今回展示したテキストブックは、小学校用が「Letts」出版社、中学校用が「Heinemann」出版社です。
Letts版English
魔法使いを中心としたキャラクターたちに導かれて英語を学ぶというスタイルがとられています。学習者の興味を喚起することを狙ってか、ふんだんにfantasticなイラストが描かれています。
内容は、発達段階に従って徐々に高度になってはいるものの、どの学年のものも、大きく分けて「表記」・「言語事項」・「文章構成」・「内容解釈」を同程度の割合で含んでいて、それぞれは独立した単元として配列されています。具体的には、
(1)「表記」:「句読法(ピリオド・クエスチョンマークなど)」・「スペリング」など。特に低学年では「表記」を多く含む。
(2)「言語事項」:「語彙」(同音語・同意語など)・「文法」(「品詞」・「話法」など)にわたる。
(3)「文章構成」:「はじめ・中・終わり」から始まり、高学年ではもう少し複雑な文章構成について、「効果的な文章の書き方」ということを意識して書かれている。「韻」などレトリックに関わる分野もある。
(4)「内容解釈」:長い文章を提示するのではなく、比較的短い文章の理解を、問いに答えるというかたちで配列されている。
となっています。その他、「辞書の引き方」や「手紙の書き方」や「マニュアルの作り方」などがあります。「俳句」についての単元があるところは驚きです。(図略)
日本の国語の教科書が「読むこと」に比重を置いてあるのに対して、全体として、言語そのものや、言語技術の側面に比重を置いたテキストブックになっています。
Heinemann版「access English」
本テキストは、日本の教科書のイメージとはまったく異なったものになっています。日本では、教科書にはいくつかの読み物が掲載されていて、それを授業で先生に導かれて読む活動が主流と言えましょう。それに対して、本テキストには、解説や活動などがセクションごとに既に書かれています。教科書・学習参考書・ワークシートが一体となっていると形容するのが適当かもしれません。テキストに従って学習者が学べるようになっています。
二分冊になっているのですが、内容はどちらも共通して、大きく3つに分かれています。
(1)「読み物Literature」:
1では、主に物語の構成について解説されています。いつ・どこで・だれが・どうした・どうしてなどに、注意することが繰り返されます。そして、そのような構成を学んだ上で、自分で「話をしたり」「物語を作ったり」することへと移行しています。
2では、物語には「ジャンル」というものがあるということから始まり、「学校の物語」「SF」「おとぎ話」「怪談」「推理小説」「詩(俳句を含む)」「脚本」「シェイクスピア」と、それぞれの構成について述べられています。そして、それぞれを作成する活動を要求しています。
(2)「ノンフィクション」について:
「報告書(レポート)」・「インタビュー」・「説明文」・「広告」・「マニュアル」・「アドバイス」・「雑誌」・「インフォメーション」などの「作成の仕方」について述べられています。状況が公的であるか私的であるか、それぞれのジャンルはどんな「目的」を持った表現なのか、「読者(聞き手)」はだれなのか、など、それぞれの異なりによって文体が使い分けられることに注目させています。(図略)
また、「調査の仕方」や「意見」の作り方や「議論の仕方」などや、新聞とWeb-pageといったメディアのちがいに応じたコミュニケーションについても述べられています。この「ノンフィクション」がテキストの多くを占めています。
(3)「言語事項」について:
初等教育のテキストに比べ、言語事項についての説明はそれほど多くありません。動詞の基本形・過去形・進行形などや助動詞や主語の問題が少しの分量書かれているにとどまっています。
初等用テキストも、中等用テキストも、「言語」や「文章・発話」の、「構成」の解説に多くの紙面を費やしています。「読解」が中心となる日本の「国語」の教科書とは、大きく違ったものになっていると言えるでしょう。
(教育学部 近藤研至)