文教電子では人気のCPU(コンピュータの中央演算回路)「Shoto II」の販売を行っている.「Shoto II」は人気商品なので安定した数の販売が十分期待できる.一方,「Shoto II」の需要の増加に伴い値引き競争も激化してきており,できる限り在庫関連の費用を押さえて競争に負けない体制を文教電子では作りたいと考えている.文教電子での「Shoto II」に関する在庫関連費用のデータや販売状況のデータは以下のように報告を受けている.
表1:「Shoto II」の在庫に関する費用の一覧
CPU保管庫賃貸料 | 保管個数に関係なく一ヶ月(=25日)7万円 |
CPU保管中の保険代 | 1個1日当たり12円 |
CPU保管庫維持費 | 保管個数に関係なく一ヶ月(=25日)3万円 |
CPU発注費 | 発注個数に関係なく1回当たり5万円 |
発注から納入までのリードタイム | 16日 |
※CPUはデリケートな精密機械なので,文教電子では特別な保管庫を使用している.また,それでも保管中に破損した場合は損害が大きいので,保管中のCPUにはすべて保険をかけている. |
表2:「Shoto II」販売状況データ
1ヶ月(=25日)当たりの平均販売個数 | 750個 |
1ヶ月(=25日)当たりの販売個数の標準偏差 | 25個 |
以下の問いに答えよ.
(1) | 「Shoto II」の1日の平均販売個数および販売個数の標準偏差は各々何個か. | |
(2) | 一回当たりの発注量をx個とおいたとき,CPUの在庫に関する1年間(=12ヶ月,1ヶ月=25日)の総費用を数式で表現しなさい.ここで,在庫に関する1年間の総費用とは,保管庫の賃貸料・維持費,CPUにかけている保険代および発注費用の合計をさす. | |
(3) | 小問(2)で導出した数式を利用して,在庫に関する1年間の総費用を最小にする一回当たりの発注量を求めよ. | |
(4) | 現在「Shoto II」に関する在庫管理は,従来の文教電子の在庫管理方法にのっとって,定期発注サイクル期間が10日の定期発注法で行っている.さて,「Shoto II」の在庫に関する1年間の総費用を最小にするためには発注サイクル期間は何日に設定するのがより適切なのか提案しなさい. | |
(5) | 小問(4)で提案した発注サイクル期間が適切であると認められ,その定期発注サイクル期間を採用し定期発注法による在庫管理が行われるようになった.しばらく経って,ちょうど今日が発注日であったとする.そこで,今回の発注量をメーカーに伝えなくてはならない.在庫に関する総費用を低く押さえるためには多少の品切れが発生するのは仕方が無いことだが,お客様への信用もあるので,「Shoto II」の品切れが起きる割合は多くとも1ヶ月(=25日)に一回程度に押さえてほしいという強い要望が販売部門から届いている.現在,在庫が600個,発注残が0個であったとしたら,本日発注すべき適切な発注量を提案せよ.(導出の際,必要であれば,添付されている正規分布表を利用せよ.) | |
(6) | 在庫管理責任者は発注点法で在庫管理を行なってみてはどうかと考えている.さて,発注点を何個に設定するのが適当か.(品切れの起きる割合は,小問(5)同様,多くとも1ヶ月(=25日)に一回程度に押さえたい.) | |
(7) | 在庫管理の方法を発注点法に変更してしばらく経った.人気のCPU「Shoto II」はますます需要が高まり,発注から納期までのリードタイムを25日に延長するという通告がメーカーから届いた.発注点を何個に修正するのが適切なのか提案しなさい.また,今回のリードタイム延長の通告は文教電子の「Shoto II」の在庫に関する総費用を増加させるものだったのか,減少させるものであったのか判定しなさい. |
作成:根本 俊男(文教大学情報学部経営情報学科) |
nemoto@shonan.bunkyo.ac.jp
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平成10年度シミュレーション前期期末試験問題2より |