5.3.3 CATVの加入者による加入推薦
(1)加入推薦度とグループ化
加入者が他人に加入を推薦する場合、その動機には満足度合が寄与すると思われる。そこで推薦度は満足度によってどの様に表されるかを検討する。調査では加入経験の結果として、他の知人にCATVへの加入を推薦できるか否かを聞いている。質問は総合満足度と同様に5段階で、「1.推薦できる」から「5.推薦できない」までの選択肢がある。その結果を図5.3.3.1に示す。「1.推薦できる」としているのが15%、「1.やや推薦できる」としているのが24%で、「3.どちらとも言えない」が40%強、「4.やや推薦できない」と「5.推薦できない」が7%弱である。満足度の場合に比べて、推薦度はやや厳しくなっている。(2)推薦度の回帰分析次にこの場合も、選択肢の1と2をあわせて推薦層(40%弱)、3を中間層、4と5をあわせて非推薦層とグループ化を行い、各グループがどの様な満足度の平均値をもっているかを調べた。その結果を図5.3.3.2に示す。
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図5.3.3.1 CATVの加入推薦度
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図5.3.3.2 加入推薦グループ別の利用満足因子スコアの平均値
平均値の検定:*:0.01<p≦0.05,**:0.001<p≦0.01,***:0.001<p≦0.0001,・・・・おおよその傾向は次のようになっている。
- 地域コミュニケーション効用、専門番組効用、BS効用、安値感の4軸では、推薦度の順に満足度が並んでいる。
- 非番組効用と区域外・選択効用の場合は、推薦度と満足度の順序は異なる。非番組効用では若干中間層が推薦層よりも高い評価である。区域外・選択効用では、非推薦層が中間層よりも高い評価となっている。
- 推薦層は概して最も外側にある。満足度が高い層である。
- 中間層は、2つの軸以外では2番目の評価水準にある。
それではこれらの軸の評価値が推薦度にどの様に寄与しているのであろうか。それを見るために、目的変数を推薦度、説明変数を満足度の因子スコアとして、回帰分析を行った。その結果を表5.3.3.1に示す。5.3.4 推薦の実態
表5.3.3.1 推薦度の回帰分析の結果 因子 強制投入方式 ステップワイズ方式 fq18n61:地域コミュニケーション効用 0.258 全部左同fq18n62:専門番組効用 0.277fq18n63:非番組効用 0.091fq18n64:BS効用 0.073fq18n65:区域外・選択効用 0.137fq18n66:安値感(コスト感では負) 0.184定数 2.461重相関係数 0.493寄与率 0.243回帰式の有意性P 0.0000
同表によると、回帰式は推薦度の分散の24%を表しており、この6つの因子以外に推薦に影響する有力な要因が存在しうることを示している。しかしここで取り上げた6つの因子の相対的な寄与の度合は明確である。それを次のようにまとめることが出来る。
満足度の場合とは異なり、推薦度では専門番組効用が最も上位になったのが注目される。同時に地域コミュニケーション効用は2番目に寄与がある項目として評価されていることが注目される。
- 推薦度利用満足度は次のような式で表されることが分かった。
加入推薦度= 0.258*fq18n61 + 0.277*fq18n62 + 0.091*fq18n63 + 0.073*fq18n64 + 0.137*fq18n65 + 0.184*fq18n66 + 2.461- 推薦度に効く順序は、係数の大小で直接比較可能である。このために推薦度への寄与は次の順序となる。
専門番組効用 > 地域コミュニケーション効用 > 安値感 > 区域外・選択効用 > 非番組効用 > BS効用- 大きくは、専門番組効用、地域コミュニケーション効用、安値感、区域外・選択効用の4つで 決まってくる。
なお図5.3.3.2と推薦度の回帰係数との関係は、おおよそでは「3グループ間の巾が大きい軸」ほど、「推薦層、中間層、非推薦層の順序が揃っている軸」ほど、推薦度に寄与する度合いが高いということが出来る。この点では寄与の大小は、グラフでの各グループの形状の相対比較からも判断することが出来る。
(1)地域における加入の推薦数と被推薦数
これまでは推薦に寄与しうる要因について述べてきたが、以下では調査に基づく推薦の実態を整理する。調査ではCATVの加入者に推薦経験の有無を聞いている。また推薦された経験の有無も聞いている。非加入者にも推薦された経験の有無を聞いている。それらの結果を示すと図5.3.4.1となる。なお同図は、CATVの加入者の回収票と非加入者の回収票が調査の母集団における加入者数と非加入者数になるように、ウエイトバックを行って集計している。(2)加入者の推薦理由と利用満足度同図によると加入者の34%は知人にCATVの加入を推薦したことがあるとしている。実はこの推薦者数は、複数回推薦した人が20.1%、1回推薦した人が13.9%となっている。そこで、調査対象地域でどの様に推薦、被推薦があったのかの概略を描いてみると、おおよそ表5.3.4.1のようになる。
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図5.3.4.1 加入の推薦
表5.3.4.1 調査対象地域での推薦・被推薦数 区分 人数と回数内訳 合計回数 推薦加入者(2890人) 1回推薦 1191人 → 1191回
複数回推薦 1699人 → 3398回
(2回仮定) 4589回被推薦加入者 1177人 → 1177回 3620回被推薦非加入者 2443人 → 2443回表5.3.4.1では、複数回推薦した人の推薦回数を2回としてみると、加入者が推薦した延べ回数は4589回、それに対して非加入者、加入者ともに推薦された回数を1回とすると、被推薦の回数は合計で3620回である。被推薦者が複数推薦された可能性があるが、それは調査していない。また複数回推薦した加入者の推薦回数は2回以上であったかも知れない。その点で不確定性は伴うものの、推薦、被推薦の回数は、大体オーダーとしては一致している。加入者による口コミで、およそ4600回以上にも上る加入推薦が行われているということが出来る。なおこの調査では、CATV局からの加入推薦は除外して調査している。
それでは加入者が推薦した理由はどの様なものであったのだろうか。調査では推薦の理由を調べているので、その結果を図5.3.4.2に示す。同図では複数推薦経験のある加入者と1回推薦経験のある加入者の推薦理由を掲載している。それによると次のようなことが分かる。
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図5.3.4.2 加入推薦の理由(複数回答)それではこれらの推薦者と非推薦者のCATVの満足度はどの様になっているのだろうか。その結果を示したのが図5.3.4.3である。
- 推薦理由の多い順はどちらの層もほぼ同様である。
CATVでいろいろな番組>区域外放送>CATVでの専門番組>地域の番組>アンテナ不用>テレビ映像きれい- 複数推薦経験層は1回推薦経験層に比べて比して推薦理由の選択数が、全般的に10%前後大きい。
- 地域の番組はどちらの層でも4位であるが、CATVでの専門番組 とほぼ同様な水準にある。
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図5.3.4.3 加入推薦経験別の利用満足因子スコアの平均値
平均値の検定:*:0.01<p≦0.05,**:0.001<p≦0.01,***:0.001<p≦0.0001,・・・・
(検定はウェイトバックしない場合の結果である。人数は便宜上で母集団値が掲載されている)同図では複数回推薦者、1回推薦者、非推薦者別の満足度合を示しているが、この3つのグループにはそれぞれ異なる傾向があり、非推薦者を基準とした満足度の大小関係は、推薦理由の出現度数と類似している面があることが分かる。そこで双方を比較する表5.3.4.1を作成した。なお同表では、満足因子と推薦理由が必ずしも一致しないために、例えば非番組効用に対応する映像・アンテナの項目を作成し、推薦理由の出現度数では平均値を採用している。これは因子スコアが標準化データであることと対応させた考え方である。
この様にして作成した表では、判定量的に一致の傾向を見ることは出来るが、一致具合を見るには、因子スコア差と推薦出現割合の相関係数を求めることが適している。そこで対応する項目がないBSと割安感を除いた項目で相関係数を求めると、0.772 との結果が得られた。この様に見てくると、両者の一致度はかなり良好で、回帰分析的に考えた場合には推薦理由の出現度合は0.7722 〜0.6であるから、6割程度は満足度合で説明できるという水準にある。
表5.3.4.1 満足度因子スコア差と推薦理由の出現割合 満足因子項目 因子スコア差 推薦理由項目 推薦理由出現割合 複数推薦者 1回推薦者 複数推薦者 1回推薦者 地域コミュニケーション 0.318 0.216地域番組 0.393 0.280専門番組 0.434 0.126専門番組 0.402 0.305非番組 0.017 -0.001映像・アンテナ 0.275 0.140BS 0.080 0.443区域外・選択 0.345 0.048区域外・選択 0.663 0.504割安感 0.202したがって本項の推薦実績と利用満足度、5.3.3に見た推薦度と利用満足度の関係の両方の点から、理論モデル的にも推薦度が利用満足度と密接に関係していることが提示できていると考えることが出来る。
また同時に、地域コミュニケーションに関する満足度の高さがCATVの加入推薦理由とかなり密接に関係しており、その水準は専門番組に対する魅力や区域外再送信放送に対する魅力に準じる水準にあると判断することが出来る。