遠隔教育の実験

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遠隔教育の実験

「ストリーミングによる教材配信実験」

平成13年度および平成14年度
私立大学等経常費補助金特別補助による研究

ストリーミングによる教材配信実験
ストリーミングを利用した教材の配信実験を行っています


 

『教育研究所年報』第11号 2002.6.10発行より
ストリーミングによる教材配信実験報告

研究部主任 白石和夫

1.はじめに
 教育研究所では、研究成果のインターネット上での公開に積極的に取組んできたが、今後、広帯域インターネットの教育利用についても取組んでいくことにした。
2.コンテンツの試作
 講義の配信という観点では、講師が話しているビデオ画像よりも、黒板に相当する文字や図形、静止画などの情報が重要な場合が多い。この場合、同期配信の技術が必要になる。同期配信に対応しているReal Mediaを利用して教材を作成することにした。
 2001年度は、複数の手法を用いてストリーミングを利用して配信するための教材の作成を試行した。
(1) パリのサルペトリエール病院
 これは、パワーポイントから変換した例である。パワーポイント2000でスライドをgif形式で保存、音声は別途WAVファイルの形で収録し、RealPixの形式で合成した。
(2) 新しい定理の作り方
 これは、DVカメラで撮影した動画とFlash5で作成した黒板画像とのコンビネーションの例である。研究所内で撮影したものであるが、撮影中に電話が入り、部分的にやり直しをしている。不要部を動画編集ソフトでカットしている。
(3) Newton法とCayleyの問題
 これもDVカメラで撮影した画像とFlash5で作成した黒板の合成である。逆光の強い環境で撮影された。音声収録に外付けマイクを使用したが、交流電源に由来する強烈なノイズを拾っており、編集段階で音声を加工している。
(4) 文教大学教育研究所の活動
 RealNetworks社が配布しているRealPresenter BASICを利用して作成した試作品である。漢字の使用を想定しないシステムであったので、最後に手作業で漢字が表示されるように修正している。
3.配信環境
 家庭用として普及しているADSL回線を研究所に引き込み、情報発信のためのサーバを開設した。法人契約が可能なプロバイダのなかからU-NET SURFを選んだ。固定IPのサービスがないので、ダイナミックDNSサービスを利用してIPアドレスが変動しても利用者からみたときのURLは変化しないようにした。
 越谷校舎ではファイアウォールの関係でReal Serverからの受信ができない。学内LANに接続されたPCにもReal Server BASICをインストールして,学内向けにもReal Serverを利用した配信が行えるようにした。
 また、一部のコンテンツについては、配信方法としてReal Serverとhttpサーバが選択できるようになっている。httpサーバによる配信は、ファイアウォールの関係でReal Networksのrtspプロトコルに対応しない環境でも利用できるようにするためのものである。          

白石和夫「ストリーミングによる教材配信実験の開始」『教育研究所紀要』第10号,2001年,pp.41-44

 

 

 

『教育研究所年報』第12号 2003.6.30発行より
ストリーミングによる教材配信実験報告(2年目)

研究部主任 白石和夫

1.はじめに
  文部科学省は、西暦2005年度を目標として、すべての小中高等学校の全教室にインターネットに接続されたコンピュータを設置する計画(ミレニアムプロジェクト)を開始している。このプロジェクトが実現したとき、インターネット上で利用可能な教材の提供は、本研究所をはじめとする大学等の研究機関の役割として期待されることであろう。また、本学のように2キャンパスに分断された大学においては、ネットワークを利用して行う教育の意義が高い。本研究所では、インターネットを情報を発信する手段として活用する研究を進めてきた。平成14年度は、13年度に引き続いてインターネットのストリーミング技術を利用する教材配信の実験を行った。
2. 研究内容
  研究内容は大きく分けて2つある。ひとつは純粋に配信の実験であり、もうひとつは教材作成技法の研究である。しかし、配信手段により教材作成の技法も制約を受けるから、それらの総体として考える必要がある。
3. 研究の概要
(1) 配信手段について
@ インターネット回線
 平成14年度はプロバイダを@niftyに変更し、ADSLを(最大)8Mbpsのものに変更した。それにより、月額経費の節約とともに、今回の研究にとって重要な上り回線速度の増強とRealサーバとして機能するホームページの確保を実現した。これは、@niftyがADSLで法人契約を認めるようになったために可能となったものである。
 平成15年2月までの研究期間中、@niftyにおけるホームページの容量を増強してRealMediaで作成した教材の配信をテストした。その結果、RealMediaはRealMediaに対応したサーバを用いるとよい結果が得られることが確認できた。具体的には、通常のWebサーバではRealPixを用いた教材が配信不能に陥ることが多いのに対し安定して接続可能であることなどが確認できた。また、ADSL回線で接続された研究所内PCからの配信に比べ、大手プロバイダの有する高性能サーバからの配信ではプリロード(バッファリング)に要する時間も少なくてすむことも確認できた。
A ストリーミング形式
 平成14年度は、Real Mediaを利用する同期配信のほか、マイクロソフト社のWindows Mediaを利用するほぼ同等の技術にも足を踏み入れた。
(2) 教材の作成
@ Windows Mediaによるビデオの配信
 あらかじめ収録しておいた平成14年3月実施の高校生講座の内容を編集し、ホームページ上で公開できるようにした。ビデオはDVカメラで撮影したもので、画素の構成は非正方の720×480である。これを640×480でWindows Mediaに変換することを試みた。授業の配信では、黒板に書かれた文字が確認できることが最も優先されるべき事項だからである。
 しかし、これは容易な仕事ではなかった。Windows MediaエンコーダにDVから得られた720×480の画像を直接入力すると、サイズ的には640×480になるものの、実質的な解像度が低下してしまう、つまり、正確には違うのかもしれないけれども、320×240の画像を引き伸ばしたような状態になってしまうのであった。実験的に、別のビデオ編集ソフトで、一旦、640×480に変換し、それをWindows Mediaエンコーダにかければ問題ないことが分かったが、手数としては増大してしまった。
 Windows Mediaエンコーダでは、ビットレートなどのパラメータを自由に設定することができる。カメラを三脚に固定して撮影したビデオは、256kbps程度のビットレートでも、単位時間あたりのフレーム数を落とせば、640×480の解像度で十分実用になることが確認できた。しかし、カメラを手持ちにして撮影したビデオを低めのビットレートで配信するのは容易ではない。背景まで動いてしまうような動画の配信にはメガビット級の帯域が要求されるようである。このあたりは、教育研究所のホームページで公開しているものを見てご確認いただきたいと思う。
A ビデオの編集
 授業をビデオに撮影したものを公開しようとするとき必要となる編集機能は、多くのビデオ編集ソフトが想定している使われ方と食い違う。多機能を誇るにもかかわらず、われわれが実際に必要とする使い方では使いものにならないものが存在する。我々がしたいことは一連の流れの途中にある不要部分をカットしてつめることであるのにもかかわらず、たいていの編集ソフトのトリミング機能は初めと終わりをつめるものになっている。そのため、ビデオを切り刻み、不要部分を削除する方法で編集することになる。しかし、分断箇所を的確に指定するのが容易でないソフトが存在する。編集ソフトによっては、切断点を指定するとき、画像によるのみで音声を聞きながら指定することができないものもある。黒板の前で話している映像のなかから、画像情報のみで切断点を的確に指定するのは、事実上、不可能である。
 本研究所ではテストしたソフトは、Ulead MediaStudio Pro、Ulead VideoStudio、Panasonic DVD-MovieAlbumSE、Adobe Premiereで、いずれも、MS-Windows上で動作するものである。MediaStudio Proは、切断すべき箇所を探すとき、音声を出しながら探すことができない。また、操作を行ったときに結果を確認するためのプレビューの表示がとても遅く、実際上、役に立たない。DVD-MovieAlbumSEは、編集作業は楽だけれども、一旦、DVDメディア上に転送しなければ使えないために準備作業が必要なことと、編集結果をバラバラのファイルの形でしか出力しないからそれをつなぎ合わせるための作業が必要になり、結果として省力化と結び付かない。Adobe Premiereは機能が豊富すぎて使いこなせないであろうという思い込みから当初は購入していなかったのであるが、予想に反して、唯一、特段の技巧なしで使えるソフトであった。
(3)WindowsMediaを利用する同期配信
 Windows Mediaで静止画と動画を同期配信する手法として、Microsoft Producerがある。Microsoft Producerは、ビデオ画像と、PowerPointのスライドとを複合したコンテンツを作製することができる使い方はそれほど難しくない。スライドを切り替えるタイミングで正確にマウスをクリックしていけばよい。しかし、あとからタイミングを修正するのはあまり簡単ではない。一箇所タイミングを変えると、それ以降がすべてずれてしまうのある。また、PowerPointにオートシェープで描かれた複雑な図形があると、変換結果が真っ白になってしまう現象が見られた。現在、公開中のものは、オートシェープの部分をGIFに差し替えて対応している。
 同種のソフトに、CyberLink社のStreamAuthorがある。およそ1ヶ月間のみ利用可能な体験版があったので試用してみた。操作性はMicrosoft Producerよりも優れている。タイミングをあとで修正するのもさほど難しくない。また、Microsoft Producerで見られたようなPowerPoint中のオートシェープによる図形が消失する現象も発生しなかった。期待できるソフトであるが、高価であるため、購入してのテストは行っていない。
 WindowsMediaで作成したコンテンツは普通のhttpサーバから配信することも可能であるが、その場合、受信側でスライドバーを操作して早送りや巻き戻しなどの操作を行うことができない。なお、Microsoft社はWindowsMedia専用のサーバソフトを無料で配布しているが、それを利用するためにはWindows2000 Serverが必要になるので、本研究所ではテストしていない。
4.終わりに
 今回の研究では、教材作成技術という点に力点をおいた。教材作成は人間の力によるところが大きい。教材作成に携わる人材の確保と育成が鍵である。今回は、アルバイトとして仕事に携わった教育専攻科学生の安仁屋杏子さんと教育学部3年の末廣裕美子さん(所属は2002年度当時)に尽力ねがった。この2人がいなければできなかった仕事である。

  ■回

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