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8.インターネット利用の満足度

 これまで見てきたように、インターネットは利用者がかなりの時間を使うものとして、生活に定着しつつあるものと見ることが出来る。この様な傾向を見ると、インターネットは多くの人に様々な満足を与えつつ普及しているものと想定される。それではインターネットを利用する利用者の満足度はどの様なものであろうか。その調査結果の一例を図11に示す。利用者の満足度を、「1.満足」、「2.やや満足」、「3.何とも言えない」、「4.やや不満」、「5.不満」の5段階の順序尺度で聞いている。その回答を、ブロードバンド・グループとナローバンド・グループで分けて集計している。

 同図によると、インターネット利用における満足度はかなり高い。ブロードバンド・グループでは、「1.満足」、「2.やや満足」を合わせた合計は76%にも達し、「3.何とも言えない」と回答する中間層は22%で、不満層はわずかに2%である。利用時間の長さを反映して、満足度も高いと理解することが出来る。これに対してナローバンド・グループでは「1.満足」層が20%近く低下するものの「2.やや満足」層が7%増加し、両者の合計は約64%と低下する。さらに「3.何も言えない」中間層が約10%増加して、不満層は約5%となる。この傾向を見ると、ナローバンド・グループでは受益度合が低下し、満足度が低下していることが分かる。


図11 インターネットの利用満足度(高知市調査)(χ2乗p=0.03)

 これは一地域の傾向だが、他の調査地点を含む全体ではどうであったかという結果を図12に示す。この図はブロードバンド・グループとナローバンド・グループ毎に、順序尺度である選択肢の平均値を求めたものである。この図を見ると次の点が分かる。

  1. ブロードバンド・グループの満足度は全般に高く、平均でも「2.やや満足」の近くにある。
  2. これに対して、ナローバンド・グループの場合には一段と下がった評価である。

 図10に示した高知市の場合よりも、広島市や日野市の場合には、ブロードバンド・グループの満足度は高く、かつナローバンドとの差は大きくなっている。したがってこれらの地点では、ブロードバンドは高知市の場合よりも好意的に受け入れられていることが分かる。複数調査地点におけるこの様な傾向を見ると、ブロードバンド化はかなり強く受け入れられる可能性が高いことが理解される。


図12 インターネットの満足状況

まとめ    目次へ戻る
 これまでは全国各地でのインターネットの普及と利用の調査結果の骨子を見てきた。これまで述べた点を下記にまとめる。
  1. どの調査地域もインターネットの利用率は、年率では40〜70%で急速に成長している。
  2. インターネットの普及では、首都圏の都市に比べ調査対象の地方都市では1年半から2年程度の差がある。調査対象の都市は地方でも中心的な都市であることを勘案すると、大都市部 VS 地方では、3年から4年程度の普及格差が存在すると考えられる。
  3. 日野市の成長曲線では、40%台に成長の変曲点がある可能性がある。
  4. 地方都市の中でも高知市はインターネット利用率が急速に成長している。地域情報化政策の効果と見られる。
  5. 各地域のインターネットの接続法は、主流は電話/ISDNのナローバンドであったが、ケーブルインターネットが整備されている地域では、ケーブルインターネットがよく受け入れられている。
  6. どの地域または成長段階でも、ケーブルインターネットとADSL、電話/ISDNの接続の合計の比率は大体70%前後である。職場・学校の比率は20〜30%である。
  7. ブロードバンドの利用比率の高いところでは電話/ISDNの比率は少ない。逆に少ないところでは多い。
  8. 日野市では、ADSLの成長期を反映して、ADSLが急増している。
  9. ブロードバンド利用者は、ウェブの利用時間、ウェブの利用回数、電子メール利用時間、電子メール利用回数のどれをとっても、ナローバンド利用者よりも多い。
  10. インターネットの利用満足度は、ブロードバンド利用者が大きく、ナローバンド利用者は1段階程度は下の満足度である。
  11. インターネットの利用目的の点では、ブロードバンド利用でもナローバンド利用でも両者には差はない。利用者の75%はプライベートなことがらが利用の中心である。
  12. インターネットの利用に伴う影響としては、メディア利用面では、ブロードバンドの影響が大きい。影響の大きさ順で見ると、テレビ視聴時間の減少、電話利用時間の減少、本・雑誌読書時間の減少、新聞閲読時間の減少、家族との会話の減少がある。

 この様に見てくると、日本で急速に進展するブロードバンド化に伴い、従来以上にわれわれのメディア利用や生活面で様々な変化が現れることが予想され、これらの面での今後の推移が特に注目される。

【引用文献】    目次へ戻る

  1. 文部省科学研究費補助金「地域情報化と社会生活システムの変容に関する実証的研究」
    平成11〜14年度(研究代表:川本勝)
  2. 八ッ橋武明「インターネットの利用に伴うメディア移行メカニズムの研究」情報研究
    (文教大学情報学部紀要)第26号(2001.12)における移動電話利用調査データ
  3. 橋本・三上他「インターネットの利用動向に関する実態調査報告書2000」総務省通信総合研 究所 2001.3 (World Internet Project 調査に伴う全国調査である)
  4. 総務省「情報通信白書 2002」大蔵省印刷局 2002.7 p.4
  5. NHK放送文化研究所「日本人の生活時間・2000」NHK出版 2002.1

資料 調査データ総括表    目次へ戻る

 本調査における標本抽出は、概してCATVの加入層と非加入層に層別化した二段階抽出を行っている。このために本報告では、次の2つの集計方法を採用している。

1.有効回収したデータをそのままに集計分析する方法

CATVへの加入−非加入が結果に影響するとは考えにくい層化におけるクロス集計などでは、この方法を採用した。この場合には、層別間での統計的検定を行っている。

2.有効回収データをウエイト加重(ウエイトバック)して集計分析する方法

単純集計で地域間の比較が行う場合など、適切に地域間比較が行われるようにするために、層別の回収数が母集団規模となるようなウエイト加重を行っている。その場合のウエイトを、別表に示している。ウエイト加重を行うと仮想的に標本規模が大きくなるために、統計的有意性の検定は利用困難となる。
 

別表 各地域の有効回収数、母集団規模とウエイト
地域区  分(抽出単位) 標本区分(注1) 有効回収数 母集団 ウエイト
広島市(世帯) HICAT地区 CATV
104
15,076
144.961
非CATV
106
117,370
1107.264
チャンネルU地区 CATVInet
147
850
5.782
CATV
39
6000
153.846
非CATV
45
40180
892.888
札幌市(人口) 中央区 
51
61087
1197.784
55
72323
1314.964
西区 
49
42303
863.327
55
47085
856.091
豊平区 
45
61103
1357.844
61
67009
1098.508
南区 
52
34807
669.365
54
37983
703.389
諏訪地域(世帯) 茅野市  CATVInet
28
1,747
62.393
CATV
95
20,853
219.505
諏訪市  CATVInet
55
1,980
36.000
CATV
114
18,352
160.982
岡谷市  CATVInet
39
2,069
53.051
CATV
91
17,350
190.659
下諏訪町  CATVInet
16
775
48.438
CATV
42
7,891
187.881
高知市(世帯) (注1)  CATVInet
177
499
3.0613
CATV
163
5,039
28.4689
非CATV
123
23,299
187.4228
日野市(世帯) (注2)  CATV
132
3641
27.5833
再送信
89
3828
42.9550
非CATV
281
7118
25.3309
(注1)CATV:多チャンネルCATV加入  CATVInet:ケーブルインターネット加入  非CATV:多チャンネル CATV非加入
(注2)まず25町丁を抽出し、その後に等確率で標本抽出したため、地域は1つとしてウエイト付けをした。
(注3)まず13町丁を抽出し、その後に当確率で標本抽出したため、地域は1つとしてウエイト付けをした。


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