シミュレーション 1999年度前期期末試験問題

作成: 根本 俊男
  (文教大学情報学部経営情報学科)
  e-mail: nemoto@shonan.bunkyo.ac.jp
実施: 1999年7月9日

 

 

 

解答上の注意

 

問題1

N君は30歳を過ぎ,そろそろ老後の生活の心配もしておいた方が良いのではないかと思い個人年金に加入しようと考えている.インターネットでいくつかの会社の個人年金を調べたり,雑誌を読んだりして勉強したところ,文教生命と湘南ライフの2社の個人年金の商品に絞ることができた.各商品の概要は以下のとおりである.

  商品名 商品概要  
  文教生命個人年金「安心老後」 今後30年間年末に30万円ずつ支払う.31年目の年末から20年間毎年年末に400万円を年金として受け取る.  
  湘南ライフ個人年金「活き活き老後」 今後30年間年末に40万円ずつ支払う.31年目の年末から20年間毎年年末に500万円を年金として受け取る.  

 

以下の問いに答えよ.なお,現在から今後50年間の年利率は8%であると仮定する.

(1) N君はどちらの個人年金に加入した方が有利か.理由を添えて,N君に提案せよ.  
(2)

サザン証券から年利率10%の複利で利子が付く30年間積み立て預金が発売された(30年間年末に一定額を積み立てて,31年目の年始に利子を含めて全額支払われる).そこで,N君は個人年金に頼らずにこの積み立て預金を利用してお金を貯め,31年目からの20年間の生活費は貯まったお金を年金の代わりにしてはどうかと考えた.このプランをN君は「自力年金プラン」を名付けた.
さて,上記小問(1)で導いた有利な個人年金と比較して,「自力年金プラン」は有利なのか不利なのか判定せよ.
なお,「自力年金プラン」において毎年積み立てる金額は小問(1)で導いた有利な個人年金で30年間毎年年末支払う年額と同額にする.

 

(問題1小問(1)は小和田・加藤著:「例解OR」(実教出版,1988)p86例題5−8を参照しました.)

 

 

問題2

文教工業でのある製品の製造に必要なチップは,年間平均10000個必要である.

調達係の青島君はオペレーションズ・リサーチの知識を生かすと在庫費用を減少させることができると知り,さっそく基礎データを集めることにした.

このチップは注文してから製造される特殊なものなので,注文から納入まで25日かかる.チップの1日の需要のばらつき(標準偏差)は5個である.部品の一回の発注費用は発注個数に関係なく40000円で,保管費は1個当たり年200円であった.

上司の室井さんの意向で,欠品の確率は5%以内にしなくてはならない.

以下の問いに答えよ.なお,1年は200日として換算しなさい.

(1) 在庫を管理する主な方法として「発注点法」と「定期発注法」が挙げられる.各々がどのような在庫管理法なのか違いを明確にして簡潔に解説しなさい.  
(2) 一回当たりの発注量をx個とおいたとき,チップの在庫に関する1年間の総費用を数式で表現しなさい.ここで,在庫に関する1年間の総費用とは,発注費と保管費の合計をさす.  
(3) 小問(2)で導出した数式を利用して,在庫に関する1年間の総費用を最小にする一回当たりの発注量(最適発注量)を求めよ.  
(4) 注文から納入までの25日間のチップの平均需要量とばらつき(標準偏差)を算出しなさい.  
(5) 発注点法でこのチップの在庫を管理したい.最適に在庫を管理するためには具体的には(必要な数値を含めて)どのように管理を行なえば良いか.簡潔に提案せよ.なお,必要ならば正規分布表を用いよ.  
(6)

チップの購入先である湘南電子から値引きの交渉があった.一回当たりの発注量が2100個未満の時は従来と同じ値段で販売するが,2100個以上2400個未満だったらチップ一個当たり25円引き,2400個以上の時はチップ一個当たり30円引きで販売するという.さて,この場合最適発注量はどのように設定すれば良いか.最適な案を提案せよ.