Bコース「海藻から光合成色素を取り出そう」

教育学部 相馬早苗

 

テーマの選定

 理科の講座は結果がはっきりと出るような実験を経験するのがよいのではないかと考えた。有機溶剤で抽出される光合成色素は教科書の中にカラー写真が載っている。今回は有機溶剤で抽出される光合成色素のほかに、タンパク質についたまま抽出されるフィコビリンを含む紅藻を用いてみた。食品の海苔(アサクサノリ)は乾燥したものでも新鮮な材料と同じように光合成色素を抽出、分離できる。特に乾燥したままコーヒーミルで簡単に粉砕できるので短時間の実験には都合がよいと考えた。

実験の内容

 有機溶剤で抽出する(実験1)と、水で抽出する(実験2)に分けてプリントを作り手順を示した。 時間の関係で二つの実験は相前後してスタートさせた。 

(実験1)海苔1枚をコーヒーミルで粉砕し石油ベンジン、ベンゼン、メタノール混合液中に約30分間入れて抽出した。抽出中に乾燥させた活性アルミナ、炭酸カルシウム、乳糖を順にカラムに入れ、石油ベンジンを加えた。抽出液を濾過したあと分液ロートに入れ、水を加えて振り、下層の水とメタノール層を除いた。上層液を無水硫酸ナトリウムで脱水したあと、カラムに注ぎ、石油ベンジン、ベンゼン混合液で展開した。

(実験2)海苔1枚をはさみで細かく切り(コヒーミルで粉砕すると濾過に時間がかかるため)、pH7の燐酸緩衝溶液に入れた。時間の制約もあり今回は昼休み後に、ガーゼで藻体を除いたあと硫酸アンモニウムを30%になるように加え沈殿させた。遠心分離で沈殿と上澄みを分けた。上澄みにはさらに60%の濃度になるように硫酸アンモニウムを加えて沈殿させ、遠心分離した。二つの沈殿を集め透析膜に入れ大量の燐酸緩衝液中で撹拌し、硫酸アンモニウムを除いた。透析膜中で水溶液状になったフィコビリンを燐酸カルシウムゲルに吸着させた。ゲルに紫色の物質が認められた。今回は時間の制約でフィコビリン中の赤いフィコエリトリンと青のフィコシアニンを分離する時間がなかった。しかし赤と青の色素の混合物であることは確認できた。

講座の結果の考察

 カラムでは オレンジ色のカロチン、黄色のキサントフィル、緑のクロロフィルaがはっきりと分離できた。フィコビリンは赤と青の混合した紫の物質を得られた。海苔が黒く見えるのは多種類の色の光合成色素を含むためということが納得できたと思う。

実験のための準備としてカラムに使用する活性アルミナ、炭酸カルシウム、乳糖などの乾燥、燐酸緩衝溶液の作成、ゲルの準備などがちょっと大変であった。ちょっと欲張った内容であったが、海水中で太陽光線の赤い波長が失われる条件下で、クロロフィル系の色素のほかに赤や、青の色素をもつことが光合成に有利なこと、フィコビリンの取り出し方からタンパク質についても多少わかってくれたのではないかと思っている。

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