2.2 世帯における加入決定のプロセス               目次に戻る
(1)家族の賛否数
  前節で述べたように、地域のケーブルテレビを認知し、その結果加入のための検討を行う層が35.1%あり、そのうちの8.2%が加入に至っている。本調査ではこの様な加入の決定のプロセスにおいて、加入を検討した層については、世帯内で加入についてどの様な賛否があったかを聞いている。非加入者は201人のうちで59人が加入の検討を行っている。まず加入世帯と非加入世帯の検討層における賛否状況を図2.2-1に示す。


         図2.2-1 加入世帯と検討非加入世帯の前向き者数(χ2 Sig.:***)

顕著な差は、検討非加入世帯に比べ、加入世帯の前向き家族が非常に多いことである。世帯当たりの平均前向き者数は、加入世帯が2.32人であるのに対して、検討非加入世帯では1.63人である。

  同様に両世帯について加入に消極的な家族がどの程度存在したかを調べた結果が図2.2-2である。こちらは図2.2-1の傾向と類似し、加入世帯は検討非加入世帯に比べて、消極者が非常に少ない。加入世帯では8割強の世帯で消極的な人は誰も居らず、最多でも2人までであるのに対して、非加入世帯では4人以上反対とのケースもある。

         図2.2-2 加入世帯と検討非加入世帯の消極者数(χ2 Sig.:****)

 この様に見てくると、世帯内の賛否が加入に影響することは容易に想像される。そこで賛否の全体像を表2.2-1に示す。同表によると加入世帯では平均前向き者は家族の2/3であるのに対して、平均消極者数は6.4%に過ぎない。それに対して検討非加入世帯では、半分弱が前向きなのに対して、約1/3は消極的である。この前向き者の少なさと消極者の多さが、決定過程での非加入を結論づけている可能性が高いと理解される。 ただしこの賛否だけで結論が下されるかというと、そうではない側面もある。表2.2-1の最後に、消極者がいる37の加入世帯では賛否がどの様になっているかを示している。この行の数値は検討非加入世帯の数値とほとんど差がない。また検討非加入世帯の37%(22世帯)では消極者はいないが、加入には至っていない。しかし結果としては加入と非加入に分かれるわけで、賛否が加入非加入の大きい要因であるとしても、それ以外の別の要因も存在することを示している。

 なお参考として表2.2-1の下に別の調査で得た同様な賛否データを再掲している。双方はほとんど一致しており、この2つの地域では同様な加入決定過程があることを示している。
 

表2.2-1 加入に関する家族の賛否と決定 単位:人 ( )は%
世帯区分 平均家族数 平均前向き数 平均消極数
加入世帯 N=220 3.57
(100.0)
2.32
(65.5)
0.21
( 6.4)
検討非加入世帯 N=59 3.42
(100.0)
1.63
(47.7)
0.95
(27.8)
消極者のいる
加入世帯 N=37
3.89
(100.0)
1.86
(47.8)
1.24
(31.9)
(注)加入が10世帯、検討非加入が3世帯の単身世帯を含む。
 

[参考]家族の賛否に関する別の事例 単位:人 ( )は%
世帯区分 平均家族数 平均前向き数 平均消極数
加入世帯 N=211 3.50
(100.0)
2.38
(68.0)
0.25
( 7.0)
検討した
非加入世帯 N=63
3.73
(100.0)
1.64
(44.0)
1.00
(26.8)
(注)横浜ケーブルビジョンの場合(94.4) 出典:八ッ橋(1996A)
 

(2)家族の賛否状況
 賛否の人数の比較からさらに一歩進んで、次に家族の賛否状況がどの様になっていたのかを図2.2-3に示す。家族を世帯主、配偶者、男子中・高生などのように11のカテゴリーに分け、さらに賛否を、最も前向き、次に前向き、中立的、消極的の4種類に分けている。この分類にしたがって、家族それぞれがどの様に賛否を主張していたのかをまとめたものである。各比率は、加入者世帯全体、ないしは検討非加入世帯全体をベースに求められている。同図から次の傾向を読みとることが出来る。


                        図2.2−3 家族の賛否状況

@世帯主はいずれの場合も前向き姿勢が強い。加入世帯では前向きは8割強、検討非加入世帯では7割弱である。世帯主が加入意欲の相当部分の源泉になっていることが分かる。
A世帯主は消極姿勢の点では、検討非加入世帯の方がかなり大きい。
B配偶者は、加入世帯では前向き姿勢が53.2%と大きいが、非加入世帯では半分以下の25.5%に留まっている。他方、加入世帯の消極姿勢は10.0%であるが、検討非加入世帯では半分強である。加入世帯と検討非加入世帯では著しく異なり、配偶者の賛否が加入を大きく左右する可能性が高いことが理解できる。
C男子中・高生〜女子学生の場合は、加入世帯より非加入世帯の方が前向き者が多い。それに対して、働く30才未満男子〜働く60才未満女子の場合には、加入世帯の方が前向き家族が多い。この辺は世帯主、配偶者の場合とも共通しており、経済力のない加入希望者が多くても、加入には至りにくいことが理解される。

(3)加入に消極的理由
 加入動機の分析は次節で行うが、ここでは加入に消極的な理由を集計した結果を図2.2-4に示す。加入世帯と非加入世帯での消極的な理由の差は、双方ともほぼ同じ傾向で、大差はない。したがって消極的理由の面では、加入と非加入を分ける有力な根拠は見えない。ただし概して差があると言う理由に注目すると、「1.加入費用や利用料が高い」、「9.共同アンテナで単独加入困難」が挙げられる。共同利用アンテナによる加入困難の問題は、集合住宅居住者に起こることで、これについては後に詳述する。

                    図2.2-4 加入に消極的な理由
 

(4)加入か非加入の決定者
 誰が最終的に加入か非加入の決定を行うかを調べたのが図2.2-5 である。加入世帯の場合は、7割が世帯主で、世帯主が加入に果たす積極的な割合と一致する。また2人による共同決定が9.5%、配偶者が8%、家族の多数決などが8%ある。

 他方非加入世帯の場合は、加入世帯と多少異なり、世帯主が決定するのは39%と低くなっている。それに対して配偶者の決定が7%、2人で決定が20%と増加し、間接的な配偶者の役割の高まりを示している。また未決定が25%居る。世帯主の消極者は22%であったから、39%が非加入の決定をしていることは、不本意な決定を迫られた世帯主が相応に居ることを示している。形式上は世帯主が決定しているが、実質的な決定は配偶者の影響を大きく受けていると理解される。

                           図2.2-5 加入/非加入の決定者
 

 以上の調査結果から家族の賛否が加入に及ぼす影響をまとめると、次の点を挙げることが出来る。
@ケーブルテレビへの加入決定は家族の合意に基づいて行われる。加入にはおよそ2/3 の賛意が必要であり、1/4強の反対があると加入には至らない。
Aケーブルテレビへの加入をリードするのは世帯主である。加入および決定面での世帯主 の影響力は大きい。
Bしかし加入への決定は配偶者の意向にも大きく左右される。配偶者が反対すると、加入 に至るのは難しい。
C他方配偶者が前向きの場合、世帯主が反対すると同様に加入には至りにくい。
D世帯主と配偶者以外の家族の影響は、補足的に効いている。どちらかと言えば経済力の
 ない若年層より、経済力のある家族の発言力が効く。
D総称すれば、世帯主がリードするコンセンサス型の意志決定となっている。