第3章 インターネットと旅行形態についての調査結果
1. 旅行計画
(1) 個人手配国内旅行について調査したこともあり、個人手配か、パックや団体かと聞いたところ、個人手配が73.8%で、インターネット利用者ほど、個人手配で旅行に行っていた。(図3-1-1)
個人手配の利点は、好きなときに出発でき、何かしたいときにすぐに変更できるということだと思う。また、旅行会社のパックやツアーなどは自分で旅行計画などを立てなくてもいい、ということが挙げられると思うが、逆に時間などの規定が多く予約なども必要であるし、キャンセルすると旅行に行ってもいないのにキャンセル料をとられるということもある。
自分のしたいように旅行するには旅行会社という第三者を介した形は変更が利かないというところが不向きである。
大人数の場合、全員の意見は反映されにくいので最初からある程度決まったパックやツアー商品のほうがよいが、少人数の場合に各個人の意見や要求などが反映されやすいという面では個人手配が有効である。
また、レジャー志向の高まりによって、ハッピーマンデーなど、急に旅行が決まった時にも大人数で行くことは難しいので、少人数の旅行が多いのではないか。
図3-1-1 旅行の形
(2) 情報収集
「最も重視したものの情報収集に役立った情報源はなんですか」(図3-1-2)という質問に対し、ガイドブックや旅行雑誌などは非利用者とさほど変わりがなかったが、ホームページと答えた人が旅行会社のホームページ、個人のホームページ、政府や団体のホームページを併せて41.0%で、重視したものについて、約半分の人が「ホームページが役立つ情報源であった」といっています。
特に目立ったのが、個人のホームページ15.4%、友人などの体験談15.4%などの人による情報源であった。
インターネット利用者は、非利用者よりも情報収集源の数が多く、またパンフレットの利用が少ないのも特徴的だった。
パンフレットは旅館など、宿泊施設を主に掲載している。そのため情報収集源の少ないインターネット非利用者には便利なものとしてあがったが、いろいろな情報を求め、情報収集源の幅の広いインターネット利用者の役に立つものとしてはあまり評価されなかったのではないかと思う。
(3) インターネットの利用感旅行におけるインターネットはどのようなところが役立っているのかをインターネットを利用している人に、以下の七点について五段階評価をしてもらったところ、特に旅行計画を立てる時点での評価が高いことがわかった。
また、宿泊施設を選ぶことやパッケージの予約など、予約に関するものについてはやや評価が低かった。
これはまだインターネットによる金銭的な問題に対し何らかの不安要素があるからではないかと思う。
2. 自由な旅行
(1) 決めないで行くもの上記のことから、インターネット利用者はかなりいろいろな情報をいろいろなところから収集する傾向があることがわかったのだが、ではその収集した情報をどのくらい旅行計画に反映させているのだろうか。
「旅行前に決めていなかったものはなんですか」と言う質問に対し、非利用者は「決めていた、あるいは決めていないものはなかった(41.2%)」が一番多いのに対し、インターネット利用者は、旅先の行動48.1%、予算28.8%で、「決めていた、あるいは決めていないものはなかった(21.2%)」よりも多く、何かしらの項目を決めないで旅行に行くことのほうが多いようだ。
幅広い情報収集をしつつも完璧に計画を立てないで出発する、という様子から、やはり変更の利きやすい自由な旅行を望んでいるようだ。
(2) 旅行中に調べるもの
インターネット非利用者が「特にはない(60.8%)」であるのに比べ、インターネット利用者が旅行中に調べたもの(図3?2?3)は、主に交通情報や、日中の観光、切符やチケットと、非利用者よりも多くのことを調べていた。
また、それに役立つ情報源としては、ガイドブック36.1%、現地のパンフレットや人など33.3%、インターネットが30.6%だった。
非利用者に比べ、ガイドブックの割合が少なく、インターネットも旅行前よりも少ないことから、特に現地の情報が役に立っているようだった。やはり計画段階と同様にガイドブックや現地のパンフレットなど、インターネット利用者は情報収集量が多く、個人の生の情報が旅行前、旅行中ともに役立っているようだ。
あまり計画を綿密に立てないで出発するインターネット利用者であったが、変更の利きやすい状態で出発するのは、現地に行ってから、何らかの項目を探して決めるためではないだろうか。非利用者と比べると計画前、旅行中ともに積極的で、定番といわれるような旅行ではなく自分だけの旅行をしているようだ。
図3-2-2 旅行中に調べたもの
3. 低価格化と旅行回数
(1) 旅費
旅行で使った金額について、インターネットを利用する人ほどその金額が低
く、特に一泊料金については半数以上の人が1万円以内(50.0%)1万円か1万5千円(19.2%)の範囲に収まっていた。
(2) 宿泊施設
その宿泊施設について、旅館・ホテル34.6%、知人・親戚の家26.9%、非利用者に比べ、いろいろなところに泊まっているようだったが、特に知人や親戚の家の割合が目立った。
(3) 交通手段
交通手段について聞いてみたところ、インターネット利用者は、電車や車を使うことが多く、非利用者は車を使うことが多いことがわかった。インターネット利用者については、いろいろな規定があるものの、JRの年齢性別不問で誰でも利用でき、2300円でJR線が一日乗り放題の「青春18切符」や各鉄道会社で利用できる「学割制度」など、学生ならではの割引サービスが影響しているのではないかと思う。
(図3−3−3)
(4) 旅行回数
平成13年の観光白書によると、国民一人あたりの年間国内旅行回数は2.26回で、前年よりも下回っている(前年比11.7%減)が、最近の自然・環境の保全への関心や高齢化社会を迎えた健康への意識の高まりを背景に、国民の旅行に対する参加意識は年々高まってきているそうだが、旅行にインターネットを利用している人ほど、旅行に行く回数が多いことがわかった。これは、インターネット利用者ほどレジャー志向が高く、かつ不景気や所得の低下を背景として宿泊費や交通費を安くしているということが、旅行の回数を多くしている大きな要因であると考えられる。
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考察
インターネットを利用することにより、私たちの世界は自分の知らないうちに便利になり、インターネットがないときのあらゆるものにいろいろな変化を与えている。私たちはその変化を肌で感じ、また一人一人がその現象を作り出す破片となっているということに私は不思議な感覚を覚えるのだが、旅行においてもインターネットは旅を多様化させる要因の一つとなっているということがわかった。
インターネットを利用して旅行に行く人は、日常生活でも余暇経験値、つまり旅行という日常生活から離れた場所でなくても普段の休日に運動やスポーツなどの室外活動が多いほど経験値が高いという報告があったが、それと同様にこの調査でも、問17と問18において余暇経験値が高いほど旅行にインターネットを利用するという結果が出た。
この調査で、インターネットを利用する層とインターネット利用しないでは旅行の仕方が違うということを述べてきたわけだが、旅行の嗜好が違うということがまず、旅行形態を分けている要因の一つだと思う。
ほかの調査で、旅の申し込み方法についてインターネットは人気のある地域にいきたい場合やより多くの選択肢から選びたい場合に有効だというものがあったが、この調査でも一番最近行った国内旅行について(問2)、昨年1周年を迎えた首都圏のディズニーシーや、大阪のユニバーサルスタジオジャパンがのある地方がインターネット利用者に人気があった。
今後の課題としては、現在期待されているインターネットによる予約や決済であるが、まだ学生ということもあり今のところインターネット利用者のうちでも予約は少なく、不安要因もまだ拭い去ることができないようで、より信頼できる安心なシステムの充実と法整備が必要であると思う。
個人的な感想であるが、私はインターネットを使って旅行をしたことがなく、いつもガイドブックやパンフレットを片手に右往左往していたので、これから旅行に行くときにはいろいろなホームページで検索して自分だけの旅行をしたいと思った。
また、インターネットを使って旅行をしたことがないと思っていたら、確かに旅行に対していろいろ調べて旅行に行ったことはなかったのだが、旅行中にインターネットを利用していたことを思い出した。それはローソンのロッピーである。最近ローソンだけでなくコンビニの端末機でチケットなどの予約や購入ができて、本当に便利だ。
今回、インターネット利用者ほど、個人旅行で、自由な旅行を望み、旅行回数が多くしかも一回の旅行代が低いということがわかったが、どれか一つでもあてはまる項があるときには、インターネットを利用するとより個人の重視する項目にあった旅行が実現するのではないかと思う。
自分の個性やニーズに合わせた自分だけの旅行ができる、ということがインターネットの最大の魅力なのだ。
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引用文献
・平成12年度 観光白書
http://www.mlit.go.jp/hakusyo/kankou-hakusyo/h12/index.html
・平成13年度 観光白書
http://www.mlit.go.jp/hakusyo/kankou-hakusyo/h13/000_.html
・平成14年度 観光白書
(今後の生活の力点)
http://wwwwp.mlit.go.jp/wp/jsp/search/IndexBodyFrame.jsp?sd=npcc200201&id=null&no=
(ハッピーマンデーの倍増)
http://wwwwp.mlit.go.jp/wp/jsp/search/IndexBodyFrame.jsp?sd=npcc200201&id=null&no=
(観光産業における情報化)
http://wwwwp.mlit.go.jp/wp/jsp/search/IndexBodyFrame.jsp?sd=npcc200201&id=null&no=
・国民生活に関する世論調査 平成13年9月実施
・2002 レジャー白書 特集? バカンスは経済社会を活性化させる
http://www.yoka.or.jp/hakusyo.htm
・ハッピーマンデーと旅行
http://www.jata-net.or.jp/tokei/2002/chosa06.htm
参考資料
・新現役ネット 特集記事「ハッピーマンデーで2001年国内の旅は活況?」
http://www2.shingeneki.com/feature/tokushu_detail.qry?record_id=24
・『インターネットと旅行』について
http://www.jata-net.or.jp/tokei/005/005_06.htm
・『インターネットと旅行』アンケート調査
http://www.jata-net.or.jp/jata_n/release/020409_monita.htm
・お金の使い方と旅行
http://www.jata-net.or.jp/tokei/005/005_03.htm