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 本節では各調査地点におけるPC(パソコン)インターネットの普及状況と主な利用状況について説明する。利用状況としてはホームページ閲読と電子メールの利用の状況を地域ごとに見ていく。地域差がある場合には、その点についても言及する。なおここでは特に断らない場合には、インターネットはすべてPCインターネットに関する記述である。

(1)インターネットの普及状況

 各地点の調査では、回答者がインターネットを利用し始めた時期を聞いている。そのデータを用いて各地点でインターネットがどの様に普及してきたのかを、利用率の推移の観点から推定したのが図3.2.1である。なお同図を作成するに際しては、ウエイトバックの集計を行っている(図中にはWB集計と記載した)。また参考のために、参照例として全国調査の例を2点掲載している。1つはWIP(2001)、あと1つは情報通信白書(2002)である。


図3.2.1  インターネットの利用率推移(WB集計)

 このグラフでは1995年以降を描いているが、幾つかの点で傾向は顕著である。

  1. これらの期間を通じて、どの地域もインターネットの利用率は平均で年率で40%〜70%の 水準で順調に増加している。
  2. しかし日野と日野以外の地域との利用率の差はかなり大きい。日野は東京圏の中央に位置し、他方で日野以外は全部地方都市である。つまりこの差は東京圏と地方都市の差と考えられる。この結果によると、地方都市のインターネットの利用率の進展はかなり遅く、おおよそ日野から1年半〜2年程度の遅れである。
  3. 地方都市の中では、高知の利用率が1997〜98年頃から急速に増加しているのが目を引く。高知県は1996年頃から「情報生活維新」と命名した地域情報化政策を活発に行い、インターネットの普及に勤めてきた。その効果が現れているものと考えられる。
  4. (なお広島のデータだけは自宅利用だけに限定しており、職場・学校などでの利用を含めていないために、すこし小さめになっている。)
  5. 日野の調査では、2000年以降で伸び率が低下しているのが見える。40%前後に成長の変曲点がある可能性がある。なお高知も減少しているように見えるが、これは調査時期から分かるように、このデータには2001年度に5ヶ月分きり入らず、そのために減少しているものである。
  6. 参考例として添付したWIP調査および情報通信白書のデータは日野と地方都市のほぼ中央にあり、今回の調査結果とは整合的な傾向を示している。
(2)インターネットの接続法     目次へ戻る

 次にそれぞれの調査時点で、利用者が主に利用していたインターネットへの接続法を図3.2.2に示す。このデータもウエイトバックをして、地域毎の平均像を表すようにしている。この図から次のような点を読みとることが出来る。

  1. 調査時期が後になるほどに、インターネット利用の比率が急速に高まり、全国的な増加傾向を示している。
  2. 全般には電話かISDN利用のナローバンド(狭帯域)の接続が多い。
  3. ケーブルインターネットのサービスが拡充されている地域では、その採用比率は高い。
  4. 札幌は試験サービスを始めた段階であり、高知は片方向対応の幹線増幅器を双方向対応に置き換える工事が必要で、サービス地域が限定されてている。この様な地域では、十分に利用者を確保できていない。
  5. 日野のグラフから、ADSLの利用が急速に増加している様子が分かる。
  6. インターネット利用者において、家庭での利用が主である人の割合は、札幌72%、諏訪67%、高知68%、日野76%で、どの地域もおよそ70%前後となっている。したがってインターネットは家庭が主な利用場所になっている。
 全般的に見るとインターネットは家庭が主な利用場所になっているということで、利用が生活面でのメディア利用にどの様に影響するのかに関心が持たれる。ところでその際には、接続法がインターネットの利用法に大きい影響を与える可能性がある。それはケーブルインターネットやADSLに代表される固定料金制・高速度転送のブロードバンド環境でインターネットを利用しているのか、それとも電話に代表される従量料金制・低速度転送のナローバンド環境でインターネットを利用しているかにある。そこで次項からは、その区分も念頭に置きながらインターネットの利用状況を説明していく。


図3.2.2  インターネットの利用率と主な接続法

(3)ホームページの閲覧     目次へ戻る

 インターネット利用の1つとして、ホームページの閲覧の状況を述べる。その際には利用者のインターネット接続法を区別して、ブロードバンド環境にある層とナローバンド環境にある層ごとに傾向を見ていく。

a.ホームページの閲読時間

 調査では回答者のホームページの週の閲読時間を聞いている。その結果の一例を図3.2.3に示す。この図は高知調査の結果で、高知Bはブロードバンド・グループ、高知Nはナローバンド・グループである。この図によると、週3時間以上の人は高知Bでは58%であるのに対して、高知Nでは25%であり、ブロードバンド・グループは閲読時間がかなり長いことが見て取れる。ブロードバンド・グループには週20時間以上という人々が10%近くも居るのに対して、ナローバンド・グループではその様な人は全然居なかった。利用環境差がこの様な差を作り出していると見られる。χ2乗検定では両者には有意な差がある。ちなみに両者の平均値を推定すると、高知Bは6.6時間/週、高知Nは2.8時間/週で、後者は前者の半分以下である。


図3.2.3  高知調査における週あたりのホームページ閲読時間(χ2乗:p=0.002)

 そこで各地域別・インターネット環境別のHP利用時間/週の平均値を推定した結果を表3.2.1に示す。同表によるといずれの地域もブロードバンド環境下の方が利用時間が長い。この場合には4地域平均で5.3時間であるのに対して、ナローバンド環境下では3.2時間である。1日に換算すると、ブロードバンド環境下では約45分/日に対して、ナローバンド環境下では27分である。いずれの場合もホームページ利用はかなりの時間を消費していることが分かる。

 なお地域ごとの差については、理由は定かではない。
 

表3.2.1  インターネット環境別のHP利用時間(1週間)
環境\地域 広島 札幌 諏訪 高知 日野 平均
ブロードバンド
6.1
4.9
5.9
4.4
5.3
ナローバンド
2.9
3.7
3.5
2.8
3.2
3.2

b.ホームページの利用回数

 次にホームページの利用回数についての集計例を図3.2.4に示す。利用回数も明らかにブロードバンド・グループの方が長い。週に10回以上ホームページを見る人は、ブロードバンドでは4割弱であるのに対して、ナローバンドでは1割弱にとどまっている。χ2乗検定でも両者には有意な差がある。両者の平均値を推定すると、高知Bは11回/週弱、高知Nは5回/週強で、後者は前者の半分程度である。利用回数面でも差は大きい。


図3.2.4  高知調査における週あたりのホームページ閲読回数(χ2乗:p=0.0002)

 次に地域別・インターネット環境別のHP利用回数/週の平均値を推定した結果を表3.2.2に示す。同表によるといずれの地域もブロードバンド環境下の方が利用回数が多い。この場合には3地域平均で10回/週強であるのに対して、ナローバンド環境下では6回/週強である。1日に換算すると、ブロードバンド環境下では1.4回に対して、ナローバンド環境下では0.8回である。したがってブロードバンド環境下ではナローバンド環境下よりも倍程度の頻度でホームページを利用していることが分かる。
 

表3.2.2  インターネット環境別のHP利用回数(1週間)
環境\地域 広島 札幌 諏訪 高知 日野 平均
ブロードバンド
9.6
10.9
9.9
10.1
ナローバンド
5.3
7.1
5.4
6.8
6.4

(注)広島は設問を置いていない。


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