ネットワークモデル分析B
経営学部 経営学科 専門科目・2年生以上対象
担当:根本 俊男(研究室:東京あだちキャンパス 教育研究棟3422研究室)

お知らせ 受講生の皆さんへ

     
 

秋学期開講「ネットワークモデル分析B」講義ページです.楽しんでください.
春学期開講「ネットワークモデル分析A」も受講し教育効果を高めてください.

講義で必要なもの:赤ペン、A4レポート用紙

講義の連絡等はmanabaで行います.定期的にチェックしてください.

 
     

講義の記録

2021年度以前「ネットワークモデル分析」の講義内容記録 ※後半部分が本講義内容に対応


講義概要

 オペレーションズ・リサーチ(Operations Research, 以下OR:オーアール)とは,経営・政策における諸問題に対する問題解決・計画立案のための科学的な知恵の集大成です.この講義では,このORの学びの中で,ネットワークモデルの問題解決への利活用を学びます.

 

 科学的な知恵とは,例えば,複数案があるとき,経験と勘でこの案が望ましいと判断するのではなく,数理モデル・統計分析等を用いて各案の望ましさを数量的に表しその中から最良の案を決定するなど,データと情報に基づき判断しようとする思考です.ORは多くの企業で呼び方こそ様々ですが,実際に様々なレベルで利活用されている実践的な学問のひとつです.情報化社会における経営を習得しようとする者にとって必須の知識ですし,経営学部出身者として企業が期待している問題解決力を支えるIT(情報技術)の中核のひとつでもあります. この講義では,問題解決技法やオペレーションズ・リサーチの中で扱う問題分類のひとつである「」ネットワークモデル」とその利活用法について主に習得します.

 ところでキーワードになっている「ネットワークモデル」とは何でしょう.世の中にはいくつかの点とそれらを結ぶ線で表現できるものが数多く存在します.例えば,道路網やインターネット.また,物理的に目に見えなくても会社の組織や工場から消費者までの商品の流れなども抽象的に点と線で表現できます.これらのように点と線で表現したものをネットワークとよび,そして,ネットワークで表現した世の中の様々な問題をネットワークモデルとよびます.

 世の中の諸問題のすべてがネットワークで表現できるわけではありません.しかし,物事の繋がりで成り立っている社会において,その多くの問題はネットワークモデルとして記述できます.記述した問題に対する基本的な解析手法を身に着けることにより様々な問題の解決の糸口になることが多いのです.そのため,高度な問題解決力を身に着け経営分野で活躍したいと考えている者にとってはネットワークモデルの分析技術は基盤知識のひとつであり,また,経営学部出身者が当然身につけているIT(情報技術)として企業が期待している中核技術のひとつでもあるといえます.情報を生かさない経営が現状では成り立たない事実を鑑みれば,経営学部における情報を生かす技術の習得は重要です.

 文教大学経営学部では情報を生かす問題解決力を育てる科目が数多く設定されていますが,この「ネットワークモデル分析」は専門的な問題解決力の基盤を育てる科目の一つです.問題解決思考を鍛えながら,楽しんで受講してください.

 

講義計画

この講義扱うネットワークモデルには学んで欲しい素材はたくさんあり,そのすべてを紹介するのは難しいです. そこで,中でもネットワークモデルで特徴的な話題をいくつかピックアップし紹介していきます.秋学期に開設する本講義「ネットワークモデル分析B」では,ネットワーク上にモノを流す話題を主に取り上げます.

 

 春学期に開設する「ネットワークモデル分析A」では,点と線で表現すること(グラフ)や,ペアを作ること(マッチング)に関する話題を主に取り上げます.ネットワークモデル分析Aと同Bの両方を受講することでネットワークモデル全体を問題解決の場面で利活用できる知見が習得できます.広く基礎的な部分はもちろん、理解が表面的なもので終わらないように,取り上げるテーマによっては深い部分にも取り組んでいきたいと考えています.

本講義で扱う主な内容

  • ネットワークに表れる問題:ネットワーク上の最適化問題入門
    • 街にガス管を最小コストで配管するには (最小木問題)
    • 湘南台から新横浜に最短で行く経路を見つけよう (最短路問題)
    • お弁当をすべてのコンビニに最短時間で配達しよう (巡回セールスマン問題)

  • ネットワーク上を流れる物の問題:ネットワークフロー入門
    • 最大の通信量を確保しよう (最大フロー問題)
    • 工場から各消費地になるべく安く商品を配送しよう (最小費用フロー問題)
    • お中元を3台のトラックでなるべく早く配送しよう (配送路決定問題)

(参考)春学期「ネットワークモデル分析A」で扱う主な内容

  • 点と線で表現できるもの:グラフ論入門
    • 一筆書きの仕組み (オイラー閉路とマッチング問題)
    • 郵便配達の最短経路を探してみよう (最小重みマッチング問題)
    • コンピュータで点と線を表現する方法 (グラフの表現)
    • ネットワークの特徴を見よう (様々なグラフ,グラフの分解)

  • ペアを作ってみよう:マッチングと問題解決
    • たくさんのペアの作り方(最大マッチング問題)
    • 低コストな割当方法(割当問題)
    • 不満の少ないペアの作り方(ゼミ配属問題,安定結婚問題)
    • マッチングを用いた問題解決のテクニック

 

教科書・参考書

講義内容はシラバスに沿いながらも受講生の理解の様子を見て適切に変化させて行く予定です.そのため,特に教科書と呼ばれるテキストは使用しません.

 ただし,講義内容を補完するために自主学習を進める書籍として以下の参考図書を推薦しておきます。(私も講義内容の参考に使っています.)多くの本を紹介しますが自分に合う本を見つけて読み切るのが良いと思います.以下に紹介した本はほとんど図書館にそろえてあります.根本研究室にもあります.

OR全般の初心者向き入門書

  • 入門オペレーションズ・リサーチ,松井泰子・根本俊男・宇野毅明著,東海大学出版(2008),2800円+税 お勧め!
  • おはなしOR、森村英典著、日本規格協会(1983)
  • ORのはなし,大村平著,日科技連(1989),1550円+税.
  • オペレーションズ・リサーチ読本、刀根薫著、日本評論社(1991),1800円

オペレーションズ・リサーチ全般のテキスト

  • Excelで学ぶOR,藤沢克樹,後藤順哉,安井雄一郎著,オーム社(2011),3200円+税
  • オペレーションズ・リサーチ:システムマネジメントの科学,貝原俊也編著,オーム社(2004),2800円+税.
  • オペレーションズ・リサーチ,森雅夫・松井知己著,朝倉書店(2004),4200円+税.モデルごとにうまく整理されているモダンな教科書です.
  • 現代OR入門,西田・田畑編,現代数学社(1995),4300円+税
  • はじめてのオペレーションズ・リサーチ,加藤豊・加藤理著,森北出版(2018),2400円+税
  • 例題で学ぶオペレーションズ・リサーチ入門,伊藤益生著,森北出版(2015),2200+税

ネットワーク計画関連テキスト

  • ネットワーク最適化とアルゴリズム,繁野麻衣子著,朝倉書店(2010),3400円+税.(赤しるしお勧め!.ネットワーク計画の日本語のテキストの決定版です!!)
  • 組合せ最適化とアルゴリズム、久保幹夫著、共立出版(2000)、2400円.(お勧め!)
  • グラフ,ネットワーク,組合せ論,藤重悟著,共立出版(2002),2800円+税.
  • グラフ・ネットワーク・マトロイド,藤重悟著,産業図書(1986)(第2刷は2005),3500円+税.
  • 情報の構造(上・下)、浅野孝夫著、日本評論社(1994)、各2900円(グラフ・ネットワークに関する解法が高度な手法まで多く解説されています.)
  • 計算とアルゴリズム、浅野孝夫・今井浩著、オーム社(2000)、2800円.(アルゴリズムに関する知識の補充にお勧め)
  • Network Flows, Ahuja, Magnanti and Orlin著,Prentice-Hall(1993),約$70

ORの醍醐味を味わえる本

  • 組合せ最適化[短編集],久保幹雄・松井知己著,朝倉書店(1998),3200円+税. (お勧め!)
  • 巡回セールスマン問題への招待、山本・久保著、朝倉書店(1997)、3000円. (お勧め!)
  • 最適配置の数理、岡部・鈴木著、朝倉書店(1992)、2900円. (2000年度根本ゼミナールテキスト)
  • 数理計画法入門 キャンパスのOR、今野浩著、朝倉書店(1992)、2600円 (ちょっと入門には難しいかも. 根本ゼミナール 97年テキスト.)
  • 実践 数理決定法,今野浩著,日科技連(1997),2500円+税.
  • 都市モデル読本,栗田治著,共立出版(2004),2800円+税.数理モデルの面白さを感じる一冊.
  • 応用数理計画ハンドブック,田村・久保・松井編根本他著,朝倉書店(2002),36000円+税.(数理計画の最前線情報が日本語で網羅されています.これはすごい!(価格もすごい!)図書館とか研究室に配架されてると便利だね. )

 

評価方法

講義内で実施する小テストの点数(100点分)をベースに,日頃の講義への積極性や毎回課す課題等の状況をプラス点として考慮します.


更新日時: 2024年1月15日