6.まとめと今後の課題 〜 引用文献
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6.まとめと今後の課題

  ここではこれまでに述べてきた注目すべき調査結果をまとめ、今後の課題を整理する。本研究はかなり限られたサンプル数の調査に基づくものであったが、出来るだけ統計的有意性を尊重しつつ、注目すべき傾向を述べてきた。それらをまとめると次の様になる。

@プロバイダーに開設される個人ホームページ数は、開設時期で見るとプロバイダーのサービス開始後約半年程度で開設数は最も多くなるが、それを過ぎると開設ペースは低下する。個人ホームページ数はプロバイダーの加入者数の10%前後の数に留まろう。
A大部分の開設したホームページ(9割程度)に対して、読者からのメールが送られ、何らかのコミュニケーションが発生する。そのうちの半分程度において継続的なコミュニ ケーションが成立し、他の半分程度は単発的なコミュニケーションに留まる。
Bメールの通数は、開設者の1割程度では5通/日以上、3割程度で1〜4通/日、6割 程度で1通/日未満である。多くても少なくても継続性は低く、1〜4通/日の場合に はその9割程度が継続的なコミュニケーションとなっている。
Cホームページ開設の満足感、当初の開設目的の達成感は双方ともメールの継続性に強く依存している。継続性が成否の目安となる。
D継続性を左右する要因としては、外部の検索エンジンやリンク集への登録、開設の目的 (自分を前面に出す指向性の目的より、相手を尊重する指向性の目的の方が継続性が多 い)、リンクの有無が挙げられる。情報更新の頻度も継続性を高めるが、その効果は他 に比べると弱い。

 これらの結果を換言すれば、プロバイダーへの加入者数に比して開設数は限定されるにしても、個人ホームページは社会的なコミュニケーションの手段として定着する可能性が高い、と言ってよいであろう。この様な見方を前提とすると今後の研究においては次の課題が考えられる。

@個人ホームページ開設がもたらすコミュニケーション効果
 そもそも個人ホームページは開設者にどの様な効果をもたらすのであろうか。情報収集に留まらず、サロン形成、友人形成、グループ活動促進など、様々な効果が現れうると見られる。この様な効果の明確化は、ホームページの社会的影響を考えるに際して最も基礎的なデータとなる。
A開設者の情報活動に占める個人ホームページのウエイトとメディア特性
 個人ホームページは開設者には1つのメディアとして作られ、他の様々なメディアとの使い分けが行われるようになる。そのときホームページはメディアマップにおいてはどの様な位置づけとなり、特性面から見た棲み分けはどの様になるのであろうか。
B形成されるコミュニティとその具体的展開
 個人ホームページは情報交流の起点として、草の根レベルの交流や新たなコミュニティ形成を促進する潜在力を持つと思われる。この観点で見たコミュニティ形成の実態はどの様なものであろうか。
Cホームページ開設実態の定期的調査
 1996年はWindows95フィーバーの影響でパソコン利用者が急増し、インターネット加入者も急増するなど、インターネット元年と言うべき時期であった。その後もインターネット加入者は増加し続け、加入者はより一般的な層へ(若年層から全年齢層へ、コンピュータ技術者から非コンピュータ技術者へ)拡大している。この様な流動的な状況下では、タイムリーな実態把握を欠くことは出来ない。

 この様な研究成果を踏まえ、個人ホームページ開設の社会的な意義・影響が解明されることが望まれる。この知見は、今後の情報化社会がどの様に変貌していくのかを知る上で重要な役割を果たすものとなるであろう。
 
 

【引用文献】
1.サイバースペースジャパン「第6回CSJWWW利用者調査」1997.6    http://www.csj.co.jp/www6/main.html
2.rimnet「リムネットユーザー満足度調査結果発表」http://www.rim.or.jp/~rimzine/  9607/enq/  1996.6
3.橋本良明他「電子メール利用の実態とインターネット加入による他メディア利用
  時間の変化」日本社会情報学会96年度秋期年会報告 96.11.17
4.川上芳郎他「表出と探索のメディア:インターネット」インターネット研究会報告書
     1996.11
5.郵政研究所「第U章 インターネットの利用動向調査アンケート結果」
  『新しいメディアの利用動向に関する調査研究報告書』1997.9 pp.5-24
6.橋本良明他「インターネット個人加入者の実態1997」東京大学社会情報研究所調査研究紀要 第10号(1997) PP.1-71
7.川上芳郎他「2.発言のメディアと言うけれど」『電子ネットワーキングの社会心理』    誠心書房 1993 pp.169-172