喫煙所最適設置計画 

経営情報学科 98P21077 澤崎 正寛


 

1章  はじめに

 

私はヘビースモーカーである。最近、喫煙マナーがTVなどのメディアなどでも多く取り上げられている。私もなるべくマナーを守るように努力をしているが、やはり喫煙所の設置によってマナーを左右されてしまうこともしばしばある。そこでここでは、マナーが守られやすい喫煙所の設置方法について考えたい。これを提案することにより利用する人が利用しない人とよりよく共存することができるのではとおもわれる。

まずは、私の一番身近なところにある喫煙所問題、「文教大学における喫煙所問題」にしぼり、文教大学の喫煙所の設置を見直していこうと考えている。ここでは大学内での喫煙所に対する問題を把握し、原因を探り、解決策を提案することを目的とする。

この文教大学の喫煙所問題で出された解決案は、なにもこの大学内だけの解決案ではないと私は考える。この解決案で示される文教大学喫煙所の新しい設置案やルールは、社会にある様々な施設に適応することができるのではないだろうか。つまり、この研究は文教大学の喫煙所問題の解決だけでなく、実社会の多くの施設に対しての解決策でもあると言う一般性を持っているだろう。

私は現在の大学の指定している喫煙所の数は喫煙者の数に比べて少ないと感じていた。しかしこの研究を行うにあたって、非喫煙者の意見を聞いてみたところ、喫煙所は多すぎるという声が多数であった。そのギャップは何であろうか、このギャップを埋めることができるのは何であろうか、その答え、つまり喫煙所の設置を喫煙者、非喫煙者も納得いく提案をすることができれば、喫煙者と非喫煙者が敵対し批判しあうことなく共存することが可能になると考えている。

 

次の2章では「文教大学の喫煙所問題」、3章では問題となるであろうものの原因、4章で文教大学の現状、その5章で特徴を探り、その事を踏まえた上で6,7章で改正案を提案してゆきたい。

 

 



2章 文教大学においての喫煙所問題

 

文教大学は禁煙・喫煙場所があやふやな印象を受ける。大学内には「喫煙場所」、「禁煙場所」とはっきり決まっている場所がいくつか見られる。しかし全ての場所が禁煙・喫煙場所とはっきり決まっていないのである。

喫煙者は「禁煙でないところ、灰皿があるところ」でタバコを吸おうとする。しかし非喫煙者は「喫煙所だけで吸え」と考える。しかし実際は「喫煙所」がはっきり決まっていないことから、灰皿を移動するとそこが喫煙所なんてことも許されてしまう、「利用者によって決まる場所」が生まれているのである。このようなことから、禁煙場所にもかかわらず、灰皿を用意することによって、ほぼ喫煙所と化しているところも存在している。このままでは喫煙者・非喫煙者は敵対し、溝が生まれてしまう恐れがある。

このようなことからはっきりとした喫煙所の設置、非喫煙者に迷惑をかけずしかも喫煙者に気持ちよく守られ、かつ利用しやすい喫煙所の見直しが望まれる。

そこで、喫煙所はなぜ守られないのか、また守られている喫煙所の理由は何か、どこを改善すれば守られるようになるのかということを参考に、両者にとっての「最適」といえる喫煙所は一体どのようなものなのかを考えていきたい。

 

 


 

3章            守られない原因

 

 

図1は文教大学の全体図である。この図からわかるように文教大学は複数の施設から成り立っている。今回はその中でも3,4,5,6号館、そして図書館、学食に絞って考えていくことにする。ここで1,2号館を考えていかないのは、この2つの施設は短大生向きの施設、つまり未成年が利用する施設ということで、分煙はされておらず、改めて見直すことはしなかった。その他の分煙のルールが存在すると予想される施設でこの問題を考えて行くことにした。

3・4・5・6号館はすべて分煙である。しかし施設によってそのルールの守られ具合はさまざまである。なぜこのような差が出てくるのであろうか。

理由はたくさんあるであろうが、施設ごとで最も差が生じる原因は次に挙げる3つの問題が主なものであると私は考える。

   @利用者の数、性質

1.文教大学全体図

 
   A喫煙所の数

   B喫煙所の場所

この3点に注目しながら、現状を見ることで何らかの改良点は見えてくるであろう。次章で実際に施設ごとの現状を見ることにしよう。

 

 


 

4章 現状を知る

 

それでは実際、文教大学の施設利用の状況と喫煙所設置場所について考えてみよう。私は実際、大学内を歩き回り喫煙状況を調べてみた。そこには確かに喫煙場所、禁煙場所というものは存在していた。またどっちなのかわからない場所、明らかに個人の作った喫煙所、またルールを無視て喫煙した形跡などが見られた。

しかしすべてが同じような状態だったわけではない。ルールが守られている施設もあれば守られていない施設もあった。

それでは何が違ったのだろうか。

 

4−1 守られていた場所、比較的守られていた場所

 まず図書館についてだが、図書館は基本的に禁煙とされていた。それは学生もほぼ知っていたと思われる。喫煙所は2階、3階にそれぞれ2箇所、同じところに作られていた。また施設利用者はそんなには多くなかった。

 

 

図2.3号館見取り図

 

赤丸:喫煙所

 

 

 

上記の図2は3号館の見取り図である。3号館に関しては2,3階は主に研究室として使われており、受講生は少なかったと思われる。3階は喫煙スペースは無く、2階は建物のはじに1箇所設置されていた。1階は受講生は2,3階に比べ多くいたが喫煙所は2箇所設置してありほぼ守られているようであった。

 

 

赤丸:喫煙所  青丸:個人作成による喫煙所

 

 

図3.4号館見取り図

 
 

 

 


上記の図3は4号館の見取り図である。4号館は受講生が多く見られた。喫煙者も多く見られたのだが、喫煙所は比較的守られていた。喫煙所は1階に8箇所雑談コーナーとして設けられており、ほぼ完全に守られていた。灰皿は固定ではなく利用者により喫煙スペース内で移動されていた。2,3,4階は3つの教室に対し2箇所、灰皿が存在していた。しかし喫煙所は1箇所であり(赤)、学生の手によって2つの灰皿の内、1つは別の場所に移動させられていた(青)。驚くことに移動場所は全て同じところであった。

 

 

図4.6号館見取り図

 
赤丸:喫煙所

 

 

上記の図4は6号館の見取り図である。6号館は建物全体を禁煙としてあり呼びかけも積極的であった。受講生は非常に多く見られたが1階に大きな喫煙スペースを設け、10個の灰皿を用意してあった。

 

4−2  守られていなかった場所、比較的守られていなかった場所

 

 

赤丸:喫煙所  青丸:個人作成による喫煙所

図5.5号館見取り図

 
 

 


上記の図5は5号館の見取り図である。比較的守られていなかったところは5号館であった。5号館の喫煙所は2階に1箇所のみの設置であった。受講生は多く見られ、それぞれの階で多くの禁煙無視がみられた。ここで面白い発見があった。喫煙している人は、それぞれの階の同じところ(ベランダ)で喫煙していることであった(青丸の部分)。

 

 学食にいたってはまったく守られていないと言えよう。利用者は変動が激しかったが、非常に多かった。喫煙所は建物1階のはじに全体の10%ほどの面積で用意されていたが、喫煙者の手により灰皿は移動され、多くの禁煙席に散っていた。散り方はほぼまんべんなく等間隔で散っており、喫煙所に用意されていた数量では足りなかったのか、喫煙者がそれぞれ用意している姿も見られた。

 

 


 

5章   考察

 

 喫煙ルールの守られていた施設の共通点は何であろう。

 まず図書館と6号館から。両施設ともに全面禁煙の呼びかけが強かったと言える。利用者の数が多いことからも喫煙者の数が多いことがうかがえるが、禁煙・喫煙の場所がはっきりと分かれていたことが特徴である。次に図書館と4号館。この2つに見られる特徴は、それぞれの階に対し同じ場所に喫煙所が設置されていることである。利用者は階が違っても喫煙所のありかが同じであるとルールを守る姿勢が見られた。また5号館はルールは守られていなかったが、喫煙するスペースはそれぞれの階に対し同じ場所であった。ことから喫煙者ははっきりと示されたルール、場所は守るということがわかるのはないだろうか。確かに勝手に新しく喫煙所を作ってある場所も見られたが、そこは喫煙場所も禁煙場所ともいえるところであった。

 

 3号館の1階と4号館全体に共通の特徴は1つの階に2箇所灰皿があった。4号館は生徒により勝手に移動させられていたのだが、これらの灰皿は複数の教室に対し同距離の位置に配置されていた。この配置はこの階に存在する利用者にとって総移動距離がほぼ最短となる配置であった。これより喫煙所はある程度、利用者にとって快適な配置が望まれていることがうかがえる。

 

 それでは喫煙所の守られてなかった施設の共通の特徴は何であろう。

 5号館、学食ともに利用者に対し喫煙所の数が少なかったと言えよう。このことは利用者(喫煙者)が自ら灰皿を用意していたり(学食)、ベランダと言う比較的隔離されたスペースを勝手に喫煙所のように使用している(5号館)ことからのわかる。つまり喫煙所の数はある一定量を満たすことが望まれているようだ。確かに6号館の煙所は1箇所に固まっていたが、多くの数の喫煙所が用意してあった。同じ1箇所の配置であった5号館との差は喫煙所の数であったのだろう。

 

 


 

6章  アプローチ

 

上記の特徴をふまえたうえで新しく喫煙所配置に案をあげてみよう。案は多く分けると以下の3点となる。

@      喫煙・禁煙場所を明確化

A      利用施設に対し最適な配置

B      利用者に対して適切な数量の喫煙場所の用意

 

6−1 「喫煙・禁煙場所を明確化」

 図書館や6号館に見られた特徴、それは喫煙、禁煙の場所をはっきりとさせ、その事実を強く主張していたことにあるであろう。

これの成功例が多く見られ施設にファミリーレストランや図書館、病院が挙げられるであろう。基本的に施設全体を禁煙とする代わりに喫煙所を設け、はっきりと提示することにより、施設利用者は自分が喫煙するか、しないかという自分の意思で施設をより快適に利用することが可能となるだろう。

 

6−2 「利用施設に対し最適な配置」

4号館、5号館そして学食の特徴からいえること、それはいくら喫煙・禁煙場所は設置してやっても利用者は勝手に利用しやすいように配置を変えてしまうことがある。こうしたことが喫煙所の変動を招き、ルールの混沌化をうんでしまう結果となる。そこで施設の利用者(喫煙・非喫煙両者)に対して最適と言える配置案を提案してやる必要があるだろう。

 それでは「最適」とは何であろう。ここでは施設利用の利便さを計る物差しとして、移動距離で考えてやることとしよう。

喫煙者にとって最適→喫煙所までの移動距離が最小

非喫煙者にとって最適→喫煙所までの距離が最大

このことが両者にとっての「最適」と私は考える。しかし両者が共存するためにはこのベクトルが逆を向いている2つを満たす解は存在しない。そこでそれぞれの施設に対し、利用者の喫煙者・非喫煙者の割合を考慮した配置の提案を行いたい。

この提案では喫煙者の喫煙所までの総移動距離を+とし、最小非喫煙者から喫煙所までの距離を−とし、この合計の移動距離を最小としてやる事で考えてみよう。

結果は、喫煙者>非喫煙者 のときは、喫煙者の総移動距離の最小問題

喫煙者=非喫煙者 のときは、どこに作っても距離は一緒(0となる)

喫煙者<非喫煙者 のときは、非喫煙者の総移動距離の最大問題

となる。

 この案はすでに一般社会でも実践されていると私は考える。まず喫煙者>非喫煙者のときだが、比較的喫煙者の多い喫茶店や飲食店、パチンコ店やアミューズメントは1つの席、テーブルに対し1つ用意されているといえよう。喫煙者=非喫煙者のときだが、ファミリーレストランやファーストフード店によく見られる。主に配置は半々とされ、お互いがの席がはっきり別れている。喫煙者<非喫煙者の場合、例として駅や病院では喫煙所は非喫煙者の最大総移動距離、つまり喫煙所はある程度施設のはじに配置されおり、また灰皿もバラけさせず1箇所にまとめてある。

この上記の施設はそれぞれ喫煙・禁煙ルールが守られていることから、この利用者の喫煙者・非喫煙者の割合を考慮した配置は実践する価値はあるであろう。

 

6−3「利用者に対して適切な数量の喫煙場所の用意」

 さて、学食は上で示した明確化という点では力を注いでいる。利用者の喫煙者・非喫煙者の割合もほぼ同じくらいである。つまりどこに作ってあげても配置は「最適」となる。それではなぜルールは守られていないのであろうか。それは喫煙場所の数が少なすぎることが、喫煙者が勝手に喫煙所(灰皿)を用意してしまうことにつながっているのであろう。そして喫煙・禁煙の明確化が崩れていように感じる。

 6号館は唯一1階のみが喫煙を許されている。建物が全面的に禁煙とされ、1階のみが喫煙所とされたときここに灰皿が適切な量用意されたことにより、6号館の分煙は成功したと私は考えている。このように利用者に対して必要な数の物を用意してやることによりルールを守る機会を与えてやることになると言えよう。

 

 


 

7章 考察 

 

1章で私は、「現在の大学の指定している喫煙所の数は喫煙者の数に比べて少ないと感じていた。しかし非喫煙者の意見はと多すぎるという声が多数であった」と述べた。このことは正しかったと今は感じている。確かに大学内に喫煙施設は喫煙者に対して多数用意されていた。しかしその全てが正常に機能はしていなかったため、喫煙者には少なく、非喫煙者には多く感じていたのであろう。喫煙者がルールを守り、非喫煙者ともよりより関係で共存するためにも6章の方法で

@    まずそれぞれの建物施設の利用者の特徴をつかみ

A    両者の求めている多すぎず、少なすぎない利用施設(喫煙所)を用意し

B    それぞれの建物施設に適した「最適」な配置を行い

C    その配置の明確化を行う

ということを提案する。

 

 


 

8章 まとめ

 

 ここまでで私が喫煙所の設置についての述べてきたことは文教大学についてのみである。文教大学の現状や性質を穂とにこの研究を行い、上で述べたような結論となった。しかし再度述べることとなるが、この「喫煙所設置計画」は何も文教大学だけに利用できるわけではない。世の中の様々な施設に適応できると私は考える。今後は、是非この提案の信憑性を計るためにも、この提案に従い実際に喫煙所の新配置を行ってみたいと考えている。そして、この提案を試した上での新しい案や修正を加えて行ければと考えている。

 

 

 

 


謝辞

本論文は私だけの力で完成させたものではありません。本研究に取り組むに当たり、指導教員の根本先生には大変お世話になりました。また、研究室メンバーの皆さんの多くの感想、指摘、アドバイス、大変参考になりました。

皆様には大変感謝しております。本当にありがとうございました。

 


参考文献

岡部篤行・鈴木敦夫;「最適配置の数理」朝倉書店 1992


  

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