4.今後の映画需要と鑑賞の変化
4.1 ショートシネマテレビドラマよりもはるかに短い時間でひとつの物語をみることができる映画だが、さらに短い短編映画「ショートシネマ」が大きな注目を集めている。ショートシネマとはわずか数分間の短い映画である。若い才能による映像感覚が従来の常識を打ち破り、深く練られた展開と、ショートストーリーゆえの軽快さや痛快さが長編映画では味わえない後味を持っているのだ。衛星放送による専門番組や国内外の短編を上映するフェスティバルが開催されている。最近では専門劇場までオープンした。
映画制作の形が模索される中で、こうした新しい映画スタイルも今後需要が高まっていくかもしれない。4.2 ミニシアター+シネマコンプレックス
「リトル・ダンサー」というイギリス映画がある。有名監督の作品でもなく大スターが出演しているわけでもない、典型的な単館興行に向いた作品だ。ところが、前評判の高かったこの映画は公開初日より大勢の観客を集め、祝日には全回立ち見となる状況だった。そこで徐々に劇場数を増やしていくことでロングランヒットとなった。
このように全国展開できるほどの宣伝費はないが、都内のミニシアターだけの公開では惜しいという作品はこれだけではない。そこで地方にも多く存在しているシネマコンプレックスを利用して観客動員数を一気に伸ばした映画が「ピンポン」だ。これも当初はミニシアター中心の公開だった。「アメリ」が持つ単館系作品の興行記録15億円を更新することは確実視されている。
「ミニシアター+シネマコンプレックス」という興行形態をとることによって、全国の人が均等に映画をみることができるようになったのだ。4.3 ホームシアター
ビデオテープに変わるメディアとしてDVDの普及が目覚ましい。映画用DVDソフトの主な特徴はデジタル信号圧縮技術により高画質映像で収録。音声もドルビーデジタルやDTSで収録され、5.1Chで再生できる。これらの恩恵を受けて、家庭で映画館並に楽しめるのがホームシアターだ。
「テレビ放送の映画では面白味に欠ける」という人のうち、70%を越える人が「ホームシアターに興味がある」と答えた。現在、大画面再生を可能にするプロジェクターは安くても20万円前後かかってしまうが、音響に関するアンプやスピーカーセットは3万円程度から購入できる。ホームシアターが浸透していけば、よほど観たい作品でなければ映画館に行かず、しばらく待ってDVDをレンタルして自宅で映画を楽しむことになることが多くなるかもしれない。またBSデジタル放送やスカパー、WOWOWなどで映画を楽しむこともできる。今後マイルームシアターを持つことによって、人々の映画鑑賞が大きく変化するだろう。