卒業研究計画書

研究課題

「21世紀のコミック作家の著作権を考える会」の主張の正当性の検証

研究概要

2001年5月、「21世紀のコミック作家の著作権を考える会」による緊急アピール文が、大手出版社のマンガ雑誌各誌に見開き2ページで掲載された。

この団体は新古書店や漫画喫茶が現在のような大規模ビジネスとして展開していくと、利益が作家に還元されない状態が続き、作家の創作にかけた努力と成果がないがしろにされると述べている。

またそれに伴い、漫画文化を支える仕組みが壊されていってしまうと主張している。

そしてこれら新古書店や漫画喫茶に対して抗議の声を上げている。

しかし、新古書店や漫画喫茶の隆盛が本当に作家の努力と成果をないがしろにし、さらには漫画文化を支える仕組みを壊すことに なるのかということに疑問を感じた。

よって、この主張をこれから主に以下の3点を中心に検証していきたいと考えている。

数理的見解(定量的見解):新古書店・漫画喫茶の繁栄がどの程度新刊の漫画本の売上に影響しているのかを、数値的に把握したい。
そのために、近年の新古書店・漫画喫茶の出店数・来客数・売上と新刊の漫画本の売上部数をグラフやデータに とり、比較検証してみる。

漫画の実状(定性的見解):最近、漫画がつまらなくなったという意見を周りで聞くようになった。
これには作品の専門化や雑誌数の増加・作品の分散化等が関係し、漫画を疎遠しがちな人が増えたことによって、総じて漫画がつまらなくなったという意見に達してしまったとも考えられるが、定かではない。

しかし、もし本当に漫画自体に問題があるとすれば、何も新古書店・漫画喫茶の隆盛だけが漫画作家や文化を脅かすことになるとは言えなくなる。
つまり、この団体の主張は信憑性に欠けるものであると言わざるを得なくなる。
漫画に纏わる諸事情を解明していくための方法に関しては、これから検討していく予定である。

法律的見解:この団体が著作権の問題も踏まえて、新古書店や漫画喫茶に抗議を申し立てている以上、 法律、特に著作権に関してはもっと見地を深める必要があると考えられる。

ビデオやCDのレンタルはちゃんと上映権や貸与権というのが認められており、レンタル業務を行う 際には著作者に対して相応の対価が支払われる。

一方、日本では昔から貸し本屋というのが存在しているのだが、こちらにはこういった権利は認められていない。 勿論、新古書店や漫画喫茶は貸し本屋とは種類が異なるのだが、これらに対して漫画作家はどういった権利が認められているのか、また認められていないのかを調べる。

そして、認められていない部分に関しては認められるための方法や手段を模索してみる。    

研究動機

普段漫画を愛読しているので、最初『マガジン』という週刊誌にこの「21世紀のコミック作家の著作権を考える会」の主張が掲載された記事を 読んだときは、ただ単純に漫画の未来を危惧しただけであった。

しかしよく考えてみると、新古書店・漫画喫茶の繁栄が本当に漫画作家や文化を脅かすことになるのかということに疑問を感じた。

それに新古書店や漫画喫茶を利用している立場として、これから先も一漫画愛読者として気持ちよく漫画を楽しんでいくためには、是非この疑問をクリアーに したいと考え、この題材を選んだ。

研究が及ぼす影響

研究の結果、もし「21世紀のコミック作家の著作権を考える会」の主張が正しいという結論になれば、研究結果をこの団体に読んで頂き、今後の活動の手助けになる。

しかし、主張に誤りがあると言わざるを得ない結果が出たときには、この団体の今後の活動を抑制することになる。

研究計画

2003年

4月 テーマ発表

5月 データを収集し、グラフや表を作ってみる。

6月 漫画の実状を調べる。

7月 著作権に関して自分で調べたり、法律の山本先生に意見を賜ったりしてみる。

8月 OHPを作り始める。

9月 中間発表(夏合宿にて)

10月 研究内容を煮詰める。

11月 卒業論文初校提出

12月 卒業研究発表会

2004年

1月  卒業論文一般公開