原価計算解答
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LAST UPDATED : 1999.1.30
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■講義概要

 「コーヒー1杯のコスト(原価)はどれくらいだろう」、「あんなにディスカウントして電化製品はもうかっているんだろうか」。このような疑問を持ったことがあるだろうか。このような疑問に理論的な洞察を与えるのが、原価計算の知識である。本講義では、製品のコストはどのようなもので構成され、どのようにして計算されるのかを学習する。そうすることによって、これらの疑問に答えを見つけることができるであろう。原価計算は特にメーカーの利益管理や原価管理、さらには意思決定に役立つ基礎データを作り出す。前期は原価計算の総論、後期は各論を扱う。特に「原価計算制度」または原価会計を中心に講義する。原価計算論は会計学の一分野であるので、簿記の知識をもっているとよりよく本講義を理解できるし、管理会計論の基礎知識を得ることもできる。

■講義要点

1.原価計算の仕組み(3回)

<原価計算が必要とされる業種>

 主に、メーカー(製造業)である。製造業では材料を仕入れ、それを加工して消費者に必要な新しい生産物(これを製品という)をつくる。

原材料

製造過程

製品

    原価(コスト)を知らなければ、いくらで売り上げたらよいのか、

儲かっているのかどうかを知ることはできない。  

  <原価計算の利用目的>

   @特に製品別の収益性(採算性)を知ることができる。

   Aメーカー(製造業)の財務諸表を作成する場合に不可欠である。

   B原価の引き下げに役立てることができる。など

 <原価計算の構造と財務諸表との関連>

   ・材料費、労務費、経費が製造過程へのインプットとなるが、これを原価

  の3要素という。                                                           

2.原価の定義と原価要件(1回)

  @経済財(財貨と用役)の消費

  A経営目的に関連

  B正常なもの

3.原価の諸概念と原価計算方法(4回)

   (1)実際原価計算と標準原価計算

   ・製品原価を実際の発生額に基づいて計算するか、あらかじめ定めた標準原価に基づいて行うか。

・標準原価計算を採用することは原価情報を特に原価管理に活用するためである。

    (2)全部原価計算と直接原価計算

   ・製品原価を製造原価全部を持って計算するか、その一部の変動費のみで計算するかの違い。

   ・直接原価計算を採用するのは特に短期利益管理に用いるためである。

  (3)個別原価計算と総合原価計算

      ・特に、仕掛品の評価の仕方の違いによる。

       原価計算システムの概略図

 

4.原価計算の手順(1回)

 

費目別計算

――→

部門別計算

――→

 

製品別計算

――――――――――→

  ・単純個別原価計算と部門別個別原価計算

  ・工程別総合原価計算

5.材料費の計算(3回)

 (1)材料費の種類

    ・形態別分類

  ・機能別分類

  ・直接・間接分類

  (2)材料の購入手続きと購入原価の計算

  ・材料の購入原価=材料の購入代価+材料副費

  ・外部材料副費と内部材料副費

  (3)材料の払い出し計算

  ・材料費=材料消費量×材料価格

・消費量の計算……継続記録法,棚卸計算法,逆計算法

・価格の計算……実際価格法と予定価格法

・実際価格法………先入先出法,後入先出法,移動平均法,総平均法など。

  (4)予定価格による材料費の計算

・予定価格法による差異……消費価格差異と受入価格差異

    ・不利差異(借方差異)と有利差異(貸方差異)

6.労務費の計算(2回)

(1)労務費の種類

 ・形態別分類

(2)賃金の支払い計算

 ・賃金総額=基本給+割増給+諸手当−諸控除額

(3)賃金の消費計算

 ・就業時間の内訳

直接作業時間,間接作業時間,手待時間,段取時間

 ・消費賃金の計算……作業時間×賃率

 ・実際賃率と予定賃率

(4)予定賃率による計算

 ・賃率差異

 ・賞与と退職給与引当金繰入額の計算

7.経費の計算(1回)

  (1)経費の種類

  ・単純経費と複合費

  (2)経費の計算

  ・支払経費の計算…支払額に基づいて計算。

・月割経費の計算…一括支払額や年間計上額を関係する月数で除して計算。

・測定計費の計算…計量器などによる消費量をもって計算。

・発生経費の計算…実際の発生額によって計算。

8.製造間接費の配賦計算(3回)

    (1)製造間接費の配賦計算の選択問題

    ・製造間接費処理の歴史

<選択>

    ・部門別か一括か?

    ・単一基準か複数基準か?

  (2)単純個別原価計算の構造

製造指図書

 

材料費

労務費

経 費

 

―――――→

 

製造間接費

 

 

―――――→

 

#111

#112

#113

==============⇒

  ・金額法

・時間法

・数量法 

    (4)生産中心点別機械時間法

・機械時間法との違い

・マン・レートとマシーン・レート

  (5)活動基準原価計算(ABC)

・ABCの登場した歴史的経緯 

・ABCの計算構造

・従来の方法との相違

    (6)予定配賦計算

    ・製造間接費の予定配賦計算の手順

・製造間接費配賦差異の算出(配賦不足と配賦超過)

9.部門別個別原価計算(2回)

    (1)部門別計算の目的と構造

<目的>

 ・正確な製品コストの計算

 ・原価管理

<計算構造>

 ・製造間接費から製品(指図書)への配賦まで3つの段階がある。

 ・原価部門……製造部門と補助部門

  (2)製造間接費の部門別計算

    ・第1次集計

    ・部門個別費と部門共通費

・部門共通費の配賦

  (3)補助部門費の振替計算

・第2次集計

<計算方法>

 @直接配賦法

 A相互配賦法(簡便法のみ取り上げる)

 B階梯式配賦法(講義では解説のみ)

・製造部門費配賦差異

10.総合原価計算(6回)

     (1)単純総合原価計算

    ・仕掛品の評価が中心になる。

    ・加工進捗度と完成品換算量

    <評価方法>

    ・平均法

・先入先出法

・後入先出法 

   (2)組別総合原価計算

    ・組別原価計算の計算手順

    ・組間接費の配賦

   (3)等級別総合原価計算

         ・等級製品

    ・等価係数

     (4)連産品の原価計算

    ・連産品と等級製品との違い

    ・結合原価(ジョイント・コスト)

    ・等価係数は、分離点(製品が識別される生産段階)における正常市価

    ・負担能力主義

     (5)工程別総合原価計算

    ・全原価要素か加工費か。

    ・累加法と非累加法(講義では累加法のみを取り上げる)

     (6)減損の処理

・減損とは

・仕損とは

・正常減損の度外視法と非度外視法

・異常減損の処理

 

■講義の進め方

OHPを用いて講義を進める。

 

■評価方法

 定期試験で2回のペーパーテスト(60〜70分程度。持ち込み可)を行い、試験の成績に出席点とレポート点(2回程度)を加味して評価する。出席が2/3未満の場合には、試験を受けることができないので注意すること。

 

■テキスト

 志村正・新井一夫著『原価計算演習講義』東京経済情報出版,1998年。

 

■受講生へのメッセージ

 工業簿記についても言及するが、時間の関係で原価計算が講義の中心になる。とくに簿記検定を意識していないので、受験する者は各自で勉強してもらいたい。「管理会計論」の基礎科目ともなっている。

 

LAST UPDATED : 2000.3.1
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