単位期間)の需要分布
- 1日の需要がμ+2σ以上になる確率は? ↓ 具体的な数値は?
- 品切の危険率を5%以内にしたい.何個の在庫を持てば十分か? →安全在庫の概念
安全在庫
- 安全在庫:平均需要を上回る在庫 (安全在庫)=(安全係数α)×σ
T期間の需要分布
※ X,Yが互いに独立なら Var(X+Y)=Var(X)+Var(Y).
例題2(続き) 発注点法
部品Bの1回の発注費は10000円で,保管費は1個当たり年300円であった.最適発注量と発注点を求めよ.ただし,品切れが起こる危険率は5%以内にしたい.
求め方(1)
- 最適発注量はEOQ公式で求められる.(求めてみよう)
求め方(2)
- 品切れの危険率を5%以内にするには安全係数を1.65にすれば良い.(正規分布表より)
例題2(続き) 復習
- 発注点法で在庫管理を行った場合の予想される在庫費用を算出せよ.
演習4 過去データからの予想
文教鉱業でのある金属の過去6ヶ月の需要データは以下の通りである.
リードタイムが2ヶ月,幹部から要求されている品切れ危険率は5%以内である.発注点はどのくらいに設定すべきか?
統計学の復習需要量の平均と標準偏差の推定
※標準偏差の推定値にはより精度の高い算出法もある.
定期発注法での発注量
- 発注量=([発注サイクル期間+リードタイム]の需要量の推定値)+(安全在庫)−(現在の在庫量・発注残)
需要量の推定値,安全在庫の量の算出法は発注点の時と同じ
演習4 経済的な発注量は?
文教製鉄の鉄鉱石の発注サイクル期間は2ヶ月,リードタイムは3ヶ月である.鉄鉱石の現在の在庫量が50トンで発注残も500トン抱えている.過去7ヶ月の需要データが以下のようにわかっているとき,今回の発注量はいくらにすべきか?ただし,品切れ危険率は5%以内とする.
様々な在庫モデル
流通費削減のためより複雑な在庫問題が研究され,様々な場所で効果を上げている.