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ケーブルテレビ加入者のインターネット利用実態

吉井 博明、八ッ橋武明

 「情報研究」  文教大学情報学部紀要  2000.1  No.22 PP.1-11

Use of Internet by Cable TV Subscribers
Hiroaki Yoshii and Takeaki Yatsuhashi

 Cable TV is expected to become one of the major media to realize fusion between broadcast and telecommunication. Recently many Japanese Cable TV operators provided internet connection service as the first step. Musashino -Mitaka Cable TV company was the first Cable TV operator to provide the service of internet connection. We conducted survey of Cable TV subscriber on the use of internet and evaluation of internet connetion service under the cooperation of Musashino -Mitaka Cable TV company in March, 1999. In this paper emphasis are put on findings of the survey : Cable TV subscribers are very intersted in inernet and the rate of internet use is very high, and the internet user of Cable TVsubscriber are composed by two different groups, heavy users and light users.


  目次

1.はじめに
2.ケーブルテレビ加入者のインターネット接続サービスへの加入状況
3.p-net加入者と他のインターネット・プロバイダー加入者との利用状況の異同
4.高速接続サービス利用者のインターネット利用の特徴
まとめ
注釈および引用文献


1.はじめに

  ケーブルテレビは、放送と通信の融合を進めるインフラストラクチャーとして大きな期待がかけられている。ケーブルテレビは、多チャンネル放送とインターネットの高速伝送を同時に実現する、最も有力なメディアのひとつとみなされている。ケーブルテレビの加入者は、ケーブルテレビ会社が提供するインターネット接続サービスを利用するか、別のインターネット接続サービス会社を利用することによって、自宅からインターネットを利用することができる。

  ケーブルテレビ会社が提供するインターネット接続サービスは、電話回線を使ったダイアルアップ接続サービスに較べて、はるかに高速の接続サービスを提供できる点が大きな特長である。また、インターネットに接続するのに、電話回線を使うのではなく、ケーブルテレビ回線(同軸ケーブル)を使うことから、電話代が不要であり、しかもインターネット利用中でも電話を使うことができるという特長もある。さらに、ケーブルテレビ会社はサービス対象地域が限定されており、加入者がわかっていることから、パンフレットやチラシによる広報だけでなく、社員や営業マンが加入者宅を直接訪問し、勧誘や相談、あるいはセットアップ・サービスまで行うことができる。

  このようなケーブルテレビ会社によるインターネット接続サービスは、2つのタイプのインターネット・ユーザー層を掘り起こす可能性がある。ひとつは、高速接続サービスを希望するユーザーで、おそらく現状の低速接続サービスに不満を持っているユーザー層であり、もうひとつは、インターネットに関心はあるが、加入の手続きやセットアップ等が苦手で加入していなかった潜在ユーザー層である。

  そこで、本論文では、日本のケーブルテレビ会社の中で、最初にインターネット接続サービスを実現した武蔵野三鷹ケーブルテレビ株式会社の協力を得て、その加入者に対するアンケート調査により、インターネットに接続している世帯を選び出し、その利用実態を分析する1)。その際、ケーブルテレビ加入者のインターネット利用の特徴を明らかにするために2つの比較分析を行う。第1の比較分析は、@武蔵野・三鷹ケーブルテレビの加入者で武蔵野・三鷹ケーブルテレビのインターネット接続サービス(パークシティネット、以下p-netと略称)に加入しているインターネット・ユーザー、A武蔵野・三鷹ケーブルテレビの加入者でp-netには加入しておらず(ケーブルテレビのみの契約世帯)、他のプロバイダーに自宅で加入しているインターネット・ユーザー、B一般的なインターネット・ユーザーという3グループ間の比較である。第2の比較分析は、p-netに加入しているユーザーを、@10Mbpsという高速接続サービスを受けているユーザー、A128kbps以下の接続サービスを受けているユーザーという2つのグループに分け、利用実態を比較するものである。

2.ケーブルテレビ加入者のインターネット接続サービスへの加入状況      目次へ戻る

  まず、武蔵野三鷹ケーブルテレビ加入者のインターネット接続状況をみることにしよう。武蔵野三鷹ケーブルテレビ加入者には、@ケーブルテレビのみに加入している世帯、Aインターネット接続サービス(p-net)のみ受けている世帯、Bケーブルテレビとインターネット接続(p-net)の両方のサービスを受けている世帯がある。これらの世帯が(p-net加入世帯については、p-net加入以前に)インターネット接続サービスを受けている(いた)率をみたのが、表1である。

  この表から読みとれる最大の特徴は、いずれの層もインターネット接続率が3割を越えており、郵政省調査(平成11年度通信白書)による全国平均のインターネット接続世帯率、11.0%よりはるかに高いという点である。この背景には、武蔵野三鷹ケーブルテレビのサービス対象地域が、大都市圏内の高級住宅地にあり、高学歴で、平均所得が高く、管理職の会社員比率が高いという地域特性がある。また、同時に、都市型ケーブルテレビというメディアへの加入者が、一般的に示しているように、情報通信機器にセンシティブな世帯であることを反映しているものと考えられる。いずれにせよ、武蔵野・三鷹地域は、インターネット先進地域といえよう。

      表1 武蔵野三鷹ケーブルテレビ加入者のインターネット接続率
    接続率 サンプル数

 
 
 

 

a.ケーブルテレビにのみ加入の世帯がp
-net以外のプロバイダーに接続している率
  43.5%
 
   85
 
b.ケーブルテレビとp-netの両方に加入している世帯のp-net加入以前のプロバイダー接続率   33.1%
 
  130
 
c.p-netにのみ加入している世帯のp-net加入以前のプロバイダー接続率   37.8%
 
   90
 

  また、ケーブルテレビにのみ加入している世帯のインターネット接続率が43.5%とp-net加入世帯より高くなっていることも興味深い特徴である。このことは、p-netに加入していない世帯が、インターネットに関心がない世帯ではなく、逆に関心が強いために、p-netのサービス開始以前にすでに別のプロバイダーに加入していたことを示唆している。これらの層は、p-netの接続サービスの特長である高速接続にそれほど魅力を感じず、すでに加入しているプロバイダーへの不満が少ないために、プロバイダー変更をためらう人が多くみられた。

  ケーブルテレビにのみ加入し、かつp-netにも他のプロバイダーにも入っていない世帯の多くは、インターネットを使う動機が特に見あたらないのであり、「加入してもよいが、とりあえず不要と判断」して、加入していない。具体的な利用イメージが湧けば、加入の可能性が高い世帯と考えられる。

  p-netへの加入者の場合、すでに他のプロバイダーに加入していた世帯が3割強あった。この3割強の加入者は、p-netに加入することのメリットとして、「インターネット利用中も電話がかけられること」(70.9%)、「電話利用に較べて通信速度が速いこと」(61.4%)、「電話混雑による接続待ちがないこと」(46.4%)をプロバイダー変更(追加)の主たる理由としてあげている。しかも、面白いことに、このうちの約半数は、p-net加入後も、すでに加入していたプロバイダーへの接続を継続しており、インターネット・プロバイダーへの二重加入者になっている。二重加入者のかなりの部分は、基本料金が安いパソコン通信サービスを経由したインターネット接続ではないかと推察される。

  しかし、p-netの加入者の多く(6割強)は、新たに掘り起こされたインターネット・ユーザーである。このうち約半数(全体の1/3)は、加入を検討していたときにp-netのことを知り、プロバイダーを比較検討する中で、p-netに決定している。したがって、p-netによって、本当の意味で新たに掘り起こされたインターネット・ユーザーは、約1/3ということになる。この新規加入者は、p-net選択の最大の理由として、インターネット利用中も電話がかけられることをあげており、通信速度が速いことは2番目の理由になっている。当初、p-netの新規加入者は、パソコンが苦手なやや高齢の人という予想をしていたが、これは当たっていない。というのは、加入理由として、「加入時のコンピュータのセットアップも依頼できる」(8.7%)、「地域の事業者のため、サポート依頼や質問をしやすい」(17.4%)という回答が少なかったからである。

3.p-net加入者と他のインターネット・プロバイダー加入者との利用状況の異同    目次へ戻る

  以下の分析では、@武蔵野・三鷹ケーブルテレビの加入者でp-netに加入しているインターネット・ユーザー(有効回答数220、以下においてはp-netユーザーと呼ぶことにする)、A武蔵野・三鷹ケーブルテレビの加入者でp-netには加入していないが、他のプロバイダーに加入しているインターネット・ユーザー(有効回答数37、以下の表においては「ケーブルテレビとp-net以外」と略称する)、B一般的なインターネット・ユーザーという3グループの比較を行う。前2者については、今回行った調査結果を使い、Bの一般インターネット・ユーザーについては、東京大学社会情報研究所がASAHIネット加入者を対象に行った調査(有効回答数1,043)2)等を使うことにする。

  表2 ケーブルテレビ加入世帯におけるインターネット利用者数

利用ネットワーク 1人 2人 3人 4人 5人 NA 合計
p-netユーザー
ケーブルテレビとp-net以外
 56.4
 45.9
 31.4
 51.4
 8.6
 2.7
 2.7
 ---
 0.5
 ---
 0.5
 ---
100.0
100.0

  @とAの加入は、世帯単位であり、日常的にインターネットを使っている人は一人とは限らない。表2に示したように、利用者数は、p-netのみの加入世帯も、両方加入の世帯も同じで、平均1.6人である。

  加入世帯の中で複数のインターネット利用者がいる場合は、世帯の中で最も多くインターネットを使っている人に利用状況を尋ねている。このため、以下で比較を行う際、武蔵野三鷹ケーブルテレビのインターネット利用者は、多少利用が多い人に偏っている可能性があることに留意する必要がある。

【主たるアクセス場所、利用目的、利用年数】

  表3は、インターネットに最も頻繁にアクセスする場所の比較を示す。3グループともほとんど同じで、自宅が圧倒的に多い。もちろん、すべての対象者が自宅からアクセスできるのであり、自宅での利用が主ではなく、従になっている人が、1/3程度いるというわけである。

  表3 最頻アクセス場所

利用ネットワーク
 
自宅
 
職場
 
自宅兼
職場
学校
 
その他
 
NA
 
合計
 
p-netユーザー
ケーブルテレビとp-net以外
ASAHIネット加入者
 65.5
 78.4
 66.3
 22.3
 13.5
 24.2
  1.8
  2.7
  4.7
 2.3
 2.7
 0.8
  --
  --
  0.2
 8.2
 2.7
 3.8
100.0
100.0
100.0

  インターネットの利用目的は、表4に示したように、仕事・勉強目的の割合の方が多い人が約3割、逆に少ない人が5割、半々の人が約2割という構成になっている。しかし、会社や学校など、自宅以外でもインターネットを利用している人が約半数おり、以下のインターネットの利用状況を分析するときに注意を要する。表3からもわかるように、自宅以外からのアクセスが主になっている約1/3の利用者の場合、その65%が仕事・勉強がすべて、もしくは多い利用者だからである。

  また、利用年数については、グループによる違いが少なく、2年半程度以前の1997年秋が平均となっている。

表4 利用目的(仕事・勉強目的か、プライベート・趣味目的か)

利用ネットワーク
 

 

すべて
仕事・
勉強で
利用
仕事・
勉強の
方が多
同程度
 

 

仕事・
勉強の
方が少
ない
仕事・
勉強利
用はな
NA
 

 

合計
 

 

p-netユーザー
ケーブルテレビとp-net以外
  4.1
  5.4
 24.1
 24.3
24.1
21.6
33.6
40.5
 13.6
  8.1
 0.5
 ---
 100.0
 100.0

 【WWWの利用とホームページの保有】

 WWWの利用頻度は、p-net利用者とASAHIネット利用者がほぼ同程度で、p-net以外のプロバイダー利用者の利用率がやや少ない傾向がみられる(表5)。1日に数回以上WWWにアクセスする人は、p-net利用者とASAHIネット利用者で3割と多いのに対して、p-net以外のプロバイダー利用者では、16%とその半分に過ぎない。p-net以外のプロバイダー利用者の場合は、1日に1回利用する人が最も多く、35%で、1日に1回以下の利用しかしない人は、仕事・勉強で使う率が少ない傾向にある。

表5 WWWの利用頻度

利用ネットワーク
 
数回
/日
1回
/日
数回
/週
数回
/月
月1回
以下
アクセス
せず
NA
0.5
合計
100.0
p-netユーザー
ケーブルテレビとp-net以外
ASAHIネット加入者
28.2
16.2
29.9
22.3
35.1
20.0
30.5
32.4
30.3
14.1
16.2
13.8
 2.3
 --
 3.3
2.3
 --
 1.2
 --
 1.4
 
 100.0
 100.0
 

  ホームページの保有率をみると(表6)、ASAHIネットの利用者が最も多く、20%、次にp-net利用者の13%が続き、p-net以外のプロバイダー利用者では、5%とかなり少なくなっている。また、ホームページ作成希望者率は、いずれのグループも4割程度でほぼ同じ傾向を示している。ホームページを保有している人は、仕事・勉強でのインターネット利用比率が半分以上の人に多く、保有している人の8割にも達している。逆に、仕事・勉強の利用割合の方が少なかったり、ない人の場合は、ホームページ作成率が5%と非常に少なくなっている。

表6 ホームページ保有率

利用ネットワーク
 

 

自分でつ
くったホ
ームペー
ジ所有
他人に手
伝っても
らったホー
ムページ
もってい
ないがつ
くりたい
 
もってお
らずつく
りたいと
思わない
NA
 

 

合計
 

 

p-netユーザー
ケーブルテレビとp-net以外
ASAHIネット加入者
  12.7
  5.4
  19.5
  0.7
  ---
  2.0
  43.2
  43.2
  40.0
 43.2
 51.4
 34.7
 ---
 ---
 3.8
 100.0
 100.0
 100.0

【電子メールとその他のインターネットサービスの利用状況】

  電子メールの利用頻度は、3グループともほとんど違いがない(表7)。電子メールの利用頻度とWWWの利用頻度は、非常に高い相関があり、当然、使用目的との関連が強い。仕事・勉強用がすべて、もしくは多い人の場合、1日に数回以上電子メールを使う率が62%に達しているのに対して、仕事・勉強用が同程度の人の場合は43%、仕事・勉強用の方が少なかったり、ない人の場合は、17%と格段の違いがある。プロバイダーの違いよりも使用目的が仕事・勉強用か、それともプライベートな趣味用かでまったく異なっているのである。

表7 電子メールの利用(送受信)頻度

利用ネットワーク
 
数回
/日
1回
/日
数回
/週
数回
/月
月1回
以下
アクセス
せず
NA
 
合計
 
p-net加入
ケーブルテレビとp-net以外
ASAHIネット加入者
35.9
35.1
37.5
19.5
27.0
22.9
17.3
27.0
18.9
15.5
 5.4
11.5
 5.0
 2.7
 4.1
 6.8
2.7
 3.7
 ---
 ---
 1.3
 100.0
 100.0
 100.0

  WWW閲覧、ホームページ作成、電子メール以外の利用状況を表8に示した。最も多くの人が利用しているのは、ソフトのダウンロードで、3グループとも一致している。しかし、2番目に多くの人が利用しているサービスは、加入プロバイダーによる違いが大きい。p-net利用者とケーブルテレビに加入し、かつp-net以外のプロバイダーを利用してい人の場合は、ネットニュースを読む率がそれぞれ54%、41%と高く、メーリングリストへの参加は27%、16%と少ない。これに対してASAHIネットの利用者の場合は、メーリングリスト参加者が33%とやや多いのに対して、ネットニュースを読む比率は29%とかなり低くなっている。プロバイダーのサービス内容の違いにより、これらの利用状況に違いが生じるものと考えられる。

表8 他のインターネット・サービスの利用(多重回答)

利用ネットワーク

 

ネットニュ
ースを
読む
ネットニュ
ースに
投稿
メーリン
グリスト
参加
掲示
板読
掲示板
書き込
チャット
を楽
しむ
ソフトの
ダウンロ
ード
サンプル数

 

p-netユーザー
ケーブルテレビとp-net以外
ASAHIネットユーザー
54.1
40.9
28.6
 2.7
 2.3
 2.8
27.0
15.5
32.5
37.8
33.3
 na
 8.1
14.5
 na
 2.7
 6.8
 na
62.2
62.7
70.8
  37
 220
1,043
 na:該当調査項目なし

【インターネットの有効性評価】

  インターネットの有効性評価については、p-net以外のインターネットユーザーの調査項目に入っていないため、p-netユーザーとASAHIネットユーザーについての比較のみ行う。また、この項目については、回答選択肢が違う(p-netユーザーについては、役立っている程度を、ASAHIネットユーザーについては満足度を尋ねている)ため、厳密な比較はできない。表9に示したように、全体的にはp-netユーザーの方が、プラスの評価が高いものの、傾向的にはほとんど同じである。最もプラス評価が高いのは、「自分の好きなこと(趣味など)の情報を手に入れる」ことで、逆に低いのは、両者とも、「自分の知らない人に向けて情報を発信する」ことである。

       表9 インターネットの有効性評価

 
 
 
 
 
 
 

 

 活用内容
 
p-net
ユーザー
ASAHI
ネット
1.インターネット自体を娯楽として楽しむ  75.5  44.1
2.自分の知らない人に向けて情報を発信する  23.6  19.3
3.いろいろな人とコミュニケーションをする  41.9  37.3
4.仕事や生活の上で必要な連絡をする  73.2  65.2
5.自分の仕事や研究に必要な情報を手に入れる  73.6  51.1
6.自分の好きなこと(趣味など)の情報を手に入れる  86.3  65.3
7.生活に必要な情報(天気予報など)を手に入れる  48.2  44.9
8.社会の動きに関する情報を手に入れる  47.3  31.2
  *p-netユーザーについての回答選択肢は、「役立っている」、「どちらかといえ
   ば役立っている」、「どちらとも言えない」、「どちらかと言えば役立っていな
   い」、「役立っていない」の5段階であるのに対して、ASAHIネット調査は、
   「満足」、「不満」、「どちらとも言えない」の3カテゴリーであるため、直接
   的比較ができない。上の表では、p-netユーザーについては、「役立っている」と
   「どちらかと言えば役立っている」の合計%を、また、ASAHIネットについては、
   満足と回答した%を示している。

  p-netユーザーについて、因子分析を行うと、3つの因子で69%の説明率が得られた。表10のファクター・スコアからもわかるように、第1因子は、仕事や生活に必要な情報の入手や連絡に関わる因子で、必要に迫られて行う情報行動である。インターネットを仕事や生活上の必要性があって利用し、役立っていると評価している程度を表している。インスツルメンタルな情報の入手手段としての有効性評価軸と言えよう。第2因子は、インターネット自体を娯楽として楽しんだり、自分の好きなこと(趣味など)の情報を手に入れる上での役立ち度の評価であり、コンサマトリー情報の入手手段としての有効性評価軸である。第3因子は、自分の知らない人に向けて情報発信をしたり、いろいろな人とコミュニケーションをする双方向コミュニケーションへの役立ち度を表している。

 表10 インターネットの有効性評価に関する因子分析(因子得点)

                      因子
活用内容
第1因
第2因
第3因
1.インターネット自体を娯楽として楽しむ -0.02  0.83  0.21
2.自分の知らない人に向けて情報を発信する  0.06  0.15  0.86
3.いろいろな人とコミュニケーションをする  0.14  0.15  0.85
4.仕事や生活の上で必要な連絡をする  0.75 -0.14  0.33
5.自分の仕事や研究に必要な情報を手に入れる  0.79  0.07  0.10
6.自分の好きなこと(趣味など)の情報を手に入れる  0.20  0.71  0.15
7.生活に必要な情報(天気予報など)を手に入れる  0.65  0.52 -0.08
8.社会の動きに関する情報を手に入れる  0.67  0.42 -0.04

  それでは、インターネットを利用することによって得られる情報や価値は、インターネットにかかる費用と見合っていると思っているのであろうか。この質問も多少ワーディングが異なるので厳密な比較はできないが、表11に示したように、p-netユーザーとASAHIネットユーザーとで大きな違いがある。p-netユーザーの場合、約半数が、「どちらとも言えない」と答えているのに対して、ASAHIネットユーザーの場合は、2割しか、「ちょうどよい」と答えていない。これに対して、「高い」と「少し(どちらかと言えば)高い」を合わせた割合をみると、ASAHIネットのユーザーが、75%と非常に高く、p-netユーザーでは、29%と少ない。プロバイダーの料金設定による違いとみられる。この結果、p-netユーザーのプロバイダーに対する満足度は、非常に高く、77%にも達している。

 表11 インターネットから得ている情報や価値と料金とのバランス

利用ネットワーク
 
安い
 
少し安
ちょう
どよい
少し高
高い
 
NA
 
合計
 
p-netユーザー
ASAHIネットユーザー
 5.5
 1.9
14.4
 2.0
51.4
20.9
13.2
51.9
 15.5
 22.9
 1.8
 0.4
100.0
100.0
*p-netユーザーに対する選択肢は、多少異なり、ちょうどよい→とちらとも言えない、
少し安い→どちらかと言えば安い、多少高い→どちらかと言えば高い、となっている 

【テレビ視聴への影響】

  このようなインターネット利用の結果、テレビ視聴行動にかなりの影響がでつつある。第1に、すでにいくつかの調査が明らかにしているように、テレビ視聴時間が減少している(表12)。加えて、テレビ視聴時間だけでなく、テレビをつい見てしまうことや番組欄や番組ガイド誌を見ることも、さらには番組を録画することも減少している。テレビへの関心自体が減少しつつある様子がうかがえる。

              表12 テレビ視聴時間への影響

 

 

利用ネットワーク 減った 不変 増えた  NA 合計
p-netユーザー
ケーブルテレビとp-net以外
ASAHIネット加入者
 40.5
 29.5
 38.6
 59.5
 69.5
 59.8
  ---
  0.9
  0.3
  ---
  ---
  1.3
 100.0
 100.0
 100.0
   *このデータのみ1997年調査結果3)

                                 
4.高速接続サービス利用者のインターネット利用の特徴       目次へ戻る

  CATV経由のインターネット接続サービスの最大の特長は、高速接続サービスである。武蔵野三鷹ケーブルテレビの場合は、p-netサービスのひとつのメニュー4)として、10Mbps接続(以下、IA-10Mサービスと呼ぶ)がある。このサービスの利用者は、一般の接続サービス利用者とどのような違いをもっているのであろうか。今回の調査回答者でp-netに加入している220世帯の中で、10Mbpsサービスを受けているのは、59世帯である。これらのユーザーが、他のサービス(128Kbpsか、それ以下の速度の通信サービス)を受けている ユーザーと著しく異なるところをピックアップしてみる。

 【利用者属性、インターネット加入歴、利用目的】

  まず、利用者の属性をみると、IA-10M(高速接続)ユーザーは、30代から40代の人が多く、学歴では、大学院卒が多少多くなっている。職業等の違いはないが、p-net加入以前からインターネットを利用していた人が多く、73%に達している(DIコースとIA-128コースユーザーでは52%)。しかも、インターネットを3年以上前から利用している人が49%と多くなっている。

  また、表13に示したように、p-net加入時にすでに他のプロバイダーに加入し、自宅でインターネットができる環境にいた人が6割弱と多く、しかも、p-net加入後も、他のプロバイダーへの契約を継続している率が高い。複数加入が多いのである。

 表13 p-net以外のプロバイダーへの加入、継続状況

 加入サービスの種類
 
他のプロバイダー
への加入率
p-net加入後の
プロバイダー継続率
サンプル数
 
DIコースとIA-128コース
IA-10Mコース
  28.0%
  55.9%
  43.8%
  57.6%
  161
  59

  プロバイダーとして、p-netを選択した理由にも違いがみられる。いずれのサービスコースを選択したユーザーも、通信速度が速いことをあげた人が多いが、IA-10Mコースのユーザーでは、特に高く、88%にも達している。これに対して、DIコースとIA-128コースのユーザーの場合は52%に留まっている。

  インターネット利用の目的については、両者とも仕事や勉強が主の人が2割、プライベートな利用が主の人が5割、同程度が3割の比率になっている。また、利用内容はコースによる違いが少ないが、ソフトのダウンロードのみ、IA-10Mコースのユーザーが多くなっている。加入時のセットアップ作業については、IA-10Mコースのユーザーの場合、自分でセットアップをする率が高くなっている。

 【インターネット利用状況】

  Web利用やメール利用頻度についてみると、表14に示したように、IA-10Mコース利用者の方が圧倒的に多く利用しており、ヘビーユーザーといえよう。

表14 WWWと電子メールの利用頻度

 
 利用コース
 
数回
/日
1回
/日
数回
/週
数回
/月
月1回
以下
アクセス
せず
NA
 

 
Web
 
DIコース+IA-128コース
IA-10Mコース
21.7
47.5
22.9
20.3
31.2
28.8
18.5
 3.4
 3.2
  --
1.9
--
0.6
 --
100.0
100.0
電子
メール
DIコース+IA-128コース
IA-10Mコース
31.2
50.8
19.7
18.6
19.7
11.9
15.3
15.3
 6.4
 ---
7.6
3.4
--
--
100.0
100.0

  しかし、ホームページの作成率はあまり変わらず、IA-10Mコース利用者でも15%あまりに過ぎない。Webとメール以外のインターネット利用は、IA-10M利用者がソフトのダウンロードを中心にしているのに対して、DIコースとIA-128コース利用者は、ネットニュースを読む率が高くなっている(表15)。

表15 WWW、電子メール以外のインターネット・サービスの利用(多重回答)

利用ネットワーク

 

ネットニュ
ースを
読む
ネットニュ
ースに
投稿
メーリン
グリスト
参加
掲示
板読
掲示板
書き込
チャット
を楽
しむ
ソフトの
ダウンロ
ード
サンプル数

 

DIコース+IA-128コース
IA-10Mコース
45.3
32.2
 3.2
 ---
14.0
20.3
37.6
37.3
14.6
13.6
 7.0
 3.3
55.7
84.7
 157
  59

【インターネットの有効性評価とp-netへの満足度】

  インターネットの有効性評価については、全般に利用頻度が高いIA-10Mコースのユーザーの方が役立っていると評価しているが、有意差があるのは、「仕事や生活の上で必要な連絡をとる」と「自分の好きなこと(趣味など)の情報を手に入れる」の2つのみである。

  p-netサービスに対する満足度は、平均的には大きな違いがないが、IA-10Mコースユーザーは、満足している人も多いが、「不満」と「どちらかと言えば不満」を足した比率も多いという特徴がある。この不満の原因は、料金に起因するもので、利用料が「高い」、あるいは「どちらかと言えば高い」と答えた人は、IA-10Mコースのユーザでは、70%にも達している(他のコースのユーザーでは38%)。

  ヘビーユーザーであるIA-10Mユーザーは、効用を高く評価すると同時にコスト感も強く、良いサービスだが高いと感じ、効用対コストを考えると、安いとも高いとも言えないと考えているのである。
 

まとめ        目次へ戻る

  今回の調査で得られた主要な点は、以下の3点にまとめられる。
  まず第1に、ケーブルテレビの加入世帯は、インターネットへの関心が強く、しかも世帯収入が高いことから、インターネットへの加入率が非常に高く、ウェイトバックした結果からみると、41.6%にも達するという事実が判明した。しかも、世帯内で複数の家族が利用しているケースが多く、1世帯当たりのインターネット利用者数は、1.6人に及んでいる。ケーブルテレビに加入している世帯は、情報通信機器・システムの利用意向が高い情報高感度世帯といえよう。

  第2に、ケーブルテレビの加入者は、ケーブルテレビ経由のインターネット接続と電話回線経由のインターネット接続との違いをよく理解しており、ケーブルテレビ経由の接続は費用対効果が良いと実感している。ケーブルテレビ加入者は、インターネットから得ている情報や価値に比べて支払っている費用が安いとまでは言えないにしろ、高いとも言えないと感じている。他のプロバイダーの利用者の場合は、得られている情報や価値に比べて支払っている費用が高いと感じている利用者が圧倒的に多いのに比べると、ケーブルテレビ経由のインターネット利用者は、サービスに対する満足度がかなり高いといえよう。

  第3に、インターネットの利用実態や有効性の評価については、ケーブルテレビ経由のインターネット利用者も他のプロバイダー経由のインターネット利用者もほとんど同じ傾向を示している。ケーブルテレビ経由の利用者の場合は、サービスを受ける通信速度を選択できるため、高速サービスを受けているヘビーユーザーと低速サービスを受けているライトユーザーの2層が混在しているが、平均的には、他のプロバイダーの利用者と同じ利用傾向と効用認識を示している。

  最後の今回行った調査にご協力いただいた武蔵野三鷹ケーブルテレビ株式会社の関係者のみなさんに深く感謝の意を表したい。また、本調査が文教大学情報学部共同研究費を受けて行われたことを明記するとともに、感謝の意を表したい。 


注釈および引用文献       目次へ戻る

 1)今回行った調査は、武蔵野三鷹ケーブルテレビ株式会社の協力を得て、1999年3月にケーブルテレビにのみ加入している世帯6,588から263、インターネット接続サービスのみ 受けている世帯583から250、両方のサービスを受けている世帯1,888から269の世帯を抽出し、郵送で質問票を送付し、郵送で回答を求めた。その結果、それぞれ85、90、130 の回答を得た。回収率はそれぞれ32.3%、36.0%、48.3%であった。しかし、母集団リストにわずかながら区分ミスがあり、返送後に再度別グループの調査票を送り直した世帯が20含まれている。

 2)橋元良明、辻大介、森康俊、柳澤花芽、1999「インターネット個人加入利用者の実態 1998--第3回ASAHIネット加入者アンケート調査報告」、 『東京大学社会情報研究所調査研究紀要』No.12、pp1〜68

 3)橋元良明、辻大介、福田充、森康俊、柳澤花芽,1997「インターネット個人加入利用者の実態1997」,東京大学社会情報研究所調査研究紀要第10号,pp1〜71

 4)p-netの料金体系は、IA-10Mコース、IA-128kコース、DIコースの3つがあり、さらに、1ヶ月の利用時間毎に料金が定められている。時間は月当たりの上限利用時間で4時 間、10時間、20時間、30時間、50時間までという5段階(タイプ)で、コースと合わせると15の選択肢がある。たとえば、IA-10Mコースでも月4時間まで04タイプに加入すれば、2,880円/月の料金ですむ。DIコースの04タイプにすれば、1,440円/月、IA-128kコースであれば、04タイプで1,920円/月である。契約時間が長くなれば、時間数にほぼ比例した料金になる。