4.ホームページを介したコミュニケーションの発展       元へ戻る

 それでは実際に開設したホームページを介してどの様なコミュニケーションが成り立っているのか見ていく。ホームページを介してコミュニケーションするには、現時点で幾つかの方法がある。例えばCGIを使って直接ホームページに書き込んでもらう方法や、ホームページ上でチャットなどを行う方法などがあるが、個人が行うには少々技術的に難しいので、最もポピュラーな電子メールが中心となるものとして調査した。

(1)他人からのメールの通数

       図4.1 HPに関する1日のメール受信数(N=45)

 開設したホームページについて、どの程度にメールを受信したかを調べた結果を、図4.1に示す。この図は1日に受信したメールの通数で調べている。この図によると、ホームページを開設した人の91%が幾らかでもメールを受信し、何らかのコミュニケーションが発生していることが分かる。そして1通/日未満が過半の53%、1〜4通/日が27%、5通/日以上が11.1%である。殆どのページに反応があるわけで、個人のホームページであってもそれを見てメールを送る読者も多く存在すると言える。

(2)メールの継続性

 コミュニケーションの発生の観点からすると、受信数/日と同時に、そのコミュニケーションにどの程度の継続性があるのかも関心のある点である。複数の人から電子メールを受信し、またその相手に自分が発信するという繰り返しの中には、ある人とは途中でやりとりしなくなり、ある人はずっと継続しているというケースも存在しよう。その様なケースをも含めた「継続的」な場合と、継続性がない一過的・単発的な状況を示す「単発的」な場合もある。継続性をこの2つに分け、これらと通数/日の関係を見たのが図4.2である。

               図4.2 メール受信数と継続性(χ2:Sig.<0.01)

 同図によると全体では半分強が「継続的」となっており、かなり継続性のあるコミュニケーションが成立していることが分かる。しかし、興味あることにメール通数との関係を見ると、1〜4通/日の場合には「継続的」が著しく高く90%強となっており、それより多い5通/日以上および少ない1通/日未満の場合には、約40%程度が「継続的」である。したがって多い場合にも少ない場合にもコミュニケーションは単発的になりやすく、1〜4通/日より若干多い側から若干少ない側までの範囲に、継続する最適範囲のメール通数が存在することを示している。

(3)開設の満足度とコミュニケーションの継続性

 個人ホームページが今後さらに開設され、コミュニケーションが発展していくためには、開設者が自分の開設の結果をどの様に評価しているかは重要な側面である。そこで開設者が自分のホームページ開設をどの様に満足しているか、さらにどの様に目的達成を評価しているかを見ていく。図4.3に集計の結果を示す。

  全体を見ると7割弱が「満足」しており、「どちと言えぬ」と「不満足」は合わせて3割強となっている。「満足」層はかなり多く、「不満足」層は大分少ない。この満足度をホームページ開設の目的の達成度グループ別に見ると、達成出来たグループは「満足」が8割強で、不満足はいない。それに対して、達成出来ないグループでは「不満足」層が断然多く、60%となっている。満足度と達成度の相関関係は明白である(この2変数の相関係数は0.630(Sig.<10−4)となっている)。ホームページの開設の目的を達成出来なくても満足している層があるのは、いわば自分の努力の程度を勘案しながら、満足度を評価しているためである(達成出来ていない人の7割は簡単にホームページが作成できたと答えている)。

          図4.3  HP開設の満足度と目的達成度(χ2:Sig.<10−3)

  それではどの様な状態が実現できると、ホームページ開設の満足度が高まるのであろうか。本調査では達成された状態として、メールの通数と継続性の2つの変数を検討することが出来る。その結果、メールの通数には全く有意性は無いが、継続性には強い有意性があることが分かった。図4.4にその結果を示す。継続的にメールを交換している層は9割以上が満足層で、不満足層はいない。それに対して単発的な層では「どちと言えぬ」と「不満足」が多い。「満足度 VS 継続性」に見えるこの関係は、「達成度 VS 継続性」にもほぼ同様に成り立つ。相関係数で見ると、満足度と継続性では0.577(Sig.<10−3)、達成度と継続性では0.568(Sig.<10−3)である。したがって継続性が高さはホームページ開設の成功の度合いを示す有力な指標と見ることが出来る。

  メール交換の継続性と満足度との関係は次のように見ることが出来る。「単発的」なメールのやり取りでは、そのメールの内容単なる挨拶程度の文だったり、簡単な感想ということとなる。これでは活発なコミュニケーションとは言えない。他方「継続的」なメール交換が出来るということは、そのホームページの内容が、お互いの共通の趣味であったり、お互いに関心のある話題であったり、また単に作者自身をアピールするだけでなく積極的に情報交換できるテーマで構成されているなど、共通してお互いが話し合える何らかの要素を持ち合わせていることに他ならない。あるホームページの作者が情報を流すと、そのことについて関心を持っている読者が新たな情報を作者に送る。その情報をもとに作者はホームページを更新する。そうすると今度は別の読者がまた新たな情報を提供する。さらに作者はその新たな情報をもとにホームページを更新する。そしてまた前の読者が情報にコメントを付ける。この様に継続し始めるとホームページの魅力が高まり、それがさらに好循環的にメールの継続性を増していく。この様な「継続的」なメール交換が実現して、当初期待していた活発なコミュニケーションがはかられ、ホームページ開設に対する達成度や満足度が高まることになる。

  図4.4 HP開設の満足度とメールの継続性(χ2:Sig. <10−3)


次へ続く

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