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(7)インターネット利用の満足度

 これまで見てきたように、インターネットは利用者がかなりの時間を使うものとして、生活に定着しつつあるものと見ることが出来る。この様な傾向を見ると、インターネットは多くの人に様々な満足を与えつつ普及しているものと想定される。それではインターネットを利用する利用者の満足度はどの様なものであったのだろうか。その調査結果の一例を図3.2.11に示す。利用者の満足度を、「1.満足」、「2.やや満足」、「3.何とも言えない」、「4.やや不満」、「5.不満」の5段階の順序尺度で聞いている。その回答を、ブロードバンド・グループとナローバンド・グループで分けて集計している。

 同図によると、インターネット利用における満足度はかなり高い。ブロードバンド・グループでは、「1.満足」、「2.やや満足」を合わせた合計は76%にも達し、「3.何とも言えない」と回答する中間層は22%で、不満層はわずかに2%である。利用時間の長さを反映して、満足度も高いと理解することが出来る。これに対してナローバンド・グループでは「1.満足」層が20%近く低下するものの「2.やや満足」層が7%増加し、両者の合計は約64%と低下する。さらに「3.何も言えない」中間層が約10%増加して、不満層は約5%となる。この傾向を見ると、ナローバンド・グループでは受益度合が低下し、満足度が低下していることが分かる。


図3.2.11 インターネットの利用満足度(高知調査)(χ2乗p=0.03)

 これは一地域の傾向だが、他の調査地点を含む全体ではどうであったかという結果を図3.2.12に示す。この図はブロードバンド・グループとナローバンド・グループ毎に、順序尺度である選択肢の平均値を求めたものである。この図を見ると次の点が分かる。

  1. ブロードバンド・グループの満足度は全般に高く、平均でも「2.やや満足」の近くにある。
  2. これに対して、ナローバンド・グループの場合には一段と下がった評価である。

 図3.2.11に示した高知の場合よりも、広島や日野の場合には、ブロードバンド・グループの満足度は高く、かつナローバンドとの差は大きくなっている。したがってこれらの地点では、ブロードバンドは高知の場合よりも好意的に受け入れられていることが分かる。複数調査地点におけるこの様な傾向を見ると、ブロードバンド化はかなり強く受け入れられる可能性が高いことが理解される。


図3.2.12  インターネットの満足状況
【補足】高知のインターネット進展の背景     目次へ戻る

 高知では97〜98年頃からインターネットの利用が急増したことを(1)で述べた。ここではパソコンの利用状況の観点から、他地域との比較でインターネットの普及の背景を探ってみたい。

 自宅でのインターネットの利用にはパソコンは不可欠である。しかしパソコンはインターネットの利用以外にも用途は多い。図3.2.13に高知と諏訪でのパソコンの利用状況を、様々なグループ毎に示している。上半分の帯は高知の調査結果であり、下半分は諏訪の調査結果である。この中で中央の2つであるが、これらは高知の調査地域全体と諏訪の調査地域全体のパソコン利用状況を示している。ウエイトバックを利用して作成したものである。


図3.2.13 自宅でのパソコンの利用状況

 この2つを比較すると、諏訪では「4.1〜2日/月」の頻度で自宅のパソコンを利用する人(たまに利用する人)が若干多いものの、全体としては高知も諏訪もほぼ同じようなパソコン利用状況にあることが分かる。全体では4割弱がパソコンを利用しており、日常的に使っている人は3割弱である。

 次にその外側のインターネット利用層の比較であるが、利用頻度別の構成は両者ともほぼ同じである。双方ともに7割強の人が日常的に利用している。自宅でパソコンを使っていないインターネット利用者が10%前後いるが、これらは勤務先や学校のPCを利用していると見られる。

 ここまではほぼ同じ状況であったが、次に最も外側の非インターネット利用層を比較すると、今度はかなり顕著な差がある。諏訪ではパソコン利用者は27%であるから、4人に1人がパソコン利用者である。しかもその中には毎日利用している人が5%強いるし、週に1回以上利用する人が多い。インターネットを利用していないが、自宅でパソコンを利用する人は多いわけで、諏訪は精密機械産業が多く立地し、土地柄からパソコンの利用が多く、インターネット以前からパソコンが家庭に浸透していたことが見て取れる。それに対して高知は、非インターネット利用層ではパソコン利用率は11%強であるから、約9人に1人がパソコンを使っている状況である。諏訪に比べるとかなりパソコンの浸透の面では見劣りがすることが分かる。

 このことは同時に、諏訪では従来からパソコン利用の裾野があり、インターネットの普及するとともに、その中の人々もインターネット利用者に転換していったと考えられるが、高知にはこの様な裾野に該当する部分が少なく、インターネットの利用そのものがパソコン利用の推進力になっていたと考えられる。この様にインターネット動機そのものがパソコン利用とインターネット利用を同時に推進したわけで、他に理由は見あたらず、時代背景から見て、高知県の地域情報化政策「情報生活維新」こそがその推進力であったと考えられるのである。

まとめ     目次へ戻る

 この節ではインターネットの普及と利用の状況の骨子を見てきた。調査で分かった主な点を下記に列挙する。

  1. どの調査地域もインターネットの利用率は、年率では40〜70%で急速に成長している。
  2. 首都圏の都市に比べ、インターネットの普及では地方都市では1年半から2年程度の差がある。
  3. 日野地域で見る限り40%台に成長の変曲点がある可能性が高い。
  4. 地方都市の中でも高知はインターネット利用率が急速に成長している。地域情報化政策の効果と見られる。
  5. 各地域のインターネットの接続法は、主流は電話/ISDNのナローバンドであるが、ケーブルインターネットが整備されている地域では、ケーブルインターネットがよく受け入れられている。
  6. どの地域or成長段階でも、ケーブルインターネットとADSL、電話/ISDNの接続の合計の比率は大体70%前後である。職場・学校の比率は20〜30%である。
  7. ブロードバンドの利用比率の高いところでは電話/ISDNの比率は少ない。逆に少ないところでは多い。
  8. 日野地域ではADSLが急増している。
  9. ブロードバンド利用者は、ウェブの利用時間、ウェブの利用回数、電子メール利用時間、電子メール利用回数のどれをとっても、ナローバンド利用者よりも多い。
  10. インターネットの利用満足度は、ブロードバンド利用者が大きく、ナローバンド利用者は1段落下の満足度である。
  11. インターネットの利用に伴う影響としては、メディア利用面では、ブロードバンドの影響が大きい。影響の大きさ順で見ると、テレビ視聴時間の減少、電話利用時間の減少、本・雑誌読書時間の減少、新聞閲読時間の減少、家族との会話の減少がある。
  12. インターネットの利用目的の点では、ブロードバンド利用でもナローバンド利用でも両者には差はない。利用者の75%はプライベートなことがらが利用の中心である。

【引用文献】     目次へ戻る


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