スキー場の選択

                     山田 綾子

目次

1.はじめに

2.AHPとは

3.スキー場選択へのAHPの適用

 

  (1)問題の設定

  (2)評価基準の設定

  (3)候補地の設定

  (4)候補地の説明

  (5)一対評価

  (6)重みの算出

 

4.結果の評価

5.おわりに


1.はじめに

 冬が近づくと決まって「スキーにいこうよ」と友達の会話にでてくる。そこで出てくる悩みの一つがどこのスキー場にいくのかを決めることである。毎日暇なはずの大学生の休暇は、バイトやレポート、デートやなんやで忙しいようでなかなか一致することがない。みんなが都合つく連続休暇は一致せず、スキー旅行がボツになることがしばし場である。泊まりがけでスキー場へ行くのはなかなか難しいのである。

 そこで気軽に決めることのできる日帰りスキーになることがよくある。しかし、近ければどこでもよい、というわけにはいかない。コースがたくさんあったほうがいいし、温泉なんかついていたらいいとか、お金はあまりだしたくないとか、かなえてほしいわがままが心の中にある。そして気軽な日帰りスキーでさえなかなか決まらないのである。

 さて、私の住む神奈川県茅ヶ崎市から車で2時間ほどでいけるスキー場が日帰りスキーの候補地になることが多い。そこでその条件で行けるスキー場を挙げると、天神山スキー場、カムイ御坂スキー場、日本ランドHOWスキー場、ザウスなどである。この4つのスキー場から私の心を満たすスキー場を選ぶことになる。

 心を満たしてくれるスキー場の条件は何か。まずは1.神奈川県茅ヶ崎市からスキー場までの距離が近いこと。2.レンタル施設、娯楽施設は充実しているかどうか。3.レンタル料金、駐車料金、リフト券の料金がやすいかどうか。4.コースが沢山あり変化に富んでいるか。5.リフト待ちの時間が少なく、人が少なく余裕を持ってすべれるか。この4つの条件をもとにスキー場を選んでいく。

 今まではなんとなく天神山スキー場へいっていた。いくつかあるスキー場から総合的にみて優れていると思って天神山スキー場を選んでいたのだが、はたしてこれは正しかったのであろうか。これはまでは総合的に見たつもりの勘にたよっていたわけだが、合理的に総合判断ができるAHPという手法を用いて果たして私の選んでいたスキー場は最も満足のいくスキー場だったのかを確かめてみたいと思う。

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2.AHPとは

AHPとはAnalytic Hierarchy Processと呼ばれるORの一つの手法である。意思決定にはまず「問題」があり、最終的に選び出される「代替案」がある。その途中に代替案を選び出すための「評価基準」がある。「問題」→「評価基準」→「代替案」と、このように追っていく方法を階層分析とよぶ。問題を階層構造におきかえて次の順に最適解をだしていく。

1.選択肢の総合評価をおこなうにあたり評価項目それぞれがどれくらい重要であるかもとめる。

2.評価項目に関して各選択肢がどれだけすぐれているかもとめる。

3.総合得点をもとめる。この方法は車の選択や通学ルートの選定、資産の運用

などといった曖昧な状況を解明するのに適した方法だといわれている。

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3.スキー場選択へのAHPの適用

私は、スキー場の決定ということで個人の意思決定にもちいるがAHPは集団での意思決定にもつかうことができる。初めはこの問題においてアンケートを実施してその結果をもとに、スキー場を選ぶときの条件を設定したり、一対比較をしたりしたかったのですが、時間がなかったので私個人のレベルでの研究にすることにします。

(1)問題の設定

神奈川県茅ヶ崎市に住む文教大学生が、休日に車で友達と日帰りでいけるスキー場の中で、最も心を満たしてくれるスキー場はどこだろうか。

(2)評価基準の設定

スキー場を選ぶ際に基準となるものは何か。まずは日帰りで行くことのできる距離で茅ヶ崎市から近い方がよいということだ。温泉や、ゲームセンターなどのちょっとした娯楽施設、コインロッカーやレンタルなども完備されてるか。リフト代、駐車料金がやすいかどうか。変化のあるコースが充実しているかどうか。リフト待ちの時間が少なく、ゆったりとすべれるかどうか。私見だが大抵の人はこのようなことが気になるのではないかと思う。そこでこれらを評価基準とすることにした。

(評価基準)

1.交通(茅ヶ崎市からスキー場までの距離)

2.サービス(レンタル、娯楽施設)

3.料金(リフト代、駐車料金がかからない方がよい)

4.コース(変化に富んでいて、たくさんのコースがあった方がよい)

5.混み具合(リフトの待ち時間が少なくすいている方がよい)

(3)候補地の設定

2時間で行くことのできるスキー場をあげると富士天神山スキー場、日本ランドHOWスキー場、カムイ御坂スキー場、ザウスがある。他にもまだスキー場があるが、ここでは私の周りでよく行くこととなるスキー場を挙げた。この中から私を満足させてくれるスキー場をえらびだしたい。

(選択肢)

これらを階層図で表すと図1のようになる。

図1.スキー場選択の階層図

(4)候補地の説明

◆料金◆

  一日券  駐車料金
ザウス 5400 1000
天神 4500 1000
カムイ 2500 1000
yeti 3000 1000

◆スキー場のコース◆

カムイ御坂スキー場のコースは全天候型ドームの中に300mのコースがひとつと外に2コースある。

図2.1 天神山                 

天神山スキー場ホームページより

図2.2 yeti

yetiホームページより

図2.3 ザウス

ザウスホームページより

ザウス

◆各スキー場までの交通◆

ザウス 「花輪」ICから約2キロ
天神 「河口湖]ICから12.5キロ
yeti 「裾野」ICから20分
カムイ 「勝沼」ICから30分
 
 

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(5)一対評価

(a)評価基準の一対評価

私の判断で評価基準に関し一対比較する.

一対比較での比較の評価は

  1 : 同じくらい重要のとき 

  3 : やや重要のとき  

  5 : 重要のとき 

  7 : かなり重要のとき

のレベルにする。1から7までを代わりに1から100までの数字を用いることもできるが、人間の感覚を1から100で分けることは難しいため1、3、5、7のみで行うことにした。

(例えば交通と料金を比較した場合、交通のほうが料金よりもやや重要であるから3とする。)

表1 5項目間の一対比較

 交通  サービス  料金   コース  混み 
交通 1/7
サービス 1/7 1/5 1/3 1/5
料金 1/3 1/7
コース
混み 1/3 1/3 1/3 1

表2 5項目の重要度

交通 0.2231 22.31%
サービス 0.0410  4.10%
料金 0.1343 13.43%
コース 0.4859 48.59%
混み 0.1154 11.54%

ここからわかるのは、コースの充実さを最も重要としていて、サービスについてはあまり気にしていないということである。

(b)各評価項目に関しての各スキー場の評価

次はいよいよどのスキー場が好ましいかを決める。各評価項目ごとに各スキー場の評価をおこなう。

表2.1 交通に関しての各スキー場の評価

交通 天神 カムイ HOW ザウス
天神 1/5 1/5
箱根
HOW 1/3
ザウス 1/5 1/3

表2.2 サービスに関しての各スキー場の評価

サービ 天神 カムイ HOW ザウス
天神 1/5 1/5
カムイ 1/3
HOW 1/3 1/5
ザウス

表2.3 料金に関しての各スキー場の評価

料金 天神 カムイ HOW ザウス
天神 1/7 1/5
カムイ 1/7 1/5
HOW 1 1/7
ザウス

表2.4 コースに関しての各スキー場の評価

コース 天神 カムイ HOW ザウス
天神
カムイ 1/7 1/3
HOW 1/5
ザウス 1/7 1/3 1/5

表2.5 混みに関しての各スキー場の評価

混み 天神 カムイ HOW ザウス
天神 1/5 1/3
カムイ
HOW 1/3
ザウス 1/5 1/3

以上の結果から各項目毎の重要度を算出してみた。

表3集計表(各スキー場の評価項目ごとの重要度をまとめた。)

  0.2231 0.0410 0.1343 0.4859 0.1154
  交通 サービス 料金 コース 混み
天神 0.0829 0.0829 0.0676 0.6051 0.0963
カムイ 0.5456 0.2772 0.0676 0.0990 0.5579
HOW 0.2772 0.0942 0.2672 0.2120 0.2495
ザウス 0.0942 0.5456 0.5976 0.0516 0.0963

(6)重みの算出

一対評価によって得られた結果を、階層に従って積み上げ計算した結果が表4である。

表4 総合得点

  交通 サービス 料金 コース 混み 総合得点
天神 0.0849 0.0034 0.0091 0.2940 0.0111 0.4025
カムイ 0.1217 0.0114 0.0091 0.0481 0.0644 0.2547
HOW 0.0618 0.0039 0.0359 0.1030 0.0288 0.2334
ザウス 0.0210 0.0224 0.0803 0.0251 0.0111 0.1599

よって

  1. 天神山スキー場
  2. カムイ御坂スキー場
  3. 日本ランドHOWスキー場
  4. ザウス

の順に私たちに適したスキー場といえる。

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4.結果の評価

天神山スキー場が私が最も満足するスキー場という結果となった。思いがけない結果がでたのはザウスである。なんとなく気軽に行けるスキー場だと思ってましたが、総合得点が15.99と低い結果でした。天神山スキー場はコースが他のスキー場に比べコースの多様性に富んでいる。コースに関するウエイトが飛び抜けて高く、このような結果になったのは納得だ。もう一つ思いがけなかったのが、コースの重要度が意外と高かったことである。自分の心の中では3割ほどしか占めていないつもりだったが、半分近く重要としている結果がでた。

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5.おわりに

今回AHPを使って、私に好ましいスキー場というのを選んでみた。結果は天神山スキー場ということだった。私が頭の中で総合的判断していたとおりの結果となった。ただしこれはあくまでも私が満足できるスキー場であって一緒に行く友達は満足するとは限らない。時間があればアンケートをとり、文教生が満足することのできるスキー場を選ぶこともできた。また一緒に行く相手や人数などにもよって結果は異なってくると思う。評価基準の一対比較だけでなく、評価基準の項目や選択肢も変わってくる。AHPは条件を変えて気軽に意思決定ができると思う。

 

 


謝辞

この論文を仕上げる過程で御指導いただいた文教大学情報学部根本講師に深くお礼を申し上げたいとおもいます。本当にありがとうございました。


 参考文献

(1)小林 康夫/船曳 健夫 編集:「知の技法」、東京大学出版会、1994

(2)今野 浩:「数理決定法入門ーキャンパスのOR」、朝倉書店、1992

(3)刀根 薫:「ゲーム感覚意志決定法」、日科技連、1986