2.1 ケーブルテレビへのメディア移行の姿
(1)加入に関する様々な層の分布
ケーブルテレビへの加入は、まずその地域のケーブルテレビの存在を知ることから始まる。加入者は当然知っているわけだが、非加入者の中には知らないものも存在しうる。今回の調査によると、非加入者201名の中には「知らない」と答えた回答者は26名いた。175名(87.1%)は知っていた人である。そこで加入者と非加入者のサンプルの抽出率でウエイトバックして、この地域のケーブルテレビの認知度合いを求めたのが図2.1-1である。認知率は88.1%とかなり高いものである。
図2.1-1 地域ケーブルテレビYTVの認知
図2.1-2 ケーブルテレビの認知と認知世帯の構成
調査では非加入者に加入検討の経験の有無について聞いている。認知している人175名のうち、44名(25.1%)は検討者であり、15名(8.6%)は検討中である。加入者は当然ケーブルテレビの存在を知っており、かつ加入の検討を行った層であるから、加入者と非加入者の抽出率を用いて地域の全体像を予測すると、図2.1-2が得られる。この図から次のことが明らかになる。
@地域では約9割の世帯がケーブルテレビの存在を知っているが、53%はあまり関心を 示さず、加入を検討した層は35.1%(加入、検討中、検討非加入の合計)である。
Aそのうちの8.2%が加入に至り、6.8%は現在加入を検討中であり、20.1%は 検討したが加入を止めている。
十分に認知はされているが、関心を示さない層は過半で大きいこと、関心を示して一時加入を検討する層は全体の1/3とかなり多いが、そのうちの1/4きり加入に至らないことが分かる。ケーブルテレビの加入者に至るのは、なかなか狭い門である。
(2)テレビ放送メディア間の移行
次に加入者がケーブルテレビに加入する前と非加入者の現在のテレビ放送メディアの状況を図2.1-3に示す。双方に有意差はなく、65%前後が地上波(VHF、UHF)、3割弱がBS、CSが3%程度ある。
図2.1-3 加入者の従来のメディアと非加入者の現在のメディア
この220名の加入者は、加入後にベーシックへ138名(62.7%)、ペイ(スターチャンネル、WOWOW、衛星チャンネル、グリーンチャンネル)へ56名(25.5%)行っている。これらを利用して対象地域の全体でのケーブルテレビへのメディア移行がどの様に進んだかを求めると、図2.1-4となる。ケーブルテレビに加入する前のメディアの地上波(VHF、UHF)、BS−NHK、BS−WOWOW、CSが、加入後にはさらにCATVベーシックとCATVペイが加わった分布となっている。従来メディアの地上波、BS等のどのメディアも比率を下げ、新たに5.2%のCATVベーシック利用者と2.1%のCATVペイ利用者が生まれている(ケーブルテレビが7.3%なのはベーシックかペイかについての無回答があるため)。
図2.1-4 従来と現在のメディア採用の分布
この移行の変化をメディア毎に見たのが図2.1-5である。5種類のどのメディアからもケーブルテレビへ移行するのはごくわずかで、とくにどのメディアから大きく移行すると言うことはない。大体6%〜10%程度となっている。ただしBS−WOWOWの利用者からは、ペイ加入者に移行する比率は、他のメディアと比較すると高い。これはBS−WOWOWの加入者が移行後もWOWOWに加入する比率が高いためである。この様に見てくると、ケーブルテレビへの移行は、「ケーブルテレビ以外のテレビ・メディアに加入すると移行が難しくなる」と言うことは起こりにくく、どの従来メディアでも満たされない魅力を持っているということが予想される。
図2.1-5 メディア別のケーブルテレビへの移行比率