講 義 ノ ー トA |
<第7回>
■決算処理
・決算の意義
財務諸表を作成して外部に公表すること。適正な期間損益を計算すること。
・決算の手順
決算修正前残高試算表の作成→決算修正→帳簿の締め切り→財務諸表の作成
8桁精算表を作成しながら上記の手順を進める。
8桁精算表のフォーム
勘定科目 | 残高試算表 | 整理記入 | 損益計算書 | 貸借対照表 | ||||
借 方 | 貸 方 | 借 方 | 貸 方 | 借 方 | 貸 方 | 借 方 | 貸 方 | |
現 金 | ||||||||
・決算修正事項
繰越商品勘定と仕入勘定の修正
有価証券の時価評価、現金過不足の処理、消耗品の処理
貸倒引当金の設定
減価償却費の計上
収益・費用の見越し・繰り延べ
@繰越商品勘定と仕入勘定の修正
・繰越商品勘定の残高を期末棚卸高に修正する。
・仕入勘定で売上原価を計算する。
<決算修正仕訳>
i.繰越商品勘定の期首棚卸高を仕入勘定に振り替える。
(借方)仕 入 ××× (貸方)繰越商品 ×××
ii.繰越商品勘定を期末棚卸高に修正すると同時に仕入勘定の貸方記入によって売上原価を算定する。
(借方)繰越商品 ××× (貸方)仕 入 ×××
iii.売上高の残額を損益勘定に振り替える。
(借方)売 上 ××× (貸方)損 益 ×××
iv.仕入勘定の売上原価の金額を損益勘定に振り替える。
(借方)損 益 ××× (貸方)仕 入 ×××
上記の処理を3分法・総額法という。
<第8回>
■決算処理(2)
A売買目的有価証券の修正
・株価は毎日変動する。所有する株式について、決算時の時価で評価する。
帳簿価額(購入価額)と決算時の時価が異なる場合に次の決算修正を行なう。
<決算修正仕訳>
i.帳簿価額>決算時の時価のとき
(借方)有価証券評価損 ××× (貸方)売買目的有価証券 ×××
ii.帳簿価額<決算時の時価のとき
(借方)売買目的有価証券 ××× (貸方)有価証券評価益 ×××
B現金過不足の処理
・現金過不足は一時的に使用する勘定であるから、その原因が決算になっても判明しないときには次のように処理する。
<決算修正仕訳>
i.現金過不足勘定が借方残高のとき
(借方)雑 損 ××× (貸方)現金過不足 ×××
ii.現金過不足勘定が貸方残高のとき
(借方)現金過不足 ××× (貸方)雑 益 ×××
C消耗品の処理
・文房具類、事務用品は消耗品(資産の勘定)と呼ばれる。
・事務用品はいろいろに処理される。
i.購入時に消耗品としておき使用するつど費用として処理する方法
ii.購入時にすべてを費用としておき、決算時に未使用高を消耗品として処理する方法
iii.購入時に消耗品として処理し、決算で未使用高を費用として処理する方法
iの処理を採用している場合
取引例1.消耗品80,000円を現金で購入した。
2.消耗品50,000円を使用した。
1.(借方)消耗品 80,000 (貸方)現 金 80,000
2.(借方)消耗品費 50,000 (貸方)消耗品 50,000
iiとiiiの処理を採用している場合は決算修正となる。
<決算修正仕訳>
ii.の処理のとき
(借方)消耗品 30,000 (貸方)消耗品費 30,000
iii.の処理のとき
(借方)消耗品費 50,000 (貸方)消耗品 50,000
<第9回>
■決算処理(3)
D有形固定資産の修正
・有形固定資産とは、長期間使用される目に見える資産である。建物、備品、機械、車両運搬具、土地などを指す。
・これらの資産は使用とともに、および時間の経過とともに価値が減少していく。この価値減少額を費用として認識する。
・有形固定資産は耐用年数にわたってその取得価額または取得原価(残存価額を除く)を毎期費用として計上していく。この手続きを減価償却といい、計上される費用を減価償却費という。ただし、土地は除く。
・減価償却額を計算する方法として、定額法などがある。
・定額法の計算方法
定額法は字義通り、毎期定額を償却する方法である。
減価償却費=(取得原価−残存価額)/耐用年数
[例題]建物(取得原価5,000,000円)を定額法で減価償却する。この建物の耐用年数は30年、残存価額は取得原価の10%とする。決算が年1回の時、毎年の減価償却額を計算せよ。
(5,000,000円−5,000,000円×10%)/30年
=150,000円
・記帳方法
直接法と間接法がある。
@直接法………有形固定資産の帳簿価額を直接減額する。
(借方)減価償却費 ××× (貸方)建物など ×××
A間接法………有形固定資産の価額を直接減額しないで、減価償却累計額勘定を用いる。
(借方)減価償却費 ××× (貸方)建物減価償却累計額など ×××
・間接法では、有形固定資産の金額はつねに取得原価を表す。減価償却累計額は当該有形固定資産から控除されるべき勘定である。
[例題]建物(取得原価5,000,000円)を定額法で減価償却する。この建物の耐用年数は30年、残存価額は取得原価の10%とする。決算は年1回である。決算修正仕訳を間接法によって示しなさい。
(借方)減価償却費 150,000 (貸方)建物減価償却累計額 150,000
・取得原価から減価償却累計額を控除した金額が帳簿価額となる。貸借対照表には次のように表示される。
ただし、上記建物の減価償却累計額が1,350,000円とする。
貸 借 対 照 表
――――――――――――――――――――――――――
建 物 5,000,000 |
減価償却累計額 1,350,000 3,650,000 |
・有形固定資産の売却
有形固定資産を売却したときには、当該固定資産にかかわるすべての金額を控除し、帳簿価額が売却価額よりも多いときは「固定資産売却損」、逆の時は「固定資産売却益」とする。
[例題]建物(取得原価5,000,000円、減価償却累計額2,250,000円)を2,500,000円で売却し、代金は後日受け取るものとする。
(借方)建物減価償却累計額 2,250,000 (貸方)建
物 5,000,000
未 収 金 2,500,000
固定資産売却損 250,000
<第10回>
■決算処理(4)
E売上債権勘定の修正
・売上債権とは商品の売り上げの際に発生した債権のことで、受取手形と売掛金の総称である。
・これらの売掛債権の債権金額が確実に回収されるとは限らない。得意先の倒産や返済放棄などによって回収されないことがある。これを貸倒れという。こうしたことが経験的に分かっていて、金額的にも見積可能であるときに、この債権を持っている期間の決算において貸倒額を費用として計上する。この費用を「貸倒引当金繰入」という。
・しかし、現実には貸倒とはなっていないので、受取手形や売掛金を減額するわけにはいかない。将来の貸倒に備えるという性質のものである。これを処理するために「貸倒引当金」という勘定を用いる。
・貸倒引当金勘定は受取手形や売掛金勘定から控除されるべき勘定である。
・次のように決算修正仕訳を行う。
(借方)貸倒引当金繰入 ××× (貸方)貸倒引当金 ×××
[例題1]受取手形勘定の期末残高800,000円と売掛金勘定の期末残高400,000円に対して2%の貸倒を見積もる。決算修正仕訳を示しなさい。
貸倒見積高 (800,000円+400,000円)×2%=24,000円
(借方)貸倒引当金繰入 24,000 (貸方)貸倒引当金 24,000
・決算修正前に「貸倒引当金」勘定に残高がある場合には、差額を補充する方法で処理する。
[例題2]受取手形勘定の期末残高800,000円と売掛金勘定の期末残高400,000円に対して2%の貸倒を見積もる。ただし、貸倒引当金の残高が10,000円ある。決算修正仕訳を示しなさい。
貸倒引当金の計上額 24,000円−10,000円=14,000円
(借方)貸倒引当金繰入 14,000 (貸方)貸倒引当金 14,000
・実際に貸倒が生じたときは、「貸倒引当金」勘定の金額を充てる。
[例題3]前期の売掛金8,000円が貸倒れとなった。ただし、貸倒引当金の残高が24,000円ある。
(借方)貸倒引当金 8,000 (貸方)売 掛 金 8,000
※なお、貸倒引当金を超える貸倒が発生したときには、「貸倒損失」とする。
・一度貸倒れとして処理したものが後の期間に一部回収されたときは「償却債権取立益」勘定で処理する。
[例題4]前期に貸し倒れ処理した金額のうち5,000円が現金で回収された。
(借方)現 金 5,000 (貸方)償却債権取立益 5,000
<第10回>
■決算処理(5)
F費用・収益の見越し・繰り延べ
・費用・収益が時間の経過とともに発生する場合、また費用・収益が二期間以上に関係する場合に問題となる。
・支出した費用がすべて支出した会計期間の費用かどうか、収入した収益がすべて収入のあった収益かどうかの期間帰属が大切である。
・サービス(用役、または役務)の提供は収益になり、サービスの受入は費用となる。サービスは目に見える「財貨」に対する用語で、目に見えない機能をさす。例えば、運賃サービス、労働サービスなどがある。支払家賃は家屋や店舗、部屋を使用したことに対する(つまりサービスを受けたことに対する)代金である。
@費用の繰り延べ
サービスに対する代金はすでに支払っているが(前払)、その一部についてはサービスの提供を受けていないときにそれに対する代金を当期の費用としないで次期以降の費用とすること。
<決算修正仕訳>(支払家賃を例に取る)
(借方)前払家賃 ××× (貸方)支払家賃 ×××
※前払家賃は資産の勘定である。
A収益の繰り延べ
サービスに対する代金はすでに受け取っている(前受)、その一部についてサービスの提供を行っていないときに、それに対する代金を当期の収益としないで次期以降の収益とすること。
<決算修正仕訳>(受取利息を例に取る)
(借方)受取利息 ××× (貸方)前受利息 ×××
※前受利息は負債の勘定である。
B費用の見越し
すでにサービスの提供を受けているがそれに対する代金を払っていないとき(未払)、それを当期の費用として計上すること。
<決算修正仕訳>(支払家賃を例に取る)
(借方)支払家賃 ××× (貸方)未払家賃 ×××
※未払家賃は負債の勘定である。
C収益の見越し
すでにサービスを提供しているがそれに対する代金をまだ受け取っていないときに(未収)、それを当期の収益として計上すること。
<決算修正仕訳>(受取利息を例に取る)
(借方)未収利息 ××× (貸方)受取利息 ×××
※未収利息は資産の勘定である。
・各々の場合、決算日の翌日つまり次期の会計期間の最初の日に、次のような再振替仕訳を行っておく。
@費用の繰り延べの場合
(借方)支払家賃 ××× (貸方)前払家賃 ×××
A収益の繰り延べの場合
(借方)前受利息 ××× (貸方)受取利息 ×××
B費用の見越しの場合
(借方)未払家賃 ××× (貸方)支払家賃 ×××
C収益の見越しの場合
(借方)受取利息 ××× (貸方)未収利息 ×××
[例題1]当期の×1年の4/1に1年分の家賃120,000円を支払っていたが12月末の決算となり必要な仕訳を行いなさい。当社の決算は12月の年1回である。
当期の支払家賃 9ヵ月分 90,000円
次期の支払家賃 3ヵ月分 30,000円
<決算修正仕訳>
(借方)前払家賃 30,000 (貸方)支払家賃 30,000
※4/1に次のような仕訳をしているので、上記の決算修正仕訳を行うことによって、当期に属する支払 家賃は90,000円となる。
(借方)支払家賃 120,000 (貸方)現金など 120,000
[例題2]×2年の1/1に必要な再振替仕訳を行いなさい。
(借方)支払家賃 30,000 (貸方)前払家賃 30,000
[例題3]×1年の6/1に1,000,000円を貸付けていたが、利息はまだ受け取っていない。貸付期間は2年で利率は年4.5%で、満期日に元金とともに利息代金を受け取ることになっている。当社の決算は12月の年1回である。
当期の受取利息 1,000,000円×0.045×7ヵ月/12ヵ月= 26,250円
<決算修正仕訳>
(借方)未収利息 26,250 (貸方)受取利息 26,250
[例題4]×2年の1/1に必要な再振替仕訳を行いなさい。
(借方)受取利息 26,250 (貸方)未収利息 26,250