平成9年度 後期 シミュレーション 期末試験

1997年12月13日実施

解答上の注意:

問題1

文教ドーナツでは飲茶セットの販売を始めた.飲茶セットはなかなか好評で,1時間当たり平均100セット,標準偏差10セットという安定した販売量を確保することができた.ただ,飲茶セットは毎時0分までに何分かかけて解凍加工し販売準備をするのだが,その後最大1時間しか保存できない.よって,加工後1時間に売れる量より多く加工し過ぎると売れ残った分は廃棄しなくてはならず1セット当たり200円損失が生じ,一方,加工後1時間の売れる量より少ない量しか準備していなかったとすると品切れ状態となり品切れ1セット当たり300円の損失が生じる.マネージャーは,時間毎の多少の損失が生じるのは仕方がないとしても,平均的に損失額が最小になるような毎時当たりの加工セット数を見つけたいと考えている.

 

問題 文教ドーナツのマネージャーの悩みへの答えを提案したい.根拠がある答えを提案するためには,シミュレーションの技法を使うのも一つの手段である.シミュレーションの技法を用いて提案する答えを導くためには,どのように上記の問題のモデル化を行い,どのような実験を行えば最適な毎時当たりの加工セット数を提案できるのか簡潔に記述せよ.

問題2

ある人気スポーツのW杯(ワールドカップ)に日本が出場することとなった.多くの人々がこの大会の観戦に出かけることが予想される.文教トラベルではこのチャンスを活かそうと,W杯観戦ツアーで大きな収益をあげるためのツアー戦略を決めたい.

W杯には,予選リーグと決勝トーナメントの時期がある.まず予選リーグを行い上位チームが決勝トーナメントに進むことができる.決勝トーナメントに進めなかったチームは予選リーグの後の試合はない.また,決勝トーナメントに進んでも,負けてしまえばその先の試合はない.

今回のW杯は世界中が注目しているイベントであり人気が高く,ツアーに関する交通機関やホテルの予約を入れてしまうとキャンセルが効かない契約を結ばなくてはならない.すなわち,W杯で日本が予選で簡単に負けてしまったのに,決勝トーナメント時期のツアーに関する予約等の契約を結んでしまうと大きな損失を生む可能性がある.一方,日本が優勝争いに加わった場合,決勝トーナメントの試合に関するツアーを組んでいれば,より莫大な利益を生む可能性もある.専門家の意見では,日本がどの程度活躍するかはまったく予想がつかないらしい.

とりあえず文教トラベルでは,ツアー戦略は4種類作成し,日本の活躍に応じて各ツアー戦略がどの程度の利益(損失)を生むかを予想し,表1にまとめてみた

 

表1:日本の活躍に応じた各ツアー戦略の予想利益(単位:万円)

  予選で序盤から負け続け 予選で健闘するが決勝進出ならず 決勝に進出するがすぐ敗退 優勝争いに加わる
ツアー戦略A

3000

2000

0

0

ツアー戦略B

−1000

2000

1000

0

ツアー戦略C

−2000

1000

4000

1000

ツアー戦略D

−4000

−1000

2000

5000

問題: どのツアー戦略を選ぶかは意思決定者の選択基準に依存する.意思決定の選択基準を分類するといくつか存在するが,どのような選択基準があり,それらがどのような戦略を選ぶ性質があるか簡潔に答えよ.また,それらの選択基準に従った時,上記の例ではどのツアー戦略を選ぶべきか導出過程を含めて簡潔に答えよ.

 

問題3

以下の表計算のプログラムを読み以下の問いに答えなさい.

 

  1. 上記のプログラムを実行させた時,B4,B5,B6に表示される数字はどのような性質を持った数字なのか簡潔に説明しなさい.
  2. A4のセルの値が0.06,A5のセルの値が0.78,A6のセルの値が 0.25のとき,B4,B5,B6,C4,C5,C6 ,C8の各セルの値は何になるか答えよ.

 

メモ欄:(以下の表は問題には関係ありません.メモとして使用してください)

問題4様々な経営・政策上の問題(広くは社会問題)に対し,問題解決の依頼を受けてから解決案を提案するまでの基本的なプロセスを簡潔に要点を押さえて述べよ.また,シミュレーションの手法というものはその中でどのような位置付けにあるのか述べよ.