オペレーションズ・リサーチ 1998年度後期 期末試験問題

講義担当:根本 俊男

1998年12月15日実施

 

解答上の注意

 

 

問題1

文教工業ではある原料A,Bから1台の専用設備を使用して2種類の工業薬品PとQを生産している.薬品Pを1リットル作るには原料Aは4Kg,原料Bは2Kg必要で,専用設備を2時間占有使用し完成する.一方,製品Qを1リットル製造するには,原料Aは5kg,原料Bが5kg必要で,専用設備を1時間占有使用し完成する.

原料の1日当たりの使用可能量は原料Aが30kg,原料Bが25kgである.また,専用設備は1日最大12時間までしか使用できない.

現在の製品の1リットル当たりの利益は製品Pが5万円,製品Qが9万円である.

製品Pと製品Qの製造によって得られる利益を最大にしたい.製品Pと製品Qをそれぞれ1日当たり何リットル生産すれば良いのだろうか.以下の問いに答えよ.

(1) 製品Pと製品Qをそれぞれ1日当たり何リットル製造すれば良いか求めたい.製品Pの生産量をx1,製品Qの生産量をx2として,問題を定式化せよ.
(2) 総利益を最大にする生産計画を具体的に提案せよ.
(3) 小問(2)にて提案した製造量で生産を行うとき,専用設備は1日当たり何時間使用しているか.
(4) 現在,小問(2)にて提案した製造量で生産を行っていると仮定する.もしも,原料Aの現在の1日当たりの使用可能量のみが1kg増えた(原料Bの使用可能量や専用設備の使用可能時間は変化しない)とすると総利益はいくら増えるか.
(5) 小問(4)で求めた数値にはどのような意味があるか.簡潔に解説せよ.
(6) 小問(5)で求めた数値の割合で総利益が増えるのは,原料Aの1日当たりの使用可能量をどこまで増やしたときか.
(7) 小問(6)で求めた数値まで原料Aの使用可能量を増加させたとき,専用設備は1日当たり何時間使用されているか.
(8) 文教工業では新製品Rを開発している.新製品Rを1リットル生産するには原料Aを3kg,原料Bを2kg,専用設備を1時間使用する必要がある.現在小問(2)で提案された生産計画で生産を行っているする.新製品Rの生み出す利益が1リットル当たりいくらだったら新製品Rの生産をはじめるべきか.適切にアドバイスせよ.
(9) 現在,小問(2)にて提案した製造量で生産を行っていると仮定する.製品Qの1リットル当たりの利益が7万円にダウンした. 生産計画を変更すべきかどうか判断せよ.
(10) 適当な変数を用いて,小問(1)で定式化した線形計画問題の双対問題を答えよ.
(11) 小問(10)で求めた双対問題の最適解と最適値を答えよ.
(12) 小問(10)で求めた双対問題はどのような意味を持つ最適化問題なのだろうか.この問題の設定から想像して答えよ.
   
   

 

問題2

湘南ドリンコでは口当たりのよい水を混ぜない「天然素材湘南ジュース」を製造販売し人気商品になっている.

湘南ジュースはある果汁から作られる.人気の口当たりを作り出すポイントは,原料となる果汁に含まれるある成分Xの割合にある(具体的な成分名は極秘事項で公開できない) . 果汁の重量に対し成分Xの重量の割合が45%になるものを原料として使用する点がポイントなのだ.ただ,45%のプラスマイナス5%以内,つまり果汁重量に対する成分Xの重量の割合が40%以上50%以下の果汁を用いれば熟練の職人の腕により満足できる湘南ジュースを生産可能である.

さて,湘南ドリンコでは湘南ジュースがなかなかの人気なので増産に踏み切ることにした.増産計画では1日2500リットルの果汁液の確保が必要となる. ところが, この原料の確保で困った事態が起きた.

実は, 湘南ドリンコでは今までは社長の知り合いの果樹農家の文教さんに果汁を1日500リットル生産してくれるように頼み原料としていたが, 増産となると原料が足りなくなる.

そこで近県で果汁の大規模生産格安販売をしている業者A及び業者Bからもさら購入しようと思ったが,1日に必要な2500リットルをどのように購入したらよいか決め兼ねている. ただし,文教さんからは今までの縁もあるので価格に関係なく毎日500リットルは今後も購入し続ける契約を既に結んでいるので業者Aや業者Bから購入する果汁は1日2000リットルでよい. 各果汁のデータは以下の表の通りである.

 

表:各果汁に関するデータ

  1リットル当たりの重さ 1kg当たりの成分Xの重さ 1リットル当たりの価格 1日の購入可能量 備考
業者A 1.5kg 20% 150円 事実上無制限  
業者B 1.6kg 50% 180円 事実上無制限  
文教さん 1.5kg 40% 200円 500リットル 契約上必ず500リットル買う

 

原料費削減を考えると業者Aの果汁が安いので業者Aから購入すればよいが,業者Aの果汁は成分Xの含有量が少ないのでそのままでは使用できない. そこで,成分Xを多く含む業者Bの果汁や文教さんから購入している果汁を混ぜて使用すれば原料として使用できるのではないかと考えている. しかし,各業者から何リットルずつ買えば原料費を安く押さえた上に混合後の果汁重量に対する成分Xの重量の割合が40%以上50%以下にできるかがわからない.

(1) この湘南ドリンコの果汁購入計画の問題を適切な変数を用いて数理計画問題に定式化せよ.
(2) LINDOを利用して最適解を求めたい.LINDOへの入力を具体的に記述せよ.
  注意:定式化した数理計画問題の最適解・最適値を導出する必要はない.