オペレーションズ・リサーチ 2000年度 期末試験問題

作成: 根本 俊男(文教大学情報学部経営情報学科)
  e-mail: nemoto@shonan.bunkyo.ac.jp
実施: 2000年7月11日

 

解答上の注意

問題1

湘南市では3つのゴミ集積処理場と2つの最終処分場を有する.湘南市のすべてのゴミは3つのゴミ集積処分場のいずれかにまずは集められ簡単な処理を受けた後,2つの最終処分場のいずれかに運ばれ最終処分される.各施設の1日あたりのゴミ処理能力と各施設間の輸送能力をまとめたのが以下の表である.なお,各施設で処理をされる前と後でゴミの質量に変化は無いとする.

表1:各施設の1日あたりのゴミ処理能力(単位:トン)

施設名 1日あたりのゴミ処理能力(単位:トン)
ゴミ集積処理場1 40
ゴミ集積処理場2 60
ゴミ集積処理場3 60
最終処分場A 90
最終処分場B 50

 表2:各ゴミ集積処理施設から各最終処理施設への1日あたりの輸送力(単位:トン)

終点→

最終処分場A 最終処分場B
始点 ゴミ集積処理場1 20 30
ゴミ集積処理場2 20 50
ゴミ集積処理場3 40 20

以下の問いに答えよ.

(1)
湘南市のゴミ処理システムの1日あたりの処理能力を計りたい.湘南市のゴミ処理のシステムをネットワークで適切に表現せよ.
(2)
湘南市のゴミ処理システムの1日あたりの処理能力を算出せよ.
(3)
上記小問(2)にて求めた1日あたりの処理能力を10トン増強したいと湘南市の担当者は考えている.そこで各施設の処理能力を10トン分増強するのに必要なコストを見積もってみた.その結果は表3のとおりである.湘南市のゴミ処理システムの1日あたりの処理能力を効果的に10トン増強するには,どの施設を強化すべきか?根拠を示し具体的に提案せよ.

表3:各施設の1日あたりの能力を10トン増強するのに必要なコスト(単位:億円)

施設名 能力を10トン増強するのに必要なコスト(単位:億円)
ゴミ集積処理場1 10
ゴミ集積処理場2 20
ゴミ集積処理場3 20
最終処分場A 30
最終処分場B 40
施設間の輸送路 各50

 

問題2

文教堂は音楽配信ビジネスを軌道に乗せた.そこで更なる業務の拡大をインターネット通信会社の文教ネットに相談してみた.その結果,ネットワーク利用に関する制限と費用に関して情報を得た.以下がそのやり取りの要約である.

 

文教堂の要求:
文教堂では都市Sにある本社から3つの都市1,都市2,都市3にある各支社に様々なデータを常時送り出している.業務の拡大に併せ,単位時間あたり1ギガ(G)バイトのデータを配信する体制を整えたい.つまり,本社からは単位時間あたり合計3ギガバイトのデータを常時送り出し,各支社は1ギガバイトのデータを常時受け取りたい.業務拡大なのでコスト増は仕方が無いが,できるだけ安くネットワーク配信体制の拡大を行いたい.
文教ネットの回答:
わが社が持っている回線網と各都市間の通信線を利用した場合の費用は下の図のとおりです.都市Sから各都市にはネットワークが張られてますので要望にはお答えできます.ただし,各都市間の通信線(枝)には,通信量の限界があり各通信線は最大で単位時間あたり1ギガ(G)バイト分しか提供できません.どの通信線を使うかは文教堂さんで決めて申し込んでください.

※ギガ(G)バイト:データ量の単位.

図:文教ネットが持つ通信網.枝の向き方向にしか通信はできない.各枝の側にある数字はその都市間の通信線の1ギガあたりの利用料金(単位:10万円)である.

 

以下の問に答えよ.

(1) 文教ネットの持つ通信網のグラフを隣接行列,接続行列,リスト表現の3通りで表現せよ.
(2) 仮に文教ネットの通信網の各都市間の通信線(枝)に通信量の制限が無かったとすると,文教堂はどのようにネットワークの利用を申し込めば利用料金が安く済むか提案せよ.
(3) 実際は,各都市間の通信線(枝)には,単位時間あたり1ギガバイトしか送信できないという制限がある.この場合,文教堂はどのようにネットワークの利用を申し込めば利用料金が安く済むか提案せよ.
(4) 文教ネットのネットワーク施設改善により,通信量の限界が各通信線とも2ギガに増強された.文教堂はネットワーク利用をどのように変更したらよいのか.あらためて,利用料金が最も安くなるネットワーク利用を提案せよ.

 

問題3

以下の用語のうちひとつを選択し,簡潔に解説せよ.

(1)
強連結成分分解
(2) 2連結成分
(3) 最小木問題
(4)
最大フロー・最小カット定理