郵便受箱の変遷

 郵便受箱のい立ちがわかったところで、ここでは、地元で行ってきた調査と多くの方からいただいた情報をもとに、今日の郵便受箱にはどのような物があるのか、色や形、素材などの流行の移り変わりを中心に見ていきたいと思います。
 1960年代に入り本格的に生産が開始された戸建て住宅用郵便受箱は、1969年(昭和44年)の郵便受箱の標準規格設定に伴い、工業製品としてもその供給量は高まっていきました。そのころの製品の特徴としては、雨などによる酸化を防止するため、鉄製のものから次第にプラスチック素材が使用されるようになり、色もプラスチック素材のため白や淡い黄色など、素材をそのまま生かしたかたちのものが使用されていました。
 1970年代後半になると、今度は、門周りの塀に直接埋め込まれてその機能を果たす郵便受箱が登場しました。このタイプの郵便受箱は、今日でも数多く見ることができます。特徴としては、色が銀色、形が長方形のもので、ステンレス素材が多くを占めています。埋め込み式になったことで、熱による伸縮、膨張の影響が出やすいプラスチック素材は、ブロック塀の中で割れてしまったり、隙間が開いてしまったりする恐れがあるため下火になっていきます。下の図表は、地元で行った調査の結果の一例です。これを見ると、この地区は築20〜25年の住宅が数多く存在していることがわかります。

久喜市吉羽 サンプル210個   調査日…5月10日(金)、5月31日(金)
色(上位5つのみ掲載)設置場所
長方形…114(個)銀…124門周り埋め込み…126
口のみ…67黒…30門周り自立…50
カマボコ型…22白…24ドア付近自立…14
正方形…4茶…16ドア埋め込み…14
屋根型…3赤…10門一体…6



 1980年代に入ると、埋め込み式の郵便受箱の中でも、特に郵便物を受け取るための入れ口のみが塀の外に飛び出ているタイプ(口のみタイプ)が流行します。色は、相変わらず銀系統のものがその多くを占めていますが、素材の流行がステンレス素材からアルミ素材に移行したため、黒などの落ち着いた色も人気となりました。久喜市内にもこの時期に建設された住宅が数多くありますが、下の図表を見ればこのタイプがどれほど流行していたか、容易に想像することができるでしょう。

久喜市北2丁目 サンプル212個     調査日…5月15日(水)
設置場所
口のみ…202(個)黒…84門周り埋め込み…205
長方形…9白…78門周り自立…7
カマボコ型…1銀…49 銀+黒…1(集会場…1)




 1990年代は、まさに郵便受箱の多様化の時代です。新しく家を建てる人や、引っ越しに伴って新たに郵便受箱の購入を考えている人など、それぞれのニーズや要望によって郵便受箱も様々な顔を見せます。特に素材にいたってはステンレス素材からアルミ素材、さらには木材、鉄に至るまで様々です。形としては、1970〜1980年代に流行した埋め込みタイプのものが、近年の不況の影響により門周りのコスト削減のあおりを受け、減少傾向にあります。それに代わって塀のないところでも簡単に、かつ低コストで取り付けることのできる自立ポールを使用した郵便受箱が増えています。カマボコ型や縦型の入れ口を持つものなどがその一例です。




 そして、簡素化された門周りを彩るためのガーデニングが大変な注目を浴びるようになった今日では、色の流行もそれに合わせて黒→グリーン→ブラウンと移り変わっています。また、以前までは門周りの塀などによって守られていたプライバシー的な部分を維持するために、施錠装置がついているものやマンションなどの集合住宅に設けられている宅配ボックスを置く家庭も、今では珍しくはありません。