高校生対象公開講座(終了)

 



第4回高校生講座 

「大学をのぞいてみよう」

2001年
3月26日

Aコース テクノロジーと音楽
Bコース 海藻から光合成色素を取り出そう
3月27日

Cコース ギョーザラーメンはギョーザとラーメンじゃなかった
Dコース おもしろい表現できるかな

 

 

第4回パンフ

   2001年 3月26日 (月) 10:40〜14:30 Aコース

テクノロジーと音楽 文教大学教育学部 柳田孝義

講義概要  テクノロジーの発展によって今日、音楽の作られ方も大きく変化してきました。その音楽も民族や時代によって様々な捉えられ方があります。そのような観点から音楽を見つめ直し、併せて電子ピアノを使った今日的な作曲を試みてみませんか。

はじめに
 「テクノロジーの面から見た音楽の作られ方」をできるだけ分かりやすく身近なものに感じ取れるように、というのが今回の講座の狙いであった。対象が高校生ということで既に小中学校で音楽の授業を受けてきたことからある程度の音楽の理論については身についているもの、と考えて始めるのが普通である。しかし現実にはそうではない。クラブ活動で合唱や吹奏楽、オーケストラを経験している者やピアノ教室で子供の頃から学んでいる者には容易に理解できる内容でも、中学レベルの音楽が多くの学生にとっては身についていないことをこの講座の前提とせざるを得なかった。
  また、商業ベースで「パソコンを使って誰でも気軽に曲をつくろう!」的なものも氾濫している。導入としては意味は認めるものの、その先となると行き詰まるとよくいわれるのは音楽の基礎力が身についていないのも一因であろう。
授業内容
 授業の2コマのうち、1コマの半分以上を、人間が作り出してきた様々な楽器の歴史と構造などを特に二十世紀に入ってからの電気を使う楽器を中心に概説した。特に楽器が生まれる背景については音楽以外の要因が多くあることに注目し、また楽器が生き残っていく背景には民族性や時代性の要素があること、単なる商業主義では一時的現象に終わることも学習の対象とした。 残りの1コマと30分間(120分)は実際にDTM 音楽の作り方の一つを体験してもらった。
 DTM(Desk Top Music)について
 電子楽器、周辺のインターフェイス、デジタル音源などを使う今日の音楽制作に広く普及しているものである。テレビドラマの背景に流れる音楽やコマーシャル音楽、カラオケなどにはかなりの部分が使われていて少し聴いただけでは、本物の楽器と区別がつかないほど精巧に作られている。以前はミュージックシンセサイザーが代表的な電子楽器であったが今日はサンプリングという技術の発達により、例えばピアノの音をそのまま録音しそれを音源にデジタル加工することによってもたらされた効果である。
 電子ピアノを使って
 音楽研究室にはマッキントシュコンピュータによるDTMのための教室があるが受講生の数が限られるので今回は電子ピアノ(クラビノーヴァ)による作曲演習とした。クラビノーヴァには様々なプリセットされた音源、10チャンネルまで対応のミキシング装置、エフェクト、リズムマシーンなどもついているのでかなりの音楽表現が可能になっている。

  受講生たちは取り扱い手順を習得し(今回の学生は皆理論の基礎的知識があって説明は捗った)早速自分たちのテーマを決め、制作に取り組んだ。中には数チャンネルまで多重録音したものもいた。最後には受講生の一人一人が自分の音楽を発表する時間をとったが、制作時間が限られていたため、続けたいという希望者も多くいた。
従来の作曲するありかたと大きく違うDTMについては興味をもつ学生が多くいるものと思われる。彼らの創造性を喚起するような学習方法を研究していきたいと考えている。

 2001年 3月26日 (月) 10:40〜14:30 Bコース(中学生可)
 

海藻から光合成色素を取り出そう 文教大学教育学部 相馬 早苗

講義概要 海苔巻に使われるアサクサノリは紅藻で、緑色のクロロフィルと、紅色や藍色のフィコビリンを光合成色素として持っています。有機溶剤でクロロフィルを、水溶液でフィコビリンを抽出し、さらに、紅色のフィコエリトリンと、藍色のフィコシアニンを分けます。

テーマの選定
 理科の講座は結果がはっきりと出るような実験を経験するのがよいのではないかと考えた。有機溶剤で抽出される光合成色素は教科書の中にカラー写真が載っている。今回は有機溶剤で抽出される光合成色素のほかに、タンパク質についたまま抽出されるフィコビリンを含む紅藻を用いてみた。食品の海苔(アサクサノリ)は乾燥したものでも新鮮な材料と同じように光合成色素を抽出、分離できる。特に乾燥したままコーヒーミルで簡単に粉砕できるので短時間の実験には都合がよいと考えた。
実験の内容
 有機溶剤で抽出する(実験1)と、水で抽出する(実験2)に分けてプリントを作り手順を示した。 時間の関係で二つの実験は相前後してスタートさせた。
 (実験1)海苔1枚をコーヒーミルで粉砕し石油ベンジン、ベンゼン、メタノール混合液中に約30分間入れて抽出した。抽出中に乾燥させた活性アルミナ、炭酸カルシウム、乳糖を順にカラムに入れ、石油ベンジンを加えた。抽出液を濾過したあと分液ロートに入れ、水を加えて振り、下層の水とメタノール層を除いた。上層液を無水硫酸ナトリウムで脱水したあと、カラムに注ぎ、石油ベンジン、ベンゼン混合液で展開した。
 (実験2)海苔1枚をはさみで細かく切り(コヒーミルで粉砕すると濾過に時間がかかるため)、pH7の燐酸緩衝溶液に入れた。時間の制約もあり今回は昼休み後に、ガーゼで藻体を除いたあと硫酸アンモニウムを30%になるように加え沈殿させた。遠心分離で沈殿と上澄みを分けた。上澄みにはさらに60%の濃度になるように硫酸アンモニウムを加えて沈殿させ、遠心分離した。二つの沈殿を集め透析膜に入れ大量の燐酸緩衝液中で撹拌し、硫酸アンモニウムを除いた。透析膜中で水溶液状になったフィコビリンを燐酸カルシウムゲルに吸着させた。ゲルに紫色の物質が認められた。今回は時間の制約でフィコビリン中の赤いフィコエリトリンと青のフィコシアニンを分離する時間がなかった。しかし赤と青の色素の混合物であることは確認できた。
講座の結果の考察
  カラムでは オレンジ色のカロチン、黄色のキサントフィル、緑のクロロフィルaがはっきりと分離できた。フィコビリンは赤と青の混合した紫の物質を得られた。海苔が黒く見えるのは多種類の色の光合成色素を含むためということが納得できたと思う。
  実験のための準備としてカラムに使用する活性アルミナ、炭酸カルシウム、乳糖などの乾燥、燐酸緩衝溶液の作成、ゲルの準備などがちょっと大変であった。ちょっと欲張った内容であったが、海水中で太陽光線の赤い波長が失われる条件下で、クロロフィル系の色素のほかに赤や、青の色素をもつことが光合成に有利なこと、フィコビリンの取り出し方からタンパク質についても多少わかってくれたのではないかと思っている。

 2001年 3月27日 (火) 10:40〜14:30 Cコース
 
ギョーザラーメンはギョーザとラーメンじゃなかった 文教大学教育学部 近藤 研至

講義概要  ある日ラーメン屋で「えーと、…ギョウザ、ラーメンね」と注文すると、ラーメンにギョウザが浮かんだ「ギョウザラーメン」がでてきた。なぜ、こんなことが起こってしまってのでしょうか? 二語のつもりのわたしと、一語のつもりの店主。日本語に数多くある「複合語」のあり方について考えてみましょう。
……
 日本語では、元来独立して存在するいくつかの語をあわせて、一つの語を形成することがある。今回の講義は、いくつかの語があわさってできた語を「複合語」と総称し、日本語において「複合語」であるということを積極的に示す方法にはどのようなものがあるのかということについて概説した。
  それには以下の方法が認められる
(1) 連濁: 連濁とは、「なま+かし」が「なまがし」になるような、複合語が作られるときに、後項の語頭子音が濁音化されることをいう。
(2) ガ行鼻音: 「小学校」の「ガ」のところに検出される[]という発音のことをいう。
(3) 母音の変更:fune + nori → funanori (船(ふね)+乗り(のり)→船乗り(ふなのり)のように、前項の最終母音を変更するもの。これは、ある意味では「名詞の活用」といってもいい。
(4) 母音脱落・母音融合: (一語内における)母音の連続を回避させるために採られた方法。waa + imo → waimo (我が妹→我妹(わぎも))のような「母音脱落」と、naa + iki → naeki (長息→嘆き)のような「母音融合」とがある。
(5) 子音の介在:これも(4)と同様、母音の連続を回避させるために採られた方法である。ko + ame kosame (小(こ)+雨(あめ)→小雨(こさめ))のように子音を介在させるものである。
(6) 音便:ウ音便をのぞく、イ音便・撥音便・促音便
(7) アクセントの平板化: 「春(はる)」と「風(かぜ)」は、それぞれ[●○]と[○●]というアクセントをもっているが([○]は低平調を[●]は高平調をそれぞれ表す)、これが「春風(はるかぜ)」となったとき、[○●○○]というアクセントになる。このアクセントの変更にはいくつかの方法があるが、その結合部分を高平調にするのが多く見られる方法である。
(8) 省略:  「パソコン」や「もろきゅう」のように、二つ(以上)の語を結合させるとき、その意味を担う重要な情報部分は残したまま、省略させ複合語を作るという方法が、昨今多く用いられる。)
  上の現象は、それぞれ独立した言語現象として意識されることが多いが、実は上で見たような「複合語」形成の方法という点において共通している。ただし、現代語において「生産性が高い」方法は、このうち(1)と(7)と(8)である。特に(7)と(8)は、「日本語の乱れ」の現象として語られることが多いが、これらの方法は日本語の運用において欠くことのできない方法であり、決して「乱す」ためにある方法ではないということを強調した。


 2001年 3月27日 (火) 10:40〜14:30 Dコース(中学生可)

おもしろい表現できるかな 文教大学教育学部 福井 昭雄


講義概要 私たちが毎日の生活の中で身近に接している広告やコマーシャル。それらはどんなはたらきや特性を持っているのだろうか。社会心理学やメディア文化論の視点から、実際の広告やCM作品に考察を加えて生きます。
……
  「この絵は写真のようによくかけているね」というように、見たとおりにかけているものを上手な絵とする人が多いようですが、絵とは自分が感じたことや、思ったことを好きなように表すのが一番大切なことなのです。それには、物を見て写生をしたりデッサンをする前に、クレヨンや絵の具でどんな表現ができるかをいろいろと試してみることから始めると、絵をかくことの楽しさをもっと味わうことができます。クレヨンやパスは手軽に使用できる描画材です。かく時の筆圧や速度により変化のある表現ができます。線でかいたり、色を重ねたりする方法や、かいたものを指先やティシュペーパーでこすったり伸ばす、横に持ってこすり巾の広い線をかくなど、ちょっとした工夫で変化のある表現ができます。
 水彩絵の具は水を溶剤としているので、水との溶き方や重色などで多様な表現ができます。水彩絵の具でどんな表し方ができるかやってみましょう。
1.点でかこう
 細い筆の先に絵の具をつけて細かく点をうったり、太筆にたっぷりつけて太い点をうつ。又、水にぬらした画用紙に点をうつと、にじんだり、広がったりしながら淡い色の点になります。絵の具の濃淡や点の集まり方などによって違った表現になります。
2.線でかこう
 筆の使い方によっていろいろな線がかけます。例えば、細い線、太い線、勢いのある線、かすれた線、ジグザグ線、流れるような曲線、筆先を細かく動かしてふるえたようにしてかく線、水を多めにした淡い色の線やにじんだ線、重なり合った線など、線によってさまざまな表現をみることができます。
3.面でかこう
 面の着色には筆遣いや絵の具の濃淡などで多様な変化をつけたり、均一に塗るなど、筆遣いや水の含ませ方によっていろいろな表現効果を得ることができます。
4.筆をふって(ドリッピング)
 筆に絵の具をたっぷりつけて筆を振り、画面に絵の具をたらしたり、流したりする。たれた絵の具を口やストローで吹くと生き物のように奇妙な形に変わっていきます。
5.合わせ絵(デカルコマニー)
  画用紙を半分に折り、内側に絵の具を置き、閉じてよくこすると、左右対称の不思議な形ができます。偶然にできた形から発想して面白い絵に発展することができます。
6.墨流し(マーブリング)
 水面に油性の絵の具を落とすと絵の具が浮いてきれいな模様ができます。大理石の模様に似ているのでマーブリングと呼ばれています。ここではマーブリングの溶液を使ってみました。墨汁でもできます。
 できた作品を見ながら、それぞれのイメージをみつけてマーカーなどで加筆していきます。このように偶然にできた形や色から、おもわぬ絵をかくことができます。それらの絵を半分に折り、裏面をのりではり合わせて絵本のようにします。 絵が上手にかけないというあなたも一緒に始めてみて下さい……。どうです、素晴らしい絵本ができたでしょう。


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