はじめに

 放送分野ではここ10年程度の間に、ケーブルテレビや衛星放送、ディジタル衛星放送などの様々なメディアが出現し、いわば多メディア化が進展しつつあります。その過程で利用者は自分に適したメディアを採用し、採用の早さは色々とあるにしても、メディアの棲み分けが進展しつつあるとと見ることが出来ます。

 この様なメディアの棲み分けの進展は、人々のメディア受容の観点から興味ある問題であるだけでなく、産業的に見ても重要な問題と考えることが出来ます。また今後の放送と通信の融合の観点に立つと、新たな放送メディアの普及が、将来のマルチメディア・サービスの普及を左右する可能性もあり、この点でも興味ある問題であります。

 しかしこの問題に関する既存の研究成果という点から見ると、理論や測定データの整備のいずれにおいても、十分な成果が蓄積されていると言うふうには見えません。様々な研究蓄積が必要とされる状態にある、と言うことが出来るでしょう。筆者は2年前にケーブルテレビ地域の加入世帯と非加入世帯を調査し、その結果を「放送メディアの選択と受容」に報告しました。今回はその際の問題を踏まえた同様なケーブルテレビ地域の調査と分析に基づいて、「放送メディアの選択と受容U」を報告致します。この報告が、この分野の研究の進展にいくらかでも役立つことがあれば、望外の幸せです。

 なお本調査の実施に当たっては、(株)横浜テレビ局から多大な協力を頂きました。また本調査は文教大学情報学部の平成7年度の共同研究費で行われ、友安弘先生、田中淳先生から様々な協力を、東京大学社会情報研究所橋元研究室の情報行動研究会のメンバーの方々から様々な示唆を頂きました。さらに横浜市南区の市民の皆さんからは、調査票への回答という形で協力を頂きました。ご協力を頂いた皆様に、ここで改めて感謝の意を表わさせて頂きます。また本報告書印刷は情報学部教育研究用特別予算で行われました。このことも書き添えておきます。
                                                      1998年11月
                                          文教大学情報学部 八ッ橋武明