オペレーションズ・リサーチ 1998年度前期期末試験問題

講義担当:根本 俊男

1998年7月3日実施

 

解答上の注意

 

問題1

ある通信システムのネットワークを図示したものが図1である.点は通信基地を示し,枝の方向は連絡可能な方向,枝に付いている数字はその通信線を破壊するのに必要なコストを示している.

この通信システムの管理者は通信基地@から通信基地Eへの通信の頑健性を知りたい.そこで,頑健性を測るひとつの指標として,通信基地@から通信基地Eへの通信を分断するのに必要なコストで考えることにした.ここで,通信基地@から通信基地Eへの通信を分断するのに必要なコストとは,各通信線の破壊に必要なコストの和で表すこととする.つまり,例えば図2において,×印の枝を破壊すれば通信基地@から通信基地Eへの通信を分断できるが,その分断作業に要したコストは,10+3+2+5+17=37ということになる.

 

図1:ある通信システムを表現するネットワーク

 

図2:通信基地@から通信基地Eへの通信を分断する例

さて,通信基地@から通信基地Eへの通信が最も低コストで分断される場合とはどのように破壊を行ったときなのか示しなさい.もしも,最小コストでの破壊案が複数パターン存在するときはそれらすべてを示しなさい.

 

 

問題2

文教石油では3つの産油地(産油地1,産油地2,産油地3)を持ち,4つの消費国(国A,国B,国C,国D)に産油地で採掘された原油を運んでいる.輸送は主にタンカーで行う.しかし,輸送量が膨大でタンカーを頻繁に運行するので,個々のタンカーの運行状況から輸送費を割り出さなくとも,産油地と消費国間の輸送によって生じるの年間輸送費は,そのルートの年間輸送量と単位量(1億トン)当たりの輸送費との積で算出できることが経験的にわかっている.文教石油の原油販売に関する基礎データは以下の表1から表3のように示される.

表1:産油地と消費国間の単位量(1億トン)当たりの輸送費

  国A 国B 国C 国D
産油地@ 4億円 8億円 9億円 -
産油地A 3億円 4億円 - 6億円
産油地B - - 1億円 9億円
  ※表1において,「−」部分は,政治的な理由で輸送が不可能なことをあらわす.
  ※各産油地と消費国間の輸送ルートは安定しており,十分な量の輸送が可能である.

 

表2:産油地の原油の年間生産量

産油地@ 50億トン
産油地A 70億トン
産油地B 20億トン

 

表3:消費国の年間原油購入量

国A 10億トン
国B 50億トン
国C 20億トン
国D 40億トン

以下の問いに答えよ.

(1) 現在の状況は,原油が生産過剰なのか.それとも,生産量が不足しており需要を満たすことができない状況なのか.データを示して判断しなさい.  
(2) 現在,文教石油では各産油地から各消費国への輸送を以下の表4に示されているように行っている.現在の輸送状況における年間輸送費はいくらか?  

表4:現在の産油地と消費国間の輸送状況

  国Aへ 国Bへ 国Cへ 国Dへ
産油地@から 0 50億トン 0 -
産油地Aから 10億トン 0 - 40億トン
産油地Bから - - 20億トン 0

 

(3) 文教石油としては,各消費国の年間購入量の増加は見込めないので,利潤をより多く生み出すために年間の輸送コストを最小にしたい.そこで,現在の輸送状況を見直したい.年間輸送費が最小な原油の輸送計画を文教石油に提案しなさい.ただし,各消費国に購入量の原油は必ず運ばなくてはならないとする.  
(4) 小問(3)で提案した輸送計画を採用した場合,現在の輸送状況に比べてどのくらい年間輸送費が節約できますか?  

 

問題3

この問題は選択問題です.以下の(1),(2)または(3)から1問を選んで解答してください.解答用紙には(1),(2)または(3)のどの解答であるのかはっきりと明記してください.

(1) ナース・スケジューリング問題とはどのような問題ですか.また,ナース・スケジューリングを実際に行う際に特に気を配らなくてはならないのはどのような点ですか.6月12日の特別講演会の内容に沿って簡潔に述べよ.  
(2) クラスター分析とはどのような分析手法ですか.また,簡単にクラスター分析を行う方法を簡潔に説明しなさい.  
(3) 下図は東京の南西部の主要道路のネットワークである(数字はkm単位の距離).渋谷を根とした最短路木を求めよ.  
 
 

(問題3(3)の出典:刀根薫著「オペレーションズ・リサーチ読本」問題3.1改題)